サンライト工業有限会社
代表取締役
近藤 忠男氏

脱炭素に向けて、これからはステンレスパイプのニーズが増えると言われています。しかし、ステンレスパイプの加工は難易度が高く、加工の際には継手となる「エルボ」や「Tパーツ」を使用する業者がほとんどです。しかし、そういったパーツを使わずにステンレスパイプを自由自在に加工することができる業者がいます。広島県尾道市にあるサンライト工業です。一体どのような技術でステンレスパイプを加工しているのか。同社の代表取締役である近藤忠男氏に、ステンレスパイプの特徴や同社の加工技術について話を聞きました。
ステンレスパイプの曲げ加工について、サンライト工業に話を伺いました
サンライト工業有限会社は、長年に渡りステンレスと鉄、銅のパイプの加工・成形・仕上げを行っている業者です。日本に2台しかないベンダー機を使用して、「エルボ」を使わずに、継ぎ目なしのパイプ加工を行っています。また、パイプに枝管をつけるためには、通常は「Tピース」を使用しますが、同社はTピースを使わずに希望の位置に自由に穴を開けることができる、独自のバーリング加工技術を持っています。
本記事では、そんなサンライト工業にステンレスパイプの曲げ加工について伺いました。

ステンレスパイプの特徴や曲げ加工に必要な技術
脱炭素に向かっている現代社会において、今後、燃料は重油などからガスや水素、アンモニア、メタノールといったものに変化していくと考えられます。それに伴って、燃料管はステンレスパイプが必要になると予想されます。今後増えていくであろうステンレスパイプの鉄との違いや、加工に必要な技術などについてご紹介します。
ステンレスパイプのメリット
・鉄のパイプに比べて非常に硬くて丈夫。
・鉄のパイプに比べて錆びにくい。
ステンレスパイプのデメリット
・非常に硬い素材であるため、厚いものは加工が困難。
・ステンレスパイプ用のベンダー機は扱いが難しい。
・小さいRに曲げるのが難しいため、「エルボ」に溶接して曲げることになるため、時間とコストがかかる。
・価格が高い。
ステンレスパイプは、径が大きく、厚くなるほど加工が難しくなる材料です。そのため、ステンレスパイプに曲げ加工を施す際には、特殊なベンダー機が必要です。とはいえ、機械さえあればいいというものでもありません。ステンレスの特徴を理解し、それに対応した機械と高い技術や経験が必要です。
継ぎ手となるパーツや溶接が不要!サンライト工業の曲げ加工技術とは

ステンレスパイプは、その硬さから加工が難しいため、パイプを曲げる際には「エルボ」にパイプを溶接するのが一般的です。ただし、エルボを使用すると希望の角度にするためにはエルボをカットしなければならなかったり、パーツそのものの費用に加えて溶接作業が必要になったりします。曲げる箇所が多ければ多いだけ溶接に時間がかかり、見た目も悪くなります。また、熱を加えることで、見た目が黒くなるだけでなく、変質して折れやすくなったり割れやすくなったりすることも。さらに、きちんと溶接されているかの検査も必要になります。
そういった点を解決すべく、ステンレスパイプの曲げ加工に乗り出したのがサンライト工業です。日本に2台しかない特殊なベンダー機を使用して、厚さ3mmから5mmまでのステンレスパイプの曲げ加工を可能にしました。
「一般的なベンダー機は曲げRが3D(パイプの直径の3倍)とRが大きいですが、弊社はエルボと同様に小さいRで曲げることが可能です。角度も自由自在に変えられるので、その場所に合わせてパイプを加工できます。また、エルボそのものを購入する費用が削減できますし、溶接しないため見た目も美しく、検査も必要ありません。もちろん、溶接するための時間も不要です。自社で制作時間を比較したところ、1箇所曲げるだけなら10倍、4箇所曲げるなら15倍も生産性が向上する結果となりました」と、代表の近藤忠男氏は語ります。
また、サンライト工業が行う曲げ加工が冷間加工であるため、見た目が黒く変色することも、変質することもありません。
「熱を加えて加工した場合、黒くなった部分を硝酸につけて焼き落としをしなければなりません。当然、それにはコストがかかります。一方、弊社は滑らかに曲げるために油を使用するので、脱脂という作業が必要になりますが、それは水槽に2日ほど浸けておくだけ。小さいRで曲げてもシワや折れもほとんど出ることはありません」(近藤氏)

このように、コスト削減や生産性向上を実現するサンライト工業の曲げ加工ですが、加工に関しては住重試験検査株式会社で以下の検査を実施。欠陥や漏れ、割れなどは発生していないことが報告されています。
<検査項目>
・材質確認
・肉厚測定
・外形寸法測定
・外周長寸法測定
・P T試験
・水圧試験
Tパーツを使わずにパイプの穴あけ加工を可能に。サンライト工業のバーリング冷間加工
サンライト工業が誇るもう一つの技術が「バーリング冷間加工」です。本管に対して枝管をつなぐためには、通常「Tピース」という部品を溶接して使う必要があります。そのTピースを使わずに複数の穴をあけることができるのが「バーリング冷間加工」で、厚さ2.5mm~13mmのパイプを加工できます。
このバーリング冷間加工も、曲げ加工と同様にTピースの部品代や溶接にかかるコストや時間を大幅に削減することを可能にしています。また、Tピースでつなぐとどうしても全体に歪みが出やすくなりますが、バーリング加工であれば溶接しないので歪みが出にくいのも特徴です。
さらに、サンライト工業のバーリング加工なら本管と同径の穴をあけることも可能だと言います。
「バーリング加工は、管の中に球を入れてそれを引き抜くことで穴を開けますが、同径だとできない業者がほとんど。弊社は独自の加工方法で行っており、鉄パイプで本管500Aに枝管500Aをバーリングした経験もあります」(近藤氏)
このほかにも、他の業者では加工が難しい、極端に薄いものや厚いものの加工も行ってきました。

「以前、2.5mmの薄いパイプをバーリングしたことがあります。2.5mmの薄さだと溶接しづらいし、穴が空いてしまったり裂けてしまったりする可能性もあります。他の業者では加工ができず『なんとかしてほしい』と持ち込まれて対応しました。厚いものも加工は難しいのですが、鉄パイプであれば、13mmまで加工が可能です」(近藤氏)
造船で培った技術をもとに、顧客に利益を提供
今後は、造船で培ったパイプ加工の技術を生かし、新たに化学プラントや一般プラントなどのパイプ加工にも携わっていきたいと近藤氏は考えています。
「弊社ステンレスパイプ曲げ加工とバーリング冷間加工は、コスト削減や生産性向上に直結しており、見た目も美しく仕上がるものです。お客様にとってのメリットを最大限ご提供できるものだと自負しています。パイプ加工が必要な方はぜひご相談ください」