プラスチックの特徴を示す「6つの性質」と、その試験方法

この記事では、プラスチック(合成樹脂)を成形する場合、または、製品として利用する場合に重要となる性質とそれらの試験方法について解説します。プラスチックの試験方法には様々な方法がありますが、ここでは熱硬化性プラスチック試験法(JIS K6911)や繊維強化プラスチック試験法(JIS K 7051)などの発展的な試験方法については触れず、基本的な試験方法を示していきます。

6つの性質、様々な試験法

(1) 機械的性質に関する試験

プラスチックは機械部品等をはじめとして広範囲に使用されています。材料として使用する適正を判断する際には、引張りや圧力等の外力に対してどのような特性があるか、機械的性質を知っておく必要があります。主な機械的性質の試験方法について<表1>に整理しました。

<表1>主な機械的性質試験方法
名称 概要 JIS規格
引張試験 引張強さ、引張伸び、弾性率を求める。
引張力(荷重)を加えて、その変形量を求め“荷重-伸び曲線”、“応力-ひずみ曲線”として表します。
JIS K 7161
圧縮試験 圧縮強さ、圧縮降伏ひずみ、圧縮耐力を求めます。
圧縮力(荷重)を加えて、その変形量を求め“圧縮応力-ひずみ曲線”として表します。
JIS K 7208
曲げ試験 曲げ強度、曲げ応力とひずみの関係を求めます。
試験片を支持代に置き、中心から荷重を加えて求める。
JIS K 7203
せん断試験 せん断強さを求める。
打抜きせん断試験(JIS K 7214)、FRP横せん断試験(JIS K 7058)、FRP層間せん断試験(JIS K 7057)等がある。
JIS K 7214
JIS K 7058
JIS K 7057 等
引裂試験 フィルム、シート等を引っ張り、その最大荷重を求めて引裂強さを求める。 JIS K 7128 等
片持ちばりによるこわさ試験 試験片の一端を固定し、試験片に曲げ、変形を与えたときの角度と荷重から曲げこわさを求める。 JIS K 7106
クリープ試験 試験片に荷重を加えて、その変化量を時間の経過とともに測定する。引張クリープ試験(JIS K 7115)、曲げクリープ試験(JIS K 7116)、応力緩和試験(JIS K 6263)等がある。 JIS K 7115
JIS K 7116
JIS K 6263 等
疲労試験 試験片に荷重を繰り返し加えて、破壊に至る回数とその繰り返し応力からS-N曲線を作成し、その疲労破壊を求める。引張疲労試験(JIS K 7118)、曲げ疲労試験(JIS K 7119)等がある。 JIS K 7118
JIS K 7119
衝撃試験 試験片に衝撃荷重を加えて、その脆性や延性を求める。
衝撃曲げ試験としてシャルピー衝撃試験(JIS K 7111)、アイゾット衝撃試験(JIS K 7110)、鋼球を落下して測定する落球衝撃試験(JIS K 7211)、等がある。
JIS K 7111
JIS K 7110
JIS K 7211 等
硬さ試験 硬さ試験は、一種の非破壊試験である。測定する試験片が小さくても、局部的な測定ができる。(1)押込み硬さ、(2)引っかき硬さ、(3)反発硬さ、の3つに大きく分類される。
(1)押込み硬さ 1)ロックウェル硬さ(JIS K 7202)
試験片に鋼球で荷重を加えた後、基準荷重に戻したときの窪みの深さの差から求める。
2)デュロメータ(JIS K 7215)
試験片に圧子を押し付け、その押し込み深さから硬さを求める。
*その他に、ピッカース硬さ、ヌープ硬さ、バーコル硬さがある。
JIS K 7202
JIS K 7215 等
(2)引っかき硬さ
(鉛筆法)
試験片に鉛筆の芯を押付けて動かし、傷付きの有無により求める。主に塗膜を対象としているが、プラスチックの表面の硬さの評価方法としても用いられる。 JIS K 5600
(3)反発硬さ
(ショア硬さ)
試験片にダイヤモンドハンマーを一定の高さから落下させ、その跳ね返りの高さから求める(デュロメータ試験機から求めた硬さもショア硬さと呼ぶことがあるので混同に注意)。 JIS Z 2246
摩擦係数試験 試験片の摩擦係数を測定する。静摩擦係数測定と動摩擦係数測定試験の2種類がある。 JIS K 7125
磨耗試験 試験片のトライボロジー・摺動特性を評価する滑り摩耗(JIS K 7218)と、耐摩耗性を評価する摩耗試験(JIS K 7204)の2つがある。 JIS K 7218
JIS K 7204
動的粘弾性試験 試験片に変化する歪み(応力)を加えて、それによって発生する応力や歪みを測定し、その力学的な性質を求める。 JIS K 7244

