焼付塗装の剥がれはなぜ起きる? 焼付塗装のプロに聞く、剥がれないためのポイントとは

焼付塗装とは、塗料を塗って乾燥炉に入れ、100度以上の高温で加熱して塗料を硬化させる塗装方法で、耐候性・耐薬品性・耐磨耗性が高く、剥がれにくいといった特徴があります。塗装をする上で剥がれは一番大きな問題ですが、剥がれを防ぐには下処理や適正な温度帯での焼き付けなど、きちんとした工程を踏むことが大切だと言います。今回は、知県名古屋市に本社を構える焼付塗装と精密板金加工の会社である株式会社ミヤモトに焼付塗装のポイントについてお話を伺いました。

40年以上焼付塗装に携わってきたミヤモトに、剥がれの原因や剥がれないためのポイントについて話を伺いました

塗料に熱を加えて硬化させる焼付塗装。耐候性・耐薬品性・耐磨耗性が高く、剥がれにくいのが特徴です。しかし、そんな焼付塗装でも、塗り方によっては半年、1年後などに剥げてしまうこともあります。その原因は何か。どうすれば、剥がれにくい焼付塗装ができるのか。1978年の創業以来、焼付塗装に携わってきた株式会社ミヤモトの代表者・井上卓己氏に、焼付塗装のポイントを伺いました。


焼付塗装とは。そのメリット・デメリット

焼付塗装とは、塗料を塗って乾燥炉に入れ、100度以上の高温で加熱して塗料を硬化させる塗装方法です。

焼付塗装の種類

焼付塗装の種類は、塗料によって「溶剤系」と「粉体系」の2種類に大きく分かれます。

・溶剤系
液体の溶剤を製品に吹き付けて、乾燥炉に入れて乾燥させるもの。常温乾燥塗料に比べると皮膜が薄く、塗りムラは少なく美しいのが特徴です。


塗装前のエアーブローの様子。塗装前に塵やほこりを取り除く(提供:ミヤモト)
塗装前のエアーブローの様子。塗装前に塵やほこりを取り除く(提供:ミヤモト)


・粉体系
粉状の塗料を静電気で製品に付着させ、加熱することで粉状の塗料を溶かして焼き付けるもの。有機溶剤を使用しないので環境に優しく、皮膜硬度や強度が高く傷がつきにくいのが特徴です。

焼付塗装のメリット

常温乾燥塗装と比べると、耐久性が高く傷がつきにくく、剥がれにくいのがメリットです。そのため、屋外で使われるものや長期間使用する工業用製品などには焼付塗装が向いています。

焼付塗装のデメリット

焼付塗装のデメリットは、常温乾燥塗装に比べると費用が高いこと。乾燥炉を使用する必要があるため、その分高くなります。


焼付塗装が剥がれる主な4つの原因

剥がれは、塗装をする上で一番大きな問題です。その主な4つの原因についてご紹介します。

1.下処理が甘い

剥がれの主な原因は錆です。そして、錆びる原因の一つが、塗装する製品の下処理がきちんとできていないことにあります。鉄などの金属は加工の際に油を使用するので、塗装の前に脱脂作業が必要です。この脱脂作業が甘かったり、きちんと脱脂しても作業中に人が素手で触ることで人の脂がついてしまったり、目に見えない汚れが残っていたりすると、その部分から錆びて剥がれてしまうことが多いです。

2.焼付の温度が適正でない

焼付の温度も剥がれの原因になります。塗装の際には、下塗りとしてエッチング用の塗料を塗ってから上塗りをするのですが、高温で焼きすぎるとエッチング用塗料と上塗りの塗料が密着しなくなります。剥がれやすくなってそこから錆びてしまうため、適正な温度帯で焼き付ける必要があります。

3.下塗りの塗料がきちんと塗れていない

下塗りに使うエッチング用の塗料には、ある程度錆を防止する成分が入っています。しかし、それが綺麗に塗れないまま上塗りの塗料を塗ると、きちんと塗れていないところから錆が発生して剥がれてしまいます。価格を重視してこの工程を省く顧客や会社もありますが、塗装を長持ちさせるためにはきちんとした工程を踏むことが大切です。


下塗り塗装の様子。ムラがあると錆の原因になるため丁寧な作業が求められる(提供:ミヤモト)
下塗り塗装の様子。ムラがあると錆の原因になるため丁寧な作業が求められる(提供:ミヤモト)


4.溶剤の希釈率を間違っている

塗料を溶剤で薄めて溶く際に希釈率を間違うと剥がれの原因になります。また、溶剤を間違えてしまうことで剥がれやすくなったりもします。


焼付塗装は細かく薄く塗り重ねることで、滑らかな仕上がりを実現

焼付塗装からスタートしたミヤモトは、25年以上前に顧客からの要望に応える形で、精密板金加工も行うようになりました。取引先は、通信機器関係や半導体製造装置メーカー、医療機器メーカー、工場の自動化装置など多種多様。「分野を問わず、短納期でお客様の注文や要望に柔軟に対応できるのが強み」と代表の井上氏は語ります。


