デファクトスタンダードとは?競争原理が生む事実上の標準について解説!

市場の黎明期には乱立していた規格や商品が絞られて、いつの間にかその市場の標準になっていた、というのはよくあることです。特に規格の多い工業やIT などの業界でよく目にすることですが、これはデファクトスタンダード(デファクト標準)と呼ばれています。自社が属する業界や市場でデファクトスタンダードを獲得することは、その後の事業の優位性に大きく影響します。今回は、デファクトスタンダードの概要や他の標準との違い、そのメリットや具体的な事例を紹介していきます。

デファクトスタンダード(デファクト標準)とは、企業間の競争が生んだ事実上の標準のこと

デファクトスタンダード(De facto standard)のデファクトとは、ラテン語で「事実上の」という意味で、デファクトスタンダードは「事実上の標準」と訳されます。
工業などに用いられる各種の規格は公的な機関(標準化機関等)で定められることも多いのですが、デファクトスタンダードは特定の機関から認証を受けるわけではなく、市場における企業間の競争から生み出されるものです。新しい市場が立ち上がると、その市場に参入した各社が独自の規格を主張し市場が混乱することがあります。この市場内での競争の結果、ある規格が勝ち残り大勢を占めるようになると事実上の標準として市場から認められるようになります。これがデファクトスタンダードです。(参考文献1)

デジュールスタンダード(デジュール標準)との違い

デファクトスタンダードと違い、標準化機関などが定めた規格をデジュールスタンダード(デジュール標準)といいます。ISOやJISがこれに相当し、世界共通規格である乾電池などが一例です。

関連情報について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

フォーラムスタンダード(フォーラム標準)との違い

複数の企業が連携して規格を策定する場合もあり、これをフォーラムスタンダード(フォーラム標準)もしくはコンソーシアムスタンダード(コンソーシアム標準)といいます。例としては、SD(R) カードの規格を策定した「SDアソシエーション」やDVD(R)の「DVDフォーラム」などが挙げられます。


フォーラム標準について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

公的な標準化は変化のスピードに追いつけないため、デファクトスタンダードが生まれる

公的な標準化以外に標準が決まっていく理由には、技術的な発展の早いことが挙げられます。最先端規格を複数社で策定するフォーラムスタンダードや、競争の結果として標準化が進むデファクトスタンダードが工業界やIT業界に多いのは、公的な標準化がテクノロジーの変化に追いついていけないのが要因の一つです。


デファクトスタンダードの事例

ここでデファクトスタンダードの事例をいくつかご紹介しておきましょう。(参考文献2)

Microsoft Office(R)

パソコンが一般的に普及し始めた1990年代後半には、ビジネス向けのソフトウェアとしてワープロの一太郎(R)、表計算のLotus 1-2-3(R)などが人気で、ビジネスの現場でもよく使われていました。その後、Windowsがパソコン用OSのデファクトスタンダードになっていくにつれMicrosoft Office(R)の人気が高まり、現在ではビジネス向けソフトウェアではデファクトスタンダードとなっています。

USB端子

USB(R)の通信規格(USB1.0や2.0)はフォーラムスタンダードとして策定されてきましたが、端子(USBコネクタ)の形については事実上、競争により標準が定まっている状態です。USB(R)の登場当初はType-Aと呼ばれる大型の端子で、その後Type-Bやmini USB(R)、Micro USB(R)などが登場、現在ではType-Cが普及しつつあります。この背景には、電子機器の小型化やスマートホンの普及などがあるといわれています。

検索エンジン

デファクトスタンダードはハードウェアやソフトウェアだけでなく、サービスの世界にも存在します。インターネットの黎明期にはいくつかの検索サービスがポータルサイトとしてサービスを提供していましたが、「ググる」という言葉の流行にも象徴されるように、現在ではGoogleがデファクトスタンダードとなっています。

その他にも、以下のようなものがデファクトスタンダードの事例として有名です。

・パソコンのキーボードの「QWERTY 配列」
・HD-DVDとBlu-ray(R)
・通信プロトコルの「TCP/IP」
・SNSの「LINE(R)」

 

 

技術的優位が業界の優位ではない

上記のようなデファクトスタンダードは、必ずしも技術的に優れている規格が標準となるわけではありません。デファクトスタンダードの事例としてよく取り上げられるものに、ビデオデッキの規格、VHS(R)とベータマックスの例があります。家庭用ビデオデッキが普及した当初、画質が優れているといわれカセットもソニー株式会社が開発したコンパクトなベータマックスが優勢でしたが、企業連携などによる覇権争いの結果、ベータマックスは消滅しVHS(R)がデファクトスタンダードとなりました。

