標準化とは? メリット・デメリットから国内外の動向、制定プロセスまでわかりやすく解説

製造業に携わる人であれば、多くの方が「標準化」の言葉を耳にしたことがあるでしょう。標準化はどのようなもので、どういったメリット・デメリットがあるのか、近年の標準化に関する国内外の動きや、制定プロセスなど、標準化についての基本的な情報をご紹介します。

標準化とは、安全性の確保や利便性向上などの目的で「もの」や「事柄」を統一化すること

標準化は、経済産業省では次のように定義されています。
「標準化とは、『もの』や『事柄』の単純化、秩序化、試験・評価⽅法の統⼀により、製品やサービスの互換性・品質・性能・安全性の確保、利便性を向上するもの」(参考文献1)
つまり標準化とは、ものの形状や、何かを実行する際の工程、それらを試験する方法などについて、わかりやすく統一することによって、安全で便利なものにすることです。
標準化は工業製品だけでなく、日常で手に取るものから社会福祉に関することまで、広い場面で使われています。特に製造業では、電気や電子分野、工業全般に関する規格制定が進んだことで、早い段階から使われ、浸透しています。


身のまわりにある標準化の事例

標準化された製品やサービスは、私たちの身のまわりに数多く存在します。

AC100Vのコンセント

例えば、日本国内では建物の壁についているAC100Vのコンセントは全国で同じ形をしています。もしこれがメーカーによって差し込みの形状がバラバラであれば、ユーザーはコンセントの形状によって製品を使い分けなければならず、自由に家電製品を選ぶことができなくなってしまいます。このようにコンセントの形状が統一されているのは、電気機器に関しての規格があり、標準化されているためです。

案内標識や点字ブロック

車で移動するとき、どの方向に進めばどの地域に行けるかを示してくれる案内標識は、一般道路は青色、高速道路は緑色です。そこに表示される国道の表示は、逆三角形の中に数字を記載する形式で統一されています。これも標準化の1つです。
歩道や駅のホームを見ると、目の不自由な人の安全な移動に必要な案内表示である、黄色の点字ブロックがあります。点字の表示方法やサイズが標準化されていることにより、それを必要とする人の利便性と安全性を向上させています。

シャンプーのボトル

シャンプーのボトルには側面にギザギザした部分がついていて、リンスのボトルにはありません。日本国内で販売される多くのメーカーのシャンプーボトルで同じようにギザギザがあります。これも、目の不自由な人を含めたユーザーの利便性を向上させるために標準化された例です。

その他身の回りには様々な標準化されたものがあふれている

また、乾電池のサイズやUSBポート、QRコード(R)などは国際的に標準化されていて、世界共通で使うことができます。
このように、身のまわりには多くの標準化されたものがあり、そのおかげで私たちの利便性や安全性が確保されています。


標準化の代表的な規格

こういった標準化のルールは、規格という形で定められています。その規格を標準として用いることで、標準化が可能になります。次から、代表的な規格を紹介していきます。

JIS(日本産業規格)

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日本国内の産業全般に関する国家規格としては、JIS(日本産業規格)があります。以前は日本工業規格という名称でしたが、2019年の法改正とともに規格の名称も変わり、工業のみでなく産業全般に関しての規格となりました。(参考文献2)

JISについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

ISO規格とIEC規格

国際的な規格としては、ISO規格、IEC規格などがあります。ISO(国際標準化機構)は各国の国家標準化団体で構成される機関です。ここでは、国際的な標準化を目指し、国家間で共有できる国際標準を規定しています。この国際標準の中で、電気・電子部門に関してはIEC(国際電気標準会議)が策定するIEC規格として分けられています。また、情報技術に関する規格はISOとIECが協働で策定し、ISO/IEC規格として登録されます。

ISOやIECについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

国内外の規格は整合化が進んでいる

今後さらに国際的な取引が当たり前になっていくと考えられる中で、製品やサービスをこれらの国際標準に合わせることは、取引の機会を増やし安全を保障する上でも重要な意味があります。そのため、ISO規格やIEC規格から同じ内容を翻訳して、JISとしてそのまま発行する「国際標準のJIS化」が増えています。
反対に、日本で作られたJISから優れたものがISOやIECの規格に登録されることもあります。例えば、先述のシャンプーボトルのギザギザは、日本のメーカーが業界団体に提案したことがきっかけでJIS化されましたが、その後ISOにも提案し、国際標準となりました。

その他国内外の規格関連情報について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

標準化の種類

標準は、その性格や影響力の範囲によって類型に分けることができます。

標準化機関によって制定されるデジュール標準(デジュールスタンダード)

標準化機関によって制定される公的な標準をデジュール標準と呼びます。ISO規格やJISのような規格はこのデジュール標準にあたります。

デジュール標準について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

企業や団体が集まり制定するフォーラム標準(フォーラムスタンダード)