(2) 熱的性質に関する試験

プラスチックを成形する場合に必要な熱的性質の情報としては、融点、ガラス点移転、熱伝導、比熱、熱膨張や収縮があります。また、製品として使用する場合には、使用限界温度としての熱変形温度、寒地での破壊に関係する脆化温度、構造材料としての熱伝導度、加熱冷却が繰り返される用途での熱膨張や熱収縮等の熱的性質を知っておく必要があります。主な熱的性質試験方法について<表2>に整理しました。

<表2>主な熱的性質試験方法
名称 概要 JIS規格
線膨脹率試験
TMA(熱機械分析)
標準試料(石英ガラス等)と試験片を一定速度で昇温したときの熱膨張量の差から、その熱膨張量を測定する。この試験で、ガラス転移温度、軟化温度等が調べられる。 JIS K 7197
荷重たわみ温度試験(HDT試験) 試験片の両端を支持し、その中央部に一定荷重を加えた状態で油槽に浸漬する。油槽を定速昇温して、変形量が規定量に達した時の温度(荷重たわみ温度)を求める。 JIS K 7191
ビカット軟化温度試験(VST試験) 試験片に細い円柱状圧子を載せて荷重を掛けた状態で定速昇温をして、試験片に圧子が1mm侵入した時点の温度(ビカット軟化温度)を求める。 JIS K 7206
脆化温度試験 耐寒性を評価する試験方法。一定温度(-100℃~常温)の試験槽に入れた片持ばりの試験片に所定の打撃を与えて、試験片の50%が破壊する温度(脆化温度)を求める。 JIS K 7216
メルトフローレイト
Melt Flow Rate (MFR)
溶融プラスチックの流動性を評価する試験方法。
試験片を加熱流動化し、荷重をかけてシリンダーから押し出された量から求める。
従来はメルトフローレイトと呼ばれたが、新規格ではメルトマスフローレイト(MFR)、メルトボリュームフローレイト(MVR)を用いている。
JIS K 7210
スパイラルフロー 一定の条件のもとで射出成形を行ったときの樹脂流動長を測定します。
・樹脂流動長の成形温度依存性,射出速度依存性,射出圧力依存性の計測できる
酸素指数法
(Oxygen Index)
試験片に点火して、その燃焼時間が3分以上継続するか、又は着火後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な最低酸素濃度を求める。 JIS K 7201

(3) 光学的性質に関する試験

プラスチックを使用する際、光学的性質が重要となるのは、透明性が求められる樹脂の場合です。また光学的試験の特徴としては「非破壊試験」であるという特徴があります。主な光学的性質試験方法について<表3>に整理しました。

<表3>主な光学的性質試験方法
名称 概要 JIS規格
全光線透過率及び
全光線反射率
透明、半透明及び不透明なプラスチックの、可視領域における全光線透過率及び全光線反射率を求める。 JIS K 7375
JIS K 7361-1
鏡面光沢度法 光沢は主観的であり単一の方法で評価することは難しいが、鏡面光沢度法はプラスチック製品で広く用いられる。
光沢を鏡面反射の光強度によって表すもので、入射光に対する鏡面反射率(正反射率)を求める。
JIS Z 8741
JIS K 5600
屈折率 成形品やシート・フィルム・液体等に用いられる屈折計法(アッベ屈折計)及び粉体や粒状材料に用いられる顕微鏡法がある。 JIS K 7375

(4) 電気的性質に関する試験

電気的試験は、材料自体の電気的物性を評価する試験です。プラスチックの電気的性質の種類について基本的な性能について解説し、主な電気的性質試験方法について<表4>に整理しました。

<表4>主な電気的性質試験方法
名称 概要 JIS規格
電気絶縁性 電気絶縁性を示すのに体積固有抵抗と表面固有抵抗の2つの数値(表現法)が用いられる。体積固有抵抗は材料の厚さの方向の絶縁性、表面固有抵抗は材料の表面方向の絶縁性を示す。 熱硬化性プラスチック一般試験方法
(JIS K 6911)参照
絶縁破壊電圧 試験片に電圧を加えて徐々に上げていき、試験片の一部が溶けて穴が空いたり、炭化したりして通電した時の電圧である絶縁破壊電圧を測定する。
誘電性 試験片に電圧を加えて誘電率と誘電正接を測定する。
材料内部に発生する熱エネルギーの発生量は誘電率と各材料固有の誘電正接tanδの積に比例する。
耐アーク性 試験片表面でアーク(コロナ放電)を発生させると、電動路を形成(アークトラッキング)した状態でアークは消滅する。この消滅するまでの時間を耐アーク性という。

