プロに聞く!鍛造を用いた試作加工時に伝えておきたいこと

INTERVIEW
株式会社中野鍛造所
生産技術部 営業課長
徳田 勝也
インタビュイーの写真

この記事では鍛造のプロのお話を紹介します。(株)中野鍛造所 生産技術部 営業課長 徳田勝也氏です。中野鍛造所は昭和38年の創業で、本社は東大阪市に、鍛造工場は兵庫県豊岡市にあります。東大阪市では切削加工も扱っています。熱間型鍛造を中心に事業を展開しており、金型設計・製作から鍛造、さらには切削までの全工程を社内で行なっています。
コンサルテーションにも力を注いでおり、そのホームページには、鍛造の基礎についての大変わかりやすい解説と豊富な事例が掲載されています。また、徳田氏による「鍛造学」という軽妙かつ役立つブログが連載中です。さらに、英語版の他、ドイツ語版まであり、高品位・高精度の鍛造加工を実現するエキスパートして、日本のみならず世界の先端企業と結びついていることが感じられます。

非鉄金属の鍛造品の主な特性・用途

熱間型鍛造は冷間型鍛造に比べ、形状の自由度は高いが寸法精度が落ちるといわれていますが、「黄銅材であれば、弊社独自のバリ無し鍛造技術を使えば、複雑な形状を冷間鍛造並みの精度でつくることができます。」と徳田氏はきっぱり言います。
黄銅は銅と亜鉛の合金で真鍮ともよばれ、伸び(展延性)がよく、600度~800度に加熱すれば、複雑な形状のものを容易に型鍛造できます。また、切削加工性に優れ、メッキやはんだ付けが容易です。<写真1>

さらに、黄銅は水に強くて錆びにくく、電気伝導性、熱伝導性も高いという特徴をもっています。そのため、水や油の流路のバルブや継手、蛇口の部品、コネクターや電磁弁などの電気部品、エアコンや熱交換器の部品が熱間鍛造でつくられています。「黄銅には銅イオンによる抗菌作用があるので、ビールサーバーの吐出ノズルおよびディスペンサーヘッドもつくっています。<写真2><写真3>ビールは糖度が高く、菌の繁殖が速いので、黄銅は最適の素材です。」と徳田氏。
銅も熱伝導性のよいのはもちろんのこと、電気伝導性は銀に次いで高く、抗菌性もあり、耐食性に富んでいます。

強い磁石のそばでも磁化しない非磁性体でもあります。展延性があり曲げ加工や絞り加工が容易で、熱間鍛造性も良いのですが、黄銅に比べると変形抵抗が大きくなります。
また、黄銅よりも硬度は低く、柔らかい金属です。強電子用端子金具、ヒートシンク、変圧器用部品などが熱間鍛造でつくられています。
アルミニウムは軽くて強い材料です。電気伝導性、熱伝導性もよく、非磁性で、耐食性も高く、低温下でも強度を保ちます。熱間型鍛造では300度~400度と比較的に低い温度で行うため、金型にダメージを与える場合もあるそうです。内燃機関用ピストンや建築用ドアノブ、バルブ用部品などが熱間型鍛造でつくられています。
ステンレスは鉄、クロム、ニッケルなどの合金で、クロムが空気中の酸素と結合して酸化被膜をつくるので錆にくく、また強い素材です。熱間型鍛造で、油圧・高圧バルブ部品、電機部品、化学薬品プラント関連部品、半導体製造設備向け部品などがつくられています。しかしながら、高強度のため高い圧力をかけねばならず、その鍛造は敬遠されがちです。「金型とそのメンテナンスに高度なノウハウが必要なのです。弊社にはありますが…。」<写真4>

  • メッキ処理が施された鍛造部品
    <写真1>メッキ
  • 鍛造でつくられた吐出ノズル
    <写真2>吐出ノズル
  • 鍛造でつくられたディスペンサーノズル
    <写真3>ディスペンサーノズル
  • 鍛造金型
    <写真4>金型

