まず初めに知っておきたい金属材料のいろは① ~材料・加工方法の基礎知識~

はじめに

この記事では、金属の材料・加工方法の基礎知識について解説します。皆さんが設計・試作する「製品」は、数多くの部品・ユニットから構成され、期待される機能を果たすものです。どのような分野の製品でも、最適とする材料が選択された後、加工されて最終的な製品の形状に仕上げられます。すなわち、ものづくりには、材料の特性や加工技術を理解した上での「材料選定」が重要なのです。

金属材料の選定を行なう際に、押さえておくべきポイントは下記4つです。

(a) 金属材料にはどのようなものがあるのか

(b) それぞれの金属材料がどのような性質を持っているのか

(c) それぞれの金属材料の持つ性質が加工方法や処理方法によってどのように変わるか

(d) 多くの金属材料の中から目的に適したものを選択するにはどうすべきか

まず、本記事では、上記(a)から(c)に関わる内容であり、金属材料において適用すべき最適材料と有効な加工方法を選定する際に必要な基礎知識を紹介します。

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日本工業規格(JIS)の定める、金属材料の種類・性質・用途

金属材料とその諸特性は日本工業規格(JIS)を検索することによって知ることができます。JIS規格は、材料の標準化と適正品質の確保のために規定されたものです。鉄鋼・非鉄金属材料の種類や成分のJIS規格、機械材料の分野で材料強度など機械的性質を調べる試験法を定めるJIS規格、材料の結晶粒度の測定法を定めるJIS規格等々があり詳細に規定されています。この規格を通じて機械設計者、製造者、製品の利用者の三者の相互理解ができるため、極めて有益な情報になります。

代表的な金属材料とその適応先を以下に示します。<表1><表2>
下表は、①材料名称、②JIS表記(日本工業規格)、③どんなところに使われているのか(適用先)、について纏められています。

<表1>各種用途に用いられる鉄・ステンレス材料とJIS記号
材料名称 JIS表記(化学成分) 適用先
一般構造用圧延鋼材 SS400 小ねじ、ボルト、ナット、リベット、機械の構造材、シャフト
機械構造用炭素鋼 S10C、S15C、S25C、S35C、S45C、S55C
機械構造用合金鋼
(クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼)
SCr415、435、440
SCM415、435、440
SNCM220~630
産業機械、橋梁や船舶などの構造材
冷間圧延鋼板 SPCC、SPCD、SPCE 自動車の外板、家電製品の外板、建材
(ハイテン) SPFC 自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板
SPFH 自動車バンパ、ドアインパクトバー
熱延鋼板 SPHC、SPHD、SPHE 各種構造物、ショベル、配電盤、自動車車体
構造用高張力鋼板 SAPH 建設機械、ボイラー、船舶、容器
熱間圧延鋼板 SS330、400、490、540 建築、製缶、産業機械(厚さ~25mm)
表面処理鋼板
≪トタン(亜鉛めっき)≫
(塗装溶融亜鉛めっき)
SGC(溶融亜鉛めっき)、SEC(電気亜鉛めっき)
SCG
SAC(溶融アルミめっき)
家電、OA機器、事務家具、自販機、建築内外装
(デュラ鋼板) 自動車用塗装電気めっき
ブリキ(スズめっき) SPT、SPTE(電気) 缶詰、食器用
炭素工具鋼 SK1~7(数字が小さいほどC量大) ゲージ、刃物、バイト、たがね、ぜんまい、木工用きり、縫い針等比較的小物
合金工具鋼 SKS 切削工具
合金工具鋼 SKD11、SKD62 引抜き用ダイス、金型
合金工具鋼 SKT 鍛造用型鋼
高速度工具鋼(ハイス) SKH2、SKH52 切削用工具(バイト、フライス)
快削鋼 SUM31 シャフト、リベット
高炭素クロム軸受鋼 SUJ1~4(数字が大なほどCr量大) 軸受(コロ、鋼球)、各種ピン
ばね鋼 SUP6~10など 大型板ばねなど(熱処理ばね)、ピアノ線など(加工ばね)
オーステナイト系
ステンレス鋼
SUS304(準安定γ)
SUS316(安定化γ)
食品製造設備、化学工業機器、鉄道車体、各種配管、熱交換器、タービン
フェライト系
ステンレス鋼
SUS430
SUS447
建築内装、家庭用器具、食品業機器、化学工業機器、機械の構造材、軸受
マルテンサイト系
ステンレス鋼
SUS403
SUS420
刃物、医療機器、タービンブレード(耐熱性機械部品)
ねずみ鋳鉄 FC200~350 ビストンリング、バルブ、マンホールの蓋、ハンドル車、工作機械等加工機基台
球状黒鉛鋳鉄 FCD370~800 遠心鋳造水道管、クランクシャフトと自動車部品
<表2>各種用途に用いられる非鉄金属・合金とJIS記号
材料名称等 JIS表記(化学成分) 適用先
純銅(電気銅) C1020、C1100 電線、電気機器、建築材、化学機器
りん脱酸銅 C1220 エアコンや給湯器用管、風呂釜、建築材
黄銅(真鍮、Cu-Zn合金) C2600、C2720 配線器具、計装板、自動車用ラジエータ、ドアノブ
青銅(ブロンズ、Cu-Sn合金) オリンピック銅メダル、美術工芸品(銅像)、
りん青銅 C5212 歯車、ばね、カム、軸受
白銅(Cu-Ni合金) 硬貨(500円、100円、50円)
工業用純アルミニウム A1080、A1100 送配電用電線、電気器具、日用品(アルミ箔など)
Al-Cu系合金 A2017(ジュラルミン)
A2024(超ジュラルミン)
航空機の外板、輸送機器(熱処理型)
Al-Mn系合金 A3003、A3004 容器、建材、飲料缶 冷間加工
Al-Si系合金 A4043 溶接用添加材、鍛造材
Al-Mg系合金 A5083 耐食性、溶接性良好、溶接構造用途、冷間加工
Al-Mg-Si系合金 A6061 サッシ、門扉、鉄道車体、自動車の外板 (熱処理型)
Al-Zn-Mg系合金 A7075(超々ジュラルミン) Al合金中最強 (ゼロ戦構造材として日本で発明)
純チタン TP28 化学装置、石油精製装置、腕時計の外装
チタン合金 Ti-6%Al-4%V 航空機の機体構造材、ジェットエンジン部品、ゴルフヘッド
形状記憶合金 Ti-55%Ni メガネフレーム、混合水栓の制御ばね、歯列矯正ワイヤ
マグネシウム合金 AZ31、AZ91、AM60 タイヤホイール、エンジンカバー、パソコンの筐体

