初心者向けプラスチックの基本特性と材料選定時に注意すべきポイント

はじめに

この記事のテーマはプラスチックです。
プラスチックは国内だけでも年間約1,000万トンも生産され、包装材や家電、自動車、医療機器等に至るまで、様々な用途で用いられています。
プラスチック材料は金属材料に比べ安価で、自由に形状を変えることが大きな魅力です。
一方で、種類が非常に多く、それぞれの特性の違いにより思うような仕上がりにならなかったり、大掛かりな加工設備が必要となるケースがあります。例えば、射出成型と呼ばれる代表的な加工を行う際には金型制作に費用・時間を要するため、試作では気安く選択しにくい材料のイメージを持つ方もいるのではないのでしょうか?
今回は、プラスチックの基本情報をご説明するとともに、試作での失敗を少なくするための注意すべき選定ポイントを簡単にご説明します。

また、以下の記事では、プラスチック材料の解析方法や、加工時のトラブルへの対処をテーマにまとめています。こちらも合わせてご参考下さい。

株式会社NCネットワーク
国内最大級のモノづくり受発注サイト「エミダス」に登録された18,000社以上の工場データベースから、技術スタッフが依頼内容に最適な工場を選定。NCネットワークには、加工方法が分からない試作・開発品から、特殊車両のように少ない生産台数ながら厳密な品質保証が求められる量産品まで幅広い経験があります。

プラスチックの基本的特徴

「プラスチック」とは、高分子化合物からなる物質であり、合成樹脂とも呼ばれます。
プラスチックの特徴としてまず挙げられるのが、「軽さ」と「形状の自由さ」ではないでしょうか。

鉄の比重が7.9g/cm³であるのに対し、最も利用されている材料の一つであるPP(ポリプロピレン)は0.9g/cm³と約1/9の大きさです。<図1>

プラスチック、鉄、銅、アルミニウム、ガラスの比重
<図1>比重

また、プラスチックは金属に比べて熱による形状変化が起こりやすい材料でもあります。 その特徴を活かし、型を用いた造形によって金属材料では加工が困難な形状も実現できます。
プラスチックは、石油を原料とし化学コンビナートにて大量生産されるため材料単価も比較的安価であり、前述の射出成型加工にて安価な量産品製造が可能となったため、世の中には多くのプラスチック製品が普及しております。

更に、金属に比べ耐熱性や耐衝撃性が課題とされていましたが、最近では高耐熱性プラスチックやエンジニアリングプラスチックといった新素材が開発されたことで、金属の代替材として用いられることも少なくありません。

プラスチックの種類とその特性

プラスチックは大きく「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に分けられます。
「熱可塑性樹脂」とは、加熱すると軟化し変形を自在に行うことができ、冷却することで固化するプラスチックであり、「熱硬化性樹脂」とは、加熱により不可逆な化学反応(架橋反応など)により硬化するプラスチックです。

熱可塑性樹脂はさらに用途別に分類され、安価で大量生産され多くの生活用品に用いられる「汎用プラスチック」と、「エンジニアリングプラスチック」に分けられます。
汎用プラスチックには、代表的なものとしてポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などがあり、比較的低比重(0.9~1.4程度)で、強度や耐熱性が必要とされないものに対して用いられます。

以下の記事では、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂について、より詳細に種類や特徴、用途等を解説しています。こちらも合わせてご参照下さい。

一方、エンジニアリングプラスチックは、フッ素樹脂(FR)やポリアミド(PA)などがあり、構造部品や機械部品といったある程度の強度や耐熱性、寸法安定性が必要なものに用いられます。
名称が長いので、「エンプラ」と呼ばれることが多く、一般的に耐熱温度が100度以上であり、引張強さが50MPa以上、曲げ弾性率が2,400MPa以上であるプラスチックを指すことが多いです。
エンプラはさらに「汎用エンプラ」とより耐熱性や強度に優れた「スーパーエンプラ」に分類できます。
また、プラスチックを構成する高分子鎖の集合状態として、高分子鎖が規則正しく配列している「結晶性樹脂」と高分子鎖が糸玉のように絡まったりしている「非結晶性樹脂」にさらに分類できます。
結晶性樹脂は硬くて剛性が大きく、非晶性樹脂は耐衝撃性に優れています。

