部品加工とは。三正工業に聞く部品加工の流れとポイント

機械や器具類の組み立てに欠かせない部品。その製造には、精度の高い加工技術と徹底した工程管理が必要になるといいます。質の高い部品加工を行うために、具体的にどのようなことに注意しなければならないのか。今回は、東京都葛飾区にある「流体制御機器」の部品加工で技術を培ってきた三正工業株式会社に、部品加工のポイントや加工の流れなどについてお話を伺いました。

部品加工とは。高い加工精度で部品加工に携わってきた三正工業に話を伺いました

部品加工とは、機械や器具類の組立の一部として使う部分品(パーツ)を製造することです。材料から部品を製造するには、さまざまな工程がありますが、品質も担保しながらスムーズに部品加工を行うには、技術力だけではなく、工程管理も重要です。

本記事では、油圧機器、空気圧機器、真空機器など「流体制御機器」の部品加工で培った技術力で加工分野を広げている、三正工業株式会社の代表取締役社長・飯島元秀氏に、金属分野における部品加工の流れや各工程でのポイント、注意点について伺いました。


部品加工の流れ

金属分野における一般的な部品加工の流れは、主に以下の8つの工程から成ります。


1.工程設計
顧客から図面をいただいたあと、要望に合わせて、素材や工程など最適な加工条件を設定します。

2.素材調達
スチールやステンレス、電磁ステンレス、鋳物、真鍮、アルミなど必要な材料の調達を行います。

3.切削加工
NC旋盤やマシニングセンター、多面角取機、油圧プレスなどを使って切削加工を行います。


切削加工の様子(提供:三正工業)
切削加工の様子(提供:三正工業)


4.熱処理加工
焼入れ焼戻し、光輝焼入れ・焼戻し、浸炭、浸炭窒化、真空浸炭、高周波、ガス軟窒化、塩浴軟窒化(イソナイト)、真空磁気焼鈍、不動態化処理などの方法で熱処理を行います。

5.表面処理加工
亜鉛メッキ、無電解ニッケルメッキ、硬質クロームメッキ、硬質アルマイト、四三酸化鉄皮膜、リン酸亜鉛皮膜、ドライコートなどの方法で表面処理加工を行います。

6.仕上げ加工
センタレス研削、円筒研削、内径研削、平面研削、ホーニング加工、スーパーラッパー、バニッシング、ハードターニング、鏡面みがきなどの方法で、研削を行い、仕上げます。

7.洗浄
アルカリ洗浄、炭化水素洗浄、臭素超音波洗浄などで、仕上げ加工した部品を洗浄し、コンタミを除去します。

8.検査
三次元計測機、画像測定器、測定顕微鏡、真円度測定器、形状測定器、硬度測定器、内視鏡、投影機、各種マイクロメーター、ノギス、各種ゲージなどを使って、加工ロットごとに全製品の抜き取り検査を実施し、品質を保証します。


部品測定の様子(提供:三正工業)
部品測定の様子(提供:三正工業)


部品加工の種類

部品加工の種類と加工方法にはさまざまありますが、今回は主に用いられる4つの部品加工とその加工方法について説明します。

1.切削加工

切削加工とは、部品を刃物で削る加工法です。NC旋盤やマシニングセンター、多面角取機、油圧プレスなどを使って切削加工を行います。なお、切削加工をする際は、主に以下の2点に注意する必要があります。

切削加工の様子(提供:三正工業)
切削加工の様子(提供:三正工業)


①材質(材料)に合わせた適切な加工条件の選定
材質(材料)と切削に使われる刃物の相性には注意が必要です。また、加工で使用する機械の回転数にも注意する必要があります。例えば、材質(材料)に対して刃物や回転数が合っていなければ、刃物の摩耗が激しく、折れることもあります。また、精密さを追求する上でも、刃物の選定や機械の回転数、刃物を当てる速度など、材質(材料)に対する切削条件が重要になります。

②工具の管理
例えば、材質(材料)と相性の良い刃物を使って適切な回転数で切削する場合でも、特に量産品の場合は刃物の消耗は避けられません。刃物の切れ味が悪くなると、次工程でトラブルの原因となるバリが発生しやすくなり、品質に影響を及ぼしてしまいます。そのため、「200個削ったら刃物をチェックする・交換する」といったような工具管理のルール作りが大切です。

