フォーラム標準とは?最先端の規格を決める仕組みを解説

従来、規格の制定は市場が成熟してから制定される「事後標準」が当たり前でしたが、技術的な進歩の早いIT関係を含む現代の市場にはまったく向かない制定方法となっていました。そこで特定の技術で事業展開しようとする複数社が集まり、事業化の前に標準化を検討する業界団体を作り、標準化を検討するフォーラム標準(フォーラムスタンダード)が始まりました。今回はフォーラム標準の概要から他の標準との違い、そのメリットとデメリットなどについて解説していきます。

フォーラム標準(フォーラムスタンダード)とは、複数の企業が集まり標準を作ること

フォーラム標準とはその名の通り、特定の技術を事業化しようとする企業が集まって業界団体(フォーラム)を組織し、協議を重ねながらその技術の規格などを制定する標準を指します。このように複数企業、もしくは複数国などで協議を重ねながら制定する標準を、コンセンサス標準といいます。(参考文献1)

フォーラム標準の規格制定のプロセス

フォーラム標準の制定プロセスはその団体によって違うものですが、おおよそ以下のようなプロセスで制定が進んでいきます。

 

1.基本技術の開発
規格制定を行おうとする基本技術を、フォーラムの中心となる企業が開発。

2.フォーラムの設立
基本技術の開発会社が中心となってフォーラムへの参加企業を募集、フォーラムを設置。

3.規格提案
基本技術を用いた企画案をフォーラム内で提案。

4.フォーラム内部での検討
フォーラムの参加企業内で企画案を検討、修正などを行う。

5.規格最終案作成
規格の最終案をまとめ、参加企業で投票を行う。

6.投票
フォーラムで定められたルールに則り、通常は3分の2の賛成をもって規格制定の合意が行われる。

7.規格実施(適用)および外部へのライセンスなど
策定した規格に基づく参加企業の製品開発および販売開始。または参加希望企業へのライセンスなどを行う。

 

 

フォーラム標準とデジュール標準の違い

フォーラム標準と同じコンセンサス標準の中に、デジュール標準があります。デジュール標準(デジュールスタンダード)は、公的な標準化団体(標準化機関)の活動によって制定される標準です。デジュール標準にはISOやJIS、CENなどがありますが、各標準化団体の定める手順によって作成・発行されたものがデジュール標準です。

デジュール標準について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

その他関連記事について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

フォーラム標準とデファクト標準の違い

標準にはもう一つデファクト標準(デファクトスタンダード)というものがありますが、これはコンセンサス標準ではありません。デファクトスタンダードは企業間の競争が生み出す市場内の標準で、コンセンサス標準と違い、複数社や国による検討工程や承認は経ていません。市場内で起こった参入各社による覇権争いの結果、特定の規格が勝ち残り事実上の標準として市場から認められることをいいます。


デファクトスタンダードについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

フォーラム標準が求められる理由

ではなぜ企業や団体はフォーラム標準を制定しようとするのでしょうか。その理由は大きく二つあります。

先端分野には即時性があるフォーラム標準を必要としている

デジュール標準は公的な標準化機関による規格策定ですが、制定までは短くても3年ほどかかるのが通常です。これでは技術的発展の早い現代では即時性に欠け、最先端技術であれば規格制定までに陳腐化してしまう可能性もあります。

フォーラム標準はコンセンサスを得るべき相手が限定されているので、比較的早く規格を制定することができます。そういった背景から特に先端分野などでは、制定までに時間のかからないフォーラム標準が求められているのです。

デファクトスタンダードを獲得するためのフォーラム標準

もう一つの理由は、自社規格をデファクトスタンダードとするための「仲間作り」です。先述した標準の制定プロセスの中で「基本技術の開発会社が中心となって、フォーラムへの参加企業を募集しフォーラムを設置」と書きましたが、まさにこれが「仲間作り」であり、このフォーラムで制定した標準を、市場の中のデファクトスタンダードにしようとする動きです。

