サプライチェーンマネジメントSCM │ 一連のプロセスから改善事例まで一挙紹介

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、連鎖的につながる調達、製造、在庫管理、販売、物流といったプロセス全体(サプライチェーン)を見直すことで、効率化と最適化を行う経営管理手法のことです。昨今グローバル化をはじめとしたビジネス環境の変化によりその重要性が高まっています。さらに、2020年から始まった新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的な流行により、世界各国にまたがるサプライチェーンの品質管理が課題として浮上してきています。本記事では、サプライヤ品質サービスを展開する株式会社日立ハイテクの協力のもと、サプライチェーンマネジメントの概要と一連のプロセス、品質改善事例をご紹介いたします。

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料の調達から消費者への販売までの一連のプロセスを管理し全体最適を目指す経営管理手法のこと

サプライチェーンは、原材料の調達、製造、物流、在庫管理、販売といった一連の供給連鎖のプロセスです。このサプライチェーンには、メーカーや物流事業者、卸売事業者、小売事業者など様々な業界の企業が関わり、さらにそれらの企業の拠点が世界中にまたがっていることも珍しくありません。サプライチェーンマネジメントでは、企業や地域の境界を越えてサプライチェーン全体の最適化を目指します。

サプライチェーンマネジメント概念図
サプライチェーンマネジメント概念図


サプライチェーンマネジメントでは、複数の企業の生産、流通プロセスをよりリアルタイムに把握し管理する

企業の属する業界や事業領域によりサプライチェーンは異なりますが、サプライチェーンマネジメントでは、各プロセスのデータを一元管理しリアルタイムに把握することで需要と供給を調整したり、生産物の品質管理や在庫管理を行ったりします。

サプライチェーンマネジメントとERP

ERP(Enterprise Resources Planning)とは、ヒト・モノ・カネ・情報の4資源を有効活用する計画のことです。サプライチェーンマネジメントと同様、データ(情報)を一元管理し最適化を目指しますが、ERPが主に対象とするのはひとつの企業内のあらゆる業務に関する経営資源で、サプライチェーンマネジメントのように複数の企業にまたがることや対象となる業務が調達から販売に限定されることはありません。

サプライチェーンマネジメントとECM

ECM(Engineering Chain Management)とは、サプライチェーンの中の、「製造」の上流プロセスを適切に管理する手法です。ECMが対象とする市場調査や企画、設計、試作といったものづくりの上流にあたる一連のプロセスの中で製品の価値を創造し、サプライチェーンを通じて企業の利益に変換していきます。


サプライチェーンマネジメントの目的

適切にサプライチェーンを管理することにより、以下の効果が期待できます。

 

①在庫の適正化
需要を予測し各プロセスのスループットを最適化することで、過剰在庫を削減し材料や部材の不足を防ぎます。

②キャッシュフローの効率化
需要に対して適切に調達、製造、物流といった各プロセスを設計し実行していくことで、材料の調達から販売までのリードタイムを短縮し、キャッシュフローを効率化します。

③顧客満足の向上
適切に需要と供給を予測し販売計画を立てることで、顧客に対して最適なタイミングで最適な製品やサービスを届けることができます。

 

昨今、グローバル化によりサプライチェーンが全世界に広がる動きが加速、コスト削減と利益確保を実現するために、生産から物流、販売までを効率よく管理することが求められています。さらに国内でも労働人口の減少や電子商取引の増加を背景に、卸や配送といった流通の効率化が課題となっています。このように、サプライチェーンマネジメントの重要性は今後ますます高まっていくことが考えられます。

 

サプライチェーンマネジメントの代表的な事例

POSデータを活用し品ぞろえを最適化したウォルマート
米国に本社をもつ世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマート(Walmart Inc.)は、サプライヤであるメーカーと提携したサプライチェーンマネジメントの先駆者として知られています。店頭のPOSデータをメーカーに開示することで、店頭の品ぞろえを最適化、欠品率の削減やメーカーの在庫削減を実現しました。このシステムは自動化され、サプライチェーンの全体最適化が達成されています。

