塗装設備導入のポイントとは。70年以上の塗装設備の販売実績を持つ藤野商事に聞く

INTERVIEW

藤野商事株式会社
専務取締役
坂井 誠

塗装設備を導入するには、必ず押さえておくべきポイントがあります。塗装で使用する塗料や溶剤は、労働安全衛生法によって有機溶剤中毒予防規則が定められており、設置すべき換気設備の規模などは法令遵守を徹底する必要があります。そのほかにも環境に配慮した塗料の使用や働く人の健康を考慮することも欠かせないと言います。今回は、広島県福山市にある、塗料や塗装関連の設備や機器の提案・販売を行う藤野商事株式会社に塗装設備を導入する際のポイントや注意点などについてお話を伺いました。

塗装設備について、数多くの実績を持つ藤野商事に話を伺いました

広島県福山市に本社を構える藤野商事株式会社は、昭和23年に塗料の販売会社として創業しました。現在は、塗料や接着剤などのケミカル用品の販売や塗装設備の導入など塗装に関する事業と、生産設備や工場用品、副資材などを納める事業を、弱電系のメーカーやプラント関連の企業を対象に行っています。さらに、ネットショップの運営を行っている他、上海に別会社があり、中国に工場を移す日本の弱電系企業に生産材を、日本から中国に輸出したり現地で調達したりする事業も展開しています。

今回は、専務取締役である坂井誠氏に、塗装設備を導入する際のポイントや注意点などについてお話を伺いました。

広島県福山市にある藤野商事本社外観(提供:藤野商事)
広島県福山市にある藤野商事本社外観(提供:藤野商事)


塗装設備導入の際に押さえておきたい3つのポイント

まずはお客様から「現在どのようなことに困っていて、今後どのようなことができる塗装設備にしたいのか」「それはなぜか」などを伺いながら、お客様のニーズにマッチした塗装設備を提案していくのが藤野商事の役割です。ただし、塗装設備を導入する上で、必ず押さえておくべきポイントがあります。

1.法令の遵守を徹底する

塗装で使用する塗料や溶剤は、労働安全衛生法によって有機溶剤中毒予防規則が定められています。そのため、設置すべき換気設備の規模などは法令遵守が絶対条件。また、騒音についても法で定められているため、設備を設置しようとしている土地の種目や敷地境界線からの距離などを考慮しながら設備を選ぶ必要があります。

坂井氏は「騒音値の上限は、朝・昼・晩で違います。ですから、夜間に操業する・しないでも敷地境界線から取るべき距離が変わります。また、どうしても敷地境界線ギリギリに設備を設置しなければならない場合は、排気ダクトにサイレンサーなどを設置したり、設備そのものを防音したりしなければならないことも。ここをクリアしなければ、そもそも希望する場所に塗装設備を設置できない可能性があります」と語ります。

2.環境に配慮した塗料や塗装方法を考える

塗装には、常温で乾かす「常温乾燥塗装」と乾燥炉に入れて焼く「焼付塗装」があります。それぞれで設備は変わりますが、現在はどちらの方法であっても環境に配慮した塗装が求められるようになってきました。エンドユーザーから「環境配慮型塗料を使用する設計で検討してほしい」と希望されることが増えているのです。

通常の塗装ブース(左)と焼付型塗料を乾燥させるための山型乾燥炉(右)(提供:藤野商事)
通常の塗装ブース(左)と焼付型塗料を乾燥させるための山型乾燥炉(右)(提供:藤野商事)


「環境配慮型であれば、有機溶剤で希釈する塗料ではなく、上水で薄める水性塗料の仕様が増えてきています。焼付塗装も、メラミン樹脂から『粉体塗装』に変わってきています。どちらも人や環境に考慮した塗料や塗装方法です。ですから、今から塗装設備を入れ替えるお客様には、例えば『溶剤塗装設備から粉体塗装設備化する時のために、仕様変更可能な設計にしておきませんか』といった世情を踏まえた提案もしています。設備は頻繁に入れ替えるものではないので、今から設備変更をするお客様は環境配慮型の塗装方法に対応できる設備を検討することをお勧めします」(坂井氏)

