熱可塑性樹脂の基礎知識~特徴と物性と成形法、用途などを一覧で紹介

この記事では熱可塑性樹脂についてご紹介します。熱可塑性樹脂の特徴や構造と物性、それらに基づいた成形法はどのようなものでしょうか? さらに、代表的な熱可塑性樹脂については、特徴やメーカーなどを一覧にまとめています。

以下の記事でも樹脂材料にについてご紹介していますので、あわせてご参考ください。

熱可塑性樹脂の特徴とは?

<写真1>熱可塑性樹脂の使用例 ペットボトル
<写真1>熱可塑性樹脂の使用例 ペットボトル

熱可塑性樹脂(Thermoplastics / Thermoplastic resin)は名前が示すように、熱を用いた可逆的な変形が可能な性質があります。その特徴を活かし、量産性が高い成形加工プロセスが開発され、幅広い分野の製品原料として用いられています。

(1) 所定の温度範囲における加熱や冷却によって成形できる

熱可塑性樹脂の成形法は、この特徴に基づいているため、使用する樹脂の
・流動性に影響する融点や溶融粘度
・メルトフローレート(MFR)等の物性
・成形品に影響する収縮性や熱安定性等
といった物性を知っておくことが必要となります。

(2) 他の材料に比べて軽量である

熱可塑性樹脂の比重(g/cm3)の目安は1と、ほかの材料(鉄:7~8、非鉄金属:2~9)に比べて小さいことが分かります。

熱可塑性樹脂を見分ける2つのポイント(溶融物性・固体物性)

熱可塑性樹脂には簡単な分子構造のものから複雑なものまで幅広く存在します。各樹脂には共通する性質や特異的な性質を示すものがありますが、その多くはポリマーの分子構造に基因しています。以下に溶融物性と固体物性に分けて見てみましょう。どちらの物性も熱可塑性樹脂の成形加工のために必要な情報となります。

(1) 溶融物性

熱可塑性樹脂の溶融時にポリマーの分子構造に影響を与えるファクター(要因)には以下のものがあります。

・溶融する温度

・溶融後の溶融粘度の温度依存性

・加熱による熱分解の挙動

樹脂の場合、分子量や分子量分布、共重合物比等の変動によって明確な融点が得られにくいため、実用上は溶融物性を「溶融流動指数(melt flow index/ melt index)」や「溶融粘度」等で評価されています。ちなみに、ISO(国際標準化機構)では、溶融流動指数(melt flow index/ melt index)については、メルトフローレート(Melt flow rate /MFR)という名称が一般的に用いられています。

*)最近の規格(ISO 1133、JIS K 7210-1999)では、従来の一定時間ごとの流出質量(g/10分)の他に一定時間ごとの流出容量(cm3/10分)の2方法が定められています。前者をメルトマスフローレイト(MFR g/10分)、後者をメルトボリュームフローレイト(MVR cm3/10分)と呼ぶようになっています。

溶融粘度が変化することで樹脂の流動性が変化し、加工性に影響を与えます。

・粘度が低いほど流動しやすく、粘度が増加すると流動しにくくなる

・粘度の増加は分子量に大きく影響する

これらは、分子量が大きくなるほど分子間の絡み合いが多くなることが原因です。

また、樹脂の成形加工では、温度と圧力を上げて流動性をよくして生産性を上げていますが、あまり上げすぎると溶融破壊(melt fracture)を起こすので注意しなければなりません。

熱可塑性樹脂の成形加工は、熱で溶融状態として種々の形状を形作るので、溶融時の挙動を把握しておくことが必要です。

(2) 固体物性

熱可塑性樹脂の固体物性は、以下の3つの要素と関係があります。

A) 分子量と分子量分布

B) 結晶性

C) 分子構造

ひとつずつ、どのような関係性があるかを見ていきましょう。

A) 分子量と分子量分布

ポリマーの場合、分子量は重合度の異なる種類が混在しているので平均分子量で示されます。
この平均分子量と分子量分布は、樹脂の各種物性に影響し、固体物性としての物理的性質の中で
・引張伸び
・衝撃強さ
・曲げ弾性率
・クラッキング耐性
などが影響を受けます。

