銅加工のクオリティーを高めるポイントとは。たくみ精密鈑金製作所が語る銅加工の流れとノウハウ

銅は、鉄やステンレスに比べて加工が難しい材料です。柔らかい素材である銅加工は慎重を要します。品質の高い銅加工を行うため、傷や汚れを付けないための取り扱いや、表面の仕上げ方や汚れをきれいに落とす洗浄方法が重要で多くのノウハウが必要だと言います。今回は、大阪府八尾市にある精密板金製品や精密プレス製品の試作を行う有限会社たくみ精密鈑金製作所に銅加工の流れとノウハウいついてお話を伺いました。

銅加工の試作を主軸とするたくみ精密鈑金製作所にお話を伺いました

大阪府八尾市に本社を構える有限会社たくみ精密鈑金製作所は、自動車やIT関連機器の部品などに関する試作をメインに行う会社です。プログラムの作成からレーザー加工、ワイヤー加工、絞り加工、板金部品に付随する部分的な切削加工、曲げ加工、カシメ加工まで、加工難易度の高い銅加工に関するさまざまな工程を自社工場で対応しています。

同社は、1984年の創業時から、ワイヤー放電加工機を基軸とした試作板金業を行い、寸法精度の高い銅加工を実現してきました。国産家電全盛期には、関西に工場を構える大手メーカーのビデオカメラや携帯電話などの試作部品を多数製造。また、2022年には医療機器棟が完成し、医療機器業界にも参入予定です。このように、同社は時代のニーズを瞬時に読み取り、柔軟に対応することで、お客様の希望に寄り添ったものづくりを行っています。

今回は、代表取締役社長の鈴木謙三氏に、銅加工に求められる技術や同社の強みなどについて話を伺いました。


取付面に傷、汚れは厳禁(提供:たくみ精密鈑金製作所)
取付面に傷、汚れは厳禁(提供:たくみ精密鈑金製作所)


高い技術と寸法精度が求められる銅加工の5つの特徴

銅は、鉄やステンレスに比べて加工が難しい材料です。銅加工(製品)には、以下の5つの特徴があります。

1.加工による傷や汚れを極端にきらう

銅は、導電性が高い素材であるため、ワイヤーボンディングなど、通電の部品として使われています。しかし、これらの製品の場合、接地面に少しでも傷や汚れが付くと接触不良を起こしてしまいます。そのため、柔らかい素材である銅加工は慎重を要します。また、銅は変色しやすいので、洗浄方法や仕上げ方には多くのノウハウが必要となります。


2.インサート成形に用いられる部品の場合、寸法公差以上の精度が求められる

インサート成形に使われる銅部品は、図面で求められる以上の加工精度が求められます。樹脂の金型に金属部品をはめ込んでから一体化をさせるため、金型の寸法と誤差があると、隙間から樹脂が漏れ出て不良品になってしまうためです。


3.銅の供給がひっ迫しているため、材料の入手が困難な場合がある

近年、さまざまな材料の供給がひっ迫していますが、特に銅は板厚や材質によっては入手困難となっています。そのため、材料を安定して入手するための独自経路の確保が必要となります。


4.メッキの品質や部分メッキの要望など、メッキに対する要求が多い

銅製品の場合、さまざまなメッキ加工の要望が付随してきます。膜厚が厚ければ曲げ加工時にクラックが入るために、正確な膜厚の管理、影や汚れのないメッキの品質が求められます。特に、部品の一部のみにメッキを施す「部分メッキ加工」は境目をきれいに仕上げるなど、品質と高い精度が求められる加工です。さらに、メッキは通常、短納期を要望される加工であるため、スピーディーな加工対応が求められます。


部分メッキ(提供:たくみ精密鈑金製作所)
部分メッキ(提供:たくみ精密鈑金製作所)


5.潰し加工や切削加工の技術が求められる場合がある

一つの製品の一部に厚みの違う場所を作るように求められるケースもあります。その場合、プレスの鍛圧により板を薄くするか、マシニングなどを使って切削します。それぞれのノウハウと、それら複合加工ができる体制が必要となります。

「当社は銅加工に関して、長い時間をかけて一つひとつ技術とノウハウを蓄積してきました。品質の高い銅加工を行うため、傷や汚れを付けないための取り扱いや、表面の仕上げ方や汚れをきれいに落とす洗浄方法には、特に自信があります。また、材料の問題については、銅を扱う複数の大手商社とつながりがあるため、比較的にスムーズに仕入れることができます。プレス加工においても、独自な簡易金型の技術により、安価に小ロットのプレス品を納めることができます」 (鈴木氏)
また、試作から量産へ進んでいく段階では、さまざまな加工技術と設備が求められます。
「例えば、ある分野では、開発の初期段階では安価なレーザー加工、途中の段階では品質の確かなワイヤー加工、最終段階では量産と同等の加工方法であるプレスによる打ち抜き加工が求められます。そのすべての段階で、異なる技術と設備が必要です。当社は、それらすべての段階でメーカーをサポートできるため、よりスムーズに開発の手助けを行うことができます」(鈴木氏)