チタン合金は非常に高強度で軽いという特徴をもち、身近なものでは登山用品やバイク用の高級オプションパーツ等に使用されています。なお、チタン合金鍛造品の50%以上が航空機部品に用いられています。
航空機では熱間型鍛造を用いますが、金型に充満しにくく、きちんとした形状づくりが困難で、鍛造の難しい素材だといわれています。
また、ニッケル基超合金は耐熱性が高く高強度なので、火力発電のガスタービンやジェットエンジン用タービンのブレード(羽)などに使われています。
熱間自由鍛造や型鍛造が施されますが、その高い強度のために僅かな歪みでも割れなどを生じることがあります。マグネシウムは実用金属の中で最も軽く、その合金は携帯電話やノートパソコンの筐体に使われています。鍛造は加工時間が短く量産性が高いと最近注目されています。
また、冷間型鍛造はマグネシウムの物性からほとんど不可能だといわれています。
「チタン合金とマグネシウム合金は試作品として鍛造したことがあります。素材が何であれ、鍛造技術の工夫次第である程度は何でもできます。ただし、この加工法が最もよいのか、この加工法を選択する必然性があるのかが、まず重要なポイントでしょう。」

さらに詳しく金属材料について知りたい方は、こちら

「熱間型鍛造では、金属を加熱し、機械で圧力をかけますが、大気温度との差が大きいため材料を炉から取り出した直後から冷却が始まります。製造工程は時間との勝負とも言えます。まさに<鉄は熱いうちに打て>ですね。型鍛造の機械としては当社では大きく分けて二種類を使っています。厚み交差を厳しく要求する場合、加工時の金型へのダメージが少なく型寿命が長いクランクプレス<写真5>を使います。機械の作動スピードが速いので、ビレッドの温度が下がりにくい特徴があります。一方、比較的製品の形状が複雑な場合、鍛造スピ―ドの速いクランクプレスを使うと、成型時の抵抗に負けて所定の厚みにまで押しきれない時があります。その場合は、理論的に下死点がないスクリュープレス<写真6(スクリュープレス)>を使用して、じわっと圧力をかけて成型します。また、スクリュープレスは金型の彫が深い、部分的にフランジ形状が突起している等の、深くまで材料を押し込む必要がある製品形状にも向いています。このように、金属材料と求められる最終形状によって使用するプレス機を使い分ける必要があるのです。」と徳田氏、そのノウハウの一端を教えて頂くことができました。

  • 鍛造加工で用いられるクランクプレス装置
    <写真5>クランクプレス
  • 鍛造加工で用いられるスクリュープレス装置
    <写真6>スクリュープレス

鍛造を用いた試作加工の流れ

実際に熱間型鍛造を依頼する場合、どのようなプロセスを経るのか、納期までどれくらいの期日を見込めばいいのか、コストをどのように見積もればいいのでしょうか。徳田氏によれば、プロセスは以下のようになります。

(1)製品図面での打ち合わせ<ここで、鍛造加工で製造するかを判断>

(2)金型形状の打ち合わせ

(3)金型の製作

(4)金型を使っての試作

(5)試作評価⇔試作品製作で明らかになる改善点に対する金型形状の見直し

(6)材料の手配

(7)鍛造の開始

(8)納品

「納期に関しては、金型の製作日数で左右されます。通常、金型の承認を頂いてから、金型の製作が終わるまでに1か月から1か月半、そこからの試作に約半月かかります。試作段階で改善点が明らかになることは往々に生じることで、その改善にも1か月程度かかります。その後に材料の手配が行われ生産開始となるので、試作品でも、納品は注文後3か月から4か月以後となります。」
また、試作品の場合、製作費の7割は金型製作費で、「試作品の納品個数が10個と100個では価格が異なってきますが、5個と10個では同じです。」と徳田氏。
さて、上記は通常のプロセスにおいての期日ですが、「製品図面をもらってから金型の製作、鍛造、切削、表面加工、納品まで1週間で行なったこともあります。『どうしても』といわれたら、弊社の一貫生産システムをフル稼働させて短期間で鍛造加工を実現します。そのため人員にしても、機械の使用にしても常に余力を持つことを心掛けています。いつも目一杯だといざという時に走れません。」
逆にじっくりコンサルティングを行ない、製品形状を見て、鍛造なら強度が増すのでここは中空にできる、あるいは2つの部品を1つにできる、材料を変えたほう良いなどの提案を行うケースも多々あります。「目の前の合理主義に気が行き過ぎるあまり、木を見て森を見ない技術者が多くなっている気がします。1個1個で得をしてもトータルではどうなのか…。私たちは、鍛造さらには切削という視点から森がどういうものなのかを、長年の経験を生かして眺めるようにしています。」