また、分子量が大きくなるほど樹脂の物理的性質は向上することがほとんどですが、前述のように流動性(加工性)は低下します。そのため、これらの兼ね合いを考慮し、実用上の成形に適した範囲内で、目的に応じた樹脂グレードを選択することになります。

B) 結晶性

熱可塑性樹脂には
・結晶性樹脂:分子が規則正しく配列して結晶性を示す
・非晶性樹脂:分子が絡まりあったりして無秩序に存在
の2種類があります。
結晶性樹脂と言われるものでも全てが結晶化することは難しく、結晶領域と非晶領域が混在している場合、両者の割合は、結晶化度として結晶部分の割合で示されます。

この結晶化の度合いは溶融物を固化するときの冷却速度によっても異なり、成形品の固体物性である
・引張強度
・引張伸度
・衝撃強度
・成形収縮率
・比重
・透明性
に影響を及ぼします。

例)フィルム成形
・急冷→結晶の生長を抑制して透明性が上がる
・徐冷→透明性は低下
※一般的に、結晶性樹脂は非透明、非晶性樹脂は透明

また、一般的に分子構造が簡単で規則正しいものは結晶化しやすいとされますが、同じ分子構造でも結晶化しやすいものと、そうでないものがあります。

例)ポリプロピレンの場合
・アイソタクチックやシンジオタクチック→結晶化
・アタクチック(メチル基が不規則に結合)→結晶化しない

ポリエチレンやポリプロピレンでは、添加物(結晶化核剤)によって、結晶化を制御して様々な特性の材料が作られています。

C) 分子構造

樹脂の主鎖に酸素原子や窒素原子、塩素原子などの炭素以外の元素を導入すれば、特徴的な固体物性のものが得られます。

例1)ビニル基+塩素原子ポリ塩化ビニル:機械的特性、耐薬品性、耐候性、難燃性に優れる
例2)ビニル基+ベンゼン環ポリスチレン:硬くて透明、電気絶縁性がよく、成形性に優れる

<図1>ポリ塩化ビニル(左)とポリスチレン(右)の化学構造
<図1>ポリ塩化ビニル(左)とポリスチレン(右)の化学構造

ポリスチレンは硬い反面、耐衝撃性に劣る欠点があるため、合成ゴムを添加して改良をした耐衝撃性ポリスチレン(HIPS/High Impact polystylene)が開発されました。また、化学的特性向上(耐薬品性付与)のためにアクリロニトリルを共重合したSAN樹脂(AS樹脂)、HIPSとSANの長所を兼ね備えるABS樹脂も登場しました。

<図2>SAN(左)とABS(右)の化学構造
<図2>SAN(左)とABS(右)の化学構造

このように、分子構造を利用した合成樹脂の物性特性の改良が、数多く行われています。

熱可塑性樹脂の成形法

可塑性樹脂の成形方法は大きく分けると次のようなものがあります。

A) 溶融物を流して形を作り、冷却固化して成形品とする方法

B) 樹脂シートを作り、これを軟化して成形品とする方法

C) 粒状の樹脂を使用して成形品とする方法

D) 金型の中で重合して成形品とする方法

具体的には<表1>に示すような成形法が用いられています。

<表1>:主な熱可塑性樹脂の成形法
成形方法概要
射出成形溶融物を成形機の細孔から金型中に流し込み冷却固化する
押出成形溶融物を成形機の押出口(ダイ)から押し出し、目的形状の成形品とする
注型成形
(キャスティング)
液状の成形材料を目的とする形状の型に流し込み、硬化させる
※熱硬化性樹脂でも用いられる
カレンダー成形樹脂を熱ロールで圧延して、フィルム、シート等を成形する
スラッシュ成形法ペースト状の樹脂を金型に注入し、外部から加熱して型に直接触れている部分のみをゲル化させる中空品の成形法
ブロー成形溶融物を成形機から押し出してパリソンを形成、これを目的形状の金型に移動して成形品とする。「中空成形」とも言われ、ボトル等の容器を形成する
真空成形樹脂シートを金型にセットして加熱軟化させて、シートと型の間にある空気を真空で引き、シートを型に密着させる
※同様の方法として、圧縮空気でシートを金型に押し付けて成形する圧空成形がある
粉末成形金型の中に樹脂粉末を入れて加熱し、溶融樹脂が付着した金型を再度加熱し均一に溶融して冷却固化する
発泡成形樹脂に空気その他のガスを細かく分散させた発泡成形品の成形法。押出発泡成形、注型発泡成形、等がある