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7つの実例から見る、加工方法の種類と加工による金属材料の性質変化

モノを造るには素材を変形する必要があり、金属材料の変形手段としては、下記4つの方法が知られています。
(a) 熱を加えて溶融する
(b) 化学的に溶かす/くっつける
(c) 力を加えて形を変える
(d) 原子あるいは分子状態にして加工する

例えば、「切削」「研削」などの除去加工と塑性加工は、もっとも多用されている加工方法であり、上記(c)に相当します。この「力を加えて形を変える」ためには、モノ(材料)が力によって形が変わることが必要です。元の形が変わるには、「壊れる」場合と「変形する」場合があり、後者の性質を材料の「変形能(Deformability)」、あるいは「延性(Ductility)」と言います。金属材料が有するこの特質を生かした加工が「塑性加工(Plastic working)」であり、この性質を有していることが工業材として金属が多用されている理由になります。

多くの加工方法が存在するなか、どの加工方法を選択するかは、ものづくり、ひいては工業生産を計画する際に重要になってきます。例えば、円筒形のカップを製造する場合を考えてみましょう。考えられる方法としては、①丸棒などの塊から切削する、②鋳造する、③塑性加工する、④円筒と円盤を溶接する、など様々な加工方法(手段)が考えられます。その際に使用される工具・装置に関しても、①切削を例にとっても使用する機械は旋盤であったり、フライス盤であったりと様々です。そして、塑性加工においても、(i)板をプレス加工(成形)する、(ii)鍛造(押出し)で造る、(iii)円盤をスピニングする、など同様に複数の加工方法が考えられるのです。
こうした加工方法の選択は、どのような機能を有する「カップ」を、どれだけの数製作するかによって、材料の選定とともに決定されるものになります。

設計者は、使用環境・条件を把握し、安価、短納期でかつ安全性・信頼性の高い製品を設計する必要があります。設計が終われば、材料や部品を調達し、その後機械加工、組み立て、製品検査を行なう流れとなります。通常ある技術者が、設計から製作まで一人で行うことは少ないので、試作仕様ならびにコンセプトなどを的確に協力者に伝える必要があります。また、設計段階にて、「材料」だけでなく「加工方法」や「熱処理」などのプロセスをふまえた最終的な部品・部材の特性も押さえておく必要があります。

強度向上、加工コスト低減などを実現した実例を、下記に7つ示します。

(a) 比強度の向上、納期短縮と加工コスト低減を図るため、切削加工から塑性加工に転換させ、材料強度を向上

(b) シミュレーション技術を利用し、加工のための最適な素材形状を見出し、材料歩留まり(Yield = 製品量/使用材料量)の向上

(c) シャフト、歯車、カムや工具などの表面のみ、あるいは全体の熱処理により強度、硬さを向上させ、耐久性、耐磨耗特性を向上。ただし、大型部品の熱処理は質量効果(Mass effect)があり熱処理性を考慮する必要あり

(d) 機械加工や塑性加工された製品に残留する応力は、製品寿命に直接影響を及ぼす一方で、残留応力を積極的に発生させ、製品寿命を向上させることも可能。例えば、加工された自動車用ばねの場合、仕上げとして多数の小さな鋼球などをばねにぶつけるショットピーニング加工(Shot peening) を施し、ばね表面に圧縮の残留応力を与え疲労寿命を延長させている。

(e) サッシ、建材や機械の構造材に使用されるアルミニウム合金について、陽極酸化処理(Anodizing)により耐食性を向上

(f) 加工時の工具費低減を図るため、塑性加工ではより軟質材の素材を選択することや、切削加工では加工性に優れた快削鋼などを利用し、工具寿命を延長

(g) コンピュータ支援技術(Computer aided engineering, CAE)により製作前に機械の応力・ひずみの解析や機構解析を行い、性能確認や不具合の有無を確認。機械の多くは高強度を期待されるため、機械設計者は高強度材料を選択しがちであるが、その選択によっては大きな事故に至ることもあるので注意が必要。特殊な例として、加工硬化材の応力腐食割れ(Stress corrosion cracking)、溶接割れ、水素による遅れ破壊(Delayed fracture)などの材料トラブルあり

以下の記事では、金属加工にはどのような種類があるのか、各種加工法にはどのような特徴があるのかを紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。

まとめ

ここでは、金属の材料・加工方法の基礎知識について解説しました。他の記事では、鉄鋼材料、非鉄材料に焦点を当て、それぞれの種類や特徴、用途などをまとめています。そちらも合わせてご参考下さい。

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