無機ガラスを超える優れた特性で用途拡大~「透明性樹脂」の種類と性質

身の回りで幅広く用いられているプラスチック製品。プラスチック製品の元となる樹脂材料は、大きく6つの特性に分けることができます。

この記事では、自動車のライトカバーやカメラのボディにも使用される、透明性樹脂について解説をしていきます。また、以下の記事では、プラスチック材料の基礎知識や他の特性についても解説をしています。合わせてご参考ください。

透明性樹脂とは?

透明性樹脂の代表格であるアクリル樹脂は、1936年頃に登場しました。この樹脂には優れた透明性と軽量性、成形性があるため、戦闘機のフロントガラスの代替品として軍事航空機市場で広く普及しました。

アクリル樹脂は、当時「有機ガラス」とも呼ばれ、無機ガラスに対抗することで発展してきました。初期の頃は、光学特性において無機ガラスに劣るため、代替品として扱われていましたが、その後、物性の改良が加えられ、成形性や軽量性、耐衝撃性などの特性や材料コストが重視されるようになり、光学市場では無機ガラスに取って代わろうとしています。特に、メガネレンズ市場では、プラスチック材料が多く用いられるようになり、CDやDVD等の光ディスクの基板材料ではPC(ポリカーボネート)等の透明性樹脂が独占しています。

代表的な5つの透明性樹脂~種類、性質、用途について

●●は物体に当たると表面で反射し、内部に侵入した光は物体に吸収され、散乱して裏面から出ていきます。光が樹脂に当たる場合も同様に、表面で反射し、内部で吸収され、散乱して裏面から出ていくことから、樹脂における光の透過性は「光の反射」「光の吸収」「光の散乱」の3要因に依存しているといえます。

<図1>光の透過
<図1>光の透過

工業的なプラスチックでは、表面反射、樹脂内部での吸収、内部不均質構造での散乱を少なくするなどの工夫がなされています。代表的な5つの透明性樹脂について、みていきましょう。

<表1>:主な透明性樹脂

項目 光線透過率
(%)
屈折率 アッベ数 衝撃強度
(アイゾット:J/m²)
吸水率(%) 荷重たわみ温度 (℃)
(荷重:1.80MPa)
比重
PMMA 92~93 1.49 58 2 2 100 1.19
PC 87~89 1.59 31 65~90 0.4 138~142 1.2
PS 88~90 1.59 31 1.4~2.8 0.1 70~100 1.06
CR-39 89~91 1.5 58 2.3~2.8 0.2 140 1.32
SAN 90 1.57 35 2.3~3.0 0.25 80~95 1.07
MS 90 1.562 35 1.5~2.5 0.15 85~90 1.09
TPX >90 1.463 61 0.3~1.2 1.01 90 0.87
※アッベ数:屈折率が光の波長に依存する現象を分散といい、その度合いを表す数値

屈折率が光の波長に依存する現象を分散といい、その度合いを表す数値を「アッベ数」といいます。このアッベ数が小さい材料は、波長によって屈折率が変化するので色収差(光の波長によって結像位置が異なる現象)が生じてレンズ材料としては好ましいものではありません。レンズ用透明性樹脂の開発課題の1つが、高屈折率でアッベ数の大きい材料の設計になります。<図2>に各樹脂のアッベ数と屈折率を示します。

<図2>各樹脂材料の屈折率とアッベ数
<図2>各樹脂材料の屈折率とアッベ数

プラスチックの特徴は軽量性ですが、光学用樹脂としての実用性の観点からは強度も要求されます。<図3>では各樹脂の比重と耐衝撃性を示します。

<図3>各樹脂材料の比重と衝撃強度
<図3>各樹脂材料の比重と衝撃強度

屈折率は温度や湿度によって変動します。材料の信頼性を高めるために、耐熱性に優れ吸水率が低い樹脂が要求されますが、一般的には吸水率が大きいと屈折率への影響だけでなく、成形品が変形して「ソリ」等が生じるので、光学用樹脂の場合、低吸水率の樹脂が求められます。<図4>では各樹脂の熱変形温度と吸水率を示します。

<図4>各樹脂材料の吸水率と耐熱性
<図4>各樹脂材料の吸水率と耐熱性

ここまでで、各樹脂材料を選定する際の重要なポイントを見て行きましたが、ここからは各樹脂材料の特徴や用途をより詳細に解説していきます。

(1) PMMA(ポリメチルメタクリレート)