市場の中でデファクトスタンダードを獲得すれば、その標準を制定した企業は自社の事業展開に有利なだけでなく、権利のライセンスによる「パテント料収入」も期待できます。フォーラム標準はこのような二つの理由で、先端技術分野で積極的に用いられているのです。


フォーラム標準の規格

・MPEG規格
MPEGはVideo-CDやDVD(R)にも使われている動画の標準規格で、1988年頃から策定が始まりました。MPEGのフォーラムは、動画や音声データの圧縮方式を標準化するため、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)が合同で設置した専門家委員会から始まっています。 

・DVD規格
DVD(R)の規格を検討するDVDフォーラムは、DVD(R)に関する規格の制定と普及促進を目的として、東芝や日立製作所、パナソニック、三菱電機などが中心となって設置されました(設置当時の名称はDVDコンソーシアム)。本拠地は日本で、世界中の企業200社以上が会員となっています。

・IEEE規格
IEEE(アイトリプルイー)とはInstitute of Electrical and Electronics Engineersの略で、米国電気電子学会の決める規格およびその団体を指します。IEEEは電気・電子の研究を目的とする学会で、世界150ヶ国に支部を置き会員数は38万人以上といわれています。IEEEが策定した有名な規格には、無線通信の規格があります。無線LANの設定をしたことがある人ならば、IEEE802.11aやIEEE802.11acという規格名を一度は聞いたことがあるでしょう。


他にも、以下のような規格がフォーラム標準として企業や団体に利用されています。(参考文献2)

・W3C(World Wide Web Consortium)規格
Webで使われるHTMLやCSSなどの標準化

・SD規格
SD(R)メモリカードの仕様や規格制定

・IETF規格
インターネットで利用される技術(通信プロトコル等)を標準化


フォーラム標準のメリット・デメリット

最後に、フォーラム標準のメリットとデメリットを確認しておきましょう。

フォーラム標準のメリット

・制定までの時間が比較的早い
デジュール標準と比べるとコンセンサスを得る相手が限定されているので、早く標準を制定することができる。

・デファクトスタンダード獲得の可能性
市場でデファクトスタンダードを獲得できれば、優位性の獲得と大きな利益が期待できる。

・競合牽制
ライセンス条件等を予めフォーラム側で制定するため、競合が事後フォーラム加入した際も優位性を保ちやすい。

・パテント料収入が期待できる
本来の事業以外にも、権利のライセンスによるパテント料収入が期待できる。

フォーラム標準のデメリット

・企業主導の標準
企業主導の標準制定となるので、必ずしもユーザーにとってメリットのある標準とならない可能性がある。たとえばコストが優先され、優れた技術が採用されないなどのデメリットが想定できる。

・市場の公平性を損なう可能性
フォーラム参加企業だけがメリットを享受する標準となる可能性があり、市場の公平性を損なう場合も考えられる。フォーラムに参加しない企業(もしくはライセンスを受けない企業)は、市場から排除されることもあり得る。

・技術的発展を阻害する可能性
フォーラムの利益を優先するあまり、技術的な発展が阻害される可能性がある。フォーラム外の企業が優れた技術を開発しても、規格に採用されなければ標準として利用されることがない。


早い標準化を求めるならフォーラム標準(まとめ)

フォーラム標準の魅力は、標準化までのスピードの速さと、その後に得られるパテント料です。デジュール標準では標準化まで時間がかかり、デファクトスタンダードでは最終的に標準化できるかは市場の反応次第です。市場の中でいち早く標準化を行い、優位性を高めたいならフォーラム標準という選択肢を検討してみてはいかがでしょう。

▽参考文献
参考文献1:「標準化の概要」(経済産業省)
参考文献2:「国際標準に関する基礎概念の整理」(首相官邸ホームページ)

 

参考情報
・DVDは、ディー・ヴイ・ディー・フォーマット・ロゴ・ライセンシング株式会社の登録商標です。
・SDは、SD-3C LLCの登録商標です。

 

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