半導体材料とは。材料別の半導体材料メーカー動向に注目〜半導体入門講座(31)

半導体材料とは、半導体デバイスを製造するプロセスで使用される多種多様な材料であり、半導体の素材となるシリコンウェーハだけでなく、製造プロセスで用いられるフォトレジスト液などの消耗材やボンディングワイヤー、接着剤などの最後まで残る材料が含まれます。今回は、材料別の半導体材料メーカー動向を把握することで、日本企業が存在感を持つ半導体材料について理解を深めていきましょう。

半導体材料は、前工程や後工程における半導体製造プロセス毎で使われる材料に特徴がある

半導体材料は多種多様に渡りすべてを網羅することは難しいため、半導体製造プロセス毎で用いられる材料について概観する。

半導体材料と一般に言っても、半導体製品として最後まで残る材料として全工程プロセスに使われる素材では、おそらくシリコンウェーハしかない。

前工程では、ほとんどの材料が途中で化学変化を起こすために使われていたり、消耗材として使われていたりする。例えば、ねっとりしたフォトレジスト液は、酸化膜や金属膜を形成するための材料として使われ、形成が終わると洗い流されてしまう、消耗材である。前工程では、消耗材が極めて多いという特徴がある。

後工程では、シリコンチップとリードフレームや基板との間の接着材や、ボンディングワイヤー、チップの上にかぶせる樹脂など最後まで残る材料が多い。ウェーハからチップに切り出すときのウェーハ表面を保護するフィルムのように、ダイシングというチップに切り出す工程が終わると除去される消耗材もあるが、最後まで残る材料が比較的多いという特徴がある。


全工程で共通する半導体材料は、ウェーハの素材となる半導体の単結晶

全工程で共通する半導体材料は、ウェーハの素材となる半導体の単結晶である。代表的なシリコンウェーハと化合物半導体に関する半導体材料メーカー動向を見てみよう。

シリコンウェーハ

一般にシリコンウェーハは大きなるつぼに多結晶シリコンを溶かして精製して、単結晶シリコンのインゴットを成長させ、成長した円柱状のインゴットを輪切りにスライスすることによって薄いウェーハを形成する。どろどろに溶かした多結晶シリコンに、種結晶をたらし、高温から室温に徐々に冷やすことによって、溶けたシリコンが次第に固まっていくように回転させながら引き上げていく。結晶面方位を揃えたインゴットを太く長く成長させることによって大口径の単結晶を作る。

原理的に結晶を作成するには、ドロドロに溶かした高温状態から冷却することによって固めていくわけだが、半導体では単結晶にしなければ、結晶と結晶の境界(グレインバウンダリ)ができる多結晶となってしまい、電子が流れにくくなる。このため、結晶の向きが揃った単結晶にするためには引き上げる向きを揃え、グレインバウンダリができないように欠陥ができないようにしなければならないが、このことが難しく、ここにノウハウがある。つまり、どこのメーカーでもすぐに作れるわけではない。

シリコンウェーハを製造する結晶メーカーには、日本の信越化学工業、SUMCO、台湾のGlobal Wafers、韓国のSK Siltron、ドイツのSiltronicなどがあり、日本の信越化学工業とSUMCOの上位2社が55%前後の市場シェアを占めている。3位のGlobal Wafersと5位のSilitronicが合併するという話が進んでおり、これが実現すればこの新合弁企業は2位に浮上する。

シリコンウェーハは、半導体製品になるまで使われる重要な材料であるため、シリコンウェーハの出荷面積は、半導体製品の出荷数と関係がある。半導体製造工程で、ウェーハ投入からウェーハ処理終了まで3か月くらいかかるが、その遅延期間を考慮して、出荷されるウェーハ面積は、半導体製品の出荷数量や金額と相関があるといわれる。

化合物半導体

本連載ですでに述べてきたように、半導体にはシリコンだけではなく、GaAs(ヒ化ガリウム)やInP(リン化インジウム)、GaN(窒化ガリウム)、SiC(炭化ケイ素)のような化合物半導体もある。GaAsやInPは光通信ファイバーのレーザーやLED(発光ダイオード)などに使われており、GaNは青色LEDに使われている。SiCはGaNと共にパワー半導体材料として期待されている。

化合物半導体メーカーとして、GaAsやInP、GaNなどの生産は、日本の住友電気工業が圧倒的に強い。GaNはパワー半導体としてもすでに量産されており、パワー半導体を駆動するためのドライバ回路を集積することで商用化が進んでいる。特にスマートフォンを急速に充電するための充電用・電源用のGaN ICを供給している米国のNavitas社が米Power Integrations社と1位、2位を争っている。

住友電工は、パワー半導体用のGaN結晶だけではなく、GaNパワートランジスタも生産しており、特に高周波パワートランジスタではトップクラスの実力がある。

GaNと同様のパワー半導体の材料として、SiCもある。SiCは、長年京都大学の松波弘之名誉教授が取り組んできたが、SiC結晶を製造するメーカーは米国のCreeが強い。日本では昭和電工がSiC結晶のエピタキシャルウェーハに強い。またロームはSiC結晶メーカーのドイツのSiCrystal社を買収して手に入れた。最近SiCに力を入れ始めた米国のOnsemi社はSiC結晶の同じ米国のGT Advanced Technologiesを買収した。ドイツのInfineonも同じドイツのSiltectra社を買収、SiC結晶を手に入れたほかに、昭和電工ともエピウェーハで提携した。


