ばねなしでは組み上げられない!ばね設計の一般的な流れとよく使われる2大材料とは!?

はじめに

新機種開発に従事するあなた。
「この部分の動きには、”ばね”を使いたいな」
「この複数部品を組み立てるには、あんな形の”ばね”だと思うんだけど」…
要求仕様を満足させるためには、どんな素材で、どんな太さ・大きさの、どの程度の巻き数のある”ばね”を選べば良いのか、あなたは見当がつきますか?

そもそもばねの持つ機能は大きく3つあり、

1.復元力
2.弾性エネルギーの蓄積と放出
3.衝撃の緩和

のいずれかを目的に、さまざまな用途に使用されています。

本記事では、ばねの概要を紹介するとともに、ばね業界にて1995年に”選ばね君”を開発し、カスタマイズばね分野を開拓してきた株式会社アキュレイトに、コイルばねによく用いられている2大材料についてその特徴と抑えておくべきポイントを教えていただきました。

ばね設計のおおまかな流れ4ステップ!

次に、ばね設計の流れを大まかに解説します。ばね設計にかかわらず、機械設計全般において重視すべき観点の一つは、強度不足による機械の故障を防ぐことです。そのためには、ばねの変形、応力の状態、材料の強度などについて検討する必要があり、ばねの物理に加えて、材料力学や振動工学などの知見が必要となります。以下、一般的なばね設計の流れとなります。

<ばね設計の流れ>
(1)ばねの大きさ・形状の決定
(2)想定荷重の決定
(3)ばね寸法(線径、コイル平均径、有効巻数、自由長など)の決定
(4)疲れ強さの確認

(1)ばねの大きさ・形状の決定

まずは、ばねの概略寸法(だいたいの大きさ)を決めましょう。ばねを収めたいスペースに対して、1本あたりのスペースと本数を決めます。また、ばねの用途に応じて、形状を選定します。ばねの形状種類については、後述でも解説します。

(2)想定荷重の決定

ばねの大きさが決まったら、どの程度の荷重に耐える必要があるか想定しましょう。

(3)ばね寸法の決定

ばねの材質を決定し、詳細な形状を決めます。ばねの材質については、一般的によく用いられる線材を中心に後述で解説します。
寸法項目には、
・線径
・コイル外径/内径
・総巻数
・有効巻き数
・自由長 
・巻き方向
・端末形状
などがあります。ばねの材質を決めることで、引張強さや弾性係数が決まり、たわみ量や上限応力係数、下限応力係数を計算することができます。

また、ばねの材質を決める際には、想定荷重に対して、許容ねじり応力(ばねに使用する材料が許容される最大応力)が下回らない材質を選びます。

(4)疲れ強さの確認

(3)で算出した上限応力係数や下限応力係数を用い、疲労限度線図に当てはめ、疲れ強さを確認します。
この線図では耐久性をストローク回数で1000万回まで目安として割り出すことができます。

以上4つに分けましたが、優先すべき順位はそれぞれ設計案件ごとに異なるかと思います。
荷重が最優先であれば、その荷重に耐えうるばねの大きさにしなければなりません。例えるならば1リットルの容器に2リットルの水は入らない訳で、荷重2Nでへたらないばねは1Nのばねより、サイズ・質量ともに大きくなります。
相手部品が先に決まって、ばね設計スペースが限られ要件を満たすばねが設計出来ない事態とならぬよう、早めの段階で目処を付けて下さい。

以上に基づき、要求仕様を決定した上で、規格品を購入するのか、特注品を発注する必要があるのかを決めましょう。

ばね選びの前に・・・ばねの主な形状と、最も幅広く用いられるコイルばねについて簡単把握!

“ばね”と一言でいっても、様々な形状が存在し、「コイルばね」や「板ばね」、「渦巻きばね」、「さらばね」、「トーションバー」などに分類できます。<図1>

<図1>ばねの形状分類
<図1>ばねの形状分類

ここでは、その中で最も普及しており、製作が容易かつ比較的安価な「コイルばね」について少し詳しく紹介しましょう。
線上の素材をらせん形状に成形したばねを総称してコイルばねといいます。さらに、「圧縮コイルばね」、「引張コイルばね」、「ねじりばね」などさらに細かく分類されます。

(ア)圧縮コイルばね

圧縮荷重を受けて弾性エネルギーを蓄えるコイルばねのことを指します。ポールペンなどの文具や日用品、家電製品から自動車のエンジンのバルブ、サスペンションなど様々な場面で用いられています。
円筒形状のコイルばねの荷重とたわみの関係は線形になりますが、円錐形やたる形、つづみ形のコイルばねの荷重とたわみの関係は非線形となり、荷重が大きくなるにつれ、たわみの変化量は小さくなります。
圧縮コイルばねの設計、選定の際には、座巻(両端部)の処理の仕方にも留意する必要があります。座巻は最初に圧縮荷重を受ける部分であり、取り付けに与える影響は大きいため、用途に合わせた形状を選びましょう。<写真1>

