「Auスタッドバンプ」がIoTの流れの中で存在感を高めている理由とは。Auスタッドバンプ加工のトップランナー・函館電子に聞く

INTERVIEW

函館電子株式会社
代表取締役 黒須 正章
技術課課長 久保田 英樹

Auスタッドバンプとは、いわゆる「金の突起電極」のことで、ICチップの回路の端子と基盤の回路をつなぐためのものです。スタッドバンプには、Auスタッドバンプのほかに、はんだのスタッドバンプなどいくつか種類がありますが、その中でも高い信頼性や精度が求められる製品には、Auスタッドバンプが使われるそうです。今回は、電子部品の製造や検査など半導体の後工程のものづくりを手がける北海道函館市にある函館電子株式会社にAuスタッドバンプがIoTの流れの中で存在感を高めている理由についてお話を伺いました。

IoTやAIが進化する中、さまざまな業界や分野で半導体のニーズは今後ますます高まることが予想されます。そうした中で存在感を高めているのが、微細で精度の高いICチップなどの製造に欠かせない「Auスタッドバンプボンディング」という加工法です。Auスタッドバンプとはそもそも何か、何がすごいのか。Auスタッドバンプ加工のトップランナーである函館電子株式会社の代表取締役 黒須正章氏と技術課課長の久保田英樹氏に伺いました。

微細で精度の高いAuスタッドバンプ加工に強み

函館電子は、電子部品の製造や検査など半導体の後工程のものづくりを事業とする、北海道函館市に拠点を置く企業です。

ウエハーレベルのAuスタッドバンプボンディング加工をはじめ、ICチップのダイシングやLEDチップのプローブテスト、ソーティング事業も行っています。

特に、ICチップ単体の加工にも対応する、微細で精度の高いAuスタッドバンプ加工は同社の強み。試作品から量産品まで幅広く手掛ける中で「スピーディー」「正確」「リーズナブル」「安定した品質」に定評があります。こうした強みを持つ企業は限られるため、名だたる大手企業からの引き合いも多く、これまでに世界最高精度の半導体センサーや時計なども手掛けてきました。


本社外観(提供:函館電子)
本社外観(提供:函館電子)


Auスタッドバンプとは

Auスタッドバンプとは、いわゆる「金の突起電極」のこと。従来は、ICチップの回路の端子と基盤の回路をつなぐべく、金のワイヤーが使われてきました。けれども電子機器における軽薄短小化の流れの中で、数ミリある金のワイヤーをさらに短くすることが求められるようになり、その結果生まれたのがフリップチップ実装です。ICチップの回路の接続端子に、金のワイヤーではなく金の突起電極を付け、ひっくり返して回路に直接接続する方法になります。

フェイスアップ・フェイスダウンの図(提供:函館電子)
フェイスアップ・フェイスダウンの図(提供:函館電子)


高精度な製品に使われる

スタッドバンプには、Auスタッドバンプのほかに、はんだのスタッドバンプなどいくつか種類があります。その中でも、高い信頼性や精度が求められる製品には、Auスタッドバンプが使われます。

「例えば、そこまで高い精度が必要ない製品については、安価なはんだのスタッドバンプが使われるのが今の流れです。ただ、100パッド以上を接続する必要があるので、加工にはおのずと時間がかかります。一方、金は高価ですが、導電率が非常によく腐食しません。そうした特性上、品質の高さが求められる製品にはAuスタッドバンプを使うのが通例です。またAuスタッドバンプはチップの接続回路の端子が少ない、40パッド以下くらいで済むので、加工時間もあまりかかりません。スタッドバンプにもそれぞれ特徴があるのです」(黒須氏)


より微細になる傾向

Auスタッドバンプは、時代とともにより微細な加工が求められていることが特徴ですが、現場では具体的にどれほどの微細加工が求められるのでしょうか。

「最初に作り始めたAuスタッドバンプは、人の髪の毛くらいの100μmほどでした。でも最近は、直径50μm(0.05ミリメートル)まで要求されるケースも出てきました。例えばスマートフォンの部品で欠かせない水晶発振器を小さくすると、ICチップも小さくする必要があります。Auスタッドバンプの直径をより小さくするニーズを見越してチャレンジし続けた結果、当社では20年かけて25μmまで対応できるようになりました。センサー系の小さいチップにも使える技術なので、IoTなどの流れの中で、今後も微細さを求められる傾向は続くはずです」(黒須氏)