2.熱処理加工

熱処理加工とは、硬さや耐久性など金属の性能を向上させることを目的に、鋼をはじめとする金属を加熱・冷却する加工法です。熱処理には主に部品全体を熱処理する「全体熱処理」と、部品の表面を熱処理する「表面熱処理」があります。


・全体熱処理
素材全体の金属組織を変えるために施す熱処理です。例えば、主に鋼材で部品全体の金属組織を変える「焼入れ・戻し」や、硬化した材料を軟化させる「焼なまし」、材料の結晶組織を整える「焼ならし」などがあります。

・表面熱処理
内部の金属組織はそのままに、素材の表面のみに施す熱処理です。例えば、部品の表面のみを加熱する「表面焼入れ」や、表面に炭素を浸み込ませて焼き入れを施し、表面を硬化させる「浸炭」、 高周波によって誘導加熱する「高周波焼入れ」などがあります。


熱処理の方法は他にもいろいろとありますが、どういう工程を経れば図面の条件を満たせるか検討し、最適な方法を選ぶ必要があります。


熱処理を行う炉(提供:三正工業)
熱処理を行う炉(提供:三正工業)


3.表面処理加工

表面処理加工は、金属の腐食やサビを防いだり、保護性能を向上させたりすることなどを目的に、部品の表面に保護膜を形成する加工法です。金属の表面処理加工の種類には「メッキ」や「アルマイト」などがあります。


・メッキ
部品の表面を薄い金属膜で覆う加工法です。例えば、サビやキズに強く、長期にわたって皮膜が維持できる「亜鉛メッキ」や、均一な膜厚を得やすい「無電解ニッケルメッキ」、非常に硬い金属皮膜によって強度や耐摩耗性を実現できる「硬質クロームメッキ」、非常に薄い皮膜のために精度が必要な部品の防サビ処理として使われる「四三酸化鉄皮膜」などがあります。

・アルマイト
「陽極酸化処理」とも言い、アルミニウムを電解処理し、生成した酸化物で表面を覆う加工法です。アルマイトによる表面処理加工ができる材料は、アルミニウムのみとなります。例えば、厚いアルマイト皮膜によって耐食性だけでなく、強度や耐摩耗性にも優れた「硬質アルマイト」などがあります。

4.仕上げ加工

仕上げ加工とは、部品を研削して仕上げる加工法です。例えば、部品の外周を研削して高精度な寸法公差や面粗さが可能な「センタレス研削」「円筒研削」、部品の内側を研磨し精度を向上させる「内径研削」などがあります。


仕上げ加工の様子(提供:三正工業)
仕上げ加工の様子(提供:三正工業)


部品加工全般における注意点

部品加工全般における注意点として、技術力に関すること以外では大きく以下の4つが挙げられます。


1.材料の管理を明確にする
部品の材質(材料)は、見ただけではなかなかその違いがわからず、識別がつきづらいものです。そのため、材料や材質が一目でわかるよう、それぞれに明確な表記をして管理することが求められます。

2.部品加工の条件を明記する
部品加工の品質を高い水準で均一に保つためには、誰が手がけても一定の品質に仕上がるように、部品加工の条件を決める必要があります。例えば、加工するためにどの道具を使うのか、品質管理を行うためにどのくらいの頻度でどういった部分をチェックするのかなどを決めて明記し、それに従って作業する必要があります。

3.加工工程における手順やルールを明記する
毎回、同じ手順で仕事を進められないと、部品の性能が毎回一定の水準を満たせない可能性が出てきます。しかも、性能を確保する以前に、そもそもまったく異なる部品が作られてしまうことも考えられます。そのため、何度加工しても、あるいは加工する人が変わっても一定の品質で仕上げることができるよう、部品加工の条件を明記するのと同じく、部品加工の工程もルール化する必要があります。

4.工程間の管理を徹底する
工程間の管理が徹底できていないと、大きなトラブルが起こる可能性があります。例えば、「工程を一つ飛ばしてしまった」「最終的なチェックを行わずに、顧客に品物を納品してしまった」などの事態にもなりかねません。品質管理を盤石にするためには、網羅的な工程管理の徹底も欠かせません。


「特に、当社のように一貫生産をしている企業は注意が必要です。当社では、管理システムを導入しているので、1番の工程が終わったら、2番の工程の指示票が自動的に出るようになっています。ですから工程間でミスが起こることはありませんが、工程が多岐にわたる部品が多いので、人の頭だけに頼って進めていると、どこかしらで工程を飛ばすなどのミスが出てきてしまいます」(飯島氏)