 
グローバルなサプライチェーンの最適化を追求する自動車業界
ワールドワイドにサプライチェーンを展開し生産活動を行う自動車メーカーにとっても、サプライチェーンマネジメントは非常に重要です。
日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車では、日本の本社が、日本、アメリカ、欧州、中国といった各市場における需要動向に応じた生産計画を作成、調整しそれを軸に生産、販売を行うことで全世界にまたがるサプライチェーンを最適化しています。
また、自動車メーカーでは国内外のたくさんのサプライヤから部品を調達しものづくりを行っているため、生産量を適切にコントロールすることに加えサプライヤから提供される部品や部材の品質管理が非常に重要になってきます。海外を拠点とするサプライヤの管理も行う必要があるため、自社だけでなく現地の市場に精通したパートナー企業にサプライヤの品質管理を一部アウトソースすることも行われています。

 

 

サプライチェーンにおいて、複雑化した海外サプライヤの品質管理が課題となっている

サプライチェーンのグローバル化が進み、海外サプライヤの活用が進むと、その品質管理がより重要になります。
サプライヤから不具合品が納入された場合、サプライヤの製造工程などを検査し改善を促す必要がありますが、商習慣や文化の違い、言語の違いが障害となり、思うように改善が進まないケースが少なくありません。また、現地に社内の人員を派遣するコストも小さくありません。
さらに、昨今では新型コロナウィルスの感染拡大により海外サプライヤの製造現場を訪問できないなどの問題が、サプライヤの品質管理をより困難にしています。


品質管理のアウトソーシングによるサプライチェーンマネジメント

海外サプライヤの品質管理の課題に対し、品質管理サービスを活用することも有効です。
日本では一般的ではありませんが、品質管理をアウトソースすることには、以下のようなメリットがあります。

品質管理のアウトソーシングのメリット

①商習慣や文化、言語の違いの問題を解消できる
国や地域により商習慣や文化が異なるため、それを前提として海外サプライヤと関わることが必要となります。特に言語の違いは、製造現場で働く現地スタッフとのコミュニケーションを困難にし、製造プロセスの審査や指導の障害になります。そこで、現地の文化や言語に精通したスタッフを持つ企業と連携することで、上記の問題を解消し、より効果的な品質管理が行えます。

②自社の品質管理にかかるコストの見直しにつながる
品質管理を自社で行う場合、自社スタッフを海外サプライヤの現場に派遣するために時間的、経済的に大きなコストが発生します。現地に拠点をもち、すぐにスタッフを派遣することができる企業を活用することで、そのコストを削減することができます。
さらに、自社で抱える品質管理のための組織や人員体制を見直し、人件費などの固定費を削減することが期待できます。例えば、サプライヤの生産量が増える時期など特に品質管理が必要となってくるときに外部のサービスを活用することで、自社内で常時大規模な品質管理体制を維持する必要がなくなります。

③品質管理に関する社外の知見を活用することができる
品質管理に関わるノウハウはそれぞれの企業が独自に蓄積しているものであり、社外の情報を得ることができませんが、外部の品質管理サービスを活用することで自社のノウハウだけでなく他社の知見を活用することができます。

④世界情勢の変化による行動制限などの影響を受けにくい
昨今のコロナ禍による行動制限により、海外サプライヤの現地調査ができなくなったケースが多く発生しています。また、世界情勢は日々大きく変動しており、今後も自社スタッフを現地に派遣することが難しくなる事態を想定する必要があります。現地にスタッフを持つ企業と連携することで、このようなリスクに備えることができます。

 

一方、日本国内では一般的ではないためにデメリットもあります。

 

品質管理のアウトソーシングのデメリット

①国内サプライヤは特に第三者が検査や指導に来ることに抵抗がある

②NDAの締結など、サービス利用開始までに時間がかかる

③品質コンサルタント、品質エンジニアなどに対し業務をインプットすることに時間がかかる

 

メリットを最大化し、デメリットによる影響を最小限に抑えるために、品質管理サービスを活用する場合には豊富な実績と知見をもつ企業に委託することが重要です。

 

 

