IVUSとOFDIの機能を搭載したデュアルセンサーシステムに対する医療現場の期待とは〜血管内イメージングデバイス(後編)

INTERVIEW

佐賀大学医学部附属病院
循環器内科 教授
園田 信成

血管内イメージングデバイスの開発ストーリーとなる本連載。後編では、IVUSとOFDIの機能を搭載したデュアルセンサーシステムに注目します。1990年代以降、多くの病院で導入された心臓カテーテル治療は、狭心症や心筋梗塞などの心疾患の治療において一般的な治療方法となりました。超音波センサーを使うことにより腎機能に負担をかける造影剤を使わずに血管断面の画像を取得できるIVUS、そして近赤外線により血管の性状まで詳細に判別できるOFDIが開発されたことで、カテーテル治療の質は大きく向上します。後編では、佐賀大学医学部附属病院の園田教授に、IVUSとOFDIの機能を搭載したデュアルセンサーシステムに対する医療現場の期待についてお伺いします。

心疾患の治療においてカテーテルを使った検査の開発が進んできた理由

心臓付近の動脈の血管狭窄の治療を行う場合、主に2つの方法があります。
1つ目はバイパス手術。これは胸を切開し、動脈を切り、血管の狭窄した箇所を避けて、動脈を繋ぎ、血流量を回復させる方法です。心臓外科が担当する治療となります。
2つ目は血管内カテーテル治療。これは腕や足の血管から狭窄した箇所までカテーテルを入れ、バルーンを膨らませて狭くなった血管を押し広げる方法、さらにそこにステントという金属製の網を広げて留置させる方法があります。こちらは主に循環器内科が担当する治療となります。
胸を開いて動脈を切って繋ぐバイパス手術よりも、病変をダイレクトに治療するカテーテル治療の方が、侵襲も少なく、ハイリスク症例では優先的に選択される治療法です。
ただし、カテーテル治療の場合、患部を目視して判断することができないため、血管のどの位置にどんな治療を行うのか、術前に明確に決めて処置しなくてなりません。そのために、できるだけ細かく血管の状態を知るための検査が重要です。そのために、カテーテルを使った検査の開発が進んできました。

今回、お話をおうかがいしたのは、佐賀大学医学部附属病院循環器内科の園田信成(そのだ・しんじょう)教授です。園田教授は91年に医師免許を取得し、93年から循環器内科で心疾患の治療に取り組んできました。


IVUS(血管内超音波検査法)の導入で、医師が血管内治療の要否判断がしやすくなった

佐賀大学医学部附属病院循環器内科の園田信成(そのだ・しんじょう)教授
佐賀大学医学部附属病院循環器内科の園田信成(そのだ・しんじょう)教授


「私が医師になった当初からカテーテル治療は行われており、イメージングデバイスを使った検査も行われていました。アンギオグラフィーと(血管造影検査)いう検査技術では、腕や足の血管からカテーテルを目的の場所まで差し入れ、カテーテルの先から造影剤を出し、体の外側からX線で読み取るというものです。アンギオグラフィーが現場で使われるようになったのは、1970年代頃でしたが、画像は新人医師が簡単に読影できるものではありませんでした」(園田氏)


先輩医師の横に付いて見習いのような形でアンギオグラフィーの技術を学んだという園田氏。自分一人で診断できる技術を習得するまでには数年かかったといいます。

1990年代から冠動脈用ステント治療が導入され、血管内内腔を詳細に観察する検査技術が開発され、テルモが2000年に製品化したIVUS(血管内超音波検査法)が臨床で使用可能となりました。

「アンギオグラフィーで得られる画像は、あくまで造影剤を入れた血管の影絵です。そのため、血管自体を見ているわけではありません。角度を変えて撮像するなど工夫をしてみるのですが、冠動脈は複雑に曲がっていますからどうしても見えない部分が出てきます。一方、IVUSは実際に血管の内部に超音波センサーを入れて撮影するのですから、血管の状態が一目瞭然でした。またIVUSは血管内側の表面だけでなく、表面から5〜6mmの深部の状態まで見ることができる。それまでは血栓の形状や大きさも血管造影の画像を元に予測するしかありませんでしたが、それが克明にわかるようになった。かなり画期的な技術であると実感しました」(園田氏)

IVUSの登場により医療の現場に変化が表れるのも実感したと園田氏は言います。
というのも、血管内の状態がより詳しくわかるようになったことにより、医師が血管内治療の要否判断がしやすくなったのです。

「どのような病変がカテーテル治療に適しているのか、あるいはバイパス手術をするしかないのか、難しい判断が求められます。というのも、カテーテル治療は患者さんの負担が小さいというメリットがあるのですが、狭窄した血管の病変が比較的均等に広がっている“びまん性”で多岐に及ぶ場合などは向いていないのです。石灰化が強いと血管破裂のリスクもあります。そこで、リスクが高い場合は、心臓外科にバイパス手術の依頼をするケースも多かったのです。しかしIVUSで血管の内側を見られるようになったことで、カテーテル治療が安全に適用される機会も徐々に増えてきました」(園田氏)

