受託研究開発のメリットとは。創業135年の老舗セラミックスメーカー・マルワイ矢野製陶所が誇る4つの成形技術

受託研究開発は、機械や施設、研究員を自社で用意する必要がないので、開発にかかるコストの大幅削減を実現することができます。また、それだけでなく自社では解決できない課題に直面したとき、自社にはない技術を持った外部に委託することで、他の解決方法を試すことができるそうです。今回は、愛知県瀬戸市にあるセラミックスメーカーの合資会社マルワイ矢野製陶所に受託研究開発の強みや長所についてお話を伺いました。

「合資会社マルワイ矢野製陶所」にセラミックスの受託研究開発について話を伺いました

合資会社マルワイ矢野製陶所は、愛知県瀬戸市に本社を構えるファインセラミックスメーカーです。オーダーに合わせた材料選びをはじめ、半導体装置メーカーから造船や発電プラントまで幅広い業界の製品を製造しています。原料の生産から成形、加工まですべての工程を社内で対応できることが強みです。

1887年に洋食器製造の製造会社として創業後、陶器の製造で培った知識やノウハウをセラミックスの製造加工に応用してきました。1998年に株式会社三菱マテリアルと技術提携がスタート。その翌年には、三菱マテリアルの電融マグネシアセッター事業が移管されました。その際に譲り受けた機器を生かし、研究開発型の事業をさらに強化。あらゆる種類のセラミックスを一次原料から製造し、「押し出し」「CIP(ラバープレス)」「鋳込み」「プレス」の4種類の方法で成形し、顧客のさまざまなニーズに応えてきました。


本社にある研究棟(提供:マルワイ矢野製陶所)
本社にある研究棟(提供:マルワイ矢野製陶所)


マルワイ矢野製陶所の主要な製造品
クリーンエネルギー:燃料電池、太陽光電池、リチウム電池などの部品
工業用ヒーター:絶縁碍子、マグネシア絶縁菅
理化学機器:ルツボ、トレー
半導体装置:リチウム電池材料焼成用セッター、サヤ など

今回は、社長の矢野仁氏にマルワイ矢野製陶所が得意とする受託研究開発の強みや長所を伺いました。


受託研究開発のメリット

企業が受託研究開発を依頼すると下記の3つのメリットが生まれます。

・開発に必要な機械や施設を所有しなくてよい。
・その分野に精通したエキスパートを雇用しなくてよい。
・異業種、異分野の技術やノウハウを取り込める。

機械や施設、研究員を自社で用意する必要がないので、開発にかかるコストの大幅削減を実現。また自社では解決できない課題に直面したとき、自社にはない技術を持った外部に委託することで、他の解決方法を試すことができます。


マルワイ矢野製陶所の受託研究開発における強みとは

1.専門性の高いエキスパートに全行程を一任

セラミックスの加工工程は、原料製造、成形、一次加工、焼成、二次加工、検査、出荷と全部で7工程。マルワイ矢野製陶所では、その全行程を社内で対応しています。特に、重要な成形工程では、「押し出し成形」「CIP成形」「鋳込み成形」「プレス成形」と、セラミックスの加工で主要となる製法を網羅。セラミックス加工会社の中でも、このように4種類の成形工程を行っている会社は希少です。それぞれの成形で使う原料も異なりますが、マルワイ矢野製陶所では専門性の高い技術者たちが一次原料から調合するため、安心して任せることができます。

左上から時計回りに「押し出し成形」「CIP成形」「鋳込み成形」「プレス成形」の機械(提供:マルワイ矢野製陶所)
左上から時計回りに「押し出し成形」「CIP成形」「鋳込み成形」「プレス成形」の機械(提供:マルワイ矢野製陶所)


2.小型〜大型まであらゆるサイズの研究開発が可能

セラミックスの製造で特に難しいのが、焼成と乾燥の2工程です。焼成で1〜3割収縮、乾燥工程でも数%〜数十%収縮するため、この2工程で割れてしまうことが多々あります。大きくなればなるほど、収縮率は同じでも収縮距離が長くなるため、飛躍的に難易度が上がります。そのため、小さい機械しかない環境で縮小して実験しても、実寸で製造するとうまくいかない可能性もあります。その点、マルワイ矢野製陶所には、あらゆるサイズの研究開発に対応できる機械や装置が揃っているので、実験から量産までさまざまな研究開発が可能です。

連続式乾燥機(提供:マルワイ矢野製陶所)
連続式乾燥機(提供:マルワイ矢野製陶所)