前工程で使われる半導体材料は、半導体チップ形成で用いられる消耗品が極めて多い

前工程で使われる半導体材料は、結晶ウェーハとは違い、その場限りで使われることが多く、最後の工程まで残る材料は少ない。例えばエッチング材料や現像、洗浄液などは使い捨ての材料である。薄膜を形成するデポジション材料でさえ、反応したSiO2(二酸化ケイ素)やSi3N4(窒化ケイ素)、ポリシリコンなどの膜は、SiH4(シラン)やSi2H6(ジシラン)などを分解し反応(酸化)させて形成するため、元の材料は失われてしまい、最終的なシリコンウェーハ上には原材料は残らない。

このような半導体材料はあまりにも多く、網羅することは難しい。このため、以下の材料の情報に関しては、材料もメーカーもすべて網羅していない。半導体製造に必要な材料の概要を捉えることを主眼にしているので、ご了承いただきたい。

フォトレジスト

フォトレジストは、ウェーハ全体に塗布してリソグラフィ露光によって必要な部分だけを取り除き回路パターンを描くための感光性樹脂である。光に反応して他の材料に変化させ、それを現像液などで取り除く。リソグラフィ工程で必ず使う重要な化学薬品で、写真同様、ネガ型とポジ型がある。この材料では日本が強く、JSRや東京応化工業などのシェアが大きい。信越化学工業、ドイツのBASFなども手掛けている。

現像液・除去液

露光した後の工程で、フォトレジストを光反応させ、別の材料に変化させた後に現像で除去するための薬品である。フォトレジストや反応物の残渣は、その後の工程で障害となるため、完全に除去しなければならず、そのための純水も欠かせない。現像液などは日本のトクヤマ、東京応化工業、BASF(3D TSV用)などが取り扱っている。

エッチングガス

現像によって、フォトマスクで遮光され反応しなかったレジストは残り、光の当たった部分のレジストは取り除かれ、むき出た部分をエッチングで除去することができる。工程の大部分がドライエッチングである。エッチングするためのガスを高周波振動によってプラズマ状態にさせることによって、ClやFなどのハロゲンイオンやラジカルを生成し、このハロゲンイオンやプラズマがシリコンや酸化膜などと反応し、むき出しになった部分を除去する。日本の大陽日酸をはじめ、昭和電工(HBrやC4F6など)や三井化学(NF3、SiF4など)、ADEKAに加え、ドイツのBASFなどが供給している。

マスクされていない部分だけを絵に描いたように削り取るためには、反応性イオンエッチング(RIE)と呼ばれる方法を用いて、プラズマではなくイオンだけを取り出し、直流電圧をウェーハ側に加えることで、イオンだけで反応させてSiO2などを除去することができる。特に深い溝を形成するのに有効である。

デポジション

デポジションは、エッチングとは逆の反応によって、SiO2やSi3N4などの絶縁膜や金属膜を堆積させる工程である。このCVD(化学的気相成長)工程では、反応性のガスを用いてプラズマ状態で雪のように均一に積もらせることができる。また、原子層を1層ずつ積み上げるALD(原子層堆積)技術も薄い膜の形成に使われている。

この工程に使うさまざまなガスをADEKA(TEOS、Hf用材料、低誘電率用材料など)や、昭和電工(NH3)、三井化学(SiH4、Si2H6など)、BASF(Cuメッキ液)などが製造している。また、ドーピングガスであるジボランB2H6を日酸ホールディングスが増産中である。

洗浄液

ウェーハを現像したりエッチングしたりした後は、必ず純水やIPA(イソプロピルアルコール)などで洗浄しなければならない。半導体工場で大量に水を使うのは、さまざまな工程が終了した後に、そのたびに洗浄しなければならないからだ。住友化学、富士フイルム、三井化学(IPA)、BASFなどのメーカーが洗浄液を用意している。

スラリーなど平坦化技術に必要なもの

ウェーハプロセスにおいて、エッチングやデポジションなどで表面にパターンの凹凸ができてしまうが、そのままだとリソグラフィで光を当てるときに段差があるために光の焦点がぼけてしまう。このため凹凸のできたウェーハ表面を機械的に研磨して平坦にする必要がある。この技術をCMP(chemical mechanical polishing)と言うが、研磨する場合、純水に研磨剤(極小さな砥石のような砥粒)を混ぜて削る。日本のAGCやナガセ研磨機材などがスラリーと呼ばれる研磨材を提供している。