金型製造技術を支える高度な切削加工

中野鍛造所ではその型鍛造技術を支える型製造を高度な切削技術によって実現しています。高度な切削技術を示す一例として、金型立方体状のフレームの中に球の入った造形<写真7>はその1つです。「球は5面体をつくってそこから削り出してします。立方体の各面から削り出していくのですが、5面までは通常の切削でいきます。6面目では、中の球が踊らないようにきちんと切削用クランプで球の上下を押さえて削ります。ミソはY軸付きの旋盤で切削加工したというところです。従来からあるX、Y、Zの三軸制御の縦型マシニングセンタで行っている業者はすでにあったのですが…。東大阪市の本社に高度な切削加工を担当する部署があり、そこで加工したものですね。熱間型鍛造を用いれば複雑な形状をもった強靭で表面の美しいものができますが、さらに切削加工を施すと芸術品のような素晴らしい製品をつくることもできます。」と徳田氏。<写真8>

  • <写真7>高度切削加工サンプル
  • <写真8>旋盤加工装置

考えられる今後の活用領域

鍛工品の生産量でいえば、日本、ドイツ、イタリアが世界のトップグループをなしています。日本での最大のユーザーは自動車産業で約70%を占めています。自動車産業ではエンジンから電池への大きなシフトがあるものの、当面、内燃機関車両は大きな需要家であるといえます。
鍛造製品活用領域の新分野の一つとして、海洋産業での利用も期待されています。具体的には船舶や海洋構造物への鍛造製品の使用です。海浜、海上、海中は高い腐食環境であり、陸上より金属製品には厳しい条件と言えます。耐食性・耐熱性の高い合金を鍛造加工することにより、その特性を保つないしは強化した状態で部品、部材化を図ることが可能となります。今回、徳田氏も今後注目されている分野として海洋産業を挙げられていました。
また、ITさらにはIoTが進み、AIの深化・応用も著しい今日、少子高齢化の進むわが国で産業および技術をどのように展開すべきかは、大きな課題です。鍛造も例外ではありません。
この点について、徳田氏は以下のように語っています。
「ホームページの充実化をはかることで、B to Bの企業として広がりができ、コンタクトしてくださる企業が増えました。少子高齢化社会では、大企業の下請けではやってはいけません。自分たちでマーケットを拓いていく、しっかりした中小企業が大企業と協業していくという気構えが重要だと思います。今後は海外にもこちらから出て行こうと思いますが、ドイツ、イタリアなどの鍛造技術は一日の長があり、なかなか難しい。鍛造に切削などの付加価値を付けたり、ニッチなマーケットにフィットするタイムリーな小物製品を供給するとか、日本人の得意な細やかなフォロー、サービスの開発が必要でしょうね。人材の採用が難しくなっていくなか、薄利多売ではなく、付加価値を付けて利益を上げていくというビジネスモデルが必要不可欠ですね。」<写真9>

<写真9>中野鍛造所 神鍋工場

まとめ

古来より存在する加工技術ではあるものの、軽量かつ高強度の製品、部品を生み出す可能性を秘めた鍛造は、現在の様々な技術課題に応えるため試作品開発に取り組むエンジニアにとって有効な技術と言えるのではないでしょうか。
鍛造を用いた試作加工の流れでも紹介しましたが、試作品の製作プロセスには数か月の期間を要します。鍛造のための型製作や鍛造後に切削加工を要する試作となった場合、さらに金型製作事業者、切削加工事業者との打合せが必要となり、更に長期化が予想されます。一方、中野鍛造所では型鍛造用の型製作~切削加工まで自社内でワンストップにて対応頂くことが可能です。
これは単純に試作品の納期の短縮だけではなく、高い寸法精度や複雑な形状が要求される試作を材料の選定から切削後の形状まで考慮してアドバイスを頂けるということです。
まさに「エンジニアに寄り添う試作品サポート」ではないでしょうか。
試作品の加工でお悩みのエンジニアの方がいらっしゃいましたら、一度、中野鍛造所の「鍛造試作のプロ」徳田氏にご相談をされてはいかがでしょうか。

株式会社中野鍛造所
あらゆる非鉄金属部品に高精度な鍛造・加工技術を用いてスピード納期で対応。株式会社中野鍛造所は、高品質とコスト削減を実現する独自の一貫生産システムを持ち、高精度な鍛造試作品をご提供しています。

また、以下の記事では鍛造加工に関する基本情報を解説しています。そちらも合わせてご参考ください。