園田氏は血管を閉塞させるプラークの性状を判別する組織性状診断に興味を持ち、2001年から2004年までアメリカ・スタンフォード大学に留学もしました。その期間に園田氏はあるソフトウェアの開発に携わり、あるメーカーとテルモをつなぐ仕事もしました。

「留学中に超音波のデータを詳しく解析して、プラークが石灰化しているのか、脂質なのか、色づけして見ることができるソフトウェアに出合いました。私が案内役となりテルモが自社のIVUSに組織性状診断ソフトウェアの導入を決めました」(園田氏)

帰国した後も園田氏は冠動脈の組織性状診断の研究に引き続き取り組みます。当初は色の濃淡しか見えないグレースケールIVUSが主流でしたが、組織性状を解析できるカラーIVUSが登場したことで研究は大きく進展します。


IVUSとOFDIの組み合わせでカテーテル検査が進歩する

続いて、OFDI(光干渉断層診断法)が登場したことにより、カテーテル検査の可能性はさらに広がることになります。

「多くの循環器の医師がIVUSを活用するようになりましたが、さらに分解能が約10倍に向上したOFDIが実用化されたことで、経験の少ない医師でも診断がしやすくなりました。IVUS診断は時に難しく、フォーチュンテラーと称される節もありました。習熟していないと画像から情報を十分に読み取れないため、IVUSコメンテーターが画像を見てこう判断するなら正しいんだろうとオペレーターは素直に従うわけです。しかし、OFDIにより精細な画像が得られるようになり、以前ほど習熟度が高くなくても正確に情報を読み取れるようになりました」(園田氏)

IVUSで経験を積んできただけに、園田氏はOFDIのメリットを熟知しています。

「私もIVUSによる組織性状診断に加えて、OFDIもいち早く取り入れ、両方を使いながら治療と研究を行ってきました。現在はOFDIによるイメージングの研究が主になってきていますが、IVUSとOFDIの両方を駆使できるのが、私の強みになっています」(園田氏)

テルモの鬼村氏が語っていたように、IVUSとOFDIはそれぞれ長所と短所があり、症状に応じて適切に使い分けることが重要です。園田氏はそれを身をもって実感しています。

「超音波を使ったIVUSは血管の奥深くまで見ることができます。血管の表面から5〜6mm深くまで見えるため、下肢の太い血管の性状を見るときなどにも重宝しています。一方、OFDIでは1〜2mmまでしか見えないため、細めの血管でなければ見えません。太い血管を見るときはIVUS、細い血管を見るときはOFDIと使い分けるケースが多いです。また、IVUSは造影剤を注入しなくてよいため、使い勝手が良いというメリットがあります。通常のカテーテル治療ではIVUSを使ってスピーディーに検査し、複雑な病変を治療するときはOFDIを使うという医師も多くいます」(園田氏)


マルチモダリティに寄与するデュアルセンサーシステム

IVUS(血管内超音波検査法)(上段)とOFDI(光干渉断層診断法)(下段)の画像。2種類の画像を見ることでさらに診断の正確性が高まる(提供:テルモ)
IVUS(血管内超音波検査法)(上段)とOFDI(光干渉断層診断法)(下段)の画像。2種類の画像を見ることでさらに診断の正確性が高まる(提供:テルモ)


そうした中、テルモが開発しているIVUSとOFDIの両方の機能を搭載したデュアルセンサーシステムに、園田氏は大きな期待を寄せています。

「1つのカテーテルでIVUSとOFDIの画像を組み合わせることで、より確実な判断をすることができるため、デュアルセンサーシステムには非常に大きなメリットがあります。特にTCFA(Thin-Cap Fibroatheromas)と呼ばれる破れやすく危険なプラークの診断に役立つと考えられます。TCFAはOFDIで見ると過剰評価して偽陽性になることも多いのですが、IVUSで見るとTCFAなしと正確に判断できるケースも多い。デュアルセンサーがあれば、それを一度の検査でより正確に判断できる可能性があると期待しています。現在、医療の現場では、複数の検査画像データを共有して的確な診断を行うマルチモダリティの導入が進められています。そのような時代において、デュアルセンサーシステムは非常に有用なデバイスになるのではないでしょうか」(園田氏)

カテーテル治療用のデバイスを長年使い続けてきたユーザーとして、改善の余地はまだ残されていると園田氏は言います。

「カテーテルが昔よりも細径化したことでスムーズに血管の奥まで挿入することが可能になり、操作もしやすくなりました。しかし、それによるデメリットもあります。カテーテルを使う際には、生理食塩水を流すことで内部に溜まった空気を取り除く「フラッシュ」という作業が必要になりますが、細径化することでそれが難しくなるのです。

フラッシュが不十分だと、手技を行う際に空気がセンサーの邪魔をして画像がうまく見えなくなったり、体内でフラッシュして空気塞栓で血管を詰まらせてしまうというようなリスクがあります。より使いやすい洗練されたIVUSカテーテルを目指してほしいと思っています。より良い医療を提供するには、IVUSもOFDIもさらに進化する必要があります。そのためにもメーカーがスピード感を持って開発に取り組んでくれることを期待しています」(園田氏)


文/高須賀哲

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