エンジニアリングプラスチックについて、以下で詳細を解説しています。こちらも合わせてご参照下さい。

代表的な熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂(PF)やエポキシ樹脂(EP)があります。熱可塑性樹脂よりも世の中で広く用いられるものではありませんが、耐溶剤性、耐熱性、機械的強度において熱可塑性樹脂よりも優れているとされています。
<図2>にプラスチックの分類を大まかに整理しました。プラスチックの種類は本当に幅広いことがわかります。

プラスチックの分類
<図2>プラスチックの分類

プラスチック加工のメリット・デメリット

次に、プラスチック材料を扱う上で押さえておきたい点を金属材料と比較したメリット、デメリットとして整理します。<表1>

<表1>プラスチックのメリット・デメリット
メリット デメリット

1.軽くて強い製品が得られる

1.温度変化に弱く燃えやすい

2.耐錆や、防腐性が高い

2.機械強度が弱い

3.素材の着色が比較的容易

3.溶剤に対して非常に弱い

4.塗装加工やめっき処理が可能

4.表面が軟らかく、傷がつきやすい

5.電気や熱の絶縁性が高い

5.汚れやすい

6.耐薬品性が比較的高い

6.寸法確保と寸法安定性が良くない

7.安定した原料供給が可能

7.耐久性が劣る

8.特別な性質を持った製品が作れる

9.成形加工が容易で、製品コストが安い

メリットを眺めていると、プラスチックは機能性も高く、コストも安いためとても使いやすい材料に見えます。
ただし、熱や強度、溶剤に弱い、耐久性能が劣るといったようなデメリットもあり、このデメリットの対策がうまくいかず苦労している方々も多くいらっしゃいます。

一方、近年ではプラスチック材料開発が進み、今まで金属材料で作られていたものがプラスチック材料に移行するという傾向も見られます。

以下の記事では、金属のプラスチック化をテーマに解説しています。こちらも合わせてご参考下さい。

プラスチック材料の選定ポイント

今までご説明した通り、プラスチックには様々な種類があります。
それでは、数あるプラスチックの中から候補を絞るための絞り方のポイントをご紹介しましょう。
ただやみくもにプラスチックの種類を調べる前に、整理しておくべき選定基準をご説明します。<表2>
(今回はプラスチック材料に絞っているため、他材料の選定基準とは少し異なります。)

<表2>プラスチックの選定基準
選定基準 設定する必要がある項目(例)
機能要件 機械的性質 想定応力(種類/大きさ)、荷重パターン/時間、許容される変形、剛性、弾性率、衝撃強さ、クリープ性
物理的性質 比重、耐熱性(長期/短期)、低温物性、電気抵抗値、絶縁破壊特性、誘電率、誘電損失
化学的性質 ガス透過性
耐劣化 信頼性、寿命、寸法安定性、耐摩耗性
コスト 材料、成形方法、組立、検査、設備投資を含む全体コスト
製品仕様 使用環境

物理的影響:対候性、昆虫/海洋生物の影響

化学的影響:耐液体への影響(溶剤、油脂類、酸、アルカリ、水)、蒸気、吸湿、吸水、微生物分解

安全性 燃焼性、添加物の毒性、モノマ溶出可能性
法規制 製造国・使用国の法規制
デザイン性 透明性、表面の粗さ、色味等
選定基準 設定する必要がある項目(例)
加工性
(成形性)
成形方法、
組立工程、
品質管理方法、
必要検査(測定)項目