高い技術力と経験を生かした銅加工の製造事例

たくみ精密鈑金製作所では、銅加工の技術と経験を生かし、さまざまな業界の製品を作ってきました。今回は2つの事例を紹介します。

事例1:リードフレーム

切削加工と潰し加工、レーザー加工を組み合わせた事例(提供:たくみ精密鈑金製作所)
切削加工と潰し加工、レーザー加工を組み合わせた事例(提供:たくみ精密鈑金製作所)


リードフレームは、一つの板に厚みの違う加工を行うことが多く、切削やプレスによる鍛造(潰し)の技術が求められます。

事例2:コネクター端子

先端はΦ0.5に仕上げている(提供:たくみ精密鈑金製作所)
先端はΦ0.5に仕上げている(提供:たくみ精密鈑金製作所)


コネクター部品は、確実に給電し、確実に情報を伝達させるための部品のため、高い寸法精度が求められます。非常に小さいため、パターン加工も難しいですが、曲げにも高い技術が必要です。
「曲げ作業は、ち密な手順を考えて慎重に実行に移すスキルとノウハウが求められます。当社では、厚さが0.15mmのリン青銅板を巻き、外径をΦ0.5に加工することもできます。また長年、四角や丸いコネクターなどの曲げ加工も数多く対応してきましたので、曲げの技術にも自信があります」(鈴木氏)


精度の高い銅加工を行うために必要な加工機とその特徴

加工内容と数量などによって加工方法や加工機を使い分けます。

・レーザー加工機
レーザー加工機は、ワイヤー加工のように下穴加工をする必要がありません。また、加工速度が速いこともメリットです。そのため、安価で加工できます。しかし、熱膨張率の高い銅は、加工時に熱の影響で膨張し、加工後に縮むため、寸法が出しづらいのがデメリットです。

「当社は、出力200Wの炭酸ガスレーザー(ビーム径Φ0.1)、400Wと1000Wのファイバーレーザー(ビーム径Φ0.04)の3台を稼働させています。通常の加工機の2分の1から10分の1程度の出力とビーム径のため、熱影響も少なく、他社に比べ変形が起こりにくいため、微細な形状でも高精度な加工を得意としています。また、レーザー加工に卓越した技術者がおり、加工中の熱影響により膨張する規則性を見つけ、加工順と形状を修正することで、レーザー加工機でも寸法誤差の少ない加工ができるようになりました。これにより、ワイヤー放電加工機を使うよりも早く加工でき、価格を抑えることができます。そのため、当社には特殊なレーザー加工の仕事が集まっています」(鈴木氏)


・ワイヤー放電加工機
ワイヤー放電加工機は、熱影響がなく、寸法精度の高い加工ができるのがメリットです。しかし、レーザー加工機に比べ、加工は遅くなります。
「当社ではワイヤー放電加工機を使うことで、0.01mmの薄板や複雑な形状でも加工できます。また、レーザー加工機のような熱影響がないため、精度よく加工することが可能です。銅製品は、熱影響のないワイヤー加工を希望する仕事が多く、現在3台の加工機で対応しています。ワイヤー放電加工機は、曲げ金型を作ることもできるため、この機械を複数台保有する当社は『曲げ加工に強い板金加工屋』として知られています」(鈴木氏)


万能工である技術者がお客様の要望に応える

たくみ精密鈑金製作所は、技術者全員が営業を含むすべての工程を一人で担当できる万能工として活躍しています。
「技術者が直接お客様の要望に耳を傾け、仕上げて納品するところまでを担当することで、お客様とより良い関係を築くことができ、強い責任感、使命感が生まれます。そうすることで製品の品質も上がり、お客様にもとても喜んでいただいています。お客様の希望する品質と納期などに対する思いは、どこにも負けません。どのようなご要望にも当社のオンリーワンの技術を使ってお応えしますので、銅加工でお悩みの際はぜひお声かけください」(鈴木氏)



有限会社たくみ精密鈑金製作所
大阪府八尾市に本社を構え、精密板金製品や精密プレス製品の試作を行う。銅加工を得意としており、お客様の幅広いニーズに応えられる技術力がある。2022年に医療機器棟が完成し、医療機器など新た分野にも挑戦中。
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