ゴム加工とは。失敗しないために知っておきたいゴムの種類と適切な加工方法

日用品や工業製品など幅広く使用され、あらゆる業界のものづくりを支えているゴム製品。精度の高いゴム加工を行うためには、使用用途や材質に対する適切な知識と加工技術が求められます。そんなゴムの加工を40年以上にわたって行っている亜木津工業株式会社は、切削加工、ウォータージェット加工などをはじめとしたさまざまなゴム加工であらゆる業界のものづくりを支えています。本記事では、同社のマーケティング推進部課長である椎名大輔氏、藤本義之氏、本社管理部部長の青山祐子氏、営業部部長の小川和成氏、製造部部長の赤嶋伸幸氏に、ゴム加工で失敗しないために知っておくべきことについてお話を伺いました。

ゴム加工品はさまざまな用途に用いられる

ゴムを使った製品や部品は、一般家庭で使う日用品や電化製品はもちろん、自動車や工業用機械など幅広く利用されています。使用用途はさまざまですが、主に滑り止め、薬品や液体の漏れ防止、金属同士の傷防止などに用いられることが多く、パッキンや緩衝材、シール材などが代表的です。国内のゴム製品の需要は時代とともに変化しており、かつては自動車や工業機械などの部品加工がメインでしたが、近年は半導体などの製造装置や医療機器での需要が高まっています。

亜木津工業で製造している各種ゴムシール、クッションゴム製品(提供:亜木津工業)
亜木津工業で製造している各種ゴムシール、クッションゴム製品(提供:亜木津工業)


ゴムの種類や特徴と主な使用用途

ゴムの種類や特徴によって、得意な環境や用途が異なります。そのため、ゴム加工で失敗しないためには、使用用途や役割に合った適切なゴムを選ぶことが大切です。ゴムの種類とその特徴、一般的な使用用途などをご説明します。

ゴムの種類 特徴 適用先 耐熱(耐寒温度) 主な硬度
天然ゴム(NR) 反発弾性、機械的強度、引裂強度に優れている一方で、耐油性、耐熱性に劣る。 トラックのタイヤ・ホース・靴底・ベルト・一般工業用品など -30〜65℃ 60°
ニトリルゴム(NBR) 耐油性に最も優れ、耐摩耗性、耐老化性も良好。 ガスケット・オイルシール・印刷ロール・耐油ホースなど -30〜80℃ 70°(標準硬度)/50°/90°
エチレンプロピレンゴム(EPDM) 耐候性、耐オゾン性、耐薬品性に優れていて、耐寒・耐熱性にも良好。 自動車用部品、窓枠ゴム・スチームホース・電線被覆など 0〜100℃ 70°(標準硬度)/50°/90°
クロロプレンゴム(CR) 耐候性、耐オゾン性、耐摩耗性等、平均した性能を有する。 電線被覆・コンベヤベルト・ゴムロールなど 0〜70℃ 60°(標準硬度)/45°/90°
ブチルゴム(IIR) 耐ガス透過性優。耐候性、耐オゾン性が良好で、極性溶剤への耐性良好。 自動車や自転車のタイヤのインナーチューブなど 0〜100℃ 60°
シリコーンゴム(SI) 反発弾性が良く、高度の耐熱性、耐寒性を有する。耐油性も良好。 家電製品・自動車関連部品・医療機器・食品関連部品・絶縁部品・注射液容器など -30〜150℃ 50°/70°/30°
フッ素ゴム(FKM) 最高の耐熱性と耐薬品性、耐油性を有する。 化学工場の耐食パッキン・ガスケット・ダイヤフラム・ホース・ポンプ部品など 0〜200℃ 80°(標準硬度)/60°/50°
スチレン・ブタジエンゴム(SBR) 天然ゴム(NR)より耐摩耗性優。機械的特性は良いが、耐熱性が劣る。 タイヤ、ホース・靴底・ベルト・一般工業用品など 0〜70℃ 65°
ウレタンゴム(U) ポリエステル系、ポリエーテル系があり、機械的強度が強い。 ローラ・タイヤ・ベルト・ホース・クッション材・ジェットコースターの車輪など 0〜70℃ 90°(標準硬度)/80°/70°/60°/50°/30°

 

「お客様からの図面を確認すると、使用用途や役割よりもハイスペックなゴムを使うよう指示されていることが多々あります。ゴムは材質の種類も多く、特徴や得意とする環境もさまざまなので、適したゴムを選ぶには専門的な知識が必要です。弊社からお客様に使用用途と役割などをヒアリングした上で、ゴムの材質やグレードを変更しても問題ないと判断してご提案したことでコストダウンにつながったケースもあります」(小川氏)


