デジュール標準とは?デファクトスタンダードとの違いや規格について解説

規格の標準化には、公的な機関が定めるものと複数の企業者が協議の上定めるもの、競争によって事実上定まっていくものの3種類があり、それぞれデジュール標準、フォーラム標準、デファクト標準と呼ばれます。デジュール標準(デジュールスタンダード)とは、公的な標準化団体が規格を制定するため権威性の高く、国際的な市場で用いられるものが多く存在することが特徴です。今回はデジュール標準の概要、他の標準との違い、規格、メリットとデメリットなどについて解説します。

デジュール標準(デジュールスタンダード)とは、公的な標準化団体によって定められた標準のこと

デジュール標準(de jure standard)のデジュールとは、ラテン語で「法律上の」という意味で、デジュール標準という言葉は「公的機関が定めた標準」という意味で用いられます。原語がラテン語なので「デジューレスタンダード」や「デジュリスタンダード」などと表現される場合もあります。

デジュール標準は、公的な標準化団体(標準化機関)の活動によって定められる標準(規格)です。公的な標準化団体はデジュール団体とも呼ばれ、この団体の定める手順によって作成・発行されたものがデジュール標準と呼ばれます。(参考文献1)


デジュール標準の規格制定プロセスには約3年の期間が必要

規格の制定は「制定」、「適用(実施)」、「評価」、「見直し」、「改定」というサイクルを繰り返して決まっていきます。このうち「制定」と「改定」が標準化団体で行われるプロセスとなり、一般的な国際標準の策定となれば以下のようなプロセスが必要になります。

規格制定のプロセス

1. 国際規格案の提案(NPの提案)   ※NP : 新規業務項目
2. 専門家を交えた標準化団体内(もしくはWorking Group内)での検討
3. WD(作業原案)の作成
4. TC(専門委員会)やSC(分科委員会)での検討
5. CD(委員会原案)の作成
6. DISの全加盟国への意見照会 ※DIS:国際規格案
7. FDISへの正式投票  ※FDIS:最終国際規格案
8. 制定

このプロセスには約3年の期間がかかり、制定までの期間の長さがデジュール標準のデメリットともいえます。(参考文献2、3)

 

 

デジュール標準とフォーラム標準(フォーラムスタンダード)の違い

規格が標準化される過程には、他にも「フォーラム標準」と「デファクト標準」があります。フォーラム標準はデジュール標準と同じく複数者の合意を経て制定されるため、この2つはコンセンサス標準と呼ばれデファクト標準とは区別されます。

フォーラム標準は特定分野の事業化を考えている企業が集まり、加盟企業内で適用する(もしくはライセンスも行う)ことを前提として標準(規格)を策定します。従ってデジュール標準とフォーラム標準の違いは、国際的な視野で加盟各国の検討を経ているか、事業目的で加盟した企業グループ内での検討を経ているかという点です。


フォーラム標準について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

デジュール標準とデファクト標準(デファクトスタンダード)の違い

デファクト標準はコンセンサス標準とは違い、企業間の競争が生み出す事実上の(De facto)標準です。デジュール標準やフォーラム標準と違い、複数者による検討作業や承認工程は経ていません。

新しい市場が立ち上がると、その市場内で参入した各社による覇権争いが起こります。この中で自社の製品やサービスを優位にするための規格争いが行われる場合もあり、デファクト標準とは、競争の結果、ある規格が勝ち残り事実上の標準として市場から認められることをいいます。


デファクトスタンダードについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

デジュール標準はユーザーとメーカーのための規格

デファクト標準は企業の都合や競争の結果による標準であり、必ずしもユーザーのためになる規格とは言い難い面があります。またフォーラム標準も、規格の策定に参加した企業(もしくはライセンスを受ける企業)のためのものであり、こちらも企業主導の標準化作業だといえます。