品質管理アウトソーシングの事例

日立ハイテクでは、世界各国で品質管理サービスを展開しているTRIGO社と連携し、国内外のサプライヤの品質管理サービスを提供しています。

ワールドワイドに品質管理サービスを提供するTRIGO社の強み

日立ハイテクが連携するTRIGO社は、フランスに本社を置き、世界各国で品質管理サービスを展開しています。同社の強みを、TRIGO社のAsia Japanese accounts Director 、Jeffrey HAYASHI氏に伺いました。

 

①自動車業界で豊富な実績をもつ
20年以上の品質管理サービスの実績があり、特に自動車業界では豊富な実績を持ちます。欧州やアメリカの有名自動車メーカーもTRIGO社のサービスを活用しており、自動車業界から高い支持を得ています。
また、航空業界でも10年間サービス提供を行っていると言います。

②世界各地の製造現場に品質エンジニア、品質コンサルタントの派遣が可能
欧州をはじめ、アメリカ、中国、インドなど世界中のあらゆる地域に拠点を持ち、品質エンジニア、品質コンサルタントを派遣しています。また、現地スタッフの強みでもある現地の言語でのコミュニケーションが可能であることはもちろん、クライアント本社の言語でもコミュニケーションが可能です。

「例えば、ドイツに本社を持つクライアントの場合、クライアントの本社スタッフとはドイツ語で話し、中国のサプライヤの工場では、マネジメント層とは英語で、現場の作業員とは中国語で話す、といったことも行っています」(Jeffrey氏)

 

TRIGO社を活用する自動車メーカーの中には、TRIGO社の品質エンジニアに本社でトレーニングを受けさせ、中国やインドなどのサプライヤの現場に派遣しているという事例もあります。欧米の自動車メーカーでは、検査に関しては自社では少数精鋭のプロフェッショナルだけを抱え、その他の業務はアウトソーシングする、という考え方が浸透していると言います。

 

TRIGO Asia Japanese accounts Director  Jeffrey HAYASHI氏
TRIGO Asia Japanese accounts Director Jeffrey HAYASHI氏


新しい自動車ブランドの立ち上げにTRIGO社の品質管理サービスが活用された事例

TRIGO社のノウハウが、ゼロから自動車ブランドを立ちあげるときに活用された事例があります。

クライアントはベトナムの新しい自動車メーカー。エンジンやギアなど主要な部品についても海外のサプライヤから調達することになっていましたが、言語の壁や海外のサプライヤの品質管理に関するノウハウの不足などの課題を抱えていたと言います。そこで、TRIGO社にSQE(Supplier Quality Engineer)マネジメントをアウトソーシングしました。
TRIGO社は、これまでの経験を活かし検査の流れ、プロシージャ(手順書)、作業指導内容、作業プロセスなどを作成し、検査のシステム設計を行いました。また、海外サプライヤに駐在エンジニアを派遣し、製造現場の日々の変化や生産・製造工程、不良、現状を把握し毎日報告しています。

「アジア系のメーカーでは品質管理のアウトソーシングはあまり受け入れられていませんでした。しかし、特に2019年からのコロナ禍以降、各国のロックダウンや規制の状況が遠方からでは理解しにくく、グローバルなサプライチェーンマネジメントが難しくなってきており、それを受けてお問い合わせを多くいただいている状況です」(Jeffrey 氏)


日立ハイテク 那珂事業所での事例

日立ハイテクの那珂事業所では、日立ハイテクとTRIGO社が連携して提供しているサプライヤの品質管理サービスの活用を始めています。本取り組みについて、那珂事業所のサプライヤ品質保証部 部長 池井秀樹氏、日立ハイテク サプライチェーンプラットフォーム統括本部SCレジリエンス推進本部 部長代理 豊田哲也氏にお話を伺いました。

那珂事業所では、2020年後半から本サービスの利用を開始し、主に、新規の海外サプライヤの審査と不具合品が発生したときのサプライヤへの改善に向けた指導を委託しています。サービスの利用を開始した2020年には中国のサプライヤ1社、国内サプライヤ2社、グループ会社1社に対し監査と業務フローの確認、2021年には新規サプライヤ11社に対する認定検査と、主に国内サプライヤ3社に対する品質改善指導を、TRIGO社の品質コンサルタントを活用して実施しました。

