まず初めに知っておきたい金属材料のいろは② ~金属材料選定のポイント~

はじめに

この記事では、金属材料における材料選定のポイントを紹介します。 前回の記事では、金属材料の材料・加工方法の基礎知識について分かりやすく紹介していますので、そちらも合わせてご参考ください。

金属材料を選択する際のポイントとは?

製品設計において「材料選定」は範囲が広く非常に難しいものであり、製品の最終性能を左右すると言っても過言ではありません。製品の仕様を満たすだけではなく、最終ユーザの要求にあった材料を選択することが成功への鍵になります。

金属材料を選択する際のポイントは、以下4つになります。
(a) 対象とする製品において十分な性能を発揮できる材料なのか
(b) 各部品が要求される性能を満足する材料なのか
(c) 製造工程で材料の特性が失われることがないか
(d) 修理やオーバーホールが可能、ないし使用後も素材として再生できる材料なのか

特に(d)に関しては、「いかなる材料も、製品の使用中に経年変化(Secular change)するもの」という事実をつい見逃しがちです。ある研究開発者から次のような貴重なコメントを頂きました。

「要求された性能を満足する最良な材料であっても、最良な製品になるとは限りません。あらゆる材料の選定要件を満たすための最良の妥協が必要になる場合があるのです。」

その上で、「材料選定」の際には(1)材料特性、(2)経済性を抑えておく必要があります。それでは各項目について詳しく見ていきましょう。

材料特性を考える際に押さえておくべき8つの観点

ここでは、材料特性を考える際に押さえておくべき8つの観点の説明を行ないます。

(a) 強さ(強度)

あらゆる部品は、何らかの外力(引張、圧縮、曲げ、ねじり<図1>)を受けて用いられるため、外力に耐える強さ(強度)が必要です。これらの外力の作用方向やその組み合わせ、作用速度、作用回数、作用温度等に応じて、各々の材料の強さは異なります。
したがって、一般的な部材では、「降伏強さ」や「破断強さ」という特性を基準に材料選択が行なわれますが、機構部品の設計(強度計算)では、材料の強さに下限値を適用し、さらに、最大強さを安全率(Safety factor)で割った許容応力(Allowable stress)という考え方が普及しています。部材に働く応力は、当然この「許容応力」より小さくなくてはなりません。

<図1>材料が受ける外力の種類
<図1>材料が受ける外力の種類

(b) 弾性と靭性

工作機械でよく知られていますが、剛性(Stiffness)が低い材料ほど加工精度の低下に陥る関係があります。この剛性を高めるには弾性係数(Modulus of elasticity)や降伏応力(Yield stress)の高い材料を選択することや、断面二次モーメントIが高くなるような構造を設計しなくてはなりません。また、通常作用する外力が、衝撃力のように想定外の力となって負荷される恐れのあるところには高靭性材料を用いる必要があります。

(c) ぜい性と硬さ

ぜい性(Brittleness)とは、じん性の正反対の意味で、高強度である反面、延性が極めて低いことです。ぜい性材料は、材料選択の上では望ましくないですが、ぜい性材料は高硬度で、耐摩耗性(Wear resistance)に優れている場合が多いです。衝撃力の負荷しない機械の構造体などには、ぜい性材料は使用が可能です。

(d) 耐熱性(thermal durability)

<図2(イメージ)>に示すスペースシャトルは、地球に帰還する際に大気圏へ突入すると、その外壁部は瞬間的に3,000K以上の温度となります。

<図2>スペースシャトル(イメージ)
<図2>スペースシャトル(イメージ)

このような温度に耐えられる金属材料はほとんどなく、セラミックス材料が使用されています。ジェットエンジンのタービン部では1,000K程度まで上昇するためスーパーアロイと呼ばれる超耐熱ニッケル基合金が適しています。一般に、金属材料は高温になると、強度が著しく低下するので、高温に長時間さらされる部材はクリープ強さを考慮した設計が必要となります。その他、高温使用条件下では、材料の酸化や熱膨張についても設計で考慮しなければならなりません。

(e) 減衰能(damping capacity)

