ナイロンメッシュの基本とふるい分け効率を向上させる選定のポイント

ナイロンメッシュは目開きが1μm〜数百μmと加工精度が高く、耐久性に富む特徴から様々な分野で利用されています。本記事ではナイロンメッシュの基本とふるい効率を高めるための選定のポイントをご紹介します。株式会社NBCメッシュテックの協力のもと、ナイロンメッシュをはじめとするメッシュのふるい効率を高める技術についても事例を交えてご紹介します。

ナイロンメッシュとはナイロン繊維で精密に作られた合成繊維織物のこと

ナイロン繊維は石油を原料とした合成繊維のひとつで、米国のデュポン社が1935年ナイロン66を開発してから長年様々な分野で利用されており、化学繊維の中でも古い歴史をもつ繊維です。ナイロンメッシュはこのナイロン繊維で精密に作られた合成繊維織物です。ナイロン繊維は伸びがあるので、衝撃を吸収し、磨耗に強いという特徴があります。そのため、引張強さではポリエステルとあまり変わりませんが、実際の切れにくさや強度はナイロンのほうが強く、メッシュとして使用するのに適した材質と言えます。

ナイロンメッシュの特徴

ナイロンメッシュは、目開きが1μm〜数百μmと加工精度が高く、耐久性に富むことから幅広い用途で利用されています。そのため、製造されているナイロンメッシュの品種や巾の種類は他の材質に比べてとても豊富です。

ナイロンメッシュは異物を取り除くストレーナー・フィルター・濾過装置として台所周りから工業製品に至るまで様々なシーンで活用されています。

ナイロンメッシュの用途例

  • 茶濾し
  • 自動車のオイルフィルター
  • 海の中のプランクトン採取
  • 産業用ふるい など

また樹脂でできた合成繊維ですので、様々なバリエーションの加工を施すことが可能です。

 

ナイロンメッシュの加工例

  • 縫製
  • 丸抜き(ボルト穴など)
  • ヒートカット
  • 超音波溶着
  • 成形加工 など

ナイロンメッシュの他にも、難燃性や耐薬品性等に特徴を持つ合成繊維のメッシュやステンレスのメッシュが広く用いられています。

 

メッシュクロスの材質と特徴

  • ナイロンメッシュ:耐久性に富む、加工精度が高い、品種が多い
  • ポリエステル(PET)メッシュ:耐熱性が高く、伸び縮みが少ない
  • ポリエチレン(PE)メッシュ:安価で、多くの分野で利用される
  • ポリプロピレン(PP)メッシュ:耐薬品性に富む
  • ステンレス(SUS)メッシュ:通電性や不燃性に富む

材質以外でメッシュを選定する上で押さえておきたいポイントとしてメッシュクロスの規格があります。主にメッシュの粗さ(目開き)などを表し、取り除きたい異物やふるいにかけたい物の大きさに合わせて選ぶ必要があります。

 

メッシュクロス規格値

  • メッシュ数:1インチ(2.54cm)間の糸の本数
  • 糸径:糸の太さ
  • 目開き:メッシュの目の大きさ (糸と糸の間の隙間の大きさ)
  • 目開き率 (%):メッシュ全体に対する開孔部の面積の割合
  • 厚さ:メッシュの厚さ
  • 組織:平織、綾織、特殊織

 
 

ナイロンメッシュのふるい抜け効率を高めるために考慮したいポイント

ナイロンメッシュの糸表面に粉体が付着し目詰まりを起こしている様子(提供:NBCメッシュテック)
ナイロンメッシュの糸表面に粉体が付着し目詰まりを起こしている様子(提供:NBCメッシュテック)


ナイロンメッシュをふるい用途で用いる際に一番注意しなければならないのは目詰まりです。目詰まりを起こすとふるい効率が著しく低下するだけでなく、目詰まりの除去やメッシュの交換などのメンテナンスに手間やコストの増加に繋がるからです。

目詰まりの原因は、ふるいの糸への粉体の付着や、粉体同士の凝集です。この付着や凝集が起こるメカニズムは様々ですが、摩擦帯電や水分による液架橋力、粒子が細かい粉体の場合はファンデルワールス力などが関係しています。これらの影響を最小限にするためには、ふるいたい粉体と相性のよいメッシュを選ぶ必要があります。

ふるいたい粉体に適したメッシュを選ぶポイントにはメッシュ糸の材質と目開きがあります。

①メッシュ糸の材質はふるう粉体の特徴と合わせて選ぶ

ステンレスをはじめとした金属性のふるいは硬いため一度網目に粉体が詰まると、外れにくく目詰まりしやすくなります。一方でナイロンメッシュはある程度伸縮性があるので振動やエアーで粉体の詰まりを除去しやすくなります。

