これからの日本をリードする、新たなロボット産業の立ち上げ方 (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

日本の製造業は、弱体化が指摘される一方、素材産業や工作機械など世界的なシェアを維持する分野も少なくない。そうした状況を踏まえ、日本の製造業が再び世界で強みを発揮するには、どの分野に注力すべきか、戦略的に考えることが重要だ。大きな可能性のあるものとして挙げられるのが「ロボット産業」だ。現状でも日本は産業用ロボットの分野で世界に評価されているが、さらにサービスロボット、知的ロボットといった分野を伸ばしていくための鍵は何か。2冊の書籍から考察してみたい。

ロボットとともに切り拓く、課題先進国日本の未来

『ロボット ── それは人類の敵か、味方か』
-日本復活のカギを握る、ロボティクスのすべて


 中嶋 秀朗 著

 ダイヤモンド社
 2018/01 220p 1,650円(税込)



ロボットカフェに垣間見る「人とロボットの共生社会」

先日、東京・日本橋にある「分身ロボットカフェDAWN ver.β」を訪問する機会があった。

店では、OriHimeというウェイトレスのような外見をしたロボットが接客を行い、コーヒーや食事を席まで運んだり、客と談笑したりしている。店の奥の方には少し大きめのバリスタロボットもいて、客の注文に応じてコーヒーを淹れていた。

実はこれらのロボットは、自力で動いているわけではない。「パイロット」と呼ばれる、重度の障害や病気といった事情で外出できない人たちが、遠隔で操作しているのだ。つまり、ロボットをアバターとして活用することで、障害や病気を持つ人が働ける場を提供しているということらしい。

この店を運営しているのはOriHimeを開発した株式会社オリィ研究所というベンチャー企業である。

このロボットカフェのような、人とロボットが共存する社会を模索する活動は、今後増加する高齢者のサポートや、パンデミック下での社会活動の維持といった観点からも、重要だと感じた。

本書『ロボット ――それは人類の敵か、味方か』では、日本のロボット開発の歴史と現状を分析し、今後日本がこの分野をリードしていくためのポイントをわかりやすく解説する。

著者の中嶋秀朗氏は、和歌山大学システム工学部システム工学科教授。ロボティクス、メカトロニクス、知能ロボットなどを研究するロボットの専門家だ。


ハードウェア技術に強みを持つ日本がロボット産業をリードする可能性

中嶋氏は、日本はロボットを制御するAIなどソフトウェア分野では遅れをとっているが、リアル環境でロボットを動かすハードウェア技術とデータの蓄積では世界のトップクラスであることを指摘する。

AI関連のソフトウェアはオープンソース化されているものが多く、ソースコードをコピーして、カスタマイズの上で活用できる。

だが、ハードウェアはそう簡単にコピーできない。また、リアル環境でロボットを制御するのに必要なデータはシミュレーションでは集められず、実験を通じたデータ収集が不可欠となる。

その点で、ハードウェア技術とノウハウ、そしてリアル環境でのデータを豊富に蓄積している日本企業が圧倒的に有利とのことだ。

OriHimeのような遠隔操作ロボットをもっと活用すれば、高齢者や地方居住者の活躍の場を増やすこともできそうだ。日本は、少子高齢化や地域衰退といった先進国が抱える課題に、積極的にロボットを活用して取り組むことで、「人間がロボットと共生する未来」を先取りし、世界をリードしていけるのではないかと感じた。


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