様々な用途で用いられる、「生体適合性樹脂」「吸水性樹脂」「ガスバリア性樹脂」

医療用プラスチックによく用いられる「生体適合性樹脂」、衛生関連用品のほか、環境緑化・植栽分野、土木・工業分野、医療用具分野、食品包装分野など様々な用途で用いられる「吸水性樹脂」、包装用フィルムに用いられる「ガスバリア性樹脂」。

この記事では、これらの特徴を持ったプラスチック材料について、その特徴や性質を解説していきます。 また、以下の記事でも樹脂材料についてご紹介していますので、あわせてご参考ください。

生体適合性樹脂とは~種類と特徴について

合成樹脂は、医用高分子材料(医療用プラスチック)としても用いられています。医用高分子材料とは、医学、歯学の分野で用いられる高分子の総称であり、以下のようなものが存在します。

・使い捨て注射器などのディスポーザブル製品(注射器や輸液バック)
・人工腎臓などの人工臓器
・形成外科などの体内補填物
・縫合材料
・医用接着剤
・義歯床などの歯科材料

また、高分子薬剤や医用固定化酵素なども一種の医用高分子といえます。
近年注目されている医療用プラスチックとしては、縫合糸として用いられる生分解性ポリエステル、カテーテルに用いられるフッ素樹脂(PTFE/ポリテトラフルオロエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などが挙げられます。
医用高分子材料のように「医療器具に用いられ、生体との相互作用を意図された材料」のことを総称して生体材料(biomaterial)と呼びます。

生体は体内に異物が混入すると、異物反応と呼ばれる反応を起こし、混入した異物を除去するよう応答します。また、「ある材料を装着あるいは移植した際に、生体に異物として認識され、排除されることなく馴染む性質」のことを生体適合性(biocompatibility)と呼びます。すなわち、異物反応を引き起こす程度が低い材料ほど、生体適合性は高いことになります。、生体材料は、現在も材料の表面改質や複合化により、生体適合性を高くする研究開発が行われています。合成樹脂の分野では表面修飾などにより、血液適合性に優れる抗血栓性材料の研究開発が進展しています。

生体材料の必要条件としては、生体適合性の他に、可滅菌性、生体安全性(細胞非毒性と組織非刺激性)、生体結合性(硬組織結合性と軟組織結合性)、生体機能性(生体機能代替等)、耐久性(耐劣化、耐腐食、耐摩耗)等が挙げられます。
合成樹脂を生体材料に用いる場合にも、これらの要求される条件を満たすべく研究開発を進める事が必要となります。特に合成樹脂では、モノマー自体の毒性、樹脂中の残留物やその分解生成物についても評価しなければなりません。

ナイロン製の手術用の縫合糸はよく知られるところですが、縫合糸は非分解性の縫合糸と分解性の縫合糸(体内吸収性)に分類されます。前者は、ナイロンの他にポリエチレンフタレート、ポリフッ化エチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等であり、後者ではポリ乳酸等の生分解性高分子です。

人工臓器としては、合成樹脂は主に糸状や織物状の形態で用いられることが多いです。その例を<表1>に整理しました。

<表1>人工臓器と合成樹脂

人工臓器 種類 使用形態
人工腎臓 再生セルロース、エチレン-ビニルアルコール共重合体(商品名:エバール)、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン 中空糸
人工肝臓 再生セルロース、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン 中空糸
人工肺 各種合成繊維、ポリプロピレン 中空糸、平膜、メッシュ
人工心臓 ポリエチレンテレフタレート メッシュ
人工血管 テフロン、ポリエチレンテレフタレート 不織布
人工皮膚 ナイロン、コラーゲン 不織布
人工腱 テフロン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン フィラメント
人工レンズ ポリメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、シリコーン系メタクリレート バルク

 

吸水性樹脂とは~種類や用途について

吸水性樹脂とは水を吸収し、それを安定した状態で保持する「吸水力」と「保水力」を有する高分子重合体です。当初は、その吸水力は自重の20~30倍程度でしたが、その後の研究によって、より高い水分保持性能を有する、高吸水性樹脂(Superabsorbent polymer/SAP)が登場しました。

高吸水性樹脂とは、「水を高度に吸収して膨潤する樹脂で、架橋構造の親水性物質で水と接触することにより吸水し、一度吸水すると圧力をかけても離水しにくい特徴を有する(JIS K7223 K7224)」と規定されており、高吸水性樹脂は自重の100倍~1,000倍、生理食塩水では20~60倍を吸収して膨潤し保持することができます。

この吸水性樹脂の特徴を活かして、紙おむつや生理用品などの衛生関連用品のほか、環境緑化・植栽分野、土木・工業分野、医療用具分野、食品包装分野などでその用途開発が進められており、その生産量は飛躍的に増加しています。国内生産分の吸水性樹脂出荷量推移について<図1>に、高吸水性樹脂の種類について<表2>に整理しました。

<図1>吸水性樹脂出荷量推移
<図1>吸水性樹脂出荷量推移

<表2>高吸水性樹脂の種類

合成樹脂系 ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアミン系 等
天然物由来系 ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系 ポリグリコール系 等

 