ある分野についての標準化に関心を持つ企業や業界団体、専門家団の合意で制定される標準はフォーラム標準です。通信やネットワークについて定めているIEEE(アメリカ電気電子学会)規格や、DVDに関して業界団体が定める技術規格などがフォーラム標準に分類されます。

フォーラム標準について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

競争に勝ち残った結果として生まれるデファクト標準(デファクトスタンダード)

特定企業の製品やサービスが世界的なシェアを獲得し、広く普及したことで標準となる場合もあります。これはデファクト標準と呼ばれます。Windows(R)やGoogle(R)検索などは、もはや国際標準と言っても差し支えないほど普及し、世界のあらゆる場所で使われています。このように競争に勝ち残ることで結果的に標準となるものもあります。

デファクトスタンダードについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

公的なものほど影響力が強く、国際的なものほど影響範囲が大きい傾向がある

デジュール標準、フォーラム標準、デファクト標準の中では、デジュール標準は公的色が強く、フォーラム標準は民間寄り、デファクト標準はさらに民間色が強い標準といえるでしょう。また、影響を及ぼす範囲によっても、JISのような国内規格、CEN(欧州標準化委員会)のような地域規格、ISOやIECのような国際規格に分類することができます。
公的なものほど影響力が強く、国際的なものほど影響範囲が大きい標準となります。そういった視点で見ると、ISO規格、IEC規格は影響力・影響範囲ともに大きい標準であることがわかります。


標準化を行う理由やメリット

標準化は社会の中でどういった役割を持っているのでしょうか。また、企業やユーザーはそこからどのようなメリットを得られるのでしょうか。

経営戦略ツールとしてのメリット

企業にとっては、市場の創造や拡大など経営戦略ツールとしてのメリットがあります。同じ製品やサービスを提供することで、それが特定のものとして情報や認識が共有され、利用者の利便性が向上し、標準となることで参入企業が増加し、市場規模が拡大します。競争は生まれますが、そもそも土壌となる市場がなければビジネスが成立しません。そういった意味で市場拡大のきっかけとなる標準化は歓迎すべきものといえます。

生産性の向上や開発のスピードアップなど

また、標準化された製法を用いることで品質が確保され、市場が安定します。この標準化された製法によって、生産性の向上、コストダウン、開発のスピードアップなどが期待できる点も、企業にとって大きなメリットとなります。

利便性や安全性の向上

一方、ユーザーにとっては互換性が向上することで、メーカーや仕様が限定されることなく選択の自由が与えられ、同時に利便性や安全性が上がるなどのメリットがあります。
さらに、社会福祉の面では安全の確保やバリアフリーへの貢献、環境保全への配慮なども標準化によってもたらされます。

競争優位性の維持

国家としては、これらのメリットが相乗効果を生み、国際社会での責任を果たし、ビジネスにおける競争優位性を維持することにもつながります。


標準化のデメリット

逆に、標準化にはデメリットとなる面もあります。

独占できなくなる

まず、形状や技術の独占ができなくなることで他社に参入される可能性や、競争激化による価格の低下などが考えられます。
この点への対処法は、オープン&クローズ戦略がよく用いられます。これは、その分野における外郭の部分を標準化し、自社の持つコア技術は秘匿性を保つことで競争環境を優位な方向に持っていく、というものです。(参考文献3)

オープンクローズ戦略について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

これまで行っていなかった業務が発生する可能性がある

また、標準化によってこれまでは行っていなかった製造方法を取り入れたり、検査や試験が必要になったり、といったことが考えられ、以前の方法では使わなかった時間や費用を消費してしまうかもしれません。さらに、標準から外れた製品やサービスの提供が難しくなる可能性もあります。
これらは、ユーザーの利便性や安全性の向上のために必要なものであるため、企業が持つ社会貢献責任の一部として考える必要があるでしょう。


標準化をめぐる国内外の動き

標準化の進め方や求められる役割は、社会の変化とともに変わりつつあります。

技術の確立を待たずに開発段階から標準化を進行

従来は、研究開発と製品化の後に、技術が確立してから標準化するのが一般的でした。しかし近年では、あらゆる製品やサービスにおいて技術開発スピードが速まっており、研究開発と並行して標準化が進められる事例が増加しています。

各国の主導権争いの激化

また、以前は標準化の中心となっていたのは欧米や日本などでした。しかし、新興国の存在感の高まりや、国際標準化の中心的存在になることで国際的な影響力を強めようとする国が新たに出てきたことなどから、各国の主導権争いが激化しています。
ISOやIECの専門委員会では、中国・韓国などが国際幹事の委員数を急激に増加させ、影響力を拡大しています。国際標準化委員会においては、中国・韓国の出席者は40代以下がおよそ半数となるのに対し、50歳以上が中心の日本は後継者育成に課題があると指摘されています。