3.働く人の健康を考えた換気設備の選択が重要

設備を提案する際には、働く人の健康を考慮することも欠かせません。働く人の健康が守られているかどうかは、職人の顔を見ればわかるのだと言います。
「職人の顔が塗料で汚れているのであれば、塗料が人にかかっているということです。壁面が吸気面になっている横引きブースの場合、塗装したい物を回転させながら全体を塗らなければなりませんが、作業効率を優先して人が物の周りを回って塗ってしまうこともある。そうすると、風下に人が立った際に塗料が人にかかってしまいます。だから、職人の健康を考えるなら、側方吸引式塗装ブースより上から風を送って下から排気する上下流のプッシュプル型換気設備が一番理想的。また、フィルターを使う乾式のブースだとまめにフィルター交換をしなければ目詰まりしますが、忙しくなると後回しになりがちなので、水がフィルターの役割を果たす湿式ブースの方が確実です。そういった説明をしながら、導入する設備を選んでいただいています」(坂井氏)


側方吸引式塗装ブース(左)と、上下流のプッシュプル型換気設備(右)(提供:藤野商事)
側方吸引式塗装ブース(左)と、上下流のプッシュプル型換気設備(右)(提供:藤野商事)


塗装設備は費用対効果を考えて提案する

お客様のご要望には最大限応える藤野商事ですが、塗装の稼働状況次第では新たな設備を入れない、という提案をすることもあります。以前、粉体塗装の設備で塗料を再利用しようと、設備改修の際にサイクロン分離器の導入を考えた顧客がいました。しかし、坂井氏は「塗料を回収再利用して環境負担を減らすことは大切ですが、御社の場合、他の方法で検討をされてはいかがでしょうか」と、分離器の導入を押し留めたと言います。

「その企業が1日で使う塗料の使用量と生産数を伺うと、サイクロン分離機を使うほどのメリットは出ないと考えました。リサイクルして塗料を使うと言っても、塗装はゴミが紛れていると不良品になってしまう。そうならないためには、かなり精度の良い分離器が必要になります。今の生産量を考えると不良品になるリスクも抱えてまで高い機械を導入するより、再利用しない方が費用対効果としては高いとお伝えしました」(坂井氏)

その提案をご納得いただき、サイクロン分離器を入れずに設備改修をしました。


塗装設備や塗装機器のメーカーと協力して、難しい要望に応える

こうした提案力が藤野商事の強みです。そのことがわかる事例をご紹介します。

ある細長い部品を塗装している企業から「塗装をロボットで自動化したい」という要望がありました。当時は、スプレーマンが非常に精密な手吹き塗装をしていましたが、生産が追いつかなくなっての依頼でした。ただ、難しかったのが「高額な塗料を使っているので、現在の塗料使用量を超えないでほしい」という条件があったことです。通常、塗装をロボットで自動化する際には塗り残しが出ないようにオーバー気味に塗装するようにロボットをティーチングしていくのが一般的。しかし、それでは塗料の使用量が増えてしまう。そこで、藤野商事はどの塗装機器メーカーがベストかを考え、ラボがある塗装機器メーカーに低吐出塗装テストを依頼しました。

「テスト塗装を進めるうちに、自動ガン以外にも塗料ポンプを低吐出型のものにする必要があることがわかりました。しかし、そのタイプのポンプは塗装テストを進めているメーカーのライバル社にしかない。しかし、どうしてもお客様の要望に応えたかったので、なんとかそのポンプを使用して、ロボット塗装設備を完成させました。テストを重ねた結果、最終的には塗料使用量を手吹きより20%も削減することができました」(坂井氏)


諦めないマインドと提案力が藤野商事の強み

藤野商事が顧客の要望に応え続けられる理由は「諦めないこと」だと坂井氏は語ります。
「難しい要望を言われることは少なくありません。しかし、毎回『何か方法はないか』と考えながら、塗料や塗装機器、塗装設備のメーカーと一緒になってクリアしてきました。よその販売代理店はメーカーに一任するところもありますが、私たちはお客様の要望を自分たちになりに噛み砕いてから、メーカーと打ち合わせをしています。場数を踏んで可能な限りお客様の要望に応えてきたことが、現在の提案力につながっているのだと自負しています」(坂井氏)

近年は、塗装の前段階である錆や異物を除去する表面処理のブラスト設備に関しても設備導入の経験を重ねているという藤野商事。


ブラスト処理のための設備(提供:藤野商事)
ブラスト処理のための設備(提供:藤野商事)


「ブラスト処理から塗装までの一貫した設備の導入にも対応できます。また、今後は小さい精密なものの塗装に関してもチャレンジしたいと思っています。塗装設備やブラスト設備に関することならなんでもご相談ください」(坂井氏)


藤野商事株式会社
昭和23年創業。広島県福山市に本社を構える、塗料や塗装関連の設備や機器の提案・販売を行う会社。数多くの経験から、顧客の要望に最大限応える提案が可能。塗装の前段階であるブラスト処理の設備導入も可能。大阪にも事務所がある他、上海にもグループ会社を持つ。
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