その他プロセス材料

これまで紹介した以外の材料も多く、例えば銅金属膜を用いる多層配線などで分厚い銅を細い溝に埋め込むような場合に使うメッキ工程でのメッキ液や、フォトマスクを保護するフィルム、完成したウェーハの裏面を薄く削るときにウェーハ表面を保護するフィルムや、チップに切り分けるダイシング工程で裏面に張るフィルム、モールド工程で金型から半導体製品を剥がすときの離型フィルムなども一時的に使われる材料である。メッキ液はADEKA、フォトマスク保護フィルムは三井化学、表面保護フィルムは積水化学、ダイシング工程のフィルムはリンテック、離型フィルムはAGCなど、さまざまな日本企業が活躍している。


後工程で使われる半導体材料は、工程中での使い捨ての材料と半導体チップの構成物が多い

後工程で使われる半導体材料は、典型的なものは、チップの支持台となるリードフレームや、チップを保護する封止樹脂、ボンディングワイヤーなどがある。これらは完成した半導体製品に含まれているが、工程中だけに使われる一時的な使い捨て材料もある。前述した離型フィルムや、ダイシング工程で裏面に張る保護フィルムなどは使い捨ての材料である。

後工程は、ウェーハを切断してチップに切り離す作業から始まるが、このダイシング作業に必要な装置やブレードを製作しているメーカーも日本勢が強い。ディスコはウェーハ切断装置メーカーとして圧倒的なシェアを持つと共に、消耗材であるブレード(刃)も提供している。東京精密もダイシングソーを提供している。


リードフレーム

金属製のチップ支持台となるリードフレームは、シリコン回路の各端子(ボンディングパッド)と外部端子をつなげる役割もある。ボンディングパッドは0.01mm2以下しかないため、プリント基板上の端子をつなぐことが難しい。このため、シリコン上の小さな端子と外部端子を金や銅のワイヤーで接続し、端子サイズを扱いやすい大きさに変換している。

最近の高集積LSIでは、端子の密度が高くなり、チップ上の端子と基板上の端子とのサイズの差が小さくなりつつある。このため、リードフレームでは対応できなくなり、小さなプリント回路基板をシリコンチップの支持台としている半導体チップもある。例えばIntelのCPUは微細配線のプリント基板上に実装されている。日本のイビデンや新光電気工業が最先端のCPUを実装している。

モールド樹脂

半導体封止樹脂は、単なるエポキシ樹脂だけではなく、シリコンの熱膨張係数に近いガラスを混合している。半導体封止樹脂メーカーは、原材料樹脂メーカーではなく、シリコンに近い特性を持たせるためコンパウンド(混合)メーカーと呼ばれている。日本の住友ベークライトや日東電工、信越化学工業などが封止樹脂を供給している。

ボンディングワイヤー

半導体チップ上の端子とIC製品の端子とをつなぐ役割を持つボンディングワイヤーは、田中貴金属工業の市場シェアが40%と最大である。従来は腐食されにくい金(Au)線が使われてきたが、コストダウンと低い熱抵抗のメリットから銅(Cu)線が使われるようになってきている。


半導体検査装置であるテスターも日本企業が強い

後工程のあと、半導体製品となった最終製品はテストして市場へ届けなければならない。その半導体検査装置(テスター)はIC製品が正しく動作するか、接続されているかを検査するもので、半導体メーカーやOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test:アウトソースの後工程・テスト工程を請け負うサービス業者)メーカーはテストして万全な製品を出荷する責任を持つ。
日本のアドバンテストと米国のテラダイン(Teradyne)が半導体テスターの2強である。


後工程とテストは、IDMやファブレス企業が半導体工程の組立とテストを請け負うOSATに依頼して、パッケージングとテストを行うが、そのテストデータは依頼者が責任を持つ。しかし、半導体メーカーといえどもデータ解析ができる人材はそれほど多いわけではない。一方、OSATは単にテストするだけで、そのテストデータには関与しない。

そこで、第三者として独立にテストデータの解析サービスを提供するビジネスが生まれている。米国のオプティマルプラス(Optimal+)社は、半導体メーカーと守秘契約の下で、テストデータを解析するというサービスを行っている。OSATで取得したテストデータをオプティマルのデータベースサーバーに保存、管理して、急に歩留まりが下がるなどの異常が発生したときにデータ解析によって、異常の原因を明らかにする。同社はOSATにテスト解析エンジニアを常駐させておくという。同社のビジネスモデルは、データベースソフトウエアをサブスクリプションモデルで販売する。

半導体産業は、ファブレス、ファウンドリ、設計ツール、製造装置、IPベンダー、テスターメーカーなどへと水平方向に広がっていくが、前述した解析サービスなど新たなサービスも生まれている。いわば、まだ成長が止まらない産業の一端を見せている。


著者:津⽥建二(つだ・けんじ)
技術ジャーナリスト。東京⼯業⼤学理学部応⽤物理学科卒業後、⽇本電気(NEC)⼊社、半導体デバイスの開発等に従事。のち、⽇経マグロウヒル社(現在⽇経BP 社)⼊社、「⽇経エレクトロニクス」、「⽇経マイクロデバイス」、英⽂誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集⻑、シニアエディター、アジア部⻑、国際部⻑など歴任。


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