<写真1>圧縮コイルばね

(イ)引張コイルばね

引張荷重を受けてはたらくコイルばねのことを指します。自転車のスタンドや自動車部品などに使われています。用途に応じて両端に様々な形状のフックがあることや、初張力が必要となることも圧縮コイルと異なる点です。 フックの形状次第では折損やへたりの原因となりやすく、フックの形状選定時には注意が必要な箇所です。フックを複雑な形状にすると物体の形状変化部で応力が集中することで、折損の原因となる可能性が高まり、フックがコイルの外径より大きいと、へたりの原因になりやすくなります。<写真2>

<写真2>引張コイルばね

フックの形状種類については、ばねの基本用語の解説を含めて他の記事で紹介しています。 そちらもあわせてご参考ください。

(ウ)ねじり(トーション)コイルばね

コイルの中心軸まわりにねじりモーメントを受けるコイルばねのことを指します。洗濯ばさみやドアや蓋の開閉機構など、腕の形状や加工次第で様々な用途に使われています。

荷重がかかると曲げ応力を発生して回転し、巻き込む方向に負荷が加わるように使用します。ばねを適切に作動させるため、一般的には内径の部分に案内棒を入れて使用されます。<写真3>

<写真3>ねじり(トーション)コイルばね

ばねの種類は他にも分類方法があり、加工方法や製造方法別にも整理できます。

ここまでは、ばね設計の簡単な流れと、形状別のばねの種類について紹介してきました。
次は、材質の選び方について紹介しましょう。

コイルばねに用いられる2大材料はステンレス材とピアノ線材!その違いとは!?

ばねに用いられる材料は基本的に鉄鋼材、非鉄金属材、プラスチック材、セラミックスなど、さまざまな材料が用いられています。
その中でも、コイルばねによく用いられる2大材料はステンレス材とピアノ線材であり、この2種の使い分けができるよう解説します。
以下、ステンレス材とピアノ線材の主なJIS規格とその特徴です。<表1>

<表1>
JIS規格 特徴
ステンレス材 SUS304-WPB 最も一般的な材料。SUSの規格ばねは全てこの材質を使用
SUS316-WPA 304より耐食性の面で優れる。よりさびにくい
SUS631J1-WPC 耐熱温度に優れる。約350度程度の環境まで使用可能。
ばね特性も高いがコストも高い
ピアノ線材 SWP-A B種とともに最も一般的な鉄系材料
SWP-B A種に比べ耐久性の面で上回る
SWC 上記2種に比べ安価だが、特性全般が劣る
※引用元:株式会社アキュレイト

また、同じ線径と仮定した場合、SUS304WPBとSWP-Bを比較すると、下記のような結果となります。<表2>

<表2>
比較項目 結果
荷重SUS304-WPB < SWP-B
疲れ強さ(耐久性)SUS304-WPB < SWP-B
さびにくさ(耐食性)SUS304-WPB > SWP-B
耐熱温度SUS304-WPB > SWP-B
磁石へのつきにくさ(磁性)SUS304-WPB > SWP-B
コスト(材料費のみ)SUS304-WPB < SWP-B
※引用元:株式会社アキュレイト

また、以下の記事では、ばねの素材として最も用いられるステンレス材とピアノ線材をはじめとした金属材料の基本知識をまとめました。そちらも合わせてご参考下さい。

線材についてはこちら
ステンレス材についてはこちら

まとめ

ここでは、ばね設計の一般的な流れと、ばねに用いられる材質について紹介しました。
株式会社アキュレイトでは、最低限必要な仕様寸法を入力するだけで簡単に規格品を検索できるサービスや、特注部品を発注できるサービスをWEBで展開しています。また、ばねの現物はあるけど寸法がわからない場合、近い形状の規格品を選定できる原寸大カタログのご用意があるそうです。ばね選びにお困りの際は、ぜひ一度活用してみてはいかがでしょうか。

また以下の記事では、アキュレイトの方に、展開されているサービス内容や、実際によくあるお客様からのご相談についてもお話を聞いています。そちらもご参考ください。

株式会社アキュレイト
ばね選定WEBプログラムの“選ばね君”を使えば、規格品の選定から、特注品のばね計算、特注品ばねの自動見積までがワンストップで実現。また、ばね知識を持った専門スタッフがばねの技術相談、選定、設計、図面検討までをお手伝いします。

機械設計の中でも重要かつ、難易度の高いばねの設計ですが、基礎的かつ重要なポイントをしっかり理解しておくだけで、メーカーや販売店の人への相談も非常にスムーズになります。発注までのポイントをしっかり押さえて、よりよい設計を実現していきましょう。

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