函館電子が製造可能な極小径のAuスタッドバンプとそのサイズ(提供:函館電子)
函館電子が製造可能な極小径のAuスタッドバンプとそのサイズ(提供:函館電子)


量産化に対応できる企業が少ない

Auスタッドバンプ加工は、特に量産化に対応できる企業が少ないのも特徴です。

「Auスタッドバンプは、単純に装置を買ってくればできるものではありません。装置にはさまざまな設定条件があり、それらを駆使して使いこなす必要があります。といっても、そこまでは時間をかければ誰でもできます。難しいのは、お客様ごとに細かく指定があることです。形状や高さ、厚さ、位置精度などお客様ごとに異なる条件をクリアするには、長年の経験やノウハウがものを言います」(黒須氏)

「試作品を作ればOKという案件なら、手掛けることができる企業は他にもあります。けれども量産品を手がける場合、早く正確に、安定的に品質の高いものだけをリーズナブルに提供し続けるには、技術力のほかに品質管理のノウハウが欠かせません。その点で当社は、20年以上培ってきた経験やノウハウがあります。 量産品の不良率は50ppm~300ppmほどにとどまりますが、これはなかなか他社には真似できるものではありません」(久保田氏)

Auスタッドバンプのボンディング装置は、1台あたり1500万円ほどする高価なもの。同装置を複数導入できる企業は限られる中、函館電子が保有するのは24台です。国内屈指の保有台数を誇ることも、試作品から量産化まで幅広く対応できる理由です。


函館電子のAuスタッドバンプボンディング装置。これほど多くそろえている企業はなかなかない。(提供:函館電子)
函館電子のAuスタッドバンプボンディング装置。これほど多くそろえている企業はなかなかない。(提供:函館電子)


Auスタッドバンプで「世界最高峰」のものづくりを支えてきた実績

函館電子が手掛ける微細かつ高精度のAuスタッドバンプ加工は、いわゆる一流企業のさまざまなものづくりにこれまで採用されてきました。例えば、世界最高峰の精度を誇る半導体センサーや時計などです。

「半導体センサーに用いるICチップは、高さを均一にしてほしいというお客様のご要望がありました。スタッドバンプは先端が突起のようになっているので、一度作ったスタッドバンプの先端をすべて叩いて高さを均一にする、当社としては初めての試みでした。ただ、材料や条件などを決めてしまえば、作ること自体は今までのノウハウですぐにクリアできました。難しかったのは品質管理です。スタッドバンプの先端を平らに潰す際、そこに異物や汚れなどが付着すると形状が変わってしまうため、作った後の品質管理に時間を要しました。けれどもそうした積み重ねの結果、お客様が監査などで当社に来られた際には、技術面だけでなく管理面も評価くださって量産化につながりました」(久保田氏)

また、同社は、携帯電話やスマートフォンに欠かせない水晶発振器を製造する大手企業を顧客に持ちます。顧客が使用するAuスタッドバンプの全量を独占的に納入してきた実績がありますが、これも同社の技術面と品質管理面が評価されてのことです。

「2016年度は、1年間で4億個の水晶発振器用ICチップを作りました。2017年度に世界で製造されたスマートフォンは14億台なので、3割弱の製品に当社が手掛けたICチップが入っている計算です。いずれにしてもお客様からは、当社の製品についてエンドユーザーからのクレームは一切ないと伺っています」(黒須氏)


時代の最先端である電子部品を作り続けたい

IoTやAIが進化する中、これまで必要のなかった業界や分野でもICチップや電子回路のニーズはますます高まるはず。函館電子はどのような未来を見つめているのでしょうか。

「これまで当社は、時代の最先端である部品を長らく手掛けてきましたが、これからも引き続きそのポジションに居続けたいと考えています。人々の生活をより良くするデジタルトランスフォーメーションの時代に、もっと小さくしなければいけないロボット関係のモノやサービスは増えるはず。Auスタッドバンプ加工はますますお役に立てると思うので、これまでご縁のなかった分野も含めて新しい市場を開拓していきたいです」(黒須氏)

試作品から量産品まで、微細で精度の高い電子部品に関するお困り事やご相談があれば、函館電子にぜひ一度ご相談ください。


函館電子株式会社
1982年創業。電子部品の製造や検査など半導体の後工程のものづくりを手がける。特に微細で精度の高いAuスタッドバンプボンディング加工が強みで、同装置は国内屈指の保有台数を誇る。試作品から量産品までさまざまな製品を手がけてきた実績あり。
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