3.部品1点からでも低コストで開発を実現

マルワイ矢野製陶所では、部品1つからでも受託研究開発の依頼を受けています。原料の選定や調合から加工方法まで、オーダーに合わせた最適な選択を行い、開発時に掛かる無駄なコストを削減します。

<コスト例>
・例1:支給原料の成形依頼(原料調整→成形→生加工)
1~3カ月で1~2回の成形や加工試験を行った場合 15~50万円

・例2:製品開発の全工程委託(原料選定・購入・調整→成形→焼成→加工)
4~12カ月の間に2~4回程度の成形・焼成試験を行った場合 40~120万円

※価格は、工程数・成形の難易度・試験報告書の内容・原料焼成費・試料数等で変動します。

4.開発や実験後のアフターフォローも充実

研究開発の依頼を受託する場合、試作のたびに研究データや実験結果をまとめたレポートを提出しています。大学からの研究依頼は最終的に論文に使用するため、実験結果に考察を加え、細かくまとめた報告書を作成。また、開発が成功しなかった場合でも、成形したサンプルはすべてお渡ししています。


受託研究開発を支える、種類豊富な機械設備

4種類の成形を行うためには、それぞれの工程に合わせた機械や専門知識を持った技術者が必要になります。複数の機械、製造工程のノウハウや無機材料全般の原料の知識を持っていることが、マルワイ矢野製陶所の最大の強みです。

マルワイ矢野製陶所が保有する各種機械。ここまで充実している会社はなかなかない(提供:マルワイ矢野製陶所)
マルワイ矢野製陶所が保有する各種機械。ここまで充実している会社はなかなかない(提供:マルワイ矢野製陶所)


受託研究開発で取り組んだ過去事例

マルワイ矢野製陶所では、今までにさまざまな受託研究開発に取り組んできました。

事例1:電子部品のCIP成形

電子部品業界の研究員から、これまで世の中になかった形状の電子部品(金属酸化物)の成形ができないか相談を受けました。通常の研究開発では金型の製作と試作に費用がかかり、いきなりテストできないことに悩まれるのですが、当社からゴム型で成形できる「CIP成形」を提案。他の方法に比べるとコストと納期を抑えられるため、試作単価が低く収まったことで試作に取り組むことになりました。まずは、当社所有のこぶし大のゴム型を使用して1カ月程度で1個サンプルを作製。半年後には、正式な試験依頼を受けて15cm程度の既存型を使った試作品を10個作製しました。評価に1年経過した後、40cm程度の実寸の試作品を100個作製し、評価試験を重ねた結果、開発から3年後にはクリーンルームも設置して量産することに。長期間かかりましたが、着実に製品化へとつなぐことができました。

他にも、セラミックスで培ったプレス成形や鋳込み成形のノウハウを生かして、セラミックス以外の素材の加工にもチャレンジしています。

事例2:シリカゲル

食品の乾燥剤などに使用されている「シリカゲル」は、特殊な素材です。セラミックスの一種と言えますが、焼成工程がないためセラミックスの製造工程とは異なります。シリカゲル業界では、複雑形状の製品を作る技術がまだ確立されておらず、「プレス成形でも押出成形でも、希望する形状にならない」といったご相談を受けました。そこで、押し出し成形をした後にプレス成形をする方法を提案して研究開発を進めたところ、1回目でサンプルが完成。以降、毎月数十万個の量産につながっています。

事例3:グラファイト

半導体や金属溶解、耐火物業界などで使用されている「グラファイト」も特殊な素材です。電池業界から「耐火物用途で量産したい」という依頼を受け、材料選定し加工技術を確立。その結果、わずか半年という短期間で日本一の低コスト、大量生産を実現。当社で材料輸入ルートも確立したことにより、後発にも関わらず大きな成果を出すことができました。


「作れないものはない」をモットーに受託研究開発に挑む

マルワイ矢野製陶所では、「作れないものはない」という気持ちを持って、さまざまな受託研究開発に取り組んできました。
「初めての素材や分野の製造にも積極的にチャレンジすることで、成果を出している事例も年々増えています。今後は機能性材料にも挑戦したいです」と社長の矢野氏は語ります。

セラミックスで培ってきた幅広いノウハウと技術を持つマルワイ矢野製陶所。新製品の開発や研究開発をご検討の際には、ぜひ一度ご相談してみてはいかがでしょうか。



合資会社マルワイ矢野製陶所
愛知県瀬戸市に本社を構えるセラミックスメーカー。大型燃料電池から半導体装置、医療機器まで幅広い製品の部品製造に携わることで、セラッミクスに関する幅広いノウハウやスキルを蓄積している。近年では、グラファイトなど新たな素材の加工にもチャレンジするなど、さらなる分野への事業拡大を目指している。
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