ゴム加工9つの主な方法と特徴

ゴムは金属に比べて柔らかく、伸縮性や弾性があるため、加工がしづらいと思われがちな素材です。しかし、材質により適切な加工方法を選択することで、シンプルなものから複雑形状なものまで形にすることができます。ゴムの加工方法はゴムの種類によって変わることはなく、製品や部品の形状によって決まります。ゴム加工で需要の高い9つの加工方法とその特徴をご紹介します。

①金型成形

ゴム製品の製造方法として一番メジャーな製法です。プレス成形、射出成形、押出成形があり、形状や生産数量などにより選択されます。大ロットの生産に適しており、高精度なものや微細なものを製造するのに向いています。初期投資として金型の作成費が必要になり、その製作納期もかかるので、試作や少量多品種の生産には向きません。
参考納期:金型作成+製品の製造で1〜1.5カ月

②切削加工

回転工具を使い、ゴムを削って加工する製法です。形状によってコストや納期は異なりますが、1個から数百個程度であれば、金型成形よりも切削加工が適している場合があります。初期費用(金型代)が掛からないため、試作品を作るのにも向いています。どのような材質のゴムでも加工でき、硬度が低いほど加工の難易度は上がります。

「ゴム加工というと、金型成形のイメージが強いですが、削って加工することもできます。少量多品種の場合は、切削加工の方がコストダウンや納期短縮になることが多いです。また、製品の加工データは保存することができるので、切削加工の場合でも前回の加工データを活用したリピート対応も可能です」(赤嶋氏)
参考納期:7〜14日


切削加工を行うマシニングセンタ(左)とシリコーンゴム70°を加工している様子(右)(提供:亜木津工業)
切削加工を行うマシニングセンタ(左)とシリコーンゴム70°を加工している様子(右)(提供:亜木津工業)


③トムソン打ち抜き加工

木の板に刃物を埋め込んだ「トムソン型」※を使い、材料をプレスして打ち抜く加工方法です。トムソン型の製作費は、平均で数千円〜1万円ほどとリーズナブルなため、イニシャルコストも抑えることができ、薄物製品の量産に最適です。材質は限定されませんが、板厚が3mm以下のものを加工するのに適していて、3mmを超えると断面のクオリティーが下がる可能性があります。サイズの小さなものやゲルのような柔らかさの素材を加工する場合は難易度が高まります。
※地域によっては「ビク型」とも呼ばれます。
参考納期:トムソン型作成1〜2日+製品の製造で4〜5日


トムソン打ち抜き加工の様子(提供:亜木津工業)
トムソン打ち抜き加工の様子(提供:亜木津工業)


④カッティングプロッター加工

CADデータ通りに刃物を動かすことでゴムシートをカットする加工方法です。カッターナイフのような刃物で加工をするため切断面の仕上がりは良好ですが、刃物自体に厚み(幅)があるので急な曲線のある形状などには適していません。板厚が5mm以下のゴムシートを加工する際に適していて、板厚が6mmを超える場合は、ウォータージェット加工(下記参照)を選択します。加工データを保管できるので、リピートや同じ条件の形状加工や小ロットにも対応可能です。
参考納期:3〜5日


カッティングプロッター(左)と加工の様子(右)(提供:亜木津工業)
カッティングプロッター(左)と加工の様子(右)(提供:亜木津工業)


⑤レシプロカッター加工

④のカッティングプロッター加工と同じくシートをカットする加工方法ですが、刃物が水平方向だけでなく垂直方向に高速移動しながら動くため、カッティングプロッター加工では加工できない厚くて硬い材料の加工に適しています。
参考納期:3〜5日


⑥ウォータージェット加工

高圧で噴射した水で、ゴムをカットする加工方法です。6mm〜50mmほどの厚みがある製品の小ロット生産に向いています。微細な加工にも向いているため、形状によっては2〜3mmの厚みでもウォータージェット加工を選ぶ場合もあります。同じ切断加工である④のカッティングプロッター加工や⑤のレシプロカッター加工と比較すると、加工単価は高くなります。
参考納期:5〜6日


ウォータージェットの機械(左)と加工の様子(右)(提供:亜木津工業)
ウォータージェットの機械(左)と加工の様子(右)(提供:亜木津工業)


⑦注型成形

「注型=真空注型」が一般的で、真空中で型に液体状のゴムを流し込み、固化させて成形する加工方法です。ゴム材質はシリコーンとウレタンに限られます。型はシリコーンの場合はアクリル製、ウレタンの場合はシリコーン製となります。型の耐久性が高くないため数個~20個ほどの単発的な製造でメリットが出ます。ウレタンの場合は同じウレタン材料で簡易型を作る製法が別にあり、型代(イニシャルコスト)を抑えることができますが、この方法で製造できる企業は国内でもごくわずかです。
参考納期:15〜20日