乾燥炉の様子。ミヤモトには大型の乾燥炉もあり、縦2m×横2m×高さ3mの大きさまで焼くことができるのも強み(提供:ミヤモト)
乾燥炉の様子。ミヤモトには大型の乾燥炉もあり、縦2m×横2m×高さ3mの大きさまで焼くことができるのも強み(提供:ミヤモト)


「塗装に関する注文や要望は幅が広く、お客様や納品先によって色もまちまち。ご要望に合わせるためには、塗料から作らなければならないことがほとんどです。その場合、メーカーに色合わせをしてもらうのですが、当然それにも工期がかかります。しかし、弊社は板金加工から請け負っているため、色を先に発注してその間に製造を進められるので、希望の納期にお応えすることができるのです」(井上氏)

同社が特に塗装をする上で気をつけているのは、「お客様の要望以上に綺麗に塗ったものを提供すること」と言います。金額や発注内容によってランク付けすることなく、全ての製品を高い水準で塗装しています。

「大事にしているのは、仕上がりを触った時の感覚です。ツルッとした肌触りの方が見た目も綺麗なのですが、雑に塗るとみかん肌のように少しザラザラした仕上がりになる。滑らかに仕上げるためには細かく薄く塗るのが大事です。塗料をいっぺんに出すとボテッとした仕上がりになるので、少しずつ丁寧に塗り重ねていくことが重要ですね」(井上氏)


丁寧に塗り重ねることで、滑らかに仕上がる(提供:ミヤモト)
丁寧に塗り重ねることで、滑らかに仕上がる(提供:ミヤモト)


原因不明の剥がれにも対応する、ミヤモトの技術力

ミヤモトには、他社では対応できなかった製品が持ち込まれることもあります。その一つがある工業機器メーカーからの「他社で塗装した製品が半年から1年程度で錆びてしまったので塗装会社を探している」という依頼でした。

「実は、錆の原因は錆びた後のものをどれだけ見ても分かりません。また、その製品の塗装に関しては仕様書がなく塗装屋任せになっていたため、どのような塗り方をしたかもはっきり分かりませんでした。『ひとまず塗ってみよう』と弊社で同じものを塗装し、工業試験場で試験したところ品質的に問題なくクリアすることができました。特殊な塗り方をしたつもりはないので、前の塗装は下処理が甘かったのではないかと推察しています」(井上氏)

このような試験対応までは受けていない塗装屋は多いのだそうです。
「注文として受けるなら受けるけど、ひとまず試験してみてほしいといった依頼は対応してくれない会社も多いです。しかし、弊社は私自身が『なんで剥がれてしまったんだろう』と気になるタイプ。剥がれは塗装屋にとって永遠のテーマですから、一つでも多く解決しておきたいという気持ちが働きます」(井上氏)

もう一つ、他社で断れてミヤモトに持ち込まれた事例があります。それは特殊な加工で、柄を入れる塗装でした。
「シボ加工といって、表面をレザー調に仕上げる塗り方をしてほしいというご要望でした。平らに塗った後にスプレーガンを絞って吹き付けるのですが、『できるところがない』と困って弊社にご相談に来られたんです。弊社では経験のあるものだったのでお受けしましたが、たとえ経験がなかったとしても引き受けていたと思います。塗料は非常に種類が多くて、わたしたちでも全てを把握しきれません。知らない塗料や塗り方であった場合でも、塗料の代理店やメーカーの方々に相談して、きちんと要望に応えるようにしています。日々勉強ですね」(井上氏)

このように顧客の要望には全力で応えるミヤモト。同社が大事にしているのは、「キレイに仕上げる」「柔軟な対応をする」、そして「約束は守る」の3点です。そして、今後の展望としても「特にジャンルを絞らず、何かお困りのことに対応したい」と話します。
「ただ作業として受けるのではなく、お困り事を解決していくことにチャレンジしていきたいですね。もちろん、依頼を受けて塗るというのも受けていますが、それだけだとちょっと物足りなさも感じます。ですから、ジャンルを問わず焼付塗装にお困りの会社がありましたら、ぜひご相談ください」(井上氏)



株式会社ミヤモト
愛知県名古屋市に本社を構える焼付塗装と精密板金加工の会社。機構設計・加工から焼付塗装まで一気通貫で行うことができるため、短納期への要望に応えることができる。分野を問わず、お客様の注文や要望に柔軟に対応できるのが強み。
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