高吸水性樹脂の製法の例として、合成樹脂系の1つであるポリアクリル酸系について製法と吸水の原理を示します。

ポリアクリル酸系高吸水性ポリマーは次の方法で作られます。

<図2>ポリアクリル酸Na高吸水性ポリマー
<図2>ポリアクリル酸Na高吸水性ポリマー

アクリル酸とアクリル酸Naと架橋性モノマーから合成され、軽度に架橋した網目構造を有しており、側鎖にあるカルボキシル基が水を含むとゲル中にナトリウムイオンを解離します。

水の吸収力は浸透圧によるものであり、ポリマー内でナトリウムイオン(Na+)が放出されるため内側のNa+濃度が高まります。そのため外側の水との濃度差ができるので、水をポリマー中へと取り込む力が働くことで、ゲル化が進行します。

最後に吸水性樹脂が利用される分野と用途について<表3>に整理しました。

<表3>主な分野と用途

分野 用途
土木・工業 コンクリート養成シート、水膨潤シール材、結露防止剤、汚泥の吸水・固化剤等
医療用品 手術用シーツ、パップ剤、医療廃液の吸液・固化剤、解熱用の蓄冷材、コンタクトレンズ等
衛生関連用品 紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等
電気・電子 ケーブル用止水テープ、電池用ゲル化剤等
農業 土壌改質剤、育苗シート、種子コート剤等
その他 蓄冷材、食品・花の鮮度保持材、芳香剤用ゲル、ペット用シート、ネコ砂、携帯用カイロ、携帯用トイレ、吸汗材等

 

 

ガスバリア性樹脂とは~種類や特徴について

合成樹脂は包装用フィルムにも使用されています。包装用フィルムには、酸素や水蒸気のバリア性、保香性などが求められ、それに応じた機能性フィルムが実用化されています。 ガスバリア性を規定するのは、気体の溶解性と拡散性であり、両者が低いポリマーほど優れたガスバリア性を有します。

(1) 溶解性

ポリマーが極性タイプか非極性タイプか、気体が極性タイプか非極性タイプかによって、ガスバリア性は異なります。酸素や炭酸ガスは非極性なので、シリコーンやフッ素樹脂などの非極性ポリマーには溶解しやすいです。また、水蒸気は極性なので、PVA、PANなどの極性ポリマーに溶解しやすいです。

(2) 拡散性と分子構造

拡散性は、ポリマー分子鎖が熱運動によって生ずる空間を気体が移動する度合いを表すため、分子鎖のミクロ運動性に影響を受けます。拡散に関係する分子構造因子には次のようなものがあります。

1.分子の極性
 極性の大きいポリマーは分子間力が強く、熱運動などによる分子鎖の運動性は低いため、気体は拡散し難いです。
2.水素結合や結晶化度
 分子間に水素結合などを形成するポリマーも拡散性が低いです。また、ポリマーの結晶領域は緻密な構造を形成しているので
 非結晶領域に比べて気体は通り難いです。
3.分子鎖の剛直性
 環構造を有する剛直な分子構造も気体は通り難いので、ガスバリア性に優れています。

(3) ガスバリア性の合成樹脂

非極性の酸素と極性の水蒸気の両方の性質を有する合成樹脂は少ないですが、その中でもポリビニリデンクロライド(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は代表的なガスバリア性合成樹脂です。また、酸素バリア性を有する樹脂と水蒸気バリア性を有する樹脂を組み合わせた複合フィルムも実用化されています。

1. ポリビニリデンクロライド(PVDC)
 酸素と水蒸気のバリア性を有し、かつ難燃性で高温下でも安定なので、各種フィルムや食品用のラップとして使用されています。
 しかし、塩素原子を含み、焼却時にダイオキシン発生等が問題視されることもあるため、この素材以外のラップも登場しています。

2.PVDCの代替材料
 PVDCのダイオキシン問題から、塩素を含まない材料開発と共に多層型バリア材料、透明薄膜蒸着バリア材料の開発も行われています。
 例えば、水蒸気バリア性フィルムと酸素バリア性フィルムを共押し出した多層型バリアフィルム、PETフィルムに酸化ケイ素や
 酸化アルミニウム等を蒸着したフィルムなどがあります。

3.エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
 酸素と水蒸気のバリア性を有し、塩素原子を含まないので様々な分野で使用されています。

分子内でベンゼン環が含まれる電子密度の高い部分とそれ以外の低い部分とが分かれているため極性が強く、非極性の酸素などの気体との親和性が低くなります。ぶら下がった水酸基同士が強く引きあうため、分子の間にほとんど隙間がなく、そして結晶性であるなどの性質を併せもっています。例としてクラレの「エバール」の概念図を以下に示します。

まとめ

この記事では生体適合性・吸水性・ガスバリア性という3つの性質に注目して解説してきました。

生体適合性・吸水性のトピックでは、医療についても触れましたが、2025年までに高齢者医療費は1.5倍になると予測されています。そのため、注射器や人工臓器、紙おむつなどに用いられる合成樹脂の需要は、今後もますます拡大していくでしょう。ガスバリア性のトピックでは、実際の用例については触れませんでしたが、身近な所で例をあげると生鮮食品の梱包に用いられており、鮮度を保つために重要な性質となっています。

他の記事では、プラスチック材料の加工や物性測定についても分かりやすくまとめていますので、そちらもあわせてご参考ください。