(1) どのような機能が欲しいか、要求仕様を決める

用途に応じて、求める機能を機械的性質(外部からの力に対する性質)、物理的性質(重さや電気、熱に対する性質)、化学的性質(さび、溶解など化学反応に対する性質)それぞれに対して基準を設けます。
特に多くのプラスチックは先述の通り、温度変化や機械的な強度に弱く、溶剤に対しては非常に弱いデメリットがあるため、許容範囲を明確にしましょう。
また、想定される使用期間からどの程度の耐久性が必要か、耐摩耗性や寿命の基準も設定します。

(2) 材料から製品までの加工・成形・組み立てにかかる全体コストの確認

製品化のなかで最も重視される項目であるコスト。研究開発段階の試作といえども、製品化(量産化)をみすえた全体コストの設計を行うことは少なくありません。
一般的には、材料調達から、加工、組み立て、検査、場合によっては設備投資に至るまでの全体コストを算出し、材料選定を行います。
材料の要求仕様に理想的にマッチした材料を選定したとしても、大幅にコストオーバーしていれば採用が難しいため、製品化における材料の仕入れ量をふまえた一般的な価格相場を把握しておくとよいでしょう。

今回は(1)、(2)を機能要件としてまとめました。機能要件は、研究開発の初期段階に決定されることが多い項目です。
材料選定には、候補となる材料の加工性を把握した上で、機能要件の各項目が満たせるかどうか確認する必要があるため、下記(3)で詳しく説明します。

(3) 材料の加工方法・成形性の確認

成形、部品の組み立てのプロセスを確認し、品質管理・検査方法(測定項目)はどういったことが必要かまでを整理した上で、材料が適しているかどうか確認します。
材料の加工方法や成形性については、いわゆる試作屋さんとよばれる加工業者の方々に多くの知見がある場合が多いため、加工方法に困った場合は問い合わせてみてもよいかもしれません。

次の(4)~(6)は主に量産化検討の際に整理される要件となります。

(4) プラスチックの使用環境状況を把握する

プラスチックが利用される際の周辺環境を理解し、外的要因からどのようなことに注意する必要があるかを整理します。
例えば、エアコンの屋外機に用いられる場合、どういった気候条件なのか(日中の温度差、湿度等)、また、風雨にさらされる場所に設置されるかといったことや、虫の影響を考える必要があります。
土がある環境であれば微生物による分解の影響なども考慮した上で選定基準となる項目を設定する必要があります。
上記で述べたように、使用環境を想定した上でも把握すべき条件は多く、何をどこまで注意する必要があるか見極めることは容易ではないため、経験者へ相談しながら検討できるといいですね。

(5) 材料の安全性や法規制対応を確認する

プラスチック材料には、安定性・加工性を維持するために添加剤が含まれています。
また、製造工程において高分子鎖に組み込まれずに残存するモノマーの影響も無視できません。
そのため、プラスチック材料の燃焼性に加え、機能向上に用いられる添加剤の毒性、モノマー溶出の可能性の有無を確認し、安全に利用できそうか、また、新材料に関しては、法制度に対応しているかどうかの確認も必要となります。

(6) 美しいデザインのものが作れそうかどうか

最後に、もし作りたいものが人の目に触れる部分であれば、デザイン面からの確認も重要となります。材料の透明性や表面の状態、色味を確認し、デザインとして美しいものが作れそうかどうか判断しましょう。

まとめ

本記事では、プラスチックの基礎知識として、材料特性や、材料選定時に見るべき基準項目について説明しました。
プラスチックについて、少しは理解を深めることができたでしょうか。

以下の記事では、用途別に見たプラスチック材料や、プラスチックの計測について解説をしています。合わせてご参照下さい。

プラスチックは、コスト面でも、成形面でも自由度が高く、最近の材料開発は著しいため、試作の有力な材料候補になる一方で、冒頭にも述べた通り、材料を選定することは経験豊富な研究者の方でも難しい内容です。
特に試作を行う際は、材料の科学的な知識だけでなく各種加工技術の知見・ノウハウが必要となるため、専門の方に相談できれば失敗も少なくなるのではないのでしょうか。

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