金属加工にセラミックス加工の技術を応用! 難材料で培った加工技術で±10μmの精度を実現する佐賀県の武富工業

金属加工よりも難易度が高いというセラミックス加工。セラミックスと一口に言っても、硬いものから軟らかいものまで非常に多くの種類があるので、加工する際の条件設定がかなり難しいのが特徴です。加工に使用するダイヤモンド工具も材料に合わせて都度変更する必要があり、加工にはかなりの知識と経験が求められると言います。今回は、佐賀県杵島郡にあるセラミックス加工と金属加工の会社で、電子機器用基盤や機械部品などの製作・加工を行う有限会社武富工業にセラミックス加工の難しさや金属加工への進出についてお話を伺いました。

硬度が高く熱に強いため、加工が非常に難しいセラミックス。佐賀県杵島郡にある有限会社武富工業は、長年その難材料の加工を中心に行っている会社です。同社は、±10μmと非常に精度の高い加工を実現しており、品質の高さには定評があります。現在は、セラミックス加工で培った技術を元に金属加工も本格的にスタート。事業の幅を広げています。代表の武富和敏氏から、セラミックス加工の難しさや金属加工への進出について話を伺いました。


金属加工よりも難易度が高いセラミックス加工で技術を磨いた佐賀県の武富工業

セラミックス加工品(提供:武富工業)
セラミックス加工品(提供:武富工業)


佐賀県杵島郡にある有限会社武富工業は、セラミックス加工と金属加工の会社です。主に、電子機器用基盤や機械部品などの製作・加工を行っています。

セラミックスと一口に言っても、硬いものから軟らかいものまで非常に多くの種類があります。同じ材質と硬さだったとしても、メーカーによっても違いがあるため、加工する際の条件設定がかなり難しいのが特徴です。加工に使用するダイヤモンド工具も材料に合わせて都度変更する必要があり、加工にはかなりの知識と経験が求められます。また、セラミックスは曲がらないため、加工工程数が金属より多く水や気温等も管理しながら対応する必要があります。

セラミックスは、湿気や太陽光などにより材質が変わったり変色したりする恐れがある繊細な材料。そのため、工場内の湿度管理も徹底して行う必要があります。また、気を配るのは湿度だけではありません。セラミックスは研磨する際、ダイヤモンド工具に水をかけながら行いますが、その水の温度が上がると研磨スピードを維持することができなくなります。水温が作業能率に関わってくるため、工場の温度管理も重要です。代表の武富和敏氏は、次のように語ります。


武富工業代表 武富和敏氏(提供:武富工業)
武富工業代表 武富和敏氏(提供:武富工業)


「弊社は、20年近くセラミックスの加工に特化してきているので、他社よりも細やかな管理ができていると自負しています」

水をかけながらダイヤモンド工具で研磨を行う様子(提供:武富工業)
水をかけながらダイヤモンド工具で研磨を行う様子(提供:武富工業)


同社は、顧客から要求される精度が±50μmであっても、±10μmで加工できるという高い技術力を持っています。その精度の高さの秘密は、誰もが同じ精度で加工ができるように作業手順書をしっかり作っていること。

「ISO9001を取得しているため、作業工程を細かく決めて明文化しており、全従業員がそれをきっちり理解して作業に取り組んでいます。そのため、経験が浅くてもその手順をしっかり守ることで、数年経験すれば熟練者とほぼ変わらないものを製造できるようになります。併せて、従業員には常々『mmの世界』ではなく、『μmの世界』で考えるように指導しているため、非常に高い精度で仕上げることが可能なのです」


金属加工への参入を、セラミックス加工と工場を分けることで実現

武富工業では、このように難しいセラミックスの加工を長年行うことで培ってきたその高度な加工技術を、金属加工に応用しようとしています。

「セラミックスは、切ったり削ったりするのもダイヤモンド工具がなければできません。加工にかかる時間も金属加工と比べるとかなり長い。しかし、弊社は扱いが難しいセラミックスにさまざまな加工を施しながら、品質と納期を守ってきています。ですから、金属の加工であれば、切削や研磨の能力は上がるので、さらにスピードを上げつつお客様に納得していただける品質と納期でご提供できるのではないかと考えています」

