農業機械の開発・製造を手がける重松工業に聞く。現代の農家が農業機械に求める条件

高齢化をはじめとした時代の変化とともに農業機械に対するニーズもまた変化しています。農家の声に直接耳を傾けながら、野菜や果物を選り分ける選果機、選別機、仕上機の開発・製造を行う重松工業株式会社取締役社長の渡部望氏に昨今の農業機械に求められる条件を伺いました。

農家のリアルな声をベースに農業機械を開発・製造

重松工業株式会社は、佐賀県唐津市で農業機械の開発・製造を手がけるメーカーです。中でも野菜や果物を傷つけることなく高い精度で選り分ける選果機、選別機、仕上機の開発・製造が得意です。

創業は1956年。もともと車検を手がけていましたが、30年ほど前、地元の山でみかんを作る農家からの要望がきっかけで現在の事業に乗り出しました。

顧客の悩みに寄り添う機能を追求

同社の農業機械の特徴は、顧客のリアルな悩みにとことん寄り添うことです。

「きっかけは、『山にレールを敷いて、収穫したみかんを運ぶ農業機械を作れないか?』という農家からのご要望でした。農家の困りごとが、当社の農業機械の開発・製造の原点です。どの農業機械も、最初は他社製品を研究し、そのあと農家のリアルな悩みに寄り添えるよう、徐々に機能面について当社ならではのものへと開発してきました」

農業機械の開発・製造は製品ごとに棲み分けがある

例えばどんな選別機も、作物のサイズを選別することが目的であるのは同じです。ただ、以下のように作物ごとの特徴を踏まえて選別することが前提条件となります。そのため1つのメーカーで手広くさまざまな作物の選別機を手がけるのは難しく、農業機械は作物ごとにメーカーの棲み分けができています。

・みかんの選別機:果皮を傷つけずにきれいに磨き上げた上でサイズを選別
・玉ねぎの選別機:一番外側の茶色い皮を剥き、磨いた上でサイズを選別

重松工業の場合、選別機・選果機の対象作物はみかん、玉ねぎ、じゃがいも、ミニトマト、キンカン、梅などです。

「当社はみかん農家の困りごとを解決したことが農業機械の開発・製造のきっかけだったため、丸い形状の作物を対象にした農業機械が得意です」

 

 

玉ねぎの選別機(提供:重松工業)
玉ねぎの選別機(提供:重松工業)


農業機械に求められる条件

農業機械に対して、昔はとにかく価格の安いものが求められたという渡部氏。けれども今は違います。高齢化が進んでいることもあり、まずは機能性が重視されるとのこと。時代とともに、農業機械に求めるニーズも変化しているようです。

シンプルな操作性

ボタン一つで動くなど、いかに簡単で使いやすいか。

「例えば一般的なみかんの選別機は、サイズを切り替えるとき、ドラムを付け替えるのに工具が必要です。ただ、農家にとってみればけっこうな手間になります。そこで、工具を使わなくてもワンタッチで切り替えができる機械を開発しました。わかりやすくて簡単な上に、1分以内でサイズが切り替えられるのでお客さまから好評です」

重松工業では、開発した上記の技術に関する独自ノウハウ蓄積を行ってきたうえ、関連特許も取得したことがあるそうです。

重労働からの解放

収穫や収穫物の選別など、重労働からいかに解放されるか。

「30年前の開発当時は不要といわれたのに、近年売れ始めた農業機械があります。野菜や果物が入った重いコンテナを地面からすくい上げ、移動できる運搬機です。手動式と全自動式がありますが、手動式を進化させた全自動式の『バッテリーミニリフト』は特に売れ行きが好調です。両方とも地面からすくい上げるのは同じです。ただバッテリーミニリフトは、トラックの荷台の高さまでコンテナを持ち上げ、そのままトラックに積むことができます。100キロのコンテナも簡単にトラックの荷台に載せられるので、最近はこのリフトが見直されていて、ないと困るという農家も増えてきました」


バッテリーミニリフト(提供:重松工業)
バッテリーミニリフト(提供:重松工業)