標準性が必要な分野の拡大

産業のあり方も大きな変化のときを迎えています。情報技術がより重要なものとなり、IoTの普及やAIの実用化により、第四次産業革命ともいわれる現代は、標準化が必要な分野も急速に拡大し、標準化の重要性も高くなっています。

日本国内でも法改正が進んでいる

こういった状況の変化に対応できるよう、日本国内でも法改正が急がれ、2019年に工業標準化法を改正し、産業標準化法と名称も変わりました。これに伴い、先述のようにJISは日本工業規格から日本産業規格へと変わり、工業だけでなく産業全般に関する規格へと拡大しています。
このように、標準化が求められる技術や分野は急速に拡大しています。特定の製品技術だけでなく、社会システムそのものやそのために提供されるサービス、それらを実現するためのプロセスについても、国際標準化が進行しています。(参考文献4)


標準化を実現するプロセス

これまでご紹介してきたように、標準化は求められる分野が拡大し、より重要性を増しています。自社の製品・サービスでの標準化推進に興味をお持ちの方も少なくないでしょう。標準化策定には、必要なプロセスがいくつかあります。代表的な規格の例をチェックしていきましょう。
なお、標準化する要素としては、製品の仕様だけでなく、インターフェイス部分の仕様、マネジメントやサービス、評価方法なども対象となります。

代表的な規格の制定プロセス

JISの策定には次のような手順が必要となります。
1. 規格原案の作成
2. 原案作成委員会でコンセンサスを得る
3. JISC(日本産業標準調査会)が審議
4. 主務大臣による制定
5. JISとして規定



ISO規格またはIEC規格では、おおまかに次のようなプロセスが必要です。
1. 国際規格案を提案し、積極的参加メンバーの2/3以上の賛成を得る
2. 加盟国5カ国以上から専門家を推薦
3. 作業グループ(WG)内で検討し、コンセンサスを得る
4. 専門委員会(TC)と分科委員会(SC)で検討し、積極的参加メンバーのコンセンサスを得る(もしくは積極的参加メンバーの賛成を2/3以上得る)
5. 全加盟国への意見照会を行い、積極的参加メンバーの賛成を2/3以上得る
6. 最終国際規格案の正式投票を行い、積極的参加メンバーの賛成を2/3以上得る
7. 国際規格の制定



国際規格の制定には全加盟国の反対票が1/4以下という条件があり、WGやTC、SCでの検討などが繰り返され、委員会複数回の投票が必要なこともあり、策定までは約3年の期間が必要となります。


実際には策定までにさらなる期間を要する場合もある

しかし、実際には策定までにさらに長い期間が必要となる場合もあります。JIS・ISO規格・IEC規格いずれについても、原案を作成するまでに国内でのコンセンサスを形成しなければなりません。
このような長い策定期間について、標準化の迅速化が求められることを考慮し、新設されたのが「新市場創造型標準化制度」です。この制度を活用すると、これまで必要だった業界団体のコンセンサス形成の過程を経ることなく、JISや国際標準への提案をスピーディーに行うことが可能になります。

規格の認証を受ける「適合性評価」

このようなプロセスで策定された規格に、製品やサービスが適合しているかを第3者が評価することを適合性評価といいます。適合性評価には、製品が規格に適合しているかを評価する「製品認証」のほか、「要員認証」「マネジメントシステム認証」「試験・校正」「検査」などがあります。
これらの適合性評価を受け認証を得ることで、企業は自社の健全性、製品やサービスについての信頼性をアピールすることができます。また、ユーザーにとっては安全で安心な商品の判断基準とすることができます。


今後さらに高まる標準化の重要性

標準化の定義、企業やユーザーにとってのメリット・デメリット、標準化に関する世界の動向、標準化実現までのプロセスなど、標準化の基礎的な情報をまとめてご紹介しました。
標準化推進には十分なリソースと熟考が必要です。しかし、標準化が実現されることで自社の優位性の確立が期待できます。また、今後は標準化の重要性がますます高まっていくと考えられます。今回ご紹介した内容を参考に、標準化の意義やビジネス戦略としての有効な活用方法を考えてみるのはいかがでしょうか。


▽参考文献
参考文献1:「標準化の概要」(経済産業省)
参考文献2:「JIS( Japanese Industrial Standards)とは」(日本産業標準調査会)
参考文献3:「標準化をビジネスで⽤いるための戦略」(経済産業省)
参考文献4:「JIS法改正」(経済産業省)

 

参考情報
・Windowsは、マイクロソフト コーポレーションの登録商標です。
・Googleは、グーグル エルエルシーの登録商標です。
・QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

 

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