デジュール標準は公的な標準化機関が策定する規格であり、企業の利益だけが優先されるわけではありません。その意味でデジュール標準はユーザーとメーカー、双方に利益をもたらすための規格といえるでしょう。


デジュール標準の規格

ではデジュール標準にはどのような規格や標準化団体があるのでしょうか。ここでいくつか代表的なものを見ていきましょう。

ISO規格

国際標準化機構(International Organization for Standardization)が制定する規格です。ISOは世界で160ヶ国以上が加盟する国際的な標準化機関で、古くから知られる規格としては乾電池の形状やフィルムの感度などがあります。近年では、品質マネジメントシステムのISO9001や環境マネジメントシステムのISO14001が有名でしょう。

ISOについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

JIS規格

JIS(Japanese Industrial Standards)規格は、日本の産業製品に関する規格を定める日本の国家規格です。JIS規格はネジの大きさや形状から、バイクのヘルメット、鉛筆、トイレットペーパーなど、あらゆる産業製品に適用されています。

JISについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

CEN

CEN(European Committee of standardization:欧州標準化機構)は、EU統合時に加盟国それぞれの国家規格を統合するために組織された標準化機関です。現在では欧州諸国(加盟30ヶ国)の統一的な標準化機関として認知され、欧州規格(EN:European Norm)や各種技術文書を制定・発行しています。

ITU

ITU(International Telecommunication Union : 国際電気通信連合)は、電気通信に関する国際標準の策定を行う国際標準化機関です。電気通信分野全般の規格を制定しますが、グローバル情報通信基盤、インターネットプロトコル、有線、無線の通信規格など、ネットワーク社会に欠かせない規格制定を担っています。


デジュール標準の目的

標準や規格というと工業を含む産業向けのものと思われがちですが、デジュール標準はISOのように環境保全などの内容も含み、非常に適用範囲の広いものです。またデジュール標準は、以下のような目的のために策定されています。

 

1. 製品やサービスの適切な品質を設定
2. 生産効率の向上
3. 互換性・インターフェースの整合性を担保
4. 製品の売り手と買い手に的確に情報を提供する
5. 技術の普及を図る
6. 製品間の性能の客観的な比較を可能にする

 

 

デジュール標準のメリット・デメリット

デジュール標準のメリットは上記の目的と重複するところもありますが、最後にデメリットも含めて整理しておきましょう。

デジュール標準のメリット

・品質の安定
標準化によって一定の品質が担保されるようになり、メーカー、ユーザー双方にメリットがある。

・国際的な市場の拡大
一定の水準が明確になるため製品やサービスを提供する事業者が増え、市場が拡大する可能性がある(参入障壁が下がる)。

・一定の権威がある
標準化された内容は各国の公的機関で検討されたものであり、一定の権威があると認められ、信頼性の高いものである。

デジュール標準のデメリット

・審議と制定に時間がかかる
標準案の提案から制定まで最低3年ほどかかり、即時性に欠ける。最先端技術は陳腐化が始まってしまう可能性もある。

・標準外の製品やサービスは排除される可能性がある
技術的に優れた製品などでも、規格に合わないものは排除されてしまう可能性がある。

・差別化が難しい
他社製品との差別化が難しくなる可能性がある。メーカーは標準規格以外の独自性で他社製品と競争することになる。


デジュール標準はユーザーとメーカーにメリットをもたらす(まとめ)

デジュール標準は公的な標準化団体によって、公正な立場で定められる標準です。メーカーにとっては、特定のメーカーが有利になるような状況にはならないため公正な競争を維持できます。またユーザーにとっては、その標準のものを選べば安定した性能の製品を安心して使えるというメリットがあります。デジュール標準は、メーカーとユーザー双方にメリットのある規格の制定方法だといえるでしょう。

▽参考文献
参考文献1:「標準化の概要」(経済産業省)
参考文献2:「標準化のプロセスと知財・標準化戦略」(経済産業省)、2017年10月
参考文献3:「IEC規格の制定手順」(日本産業標準調査会)

 

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