『ENEX2022 第46回 地球環境とエネルギーの調和展』現地レポート

2022年1月26〜28日の3日間、東京ビッグサイトにて「ENEX2022 第46回 地球環境とエネルギーの調和展」が開催されました。本展示会は、「エネルギーミックスで加速する脱炭素社会」をテーマとする需給一体型のエネルギーに関する総合展であり、脱炭素社会の実現に欠かせない省エネ、エネルギーマネジメントやデジタル技術、再生可能エネルギー商材などが出展されていました。今回は、「廃プラスチックのカーボンナノチューブ変換技術」と「環境振動を利用した発電素子」、「銅ドーピングを最適化したマグネシウム・アンチモン系熱電変換モジュール」および「農業用水の高低差を利用したナノ水力発電ユニット」の展示内容を紹介します。

「廃プラスチックのカーボンナノチューブ変換技術」と「環境振動を利用した発電素子」

東京理科大学先進工学部電子システム工学科の生野孝(いくの・たかし)准教授の研究室が出展していたのは、廃プラスチックからカーボンナノチューブを高効率に変換する技術と再生可能エネルギーである環境振動を利用した発電素子です。

説明してくださった同研究室の修士課程2年の越路海世(こしじ・かいと)氏によれば、陸上から海へ流出が懸念される廃プラスチック(流出懸念ゴミ)を回収して再資源化する材料研究や画像認識に関する研究などをしていると言い、カーボンナノチューブの研究では廃棄されるプラスチックを減らすための行動変容を促す可能性があることで企業のCSR部門やSDGs部門へ訴求していきたいと考えているそうです。

越路氏によると、海洋プラスチックの漁網などの流出懸念ゴミをカーボンナノチューブに変換する方法は、廃プラスチックを700℃から900℃に加熱し、触媒金属の上にカーボンナノチューブを成長させて作ると言います。こうして作ったカーボンナノチューブは軽量高強度の構造材として使われ、センサー用の電極などにも応用できるそうです。

また、再生可能エネルギーである環境振動を使った発電素子は、静電気の時間変化を利用するトライボ(triboelectric、摩擦帯電)発電と言い、これは環境振動によって静電気を生み出す素子だそうです。さまざまな物質には正電荷と負電荷に帯電しやすい特徴があり、プラスの正電荷に帯電しやすいのは空気や人間の手、ガラス、ナイロンなど、マイナスの負電荷に帯電しやすいのはテフロン、シリコン、ポリエチレン、セルロイドなどが知られているそうです。

正電荷と負電荷に帯電しやすさによる順序を帯電列と言い、2つの物質を接触・分離を繰り返すと、正電荷に帯電しやすい物質の材料表面はプラス、負電荷に帯電しやすい物質の材料表面はマイナスに帯電して静電気を生じ、それを外部の回路に電気として取り出すと言います。同研究室では、正電荷にアルミニウム、負電荷にシリコンの一種であるジメチルポリシロキサン(PDMS)を使い、セントエルモの火のようなコロナ放電(気体中の放電の一種)によって出力を上げ、出力電圧で36.8V、出力電力で1,350uWを出せたそうです。


東京理科大学生野孝研究室による展示ブースの様子。トライボ発電の実用化イメージとして、床を踏んだりキーボードをタッチしたりする動作を想定しているのこと
東京理科大学生野孝研究室による展示ブースの様子。トライボ発電の実用化イメージとして、床を踏んだりキーボードをタッチしたりする動作を想定しているのこと


マグネシウム・アンチモンへの銅ドーピング最適化にてビスマステルライドに匹敵する熱電変換効率を実現

国立研究開発法人 物質・材料研究機構、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点が出展していたのは、熱電変換による発電モジュールです。説明してくださった同研究拠点のグループリーダー、森孝雄(もり・たかお)氏によれば、物質に温度差を与えると電圧が生じる現象(ゼーベック効果)を利用してバッテリー交換なしで作動する熱電変換モジュールの実用化を目指して研究を続けていると言います。