「プラスチックの女王」とも呼ばれ、優れた透明性があり、無機ガラスと競合しながら、様々な光学用途で使用されています。

特徴
・非晶性…2つの置換基のサイズが大きく異なり、かつ、立体的に不規則な配置をしているため
・耐候性に優れる…α位炭素がメチル基で置換されているので、酸化反応が起きづらいため
・吸水率が高くなるという欠点…側鎖がメチルエステルであるため

(2) PC(ポリカーボネート)

PCはPMMAに次いで、光学用として多く使用されている汎用エンプラ(エンジニアリングプラスチック)のひとつです。

特徴
・非晶性…ベンゼン環の配置は立体的に見ると非対称なため
・機械的強度や耐熱性に優れる…主鎖は剛直な構造なため
・低吸水率…PMMAに比べて小さいため
・加水分解しやすい欠点…カーボネート結合で構成されているため

(3) PS(ポリスチレン)

代表的な非晶性の汎用樹脂として知られています。

特徴
・高い透明性
・成形性や機械的特性に優れる
・吸水率が低い
・低コストで生産可能

しかしながら、透明性の経時変化が起こるため高精度が要求される光学材料としては実用性が低く、 他成分と共重合させたMS樹脂やSAN樹脂として用いられることが多くなっています。

<表2>:PS(ポリスチレン)由来の代表的な合成樹脂

共重合成分 主な特徴 主な用途
MS樹脂 アクリル系成分 透明性/高表面硬度/高耐光性(PMMA 由来)/加工性/低吸水性(PS由来) レンズ等の光学材料
家電
OA部品
雑貨
SAN樹脂 アクリルニトリル 耐熱性/耐薬品性/靭性
紫外線による着色劣化などが起こる
食卓用品
食品や化粧品の保存容器
家電
玩具

 

(4) CR-39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)

米国PPG社が1942年にガラス代替材料として開発した原料で、注型重合によりレンズ型に成形されます。耐熱性、耐衝撃性、染色性に優れ、現在のプラスチック眼鏡レンズの中核材料となっています。

(5) TPX(ポリ-4-メチルペンテン-1)

4-メチルペンテン-1をベースとしたオレフィン系共重合体で、TPX(三井化学の登録商標)という名称で知られています。
結晶性樹脂ではありますが、結晶質と非晶質の比重が接近しているため 透明性があるのが特徴です。屈折率はフッ素樹脂に次いで低く、低屈折率材料として使用されています。
食品用ラップや電子レンジ用容器として、また、紫外線透過率がガラスや他の透明樹脂に比べて優れるため、光学分析用セルにも利用されています。

その他、注目される2タイプの透明性樹脂

近年、光ディスク用高性能樹脂の需要により、様々な樹脂開発が進展しています。 その中でもPMMAの弱点である耐熱性と吸水性の改良を目指し、注目されているのが、脂環式構造をもつ2つのタイプです。

(1) 脂環式アクリル樹脂

嵩高い脂環式メタクリレート(ジシクロペンタニルメタクリレート/日立化成FANCRYL)を用いた光学用アクリル樹脂があります。

(2) 脂環式ポリオレフィン樹脂

光ディスク用として開発された高性能樹脂です。<表3>に3つの代表的な樹脂についてまとめました。いずれも、ポリオレフィン樹脂と非結晶性樹脂の性能を融合させた環状オレフィンコポリマーですが、PCに比べて光線透過率が高く、屈折率、吸水率、比重は低くなっています。

<表3>:代表的な脂環式ポリオレフィン樹脂の特性比較

項目 光線透過率
(%)
屈折率 アッベ数 衝撃強度
(アイゾット:J/m²)
吸水率(%) 荷重たわみ温度 (℃)
(荷重:1.80MPa)
比重
PMMA
(対照)
92~93 1.49 58 2 2 100 1.19
PC
(対照)
87~89 1.59 31 65~90 0.4 138~142 1.2
アペル 90 1.54 56 2.5~3.5 < 0.01 70~135 1.04
ZEONEX 92 1.509~1.535 54 1.3~2.4 < 0.01 103~133 0.95~1.02
ARTON 93 1.512~1.515 57 3 0.2~0.4 125~162 1.08

 

まとめ

ここでは6つの特性別樹脂のうち、透明性樹脂に絞ってご紹介しました。他の記事では、プラスチック材料の物性測定についても分かりやすくまとめていますので、そちらもあわせてご参考ください。

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