品質、コスト、納期…あなたは何を重視する?試作の条件に応じた金属加工法選びのキホン

INTERVIEW
株式会社仙北谷
代表取締役社長
仙北谷 英貴
インタビュイーの写真

既存モデルの機能改善に向け、仕様が固まりいざ試作へ!
材料は今までと同じ金属材料を扱うことが決定しているが、金属加工方法はよくわからないなぁ。とりあえず一番加工品が早く仕上がる加工方法は何だろう・・・・?

駆け出しの製品開発技術者にとって、試作時の加工方法を知っていた方がいいことはわかっているもののそこまで手が回らない方も多いのではないでしょうか。製品を設計するにあたり、製品開発技術者には生産技術の方や試作メーカーからのアドバイスを受け、設計の無駄をなくす柔軟さが求められます。とはいえ、加工方法の種類は幅広く、材料の種類・製品形状・個数などによって適切な加工方法も変わります。また、作り方によって強度などの物性が異なる場合もあり、適切な加工方法の選択には専門的な知見と経験が重要となります。

この記事では特に、金属材料を用いた加工選びの際に、まず押さえておきたいポイントを試作のプロの方に解説していただきました。お聞きしたのは株式会社仙北谷代表取締役社長仙北谷英貴氏です。(株)仙北谷は1953年にプレス加工会社としてスタートし、現在では切削・放電加工・3Dプリンター加工を用いて、試作・単品加工、治工具や金型の設計製作を中心に事業を展開している会社です。
要望があればお客様へのコンサルティングにも対応しており、ホームページには、仙北谷社長の経歴を含め、これまでの実績や加工技術に関する豊富な解説と事例が掲載されています。

まずは押さえておきたい!試作でよく用いる金属加工方法4種!

ここでは、試作品を製作するにあたり、まず押さえておきたい金属加工方法について(株)仙北谷さんで対応されている以下4種の金属加工技術について解説していただきました。
(1)切削(旋盤)
(2)切削(マシニング)
(3)鋳造
(4)積層造形(3Dプリンター)

(1) 切削(旋盤)

刃物によって金属を削り、工作物の不要な部分を除去することで造形する加工を「切削加工」と呼びます。その中でも、材料・製品側を回転し工具を動かして切削する方法を「旋削」と呼び、旋削を行う代表的な機械が旋盤です。旋盤を使って加工することを「旋盤加工」といいます。

旋盤加工では金属材料を回転させながら、工具(バイト)をあてて、削っていきます。
工具の種類と材料を送る方向の組み合わせにより、外丸削り、面削り、穴あけ、中ぐり、溝切り、ねじ切りなど様々な加工を行います。

「切削加工を大きく分類すると旋盤加工とマシニング加工がありますが、部品点数で比較すると旋盤加工が用いられることが多いと思います。その理由は、材料を回転させながら削り出した方が高速で(つまり安く)そして高精度に製作できるからです。」

「特に、丸棒を削り出しの素材として、丸形状の試作部品を製作するケースはとても多いと思います。丸形状といえば、カメラや顕微鏡部品、また、自動車部品の中でも、ベアリングや軸、タイヤ周りの部品等は丸形状が多いですね。また、旋盤加工のコストは比較的安く、対応可能な加工業者も多いですね。」

(2)切削(マシニング)

マシニングセンタと呼ばれる工作機械で、プログラミングに基づいて自動で切削工具を制御し、材料を削って製品にします。よく「総削り」と呼ばれる工法です。製品側を固定して工具が回転するため、1回の段取りでポケット加工や、穴あけが可能です。3次元曲面の加工やインペラー加工などの複雑な加工が可能なのもマシニングならではの強みになっています。<写真1:プロジェクター部品>

切削加工を用いたプロジェクター部品のサンプル
<写真1>プロジェクター部品のサンプル

「旋盤加工が丸形状の加工が得意な一方で、マシニング加工は丸くないもの、例えば箱型や複雑な3次元形状のものが得意であり、ケース類やフィン形状などの異形状部品を加工する際に用いられます。旋盤に比べて加工の自由度は高いですが、加工時間が長くなることが多く、コストは高めになります。」