海外サプライヤに関しては、言語や距離といった課題のほかにも、日本と海外のものづくりの文化の違いも課題になると言います。

「日本と比較すると、海外は『不具合が発生したら交換すればよい』と思っているところが強く、再発防止のためになにが必要かという動き方が弱い、再発防止を検討する文化がないのではと感じています」(池井氏)


そこで、本品質管理サービスを活用し、中国のサプライヤと国内サプライヤを対象にTRIGO社の品質コンサルタントによる検査や審査、品質改善指導を導入しました。
これにより、上記の課題が解決されることに加え、以下のような付加価値があったと言います。

・背景やプロセスを理解してレポーティングをする
報告書の作成にあたり、業務の設計の背景などについて、事前に関係者の要望をヒアリングしたうえでサービス提供を行います。それにより、製品や部品によって異なる見るべきポイントを押さえた「使い勝手の良い」報告書が提出されます。

・サプライヤにとっても品質管理を見直すきっかけとなる
品質管理は非常にクローズドな領域であるため、例えば他社の知見やノウハウが共有されることはありません。グローバルに活躍するTRIGO社の品質コンサルタントの目線で検査や品質改善指導が行われることで、標準的な品質管理がどのようなものかということを知ることができます。

 

また、海外サプライヤに現地の品質コンサルタントが派遣されることには大きなメリットがあると言います。

「品質管理の4M(Man(人)・Machine(機械設備)・Material(材料)・Method(方法))なかで、海外サプライヤは特に『人』の問題が多く発生すると思います。現場の作業員や検査員が頻繁に変わってしまうため、一度安定したものができていても、人が変わることで崩れてしまい不具合を発生させてしまう。TRIGO社の現地の品質コンサルタントは手順書に従って作業が行われているか細かく見て指導を行ってくれます」(池井氏)

「海外サプライヤでは、実際は書面上で書かれてある手順通りに作業されていない、検査器具もマニュアル通りに使用されていないということが意外と多く発生しています。TRIGO社の現地の品質コンサルタントは、サプライヤのマネジメント層の意見だけでなく、現場の作業者に声をかけて作業の内容を確認できる。これは今まで日本からの出張者ではできなかったことなので、今まで以上に現場の実態を把握できるようになりました」(豊田氏)

TRIGO社と連携した本品質管理サービスの効果については、「指導を行ってから1,2年たってから品質が安定するかということを見ていく必要がある」ということで、今後の経過に期待されています。


【左】日立ハイテク 那珂事業所 サプライヤ品質保証部 部長 池井秀樹氏、【右】日立ハイテク サプライチェーンプラットフォーム統括本部 SCレジリエンス推進本部 部長代理 豊田哲也氏
【左】日立ハイテク 那珂事業所 サプライヤ品質保証部 部長 池井秀樹氏、【右】日立ハイテク サプライチェーンプラットフォーム統括本部 SCレジリエンス推進本部 部長代理 豊田哲也氏


まとめ

サプライチェーンのグローバル化が進み、サプライチェーンマネジメントの重要性がますます高まっています。特に、海外サプライヤの品質管理は世界情勢の変動や海外との言語や文化、商習慣の違いなどにより複雑かつ困難になっています。海外からの調達に関するリスクを回避しサプライチェーンマネジメントを最適化するためにも、品質管理のアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。


株式会社日立ハイテク
私たちの暮らしやビジネスを支える主に産業分野におけるお客様の課題にフォーカスし、社会・環境・経済価値創出に向けた最適なソリューションを提供します。専門商社として培ってきたグローバルな顧客基盤やビジネス創出力を生かした「フロント力・課題解決力」を活用し、協創パートナーと連携することで、モノづくりにおける一連のバリューチェーン(企画、研究開発、設計、製造、保守など)や調達、製造、販売におけるサプライチェーンでのお客様の課題解決に貢献していきます。
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