⑧焼付加工

金属のシャフトや部材に生ゴムを加硫接着する加工方法です。ウレタンゴムの場合は、型に液状ウレタン材料を流し込んで熱をかけて硬化させる製法となります。接着材での接着と比較して接着強度に優れているため、印刷ローラーや搬送用ローラー、車輪などの製造に利用されています。搬送物によってローラーの形状や材質など多種多様のため費用感はまちまちですが、芯金を手配するかどうかでも変わります(基本は依頼主が支給)。
参考納期:10〜15日


⑨研磨加工

切削加工後のゴムの表面をさらに少量ずつ研削砥石などで削り、滑らかな状態にするための加工方法です。他の加工方法でカットしたときに生じたズレなどを、機械を使って微調整し、最後に製品の寸法精度を高めます。仕上げに行うイメージです。材質や硬度、製品の部分によって研磨できないものもあるため、外観や機能的に研磨が必要な箇所のみ加工します。
納期:仕上げとして行うため、各工程の中に含まれる。


一般的なゴム加工の5つの工程

ゴム製品が完成するまでには、どのような工程があるのでしょうか? 一般的なゴム加工の5つの工程をご紹介します。

①裁断
図面上の寸法や形状を確認し、材料の切りしろを残して大断ちします。

材料を裁断している様子(提供:亜木津工業)
材料を裁断している様子(提供:亜木津工業)


②加工前工程(加工準備)
図面確認や加工の段取り、加工の設備選択などを行います。

③加工作業
切断や切削、研削を行い、図面や依頼書の寸法や形状に加工します。

④仕上げ
加工品に付着している汚れや潤滑油などを、溶剤を使って脱脂・洗浄します。

⑤検査
指定の寸法と形状になっているかを、ノギスや画像測定器、スキャナーなどで検品します。


特殊な材質のゴムの調達や加工方法の提案をはじめ、ゴム加工に幅広く対応

今回お話を伺った亜木津工業は、切削加工やウォータージェット加工など、幅広いゴムの機械加工に対応できる会社です。これまでに自動車の製造設備や半導体の製造装置などに使われるゴム製部品を多数製造してきました(2021年度機械加工実績:35,000件)。顧客から提供される図面やデータをもとに、使用用途や形状、コストについてのヒアリングを細かく行い、材料や加工方法を提案。NC工作機械から汎用加工機まで種類豊富な加工設備を駆使し、精密なゴム加工を行います。材料関連のパートナー企業も多く、特殊な材料の調達も可能です。リピート率も高く顧客からは、「これまで金型を使ったゴム成形しか行っていなかったが、機械加工で対応してもらえたことで納期が短縮でき、初期コストも不要になって製作方法の選択肢が広がった」と、高い評価を得ています。


亜木津工業の製作事例。合成ゴムのCR硬度60°の板材からマシニングセンタで製作した配線保護のためのグロメット製品(左)と、食品対応のシリコーンゴムの硬度50°の板材から汎用旋盤で製作した食品機械向けシールゴムとクッションゴム類(右)(提供:亜木津工業)
亜木津工業の製作事例。合成ゴムのCR硬度60°の板材からマシニングセンタで製作した配線保護のためのグロメット製品(左)と、食品対応のシリコーンゴムの硬度50°の板材から汎用旋盤で製作した食品機械向けシールゴムとクッションゴム類(右)(提供:亜木津工業)


今後について椎名氏は次のように語ってくださいました。「これからは今まで培ってきた技術を生かして、医療業界や航空・宇宙業界などの最先端の領域にも積極的にチャレンジしていきたいと思っています。今までゴム製品を金型成形でしか製作していなかった方や使用用途や形状に合う最適なゴムの種類や加工方法を知りたいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。大阪、東京、厚木、名古屋、福岡に営業拠点を構えていますので、全国からのお問い合わせをお待ちしています」


まとめ

ゴム加工には、金型成形以外にも切削加工やウォータージェット加工、カッティングプロッター加工などさまざまな加工方法があり、使用用途や形状によって加工方法を選ぶ必要があります。ゴムの材質も幅広く、得意な環境や強みが異なるため、ゴムの特徴と加工方法をうまく組み合わせることが、ゴム加工で失敗しないための重要なポイントです。ゴム加工でわからないことやお困り事があれば、ぜひ亜木津工業へご相談ください。



亜木津工業株式会社
1978年にゴムとガスケットの加工、販売会社として創業。1991年に大阪市城東区に本社と工場を開設、工作機械を導入しゴムの切削加工をスタートする。現在は、大阪、東京、厚木、名古屋に支店及び工場、福岡に営業所を展開。多種多様な材質のゴムに対する豊富な知識と熟練の加工技術で、さまざまな業界の製作ニーズにワンストップで対応している。
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