ミスなく製造するためには、工程管理は欠かせない(提供:三正工業)
ミスなく製造するためには、工程管理は欠かせない(提供:三正工業)


部品加工を失敗しないためのパートナー企業との進め方

納期を守り、品質の高い部品を顧客に納品し続けるには、自社内だけの努力にとどまらず、信頼のおけるパートナー企業との連携や協力が欠かせません。特に、一貫生産で部品加工を行う企業では、パートナー企業との仕事の進め方が部品加工の良し悪しを左右するポイントになります。そのため、パートナー企業との協業に際しては、大きく以下の2点を押さえることが重要です。

1.生産現場での運用管理を確認・共有する

部品の種類は多岐にわたり、かつ見た目が似ているものも多いため、生産現場では部品の判別を間違えたり、混ざってしまったりといったリスクが高いのが特徴です。
そのため、部品ごとに収納する箱に必ず品番を明記したり、チェックシートを用いて確認する機会を設けたりと、部品加工における生産現場での運用管理を決め、双方で共有しておく必要があります。
また、取引をする前に、パートナー企業の工場監査などをして、生産現場での運用管理についてヒアリングをしたり、こちらの方針を共有してコンセンサスを取っておいたりすることも重要です。

2.計測器、測定器の管理をする

万が一、部品を検査する計測器や測定器が狂っていたら、次の工程に進むことはできません。最終的に顧客に完成品を納品することができず、加工の作業自体も水の泡になってしまう可能性があります。そのため、定期的なチェックなど、パートナー企業における計測器や測定器の管理が欠かせません。

「当社では1年に1回、測定器自体に異常が起きていないかチェックする機会を設けています。これは協力会社にもお願いしていることです。もし、協力会社さん側でチェックができない場合は、当社で1社につき10機(マイクロ、ノギス)まで無償で校正できるようにしています。それくらい、計測器や測定器の管理は、部品加工の品質管理において重要なのです」(飯島氏)

測定器。品質の良い部品を納品するためには、測定器自体の管理も欠かせない(提供:三正工業)
測定器。品質の良い部品を納品するためには、測定器自体の管理も欠かせない(提供:三正工業)


ちなみに、パートナー企業が増えることで、手がけられる部品加工の幅は格段に広がったと飯島氏は話します。

「前向きな会社さんとご一緒する機会が増えたことで、今までできなかった部品加工にチャレンジできるようになり、手がける部品の種類は広がりました。ありがたいことに、当社とタッグを組むことで仕事が増えたとおっしゃる会社さんも多いです。何より、当社と付き合うことで、『今まで避けてきた材質を当たり前に加工できるようになった』『自分たちももっと品質管理に力を入れていこう』といった声をいただく機会が増えました。その前向きな姿勢に、私たちも刺激を受けています」(飯島氏)


部品加工だけでなく、調達から組み立てまでの一貫生産で分野を広げていける

油圧機器などの流体制御機器で培った技術をベースに、現在も精度の高い、より難しい部品に積極的にチャレンジしている三正工業。品質や納期、工程管理といった品質管理にも注力しながら、調達から組立まで一貫生産を実現していますが、今後は、自動化や省人化が進む分野でも、貢献していきたいと考えています。

「例えば今、省人化ロボットや自動化ロボットが、製造現場や大型倉庫などでもよく用いられています。省人化するためのロボットアームは、ほぼ空気圧機器の部品を利用して、空気を送り込んで動かしているもの。ですから、自動化や省人化が進む分野や業種では、私たちの技術やノウハウが、これから十分お役に立てるのではないかと考えています」(飯島氏)


まとめ

機械や器具類の組み立ての一部として、欠くことのできない部品加工。自動化や省力化が進む昨今、より微細で精度の高い部品加工に関する技術力やノウハウは、今後ますます欠かせません。油圧機器や空気圧機器、半導体製造装置はもちろん、自動化・省力化機器などの部品製造において、分からないことやお困り事があれば、ぜひ三正工業へご相談ください。


三正工業株式会社
1958年創業。東京都葛飾区に本社を構える、流体系制御機器の部品メーカー。油圧機器で培った技術をベースに、一貫生産で、新幹線の制動装置や建設機械、工作機械、半導体製造装置などの部品加工を、ミクロンオーダーの加工精度で提供。2011年にはベトナムのホーチミン市郊外(ドンナイ省)に現地法人も設立し、工場を稼働。ベトナムをハブに、東南アジア諸国において国内外メーカーの受託製造やコストメリットのある提案も行う。
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