②メッシュの粗さ(目開き)は粉体のサイズやふるう回数などを考慮して選ぶ

目開きの細かいふるいを使用すれば、不純物が混入しづらく、粉体のサイズも揃うのでより精度の高いふるい分けが可能です。一方、ふるいの効率が下がるため、より目詰まりしやすくなります。目の粗いふるいを使用するとふるい効率は上がりますが、精度が下がるため、目的の精度までふるい分けするために、2回以上ふるいをかける必要性が出てくるなど、全体の所要時間や手間が増える可能性が出てきます。粉体のサイズにあった目開きのふるいを選定することも重要な要素です。


粉体の付着を防ぐためにメッシュの糸表面に加工を施す方法も

粉体がメッシュ糸に付着して目詰まりを起こすことを防ぐ方法として一般的なのは、タッピングボールを用いた詰まりの除去や超音波ふるい機の使用、気流式分級機を用いるといった方法です。これらは機械設備のイニシャルコストや維持費が追加でかかるといったデメリットも持ち合わせています。

粉体がメッシュ糸へ付着する原因を未然に解消する方法として、メッシュ糸に「粉体とメッシュ糸が接する面積を小さくする加工」を施すという技術があります。
次項からはNafitec(R)技術を施したメッシュの効果や活用事例をご紹介します。


メッシュ(ふるい網)を交換するだけでふるい抜け効率を大幅改善するNafitec(R)メッシュ

Nafitec(R)技術の模式図(提供:NBCメッシュテック)
Nafitec(R)技術の模式図(提供:NBCメッシュテック)


株式会社NBCメッシュテック研究開発本部メッシュテクノロジー研究所の本島信一氏と中村優佳氏(以下敬称略)にNafitec(R)技術の原理と効果についてお話しをお伺いしました。

「Nafitec(R)技術は、メッシュ基材表面に無機ナノ粒子を固定化することで微細な凹凸が形成され、粉体との接触面積が小さくなることで、付着の防止を可能にします」(中村)


株式会社NBCメッシュテック研究開発本部メッシュテクノロジー研究所 中村優佳氏
株式会社NBCメッシュテック研究開発本部メッシュテクノロジー研究所 中村優佳氏


この技術を用いるとどのような効果が期待できるのでしょうか。事例を交えて解説いただきました。

事例1:メンテナンス時間の削減によるコストダウン

シリカ粉をふるった後のメッシュの様子。未処理のナイロンメッシュ(左)、Nafitec(R)処理を施したナイロンメッシュ(右) (提供:NBCメッシュテック)
シリカ粉をふるった後のメッシュの様子。未処理のナイロンメッシュ(左)、Nafitec(R)処理を施したナイロンメッシュ(右) (提供:NBCメッシュテック)


「上の画像は粒子径25μmシリカの粉体を開口67μmのナイロンメッシュで一定時間ふるった際のメッシュの表面です。左の未処理のナイロンメッシュが目詰まりを起こしているのに比べて右のNafitec(R)処理を施したメッシュにはほとんど粉体が残っていません。左の状態になるとメッシュの清掃や交換が必要になりますが、右の状態であればエアーを吹くなどの簡単な処理でまた使用が可能になります」(中村)

「ナイロンをはじめとした合成繊維は金属に比べると帯電するので粉が付着しやすい特徴がありますが、Nafitec(R)のコーティングに使われている金属酸化物は冬場等の空気が乾燥している時でも水分がある程度ナノ粒子に保持されるので帯電しにくいため、目詰まりを防ぎます」(本島)

「この事例では、一定量をふるう時間が約40%削減され、生産効率が大幅にアップした上に、メッシュの清掃や交換などのメンテナンスにかかる時間を約80%も削減することに成功しました」(中村)


事例②:これまで不可能だった粒径の小さい粉体のふるい抜けも可能に

ポリエチレン粉をふるった後のメッシュの様子。未処理のSUSメッシュ(左)、Nafitec(R)処理を施したSUSメッシュ(右)(提供:NBCメッシュテック)
ポリエチレン粉をふるった後のメッシュの様子。未処理のSUSメッシュ(左)、Nafitec(R)処理を施したSUSメッシュ(右)(提供:NBCメッシュテック)


「一般的に粉体の粒子が細かいほど帯電しやすく、目詰まりを起こしやすい傾向がありますが、その粉体が目詰まりしたメッシュ上で滞留してしまうと、今度は粉体同士の凝集がどんどん進みダマになってしまって、完全にふるい抜け出来なくなってしまうことがあります。

そのため、10μm付近やそれ以下のサイズの粉体は分級機の使用を検討するケースが多いのですが、今回はメッシュでは全くふるい抜け出来なかった粉体も分級機のような大型の投資をすることなくメッシュの交換だけでふるえるようになりました」(本島)


株式会社NBCメッシュテック研究開発本部メッシュテクノロジー研究所 本島信一氏
株式会社NBCメッシュテック研究開発本部メッシュテクノロジー研究所 本島信一氏


難易度の高い粉体の扱いに困っている事業者さんも一度メッシュ選定を見直してみると大きな効果を生む可能性があるかもしれません。


今後さらに高まる高精度のふるいニーズ

今どのような領域でNafitec(R)技術が注目されているのでしょうか。株式会社NBCメッシュテック 営業本部 産資営業部 大谷浩之氏(以下敬称略)にお聞きしました。