プラスチックは電気的には絶縁体であり、電線の被覆材料や電気・電子機器の筐体などに用いられています。一方で、絶縁体であるがために静電気が発生し易いという欠点もあります。また、絶縁体は、それにかかる電圧がある限度以上になった時電気的に破壊され、絶縁性を失い電流を流すようになります。この現象は絶縁破壊といい、事故の原因となるため絶縁体破壊電圧を調査する必要があります。絶縁破壊電圧の高い材料であってもその表面にアーク(コロナ放電)が起きた場合、劣化が促進されることがあるため、高電圧下の絶縁体の選定には耐アーク性は重要な特性となります。

絶縁材料としての特性に誘電特性(誘電率、誘電正接)がありますが、これは材料に電圧を加えたときに起こる各種分極が関係します。誘電率が低いほど、材料中の静電エネルギー量が小さく、絶縁性に優れていることを示しています。また、分極の影響により電気エネルギーの一部が熱エネルギーとして損失される誘電損失が起こります。この誘電損失の度合いを示すのが誘電正接(tanδ)であり、誘電正接が大きい材料ほど誘電損失は大きくなります。高周波を扱う電気・電子部品では重要な特性であり、誘電損失による成形品の温度上昇は、被膜の絶縁性の低下や内蔵している電子回路の不具合などを引き起こす原因となります。

(5) 耐劣化性に関する試験

プラスチックの実用的な見地から耐久性を試験するのが、耐劣化性に関する試験です。そのため、試験が長時間に及ぶ試験項目が多くなっています。また、再現性が高くなく、時には逆転するような結果となることもあるので注意が必要となります。主な耐劣化性試験方法について<表5>に整理しました。

<表5>主な耐劣化性試験方法
名称 概要 JIS規格
屋外暴露試験 試験片を太陽光に直接暴露、又は窓ガラス越し暴露によって試験する。暴露後、試験片の光学的、機械的又は関心のある特性の変化を測定する。 JIS K 7219
促進耐候性試験 屋外暴露試験では長時間を要するので人工光源を用いて試験が行われることが多い。人工光源としては、キセノンアークランプ、 サンシャインカーボンアーク等がある。 JIS K 7350
熱老化性試験
(オーブン法)
強制通風循環式オーブンを用いて試験片を空気中で加熱して劣化を促進し,その熱安定性を試験する方法。 JIS K 7212
塩水噴霧試験
(中性塩水噴霧試験)
塩害腐食の評価に広く用いられる腐食促進方法。 プラスチックにメッキした場合や金属に樹脂をコートした場合に採用される試験方法。試験片に霧状塩水を噴霧する。 JIS Z 2371

(6) 物理化学的性質に関する試験

物理化学的試験は、材料自体の物理的・化学的物性を評価する試験です。主な物理化学的性質試験方法について<表6>に整理しました。

<表6>主な物理化学的性質試験方法
名称 概要 JIS規格
吸水率測定 試験片を、液に浸す、または湿潤空気にさらす場合に吸収した水分量を測定する。 JIS K 7209
水分含有率測定 粒状及び最終成形品中の水分含有率を測定する。 JIS K 7251
耐薬品性試験 試験片を特定の液体に一定条件で浸漬した後に各種物性の測定を行う。 JIS K 7114
水蒸気透過度測定 フィルムやシート等の水蒸気透過性を感湿センサ法、赤外線センサ法、及びガスクロマトグラフ法で測定する。
この他にも、カップ法による方法(JIS K 0208)等もある。
JIS K 7129
ガス透過度試験 フィルムやシート等のガス透過性を測定する方法であり、差圧法と等圧法がある。 JIS K 7126
比重と密度の測定 非発泡プラスチックの密度と比重を測定する。
水中置換法、ピクノメーター法、浮沈法、密度こうばい管法等がある。発泡プラスチック(JIS K 7222)もある。
JIS K 7112

まとめ

プラスチックは自動車部品から家電などの日用品まで、あらゆる製品に活用されています。この記事では、プラスチックを成形する場合、また、製品として利用する場合に重要となる6つの性質とそれらの試験方法について解説してきました。

性能不足は事故や不良品の原因となるため、プラスチックの性質とその試験方法について理解することは重要です。成形する場面と製品として利用する場面では重要となる性質が異なる場合もあるので、注意が必要となります。

また逆に、過剰性能はコスト高に繋がってしまうため、性能面とコスト面のバランスのとれたプラスチックを選定することが重要となります。2018年の初頭から、家電や自動車の部材に使う強度や加工性の高い機能性樹脂の値上げ表明が広がっていることもありますので、製造コストの上昇を抑えるためにも、現在使用しているプラスチックの仕様を改めて見直してみてはいかがでしょうか。

以下の記事では、プラスチック加工の際に発生し得るトラブルと、その対策について解説しています。こちらも合わせてご参照ください。

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