熱電変換の理論は約200年前から提唱されていますが、熱電変換効率を高めるためには、熱伝導率は低く、電気伝導率を高くしなければなりません。熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための候補物質がなかなか見つからず、約70年前になって銅の副産物として得られるビスマステルライドという物質がこれまで熱電発電に最有力の物質とされてきました。しかし、このビスマステルライドの原料のテルルはプラチナより希少なレアアースで、加工性も悪い上に価格や安定供給に大きなリスクがあると言います。

ビスマステルライドに代わる物質として同研究拠点では豊富な資源であるマグネシウム・アンチモン系の材料に少量の銅原子を添加(ドーピング)し、その物質によるn型とp型の材料で作った発電モジュールを使い、室温と320℃の温度差でこれまでビスマステルライドによる熱電発電に匹敵する熱電変換効率7.3%を実現したそうです。

森氏によれば、銅をドーピングすることで、熱伝導率を非常に低くすることができ、同時に電気伝導率を高くすることができたと言います。このことは、熱電発電のための熱伝導率と電気伝導率のトレードオフの問題を解決する物質を開発したということだそうです。

今回、出展していたモジュールはセラミックスに近い物質で作製したと言いますが、今後は熱電発電モジュールの作製プロセスをブラッシュアップし、多種多様な形状で大量生産できるような作製プロセスにしていき、冷却技術や熱管理シミュレーションなどのシステム管理も開発していくそうです。


物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点が出展していたマグネシウム・アンチモン・銅系の材料で作成したモジュール。触れた指の温度差でも発光ダイオードが点灯した
物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点が出展していたマグネシウム・アンチモン・銅系の材料で作成したモジュール。触れた指の温度差でも発光ダイオードが点灯した


農業用水の高低差を利用したナノ水力発電ユニットで農業の未活用エネルギーを発掘

自動車用プレス部品、空調設備、コンピュータ用部品の製造・開発・販売などを行っている東プレ株式会社(東京都中央区)が出展していたのは、農業用水の高低差を利用したナノ水力発電ユニットです。説明してくださった同社開発部、出席研究員の津田学志(つだ・たかし)氏によれば、農業用水の管理はメンテナンスの大変さや高齢化などによってパイプライン化が進み、こうしたパイプラインは年間約5,000km伸びているそうです。

パイプラインは上流で口径が大きく、下流へいくにつれて口径が小さくなっていきますが、小型で中山間部でも設置のしやすい小水力発電装置に適していると言います。同社では、圃場照明や水路の開閉、災害時の電力時給、農機具、農業用ドローンの電力として使えるような農業用水の未活用エネルギーを利用したナノ水力発電ユニットを開発したそうです。

ユニットは、パイプラインから取水して塵芥除去機構を経て排水する過程に2つのタービンを組み込み、整流器とインバータによって100Vに変換し、余剰電力をバッテリーに貯めると言います。定格出力は500Wから1.5kWまでのタイプがあり、対応取水口は50mmから100mmまで、グリッドとして直列に連結することも可能だそうです。

すでに徳島県や石川県で実証実験を行っており、徳島県では徳島大学の重光亨准教授らと、石川県のプロジェクトは金沢工業大学工学部機械工学科の杉本康弘教授(流体工学)や国際高等専門学校と共同で進めていると言います。農業用パイプラインは、水量の変化が少なく、安定した電力が期待できるそうで、このユニットにより電力の地産地消が可能になるかもしれないそうです。


東プレ株式会社のナノ水力発電ユニット。設置や移動、撤去が簡単な構造にしており、2023年の商品化を目指していると言う
東プレ株式会社のナノ水力発電ユニット。設置や移動、撤去が簡単な構造にしており、2023年の商品化を目指していると言う


コロナ禍の中、感染対策を実施して開催された「ENEX2022 第46回 地球環境とエネルギーの調和展」の展示会でしたが、多種多様な内容の展示会が一同に介していたためか、来場者も多く、昨今の展示会に比べ活気を感じられたイベントでした。


文・写真/石田雅彦

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