株式会社NBCメッシュテック 営業本部 産資営業部 大谷浩之氏
株式会社NBCメッシュテック 営業本部 産資営業部 大谷浩之氏


「半導体業界では、半導体チップの封止剤に使用される高品質なシリカ粉の需要が増えており、各社設備投資や工場増設、人員増強など、いろいろな形で増産に向けた対応策を検討されています。そのような中、メッシュの交換だけで能率を上げられるのはかなり大きな投資コスト削減になると期待されています。

また、電子機器の小型化が進む中、電池材料系の異物コンタミ除去のニーズも高まっています。より細かい粒子の高精度なふるい分けが求められますが、効率とメッシュの粗さの兼ね合いが難しく、苦労されている現場が多いです。粗い番手でふるうので一回で異物を除去しきれず、二回ふるいをかけているケースもあったそうです。このケースではNafitec(R)メッシュであれば一回でふるうことが出来るので生産プロセスの改善に役立ちます」(大谷)

半導体チップや電子機器など精度が求められるような用途でも注目されているのですね。今後5G対応でますます加速するであろう小型化・軽量化ニーズに応える技術の一つと言えるのではないでしょうか。


選べるラインナップで幅広い種類の粉体に対応。新規開発にも注力

次にNafitec(R)が活用可能なメッシュや粉体の仕様についてお聞きします。

「対応可能なメッシュ、粉体の種類やサイズは以下の通りです。目開きが小さい合成繊維の25μmレベルのものでも加工可能です。特にメッシュの織り方等の制約はありませんので、メッシュ数を参考にしていただければと思います」(本島)

メッシュの材質・サイズ

  • SUS・合成繊維(ポリエステル、ナイロン)
  • 低メッシュ~高メッシュ(~508メッシュ)

※SUSメッシュは、630、830メッシュも可能(要相談)

 

粉体の種類・サイズ

  • 食品、金属、粉体塗料、トナー、シリカ、タルク、アルミナ、酸化マグネシウムなどのセラミック、炭酸カルシウム・電池材料系も可能
  • 数μm~数十μm

 

これまでご説明してきたように、粉体の付着・目詰まりは様々な要素が関係しているため、ふるいたい粉体と相性のよいメッシュを選定することは簡単なことではありません。Nafitec(R)メッシュは粉体の種類や特性に応じてZ・S・Fの3種類のラインナップの中から実際に試して選ぶことができるそうです。

「簡単に効果を見ていただくために貸し出し用の試験キットを用意しています。ふるいの面を4分割し、Z・S・Fの3種類のコート処理がされている領域に未処理領域を追加した4領域のふるい効率を比べます。目視で確認した時に未処理領域に比べて目詰まりの状況に差がみられるかどうか確認してもらうことが可能です。効果がありそうであれば、次の段階では量産機で試験していただきます。お客様のご希望に応じて粉体をお借りして、弊社にてさらに詳細な分析も行っています」(大谷)

Nafitec(R)仕様 (想定利用粉体)

  • Nafitec Z:食品、金属、粉体塗料など
  • Nafitec S:トナーなど
  • Nafitec F:シリカ、タルクなど

 

「3種類のコートは固定させる金属酸化物の配合を変えて、より広い粉体に対応できるようにしています。これまで色々な粉体で試しながら開発してきた中で、同じ種類の粉体でもメーカーによって特性が変わってくることもありました。まずは実際に試験キットをお試しいただくのが一番早いと思います」(大谷)

「5G関係で需要が高まる封止剤粉体の中にはどうしてもこれまでの3種類では対応できないものがありました。そのような粉体に対応するため、近年さらに粒子の細かいアルミナなどをターゲットにした新規開発仕様も発表しています。これからもより多くの粉体に対応できるよう開発を続けていきます」(本島)

新規開発仕様Nafitec:アルミナ、酸化マグネシウムなどのセラミックなどでの利用を想定

 

 

まとめ

加工精度が高く、耐久性に富み、幅広い用途で利用されるナイロンメッシュ。その選定には用途に応じたメッシュの規格を選ぶことが重要です。ふるい用途ではふるいたい粉体に応じたメッシュの粗さ(目開き)の選定がポイントでした。さらに、メッシュの目詰まりを防ぐ技術としてNafitec(R)メッシュをご紹介しました。


参考情報
・Nafitecは、株式会社NBCメッシュテックの登録商標です。


株式会社NBCメッシュテック
スクリーン印刷用メッシュクロスを始め、各種産業用のメッシュクロス(食品、電子、機械、化学、土木、建築・農業資材、公害機器など)、成形フィルター(自動車、家電、メディカル、衛生機器など)の開発・製造・加工・販売を中心に、国内はもとより世界約50ケ国と取引実績のある、国際色豊かな事業活動を展開する。日清製粉グループ。
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