部材は、運転中に振動を発したり、あるいは外部の振動の影響を受け、精度や性能が低下したりすることがあります。このような部材には高減衰能な材料が選ばれます。鋳鉄は、黒鉛粒子が分散する組織であり、炭素鋼より強度が低く、ぜい性材料です。一方で、黒鉛の分散が振動伝達を抑制するため減衰性が高いので、工作機械の構造体材料に適しているので広く利用されています。

(f) 耐摩耗性

機械には、歯車や鉄道のレールと車輪のような大きな力が作用する「接触機構」、ないし回転する軸を支える軸受のように高速で摺動する「機械要素」があります。そうした環境下でよく見られる現象が摩耗(Wear, abrasion)です。

摩耗(Wear, abrasion)は、こすり合う材料間の接触表面で各材料が剥がれる現象であり、以下(1)~(3)のステップで進行します。

(1) こすり合う材料間の接触表面ではあらさ(Roughness)やうねり(Waves)があるため、実際に接触している面積は極めて小さくなり、接触応力は大きくなる
(2) 接触突起部では、接触応力により変形破壊が生じる
(3) 極めて微細な摩耗粉(Wear particle, Wear debris)が表面から離脱する

摩耗が進行すると、機械の性能低下や振動発生ばかりでなく、破壊にもつながります。耐摩耗性を向上させるには、表面焼入れのような熱処理によって、接触表面層を高硬度とする方法があります。すべり軸受など大きな力の作用しない摺動部には、材料内部に空洞をつくり、潤滑油を浸透させた含油軸受合金や固体潤滑材の役割を成す黒鉛組織が分散する鋳鉄などが適しています。

(g) 疲労と耐久性

運動機構のある部品では必ず繰り返し荷重が作用します。疲労(Fatigue)とは、繰り返し数が増すと、その応力値が静的状態下での材料強度よりもかなり小さい応力で破壊する現象です。疲労破壊の機構や破壊力学については、設計段階で適用材料の疲労限を熟考するか、あるいは機械の使用条件に耐久する疲労強度の材料選択が必要です。

(h) 耐食性

腐食(Corrosion)は環境との反応による材料の劣化現象です。そして、腐食は純水、海水中、大気中などの状況、湿度や温度などの使用環境によって進み方が異なるので、特に化学工業に用いられる製品などでは十分に耐食性を考慮した材料選択が必要となります。また、腐食対策として行われる塗装やメッキなどの表面処理(Surface treatment)が可能な材料かなども考慮しなければなりません。

良い材料を安く購入するために知っておきたい、材料別のコスト比較

材料の選択にあたってはその価格も考慮しなければなりません。価格は製品価値に反映される重要なポイントのため、設計段階から使用材料の品質だけでなく、経済性(価格、流通性、調達期間)を検討しておく必要があります。
<図3>に、主な機械材料と製品の1kg 当りの価格(参考値)を示します。

<図3>主要な金属素材と製品の単位重量あたりの価格(貴金属価格は2016年現在)
<図3>主要な金属素材と製品の単位重量あたりの価格(貴金属価格は2016年現在)

材料・製品とも価格変動はあるものの、機械材料で最も使用する鉄鋼材料は安価でかつ、安定供給が可能です。鉄鋼材料の1kg当りの価格は約100円、マグネシウムは約300円、アルミニウムは約400円、銅は約1,000円になります。

ただ、添加元素の価格は需要量と供給量によって変動し、一般に、ステンレス鋼など特殊鋼や種々の合金価格は通常の炭素鋼より高価になります。

その他、超伝導材料、形状記憶合金、複合材料などの新素材も価格は高く、また貴金属の価格は、他の材料より価格変動が著しいため注意が必要です。2016年における銀、パラジウム、白金そして金の1kg当りの価格は、それぞれ約6万円、約230万円、約350万円そして約440万円でした。

一方、製品ベースで見ると自動車(セダン)の重量は一般に1,000kgから1,500kgであり、1kg当りの製品価格を計算すると1,000円から5,000円となります。大型液晶テレビの価格は性能によって異なりますが、1kg当りの価格は約10,000円です。衛星やジェット戦闘機などの単位重量あたりの価格は民生品に比べ、はるかに高くなることが分かります。

まとめ

ここでは、金属材料における材料選定のポイントについて解説しました。金属材料については他の記事でも紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。

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