IECとは? IEC規格とは?ISO規格・JIS規格との関係から国際標準化の近況まで解説

IECとは電気製品の国際標準を定める団体です。国際標準化が進み、国際規格に適合する製品開発の重要性が高まり、この国際規格の一つに、「IEC」があります。今回は、IECとIEC規格の概要や、IEC規格とISO規格・JIS規格との関係、国際標準化が進む現状など、IECに関する基本情報をまとめてご紹介します。

IECとIEC規格とは

IEC(International Electrotechnical Commission)は、電気製品の規格やその検査方法、測定方法などに関する国際的な標準を定める団体です。日本では国際電気標準会議と呼ばれますが、国際標準が浸透するとともにIECの名称も知れ渡り、一般的になっています。(参考情報1)

IECの目的は国際貿易の活発化や利便性を高めること

IECは、電気・電子技術分野での標準化・適合性評価等のための国際協力や国際理解を促進すること、それにより国際貿易を活発化させ、関係者の利便性を高めることに貢献することを目的としています。
世界の多くの国にはそれぞれ独自に発展した単位や規格が存在し、それを管理・制定する標準化機関が存在します。しかし、単位や規格の違いは国際貿易において障壁となるだけでなく、製品を使用する上での安全にも影響する場合があります。そこで求められるのが国際的に共通する標準であり、IECはそういった各国の標準化機関によって組織されています。

IEC発足の背景

このような国際標準(グローバルスタンダード)の必要性が活発化したのは、近代科学が急速に発展した20世紀初頭頃からといわれています。
1904年、第5回国際電気会議の各国政府代表者会議にて、世界の技術界の協力強化、電気設備と機器に関する用語や特性、定格などの標準化問題検討、そのための委員会設置の必要性などが話し合われました。これを受け、1906年に日本を含む13カ国によって規約が制定され、同年に正式に発足したのがIECです。
二度の世界大戦によって活動を中断する期間はあったものの、国際貿易の活発化とともに参加国は増え、2021年3月時点では正会員と準会員を合わせ89カ国が加盟しています。

IEC規格とは、IECに規定された国際標準規格のこと

このIECによって、国際的な標準として作成・規定されているのがIEC規格です。
IEC規格は、各国の専門委員会・分科委員会によって策定または改訂が提案されると、中央事務局において投票が行われます。賛成が必要数を満たした場合、各国から任命された作業グループが原案を作成。原案に対しても投票を行い、賛成票が基準を満たすと、最終案においても投票が行われ、賛成が必要数を満たすと国際規格として発行されます。
IEC規格には固有の番号が与えられ、60000以降の整数が用いられます。例えば、電球とソケットの口金の寸法は、国際的な整合性が必要とされる電気製品の代表例です。これは、IEC 60061に"Lamp caps and holders together with gauges for the control of interchangeability and safety"(電球類の口金・受金及びそれらのゲージ並びに互換性・安全性)として規定されています。
このように、IEC規格はIECによって策定される国際規格であり、電気・電子に関するさまざまな製品や測定方法について国際的な標準を定めたものです。
なお、IEC規格の一覧は、日本国内の規格原案作成や標準化普及を担う機関・JSA(日本規格協会グループ)のwebサイトでも検索することができます。(参考情報2)


IEC規格について押さえておきたいポイント3点

1. IEC規格とISO規格の関係

国際標準(グローバルスタンダード)と聞いたとき、ISO規格を思い浮かべる方も少なくないのではないでしょうか。IEC規格とISO規格はどのように違い、どういった関係にあるか、疑問に思っている方もいるかも知れません。
そもそもISOとは国際標準化機構(International Organization for Standardization)のことで、IEC規格とISO規格はどちらも国際標準です。IECの発足は1906年、ISOの発足は1947年と、IECのほうが長い歴史を持ちますが、ISOとは国をまたいだ取引を念頭に「世界に通用する規格を策定すること」を目的としている点は共通しています。

しかし、IECと ISO とは受け持つ分野が異なります。IECとISOは、かつてはそれぞれが国際規格を制定していました。しかし、それでは国際規格を定め標準化を進める目的と矛盾してしまうことから、1976年に協定を結び、担当分野を分けることになったのです。電気・電子の分野に関しては、国際規格が必要となるような項目が多く、使用される製品の種類も多種多様です。また、重要なインフラの基盤技術としての重要性も高く、IECがすでに積み上げた規格があることもあり、電気・電子分野に関しては継続してIECが担当することになっています。
一方、ISOは電気・電子を除く分野全般を受け持ちます。ただし、例外がいくつかあります。医療分野に関しては基本的にISOが規格策定を行いますが、医療で使われる電気機器に関してはIECによって規格が策定されます。また、情報技術の分野は技術革新のスピードが速く、それにともない規格制定や更新頻度も高いことが考えられます。そのため、ISOとIECが共同で規格策定を行う必要があるという考えから、ISO/IEC合同専門委員会が設立されています。こうしてできた規格はISO/IEC規格とも呼ばれます。


ISOについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

2. 深い関わりを持つIEC規格とJIS規格

次に、IEC規格とJIS規格の関係性を見ていきましょう。
IEC規格は電気・電子に関する国際的な産業規格ですが、日本では電気・電子の産業規格はJIS(Japanese Industrial Standards、日本産業規格)に規定されており、2つの規格には分野を同じくするという共通項があります。
前述の通り、IECはそれぞれの参加国を代表する標準化機関から構成されます。日本から代表としてIECに参加しているのは、JIS制定の審議を行うJISC(日本産業標準調査会)という関係性もあります。
従来、JISは国内独自の規格を数多く規定していましたが、近年、国際標準との整合化が図られ、必要に応じてIEC規格と共通の規格へ改訂されているものもあります。というのも、近年は日本製品の需要が高く、メイド・イン・ジャパンとしてのブランド力もあります。それにともない、国際的な取引を意識してものづくりをする必要があり、国際標準に目を向けないわけにはいかなくなったためです。
また、新たに追加される規格は、すでにIEC規格として存在する規格をそのままJISに登録して適用する、いわゆる「国際規格のJIS化」の動きも増えています。


JISについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

3. 電気機器の進化とともにIEC規格も進歩。各国の規格とも整合化が進む

IEC規格が関わる電気・電子の分野では近年、加速的な進化により大きな変革が起きています。例えば、IoTの普及、AIの実用化などが代表的です。
こういった急速に実用化された新たな技術については、これまでにない規格を策定し、従来の規格も見直して改訂することが必要となります。
こうした新たな国際規格の中には、日本から提案し、正式採用されたものもあります。その例が、IoTに関係する概念「トラストワージネス」について規定した規格です。
「トラストワージネス」とは、IoT製品やサービスの開発・運用に関して、安全性や信頼性、セキュリティなどを総合して考えるという、従来にはなかった概念です。このトラストワージネスについての設計および保守運用に関する国際規格はなく、各国で独自にガイドラインなどが設けられていました。
そこで、日本からISO/IECに対し「IoT製品・サービスにセーフティ・セキュリティ等を実装するプロセス」が提案され、2021年に国際規格として発行されたのがISO/IEC 30147:2021です。
これは、日本国内で発行されたIoTセキュリティガイドライン(経済産業省と総務省により発行)、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によるIoT製品に関する指針などをもとに考えられた規格です。この規格では、「IoT製品やサービスにおけるトラストワージネスの実装・保守のためのシステムライフサイクルプロセス」について規定されています。IoT製品の安心と安全のための基準が、日本提案によって国際規格となった例です。(参考情報3)

このように、国際標準化は必ずしも国際規格から国家規格への一方通行だけではありません。各国ですでに運用されている基準や規格が、IECへと提案され国際規格として発行されることもあります。
なお世界には、ANSI・EN・GB・KS・ASなど、多くの国家規格が存在します。IEC規格は、JISを含めたこれらの国家規格の集合体と考えることもでき、それぞれの国家規格がIEC規格への整合化を図ることで、国際標準化が進んでいます。


これからはIEC規格に準拠した製品開発が求められる

国家間のボーダーを超えた流通は今後さらに増えていくと予想されます。そのとき、製品の安全と安心を維持し、円滑な取引を妨げないためには、国際標準がより重要なものとなっていきます。
すでに電気・電子の分野では、IEC規格に適合しない製品やサービスは、国際社会での需要に限界があるといえるでしょう。これまでにない新たな技術が次々と実用化され、新たなIEC規格も続々と策定されていきます。IEC規格に注目し、それらに準拠した製品開発を行う必要性はこれからますます高まっていくでしょう。


▽参考情報
参考文献1:「IECの概要(日本産業標準調査会)

参考文献2:「JSA GROUP Webdesk」(日本規格協会グループ)
(https://webdesk.jsa.or.jp/)

参考文献3:「IoT製品・サービスにセーフティ・セキュリティ等を実装するプロセスが国際標準として出版 ~日本提案の規格が国際標準化団体ISO/IECにて出版~(独立行政法人情報処理推進機構)、2021年6月

 

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