「また農業機械の精度も、作業の省力化を左右します。当社の場合みかんや玉ねぎの選別は、サイズ別に穴があけられたドラムが回転し、該当するサイズの作物が中に落ちていく仕組みです。選別精度は70%から80%。ミニトマトやキンカンなど小さい作物は、より選別精度が求められるので90%ほど。2本のロープの上を小さな粒の作物が通過し、ロープの幅によって該当サイズ以外のものが落ちていく仕組みです。いずれにしても、選別精度が高ければ農家の手作業が減らせるので、省力化につながります」


ロープ式のミニトマト選別機(提供:重松工業)
ロープ式のミニトマト選別機(提供:重松工業)


作業効率と品質の両立

作物の皮むきや選別など、いかに大量に、しかも作物を傷つけないよう丁寧に処理することができるか。

「佐賀県の白石町は玉ねぎの産地で、極早生(ごくわせ)、早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)というように、生育期間によって特徴が異なります。晩生は実が詰まっていて硬いですが、極早生は実がやわらかいのが特徴です。一般的な脱皮機のブラシは人造毛で、皮を剥く力はそこそこですが、硬い晩生の皮を剥くにはものすごく時間がかかります。一方で、極早生のようにやわらかい玉ねぎに人造毛のブラシを使うと、ブラシの当たりが強く傷になってしまいます。そこで当社では従来のブラシに加えて、当たりがより強いゴム突起ブラシと、当たりのやわらかい人工芝ブラシの2種類を開発しました。3種類のブラシを使い分ければ全シーズン対応できます」


左から、人造毛ブラシ、ゴム突起ブラシ、人工芝ブラシ(提供:重松工業)
左から、人造毛ブラシ、ゴム突起ブラシ、人工芝ブラシ(提供:重松工業)


「例えば晩生の玉ねぎの皮を剥くのに、人造毛とゴム突起ブラシで機械内の滞留時間を比べると、お客さまの感覚値で1回あたり10分から15分ほど違うと言われます。ゴム突起ブラシだと短時間で剥けると好評です。当社の場合、1時間1トンの量を磨いて選別する機械を製造していますが、磨きに時間がかかれば1トンはさばけません。収穫量の多い農家さんでは1日8トンでも足りないくらい。1回あたり10分、15分でも、それが積み上がれば農家さんの負担軽減につながります」

耐久性

いかに丈夫で長持ちするか。

「当たり前のことながら、やはりいつの時代も耐久性は求められます。当社の農業機械のユーザーであるお客さまは、30年前に購入されたものをいまだに使っておられます。なかなか壊れないので、経営下手という見方もできるはず。けれども『重松工業の農業機械は壊れない』という評判は、間違いなく自社の製品価値を高めてくれます」


簡単なメンテナンス

わざわざ業者を呼ばずとも、自分たちでいかに簡単に調整・修理できるか。

「忙しい農作業の合間にサッと自分たちでメンテナンスができるなら、それが一番です。メンテナンス代もかかりません」



農業機器の開発・設計で、これからも農家に寄り添い続ける

長年、農家の困りごとを解決してきた重松工業。今後も誰かの「困りごと」をベースに、農業機械の開発・製造、応用展開を進めていきます。

「九州県内の農家を回っていると、落花生のひげ取りができる農業機械を開発してほしいという声がちらほらありました。みかんや玉ねぎのようにこれまで手掛けてきた丸い形状ではありませんが、これまでとは違う作物や分野であっても、お客さまの困りごとを解決する農業機械の開発に今後も積極的にチャレンジしていきます。

また、リフトなどの運搬機は、農業以外の分野にも応用展開できる可能性があります。例えばビールの中瓶ケースは、農業用のコンテナと同じく下部に若干すき間があるため当社のリフトを転用できる可能性があります。高齢化が進む中、重労働からの解放という点で、農業以外の分野・業種でも貢献できるのではと考えています」



重松工業株式会社
1956年創業。佐賀県唐津市で農業機械の開発・製造を手がける。みかん、玉ねぎ、じゃがいも、ミニトマト、キンカン、梅などの作物を対象とした選別機・選果機の他にも、仕上(ブラシ・脱皮)機、洗浄機、昇降機、供給コンベア、コンテナ運搬機等を取り扱う。
重松工業株式会社 お問い合わせ