以下の記事では、切削加工全般について、種類や特徴等の基礎知識をまとめています。こちらも合わせてご参考下さい。

(3)鋳造

鋳造とは、型(鋳型)に融かした金属(溶湯)を流し込み(鋳込み)、冷やすことで製品(鋳物)を製作する加工方法です。
鋳造方法には、使用する模型、鋳型及び鋳込方法などにより多くの種類があり、それらの組み合わせにより数多くのプロセスが開発されています。
鋳型から大別すると、毎回鋳型をこわして製品を取り出す砂型と、金型のように耐久性のある鋳型を用いるものがあります。
「砂型鋳造」は、その名の通り鋳型を砂でつくります。
最初に製品の形状をした模型(原型)を作ります。以前は木で作っていたので木型と呼ばれますが、最近ではケミカルウッドと呼ばれるプラスチック系材料もよく使われます。木型を木枠にセットし、上半分に砂を充填して固めた後に離型して上型とします。同様に下型を作り、木型を取り出して上型と下型を合わせることで鋳砂型が完成します。高温で溶融した金属を砂型へ鋳込み、冷却・凝固させると木型と同じ形状の金属製品が出来上がります。これが砂型鋳造です。砂型自体を崩すことで製品を取り出すため、製品の数だけ鋳砂型が必要になります。砂型は金型より安く、早く製作できるので、小ロット生産や、量産前の試作に適しています。
金属金型で成形する場合に比べ、溶湯凝固速度が遅く、耐摩耗性などの機械特性が劣りますが、設計の自由度が高いという特徴があります。精度はあまりよくないので、精度が必要な部分は切削での二次加工が必要になります。

「金型鋳造」は、工業的に広く用いられる方法ですが、冷却速度が速く、また緻密で寸法精度の高い鋳物を製作することができます。
なお、金型鋳造のうち、「ダイカスト」と呼ばれる製法では、機械によって溶融金属を圧入し、短時間で冷却・凝固させます。薄肉で高い精度の鋳物を短時間に大量に生産することができますが、型の製作に時間と費用がかかること(砂型の5倍以上)がネックになります。砂型鋳造よりは高精度ですが、切削加工には及びませんので、部品の中の重要な部分は切削加工して仕上げます。

「鋳造では型を作る必要があるため、やや中量・量産向きの加工方法となります。目安としては10個以上の試作部品を作る必要がある場合は鋳造を用いた方が安くなりますが、それ以下の場合は切削加工で製作した方がコストは安くなります。また、試作部品の大きさに応じても切削/鋳造のコスト分岐点も変わります。大きい製品や深い形状の製品は鋳造が向いており、小型精密あるいは平板状の製品は切削が向いています。」
「試作品を作っている最中に設計変更が発生した場合、鋳造では型を作るため、最初から作り直しになります。切削加工では丸棒やブロック材からスタートしますので、柔軟に対応できる場合が多くなります。一方、同じ形状を何度も作る可能性がある試作部品については鋳造の方がコスト・工数ともに削減できます。」

以下の記事では、フルモールド鋳造法という、鋳型内の模型と溶湯を置換しながら鋳物を製造する鋳造方法について紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。

(4)積層造形(3Dプリンター)

材料を一層ずつ積み上げながら、所定の形状を作り上げる加工方法を「積層造形」といいます。最近では、Additive manufacturing, AM(付加製造)と呼びます。これを可能にするのが、近年開発が盛んな3Dプリンターです。原料の多くは樹脂ですが、金属材料を用いた3Dプリンターも活用され始めています。

「金属3Dプリンターが得意とするのは、中空あるいは内部に冷却管があるような、切削で作れない形状です。また、高精度な造形を期待されている方もいらっしゃいますが、原理的に切削並みの精度は出せません。3Dプリンター技術はまだまだ発展途上ですので、これから応用が広がってくる技術だと思います。」

(株)仙北谷では、金属3Dプリンターを用いた試作への相談にもご対応されています。
金属3Dプリンターを用いた試作を検討されている方は、ぜひ一度ご相談してみてもよいかもしれません。

また、金属3Dプリンターについては、他の記事でも詳細に解説していますので、そちらも合わせてご参考ください。

上記4種の金属加工に加え、他にも押さえておきたい加工方法はいくつもあります。以下の記事で金属加工全般の基本をまとめていますので、そちらも合わせてご参考下さい。

Q(品質)、C(コスト)、D(納期)試作フェーズで重視すべきはどれ?