セラミックスと金属両方の加工を行っている企業はあまり多くありません。その理由は、両方を取り扱おうと思うと、建物から分けなければならないからです。

「電気を通さないセラミックスに金属の粉がつくと、電気的な不具合が発生してしまいます。また、セラミックスは非常に硬いため、金属につくと傷の原因になります。これらのことから、セラミックスと金属の加工を、同じ機械はもちろん同じ場所で行うのも厳禁です。そのため、技術的には共用できるものが多いのですが、両方の加工を行っているところは少ないですね」

武富工業は新工場と旧工場、2つの工場を有しているため、セラミック加工と金属加工の工場を完全に分離。機械も同じものをそれぞれに用意することで、両方の加工を行える環境を作り出しました。

「現在もすでに金属加工の仕事を受注して行っていますが、設備と作業場はセラミックス加工としっかり分けています。さらに、工場を建て替え、金属加工用の設備もしっかりそろえている最中です。2022年の春にはより幅の広い金属加工の受注にも応えられるように、体制を整えています。設備が整ったら、粉塵などの混入を避けるために従業員もセラミックスと金属で担当を分ける予定です」


金属加工工場の様子(提供:武富工業)
金属加工工場の様子(提供:武富工業)


「また、従業員5人を佐賀県産業技術学院へ通わせ、金属加工の機械操作や加工手順、CADなどを身につけてもらいました。もともとセラミックス加工の知識は持っているので、そこに金属加工ならではの加工情報を学ぶことで、より幅の広い加工が可能になりました」


他社では敬遠される加工にも正確に応える武富工業の技術力

同じ製品を4,000〜5,000枚製造し、全てを検査してもほぼ誤差が出ないほど正確な加工をできる技術を持っている武富工業。そのため、200×200mmで厚み16mmのセラミックスの板から、ほとんど取りしろのない、15φで長さが200mmの丸い棒を作るといった難しい依頼にも対応しています。

「セラミックスの四角い板から丸いものを作るのは、他社ではあまり好まない加工のようで、対応可能な弊社への依頼は多いですね。もともと丸い素材を作れば良いのかもしれませんが、丸い形状だと圧をかけづらいため強度が弱くなります。そのため、高い強度で作られた板から丸く切り出してほしいという依頼になるようです。切り出すこと自体はできる会社はあるのですが、丸くするための設備を持っているところがあまりありません。そのため、切ったり丸くしたりと複数の工程が必要な加工依頼をいただくことが多いですね」


セラミックスの板から切り出した丸棒(提供:武富工業)
セラミックスの板から切り出した丸棒(提供:武富工業)


この加工技術を元に、変形しやすい金属についても、変形させることなく厚さ3mmのものを研磨で2mmに落とすといったことが可能です。

「金属加工に関しても、セラミックス加工と同様に手順書を作成して、誰もが精度高く加工できる環境を作っていきます。品質と納期を守りつつ、高度な加工のものを100個、1,000個と量産していくので安心してお任せください」


品質と納期を遵守しながら、顧客の要望に応える

武富工業は、「お客様に満足して頂く為に、高品質・短納期・低コストをモットーに、独自のノウハウで事業の発展に寄与するとともに、ひいては地域社会の貢献を目指す」を経営方針としています。

「不良品を作っていたら、まず信用を得ることはできません。ですから、ISO9001も取得しました。品質に関しては他社に負けたくはないですね。納期も、電子機器部品に関しては品質を守りつつ、かなりシビアな納期で対応しています。そのため、他社では受けてもらえなかったものをご相談いただくケースも多いです。もちろん、難しい場合もありますが、最大限お客様の要望に応えられるように対応しています」

また、同社は、品質方針について以下のように掲げています。

1.お客様のご要望を最優先します。
2.品質マネジメントシステムの継続的改善を目指します。
3.お客様のニーズに応える技術力の向上、及びシステムの積極的な採用と定着により、お客様に満足頂ける製品・サービスを提供します。


現在は、2022年春の金属加工工場の完成に向け、溶接技術の習得も行っています。セラミックス加工の技術を生かして、金属加工の仕事も広げている最中です。

「現状の設備でも金属加工はお受けしていますので、金属加工、セラミック加工ともにぜひご相談ください」


有限会社武富工業
佐賀県杵島郡にあるセラミックス加工と金属加工の会社。扱いが難しいセラミックスを、±10μmという高い精度で加工できる技術を有する。20年近くセラミックスの加工を行ってきた知識と経験を生かし、金属加工も本格的にスタート。2022年には金属加工専用の機械を備えた工場が完成予定。
有限会社武富工業 お問い合わせ