熱可塑性樹脂の基礎知識~特徴と物性と成形法、用途などを一覧で紹介 (2/3)

熱可塑性樹脂を見分ける2つのポイント(溶融物性・固体物性)

熱可塑性樹脂を見分ける2つのポイント(溶融物性・固体物性)

熱可塑性樹脂には簡単な分子構造のものから複雑なものまで幅広く存在します。各樹脂には共通する性質や特異的な性質を示すものがありますが、その多くはポリマーの分子構造に基因しています。以下に溶融物性と固体物性に分けて見てみましょう。どちらの物性も熱可塑性樹脂の成形加工のために必要な情報となります。

(1) 溶融物性

熱可塑性樹脂の溶融時にポリマーの分子構造に影響を与えるファクター(要因)には以下のものがあります。

・溶融する温度
・溶融後の溶融粘度の温度依存性
・加熱による熱分解の挙動

樹脂の場合、分子量や分子量分布、共重合物比等の変動によって明確な融点が得られにくいため、実用上は溶融物性を「溶融流動指数(melt flow index/ melt index)」や「溶融粘度」等で評価されています。ちなみに、ISO(国際標準化機構)では、溶融流動指数(melt flow index/ melt index)については、メルトフローレート(Melt flow rate /MFR)という名称が一般的に用いられています。

*)最近の規格(ISO 1133、JIS K 7210-1999)では、従来の一定時間ごとの流出質量(g/10分)の他に一定時間ごとの流出容量(cm3/10分)の2方法が定められています。前者をメルトマスフローレイト(MFR g/10分)、後者をメルトボリュームフローレイト(MVR cm3/10分)と呼ぶようになっています。

溶融粘度が変化することで樹脂の流動性が変化し、加工性に影響を与えます。

・粘度が低いほど流動しやすく、粘度が増加すると流動しにくくなる
・粘度の増加は分子量に大きく影響する

これらは、分子量が大きくなるほど分子間の絡み合いが多くなることが原因です。

また、樹脂の成形加工では、温度と圧力を上げて流動性をよくして生産性を上げていますが、あまり上げすぎると溶融破壊(melt fracture)を起こすので注意しなければなりません。

熱可塑性樹脂の成形加工は、熱で溶融状態として種々の形状を形作るので、溶融時の挙動を把握しておくことが必要です。

(2) 固体物性

熱可塑性樹脂の固体物性は、以下の3つの要素と関係があります。

A) 分子量と分子量分布
B) 結晶性
C) 分子構造

ひとつずつ、どのような関係性があるかを見ていきましょう。

A) 分子量と分子量分布

ポリマーの場合、分子量は重合度の異なる種類が混在しているので平均分子量で示されます。
この平均分子量と分子量分布は、樹脂の各種物性に影響し、固体物性としての物理的性質の中で
・引張伸び
・衝撃強さ
・曲げ弾性率
・クラッキング耐性
などが影響を受けます。

また、分子量が大きくなるほど樹脂の物理的性質は向上することがほとんどですが、前述のように流動性(加工性)は低下します。そのため、これらの兼ね合いを考慮し、実用上の成形に適した範囲内で、目的に応じた樹脂グレードを選択することになります。

B) 結晶性

熱可塑性樹脂には
・結晶性樹脂:分子が規則正しく配列して結晶性を示す
・非晶性樹脂:分子が絡まりあったりして無秩序に存在
の2種類があります。
結晶性樹脂と言われるものでも全てが結晶化することは難しく、結晶領域と非晶領域が混在している場合、両者の割合は、結晶化度として結晶部分の割合で示されます。

この結晶化の度合いは溶融物を固化するときの冷却速度によっても異なり、成形品の固体物性である
・引張強度
・引張伸度
・衝撃強度
・成形収縮率
・比重
・透明性
に影響を及ぼします。

例)フィルム成形
・急冷→結晶の生長を抑制して透明性が上がる
・徐冷→透明性は低下
※一般的に、結晶性樹脂は非透明、非晶性樹脂は透明

また、一般的に分子構造が簡単で規則正しいものは結晶化しやすいとされますが、同じ分子構造でも結晶化しやすいものと、そうでないものがあります。

例)ポリプロピレンの場合
・アイソタクチックやシンジオタクチック→結晶化
・アタクチック(メチル基が不規則に結合)→結晶化しない

ポリエチレンやポリプロピレンでは、添加物(結晶化核剤)によって、結晶化を制御して様々な特性の材料が作られています。

C) 分子構造

樹脂の主鎖に酸素原子や窒素原子、塩素原子などの炭素以外の元素を導入すれば、特徴的な固体物性のものが得られます。

例1)ビニル基+塩素原子ポリ塩化ビニル:機械的特性、耐薬品性、耐候性、難燃性に優れる
例2)ビニル基+ベンゼン環ポリスチレン:硬くて透明、電気絶縁性がよく、成形性に優れる

<図1>ポリ塩化ビニル(左)とポリスチレン(右)の化学構造
<図1>ポリ塩化ビニル(左)とポリスチレン(右)の化学構造

ポリスチレンは硬い反面、耐衝撃性に劣る欠点があるため、合成ゴムを添加して改良をした耐衝撃性ポリスチレン(HIPS/High Impact polystylene)が開発されました。また、化学的特性向上(耐薬品性付与)のためにアクリロニトリルを共重合したSAN樹脂(AS樹脂)、HIPSとSANの長所を兼ね備えるABS樹脂も登場しました。

<図2>SAN(左)とABS(右)の化学構造
<図2>SAN(左)とABS(右)の化学構造

このように、分子構造を利用した合成樹脂の物性特性の改良が、数多く行われています。

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