ここまで、4つの加工方法について見てきました。それでは次に、具体的な試作サンプルのケースを元に、Q(品質)、C(コスト)D(納期)の観点からどの加工方法が適切か解説しましょう。

ケース1:設計変更の可能性がある試作部品を2個試作したい。

「納期勝負の少量試作では切削加工が良いでしょう。形状が丸形なら旋盤、複雑な形状ならマシニングで、1個から作れます。」

「弊社では、納期を最優先して加工するため、大きめの材料からスタートする工法がよく用いられます。大きな材料から小さな試作部品を削り出すことで変形を最小限に抑えてすばやく加工することができます。もし、材料の歩留まりを懸念し、完成品サイズギリギリの材料から製作した場合、バイスの固定方法にも注意を払い慎重に加工しなければ、試作部品に変形が発生する恐れが生じます。当然、納期がかかります。弊社では試作部品の製作の場合はとにかくスピードを重視しているため、最も早く、品質が良いものを加工できる方法を選択します。」

また、切削加工による試作部品の物性変化については、以下のように述べられています。

「通常、切削で使用する材料は圧延材や押出材で、内部に欠陥がなく物性はほぼ均質です。この材料を刃物で削りとるだけなので、強度や物性に変化は起きにくく、加工方法の中では、最も問題が生じにくい加工です。但し、量産製品の物性とは異なることもあるので、注意が必要です。」

ということで、少量試作で特に納期を重視する場合は、切削加工を試してみましょう。試作加工メーカーさんによっては、加工しやすい形状の提案をしてくれる会社もありますので、設計段階で相談すれば有益です。

ケース2:量産検討前の最終製品への組付けテストに向け100個試作

複数回の試作と部品単体テスト、ユニット組付テストを経て、いよいよ最終製品への組付テスト。量産を控えたフェーズですので、できるだけ量産工法に近い作り方で製作した試作品を大量に作る必要があります。

「大量に試作品を製作する場合は、鋳造がぴったりです。予算と納期、求められる精度や試験のスケジュールに合わせて加工方法は「砂型鋳造」または「ダイカスト」などの選択肢があります。上述の通り、試作個数が多い場合、切削加工は材料の歩留まりが悪く、一つ一つ削り出す時間も掛かるため、コスト・スピードともに見合わなくなります。」

「両手サイズの製品の場合、砂型鋳造では、型の製作はおよそ2~3週間、数十万円程度を要し、鋳造品は1日に10~20個程度の生産能力です。」

「上記と同じ製品の場合、ダイカストでは型の製作におよそ3か月、値段も数百万円程度になりますが、製品は1日に100~数百個ほど製作でき、1万個以上の生産が可能です。試作品の物性も量産品とほぼ同等のものをつくることができます。また、型を一度作ってしまえば、追加で多数の試作部品が必要になった場合も低コストで対応できます。」

と、大量の試作部品が必要な場合には鋳造がベターとのこと。但し、鋳造を用いる際には以下の点にも注意すべきだともおっしゃられています。

「鋳造の場合は、空気を巻き込んで気泡ができてしまう「巣(空洞欠陥)」の問題は特に重要です<写真2:巣(空洞欠陥)>。砂型、ダイカストともに起きやすい事象であり対策をすることはできますが、試作部品に肉眼で認識できる程度の大きさの巣が発生した場合は、気密が漏れたり強度が低下したりするため注意が必要となります。」

ダイカスト製品に生じやすい巣(空洞欠陥)
<写真2:巣(空洞欠陥)>

以上、2つのケースを元に、おすすめの加工方法をご紹介頂きました。
生産性の観点では、<表1>のように整理できます。

<表1>型製作、1日当たりの生産個数の目安(加工方法別)
加工方法 型製作 1日あたりの生産個数
鋳造 ダイカスト 約3ヵ月 100個
砂型 約2~3週間 10個
切削 なし 1個

まとめ

ここでは、切削加工、鋳造、3Dプリンター加工の概要と、数量・納期スピードとコストの観点からどのような加工がおすすめかお話頂きました。スピーディな試作を行うためにも、適切な加工方法を見極めて選べると良いですね。
また、今回ご協力いただいた株式会社仙北谷さんでは、アルミダイカスト部品の試作を最も得意とし、精密切削加工から、金属3Dプリンター加工まで、幅広く対応されています。
さらに、仙北谷さんご自身は、大学で材料工学をご研究されており、工学博士まで取得された材料の専門家でもあります。
その知見も活かし、(株)仙北谷では金属材料を中心に多様な材料の加工を行っています。試作で何かお困りの際は、一度ご相談してみてはいかがでしょうか。

株式会社仙北谷
要望があればお客様へのコンサルティングにも対応。仙北谷は、切削・放電加工・3Dプリンター加工を用いて、試作・単品加工、治工具や金型の設計製作を中心に事業を展開している会社です。

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