この例からもわかるとおり、必ずしも技術的な優位がデファクトスタンダード獲得の条件ではなく、それゆえデファクトスタンダードにはデメリットも存在します。次章でそのメリットとデメリットを確認していきましょう。


デファクトスタンダードのメリット・デメリット

デファクトスタンダードのメリット

・事業の優位性が高くなる
自社の製品が市場の標準となれば、顧客にもその認識が広まり市場では高い競争優位性を保てます。

・パテント料などの収入につながる
標準となった規格を他社にライセンスする場合には、契約料やパテント使用料などを得ることができます。

・マーケティングコストの削減につながる
自社の規格が市場の標準となれば他社と無駄な競争をする必要がないので、広告宣伝費などのマーケティングコストを抑えることができます。

 

デファクトスタンダードのデメリット

・市場の独占を問題視される場合がある
自社の規格が市場の標準となり、あまりにも大勢を占めるようになると、独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)などに抵触する可能性が出てきます。また法律だけでなく強い独占状態はマスコミや消費者から反発を招く可能性もあります。

・消費者の利便性を損なう可能性がある
先述したように、技術的な優位が必ずしもデファクトスタンダード獲得の条件ではありません。企業間の競争の結果が、消費者の利便性を損なってしまうこともあり得るのです。

 

 

デファクトスタンダードを獲得するためには?

デファクトスタンダードを獲得するためには、大きく2つの方法があります。一つは自社の技術力やマーケティング力を武器に、市場で規格戦争に勝ち抜くという方法。もう一つは、優位としたい規格を採用する企業を戦略的に増やす方法です。

技術力やマーケティング力でデファクトスタンダードを獲得する

他社が真似をできないような技術力や独自の特許、営業力や販売力などで市場の競争に勝っていくという方法です。製品の魅力(規格)によって多くのユーザーを獲得し、市場での優位性を高めることが自社規格のスタンダード化(標準化)につながります。ただしあくまでも規格を選ぶのはメーカーや消費者であることを考えると、計画通りに進められるほど簡単な方法ではないかもしれません。

企業提携でデファクトスタンダードを獲得する

自社が策定した規格を採用してくれる企業と提携し、個の力ではなくグループの力でスタンダードを獲得するという方法です。市場を構成している企業の規模はそれぞれ違いますが、主要な企業と提携を結ぶことができれば実質的に市場を独占することができます。自社の策定した規格が他社にも魅力のある規格であれば、この方法は高い確率でデファクトスタンダードを獲得することができるでしょう。



まとめ

デファクトスタンダードとは、企業間の競争が生んだ事実上の標準のことです。デファクトスタンダードを獲得することで高い競争力を得るなどのメリットがある反面、狙って獲得することが難しい標準でもあります。
独自の技術力を磨くのか、同じ規格を採用する企業を増やし、段階的にデファクトスタンダードを勝ち取るのか。デファクトスタンダードを獲得するためには、常に市場をウォッチし、自社の規格だけでなく他社の規格にも目を向けることが重要です。


▽参考文献
参考文献1:「第1回産業構造審議会通商・貿易分科会参考資料1『企業戦略としてのルール形成に向けて』」(経済産業省)、2014年4月
参考文献2:「コンセンサス標準を巡る競争戦略」(日本産業標準調査会)(https://www.jisc.go.jp/policy/kenkyuukai/keizaisei/pdf/kenkyukai_sympo/4/shintaku_tatemoto.pdf)

 

参考情報
・SDは、SD-3C LLCの登録商標です。
・DVDは、ディー・ヴイ・ディー・フォーマット・ロゴ・ライセンシング株式会社の登録商標です。
・Windows、Microsoft Officeは、マイクロソフト コーポレーションの登録商標です。
・一太郎は、株式会社ジャストシステムの登録商標です。
・Lotus 123は、インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの登録商標です。
・USB、mini USB、micro-USBは、USB Implementers Forumの登録商標です。
・Blu-rayは、ブルーレイディスクアソシエーションの登録商標です。
・LINEは、LINE株式会社の登録商標です。
・VHSは、株式会社JVCケンウッドの登録商標です。

 

 

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