代表的な熱可塑性樹脂の種類・性質について

代表的な熱可塑性樹脂の種類とその性質、更にそのメーカーを<表2>にまとめています。

<表2>:主な熱可塑性樹脂
名称記号主な特徴主なメーカー
ポリエチレンPE
  • ・低比重、低吸水性、耐薬品性、電気特性や耐寒性に優れる
  • ・低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状ポリエチレン(L-LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE/エンプラの一種)、変性ポリエチレン等がある
日本ポリエチレン、住友化学、東ソー、旭化成ケミカルズ、等
ポリプロピレンPP
  • ・PEに比べて低比重、耐熱性や機械的強度は優れるが、低温下での耐衝撃性に劣る
  • ・分子鎖のメチル基の配置に応じて、アイソタクチック、シンジオタクチツク、アタクチックの3種類の立体構造がある
  • ・PPの物性はこの立体規則性によるところが大きいので、アイソタクチックの割合(タクティシティ)が重要となる
日本ポリプロ、プライムポリマー、サンアロマー、住友化学、等
ポリスチレンPS
  • ・無色透明で屈折率が高い
  • ・低比重、耐熱性や電気絶縁性がよい
  • ・汎用のポリスチレンはGP-PS(General purpose PS)と呼ばれる。これは耐衝撃性に劣るので、ゴム成分を添加して改良したのが、HI-PS(High Impact PS)である
東洋スチレン、PSジャパ ン、D I C
AS樹脂SAN
  • ・PSとアクリロニトリルの共重合体
  • ・PSの特徴に加えて、-CN基の導入により強度特性、耐熱性、耐薬品性を有する
旭化成、デンカ、東レ、日本エイアンドエル、等
ABS樹脂ABS
  • ・アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)のから成る非晶性樹脂
  • ・物性は、3成分の比率等によって変化する
旭化成、デンカ、東レ、日本エイアンドエル、等
ポリ塩化ビニルPVC
  • ・可塑剤を加えると軟質製品となり、無添加あるいは少量では硬質製品となる
  • ・PVCは単独で用いられることは稀で、ほとんどが安定剤、可塑剤、顔料、充填剤などの補助材料と共に用いられる
  • ・熱可塑性樹脂の中でいち早く工業生産が行われた
大洋塩ビ、信越化学工業、カネカ、等
ポリ塩化ビニリデンPVDC
  • ・PVCよりも塩素原子が一つ多い
  • ・最大の特徴は、気体透過性が他の樹脂に比べて優れること。このため、ラップフィルムやコーティング材として用いられる
クレハ、旭化成、ユニチカ、三井化学東セロ、等
メタクリル樹脂PMMA
  • ・メタクリル酸エステルのポリマーの総称
  • ・一般的にメタクリル酸メチル(MMA)を主成分とする非晶性樹脂
  • ・透明性樹脂の中では最も透明度がよい
  • ・耐候性に優れ、硬度も大きい
三菱レイヨン、旭化成ケミカルズ、住友化学、等
ポリエチレンテレフタレートPET
  • ・耐熱性、耐薬品性、機械的性質、電気的性質に優れるので、繊維、フィルム、ボトルの分野で広く用いられる
  • ・加水分解性が欠点であり、他の樹脂との組合わせた改質材もある
  • ・同様のポリエステル樹脂として、PBTやPENもある
東洋紡績、ユニチカ、帝人、三井化学、等

まとめ

ここでは熱可塑性樹脂の特徴や構造・物性、それらに基づいた成形法、そして代表的なものの種類や特徴についてご紹介しました。他の記事では、プラスチック材料の物性測定についても分かりやすくまとめていますので、そちらもあわせてご参考ください。

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