半導体関連企業の現状。EDAツールベンダー3社と半導体製造装置メーカー10社の概況に注目〜半導体入門講座(30)

半導体関連企業は、顧客の設計データに基づいて半導体製造サービスを提供するファウンドリ(Foundry)半導体企業ではなく、半導体製造に欠かすことができないEDA(Electronic Design Automation)ツールを提供する半導体設計EDAツールベンダーや、半導体製造装置メーカー、半導体検査装置メーカーなどで構成されます。今回は、半導体設計EDAツールベンダー3社や半導体製造装置メーカー10社の概況を把握することで、半導体関連企業の現状を読み解いていきましょう。

EDAツールベンダー3社Synopsys・Cadence Design Systems・Siemens EDAの概況

半導体の集積度が上がるにつれ回路があまりにも複雑になってきたため、最終的なマスク出力まで人手で設計するわけにはいかなくなった。コンピュータを使った自動設計が常識である。そのためのソフトウエア設計ツールをEDA(Electronic Design Automation:電子設計の自動化)と呼ぶ。自動化設計ツールは、1980年代までは半導体企業がそれを開発するCAD部門を持っていた。しかし、半導体製造装置産業と同様、EDAを専門にする独立した企業が1980年代から現れた。

1990年代まではさまざまなEDA企業が誕生していたが、現在は大手3社Synopsys、Cadence Design Systems、そしてSiemens EDA(旧Mentor Graphics)に集約されるようになった。これらの大手3社は、さまざまな分野で能力が高いと見たスタートアップを次々と買収し、製品ポートフォリオを広げ、今日の地位を築いた。最先端の5nm/7nmのSoCは、これら半導体EDA設計ツールがなければ、設計できない。それら大手3社の概況を説明する。


Synopsys

Synopsys社の特徴は、 IP(知的財産と呼ばれる重要な回路)も豊富に揃え、EDAとIPの両方で多くの設計資産を揃えている点である。2021年第3四半期における売上額は前年同期比9.6%増の10.6億ドルで、利益は約2億ドル、2021年の通年では42億ドル前後が見込まれている。製品は設計ツールに加え、検証(Verification)ツール、さらにIPなども揃えている。IPビジネスでは、Armに次ぐ第2位の地位を占めている。

常に先端半導体技術を採り入れた設計ツールを提供するため、例えばTSMCが4nmプロセスノードを開発すると、すぐに持っているIPがそのプロセスノードで使えるかどうかの検証をシリコンチップ上で行い、それをユーザーに向けて保証する。特に最近は、PPA(性能、消費電力、面積)やハンド幅、レイテンシを最適化するようなプロセスが求められるようになっているため、単なる動作確認やタイミング検証だけではすまなくなっている。

EDAツールベンダー各社は設計をできるだけ短期間で行えるようにするためのSoC設計フローの開発を続けてきたが、Synopsysは設計自動化を進めるため、AI(機械学習)を使って自律的に設計できるようなツール「DSO.ai(Design Space Optimization AI)」を開発している。チップ設計にこのAIツールを使うと、PPAを最適化するためにAIで学習している。半導体設計ではシーケンシャルな流れに沿った工程であるが、できるだけ多くの工程を並列に処理できるようにして生産性を上げているという。


Cadence Design Systems

Cadence社もSynopsysと同様、シリコンに特化した半導体設計ツールの会社で設計ツールやIPが充実している。2021年第3四半期における売上額は前年同期比12.6%増の7.5億ドルで、利益は1.76億ドル、通年の見通しは29.6〜29.8億ドルの見込みである。利益率では2021年第3四半期は20%を超え、Synopsysをわずか上回った。

CadenceもSynopsys同様、設計の自動化をさらに進め、AI(機械学習)を利用してチップのPPAを最適化するためのツール「Cerebrus Intelligent Chip Explore」を開発している。半導体設計を可能な限り自動化することを目指し、Synopsys同様、RTLからGDS(マスク出力)まで、という標語を掲げている。

2021年10月には、複数のチップレットを集積する3D-IC設計ツールをリリースしている。インターポーザを使うような2.5Dや3DのICではシステムレベルでPPACtを最適化しなければならないが、SiP(システムインパッケージ)でも威力を発揮する。さらに、ツールをクラウド上で使えるようにするプラットフォームも開発している。


Siemens EDA

Siemens EDA社(旧Mentor Graphics)は、半導体設計だけではなく、半導体をプリント回路基板に実装する時に使う回路配線の設計ツールも手掛けている。2017年にSiemens SoftwareがMentorを買収、しばらくMentorブランドを残していたが、2021年1月からSiemens EDAとなった。このため旧Mentorだけの売上額は公開されなくなった。ちなみに2017年の売上額は13億ドルであった。

旧Mentorは、プリント回路基板から、それを使う自動車用のワイヤーハーネスやMEMSセンサの設計まで手掛けていた。Siemensは機械用のCADソフトからPLM(Product Life-cycle Management)ソフトウエアまで手掛けていたが、エレクトロニクス用のソフトは持っていなかったため、Mentorを買収し、機械から電子・半導体までの幅広い設計ツールを持つようになった。

Siemens EDAはデジタルSoCの設計ツールだけではなく、アナログやMEMSの設計ツールも得意としており、最近では半導体回路上で、電源を供給する配線や回路の電力を解析するツール「mPower」をリリースしている。

これらはトップスリーのEDA企業であるが、他にも小さなEDAベンダーは多い。バラツキを考慮に入れた設計手法に機械学習のアルゴリズムを組み込んだカナダのSolido Design社、RTL論理設計に間違いがないかを検証するツールを扱う米Jasper DA社、クラウドベースでチップ設計IPとそのEDAツールを提供するイスラエルのProtean Tecs社など、がある。日本でもプリント回路の配線設計ツールを提供する図研は世界的に認知されている。


半導体製造装置メーカー10社の概況

半導体チップを製造するための機械、すなわち半導体製造装置産業は日本企業が得意とするところである。VLSI Research発表における2020年世界IC用半導体製造装置の売上高上位15社ランキング<表1>によれば、1位は米国のApplied Materials社、2位にオランダのASML社、3位米国のLam Research社と続き、4位には日本の東京エレクトロンが入っている。3位のLamと4位の東京エレクトロンはほとんど同じような売り上げ規模のメーカーである。そして6位にも半導体テスター装置を製造しているアドバンテスト社が入り、7位にはSCREEN Holdings社、9位に日立ハイテクが入っており、日本メーカーは強い。以下に上位企業各社の概要を説明する。

<表1>半導体製造装置メーカー売上高トップ15社 ※速報値。単位百万ドル。サービス・サポート含む(出典:VLSI Research発表より編集部制作)
<表1>半導体製造装置メーカー売上高トップ15社 ※速報値。単位百万ドル。サービス・サポート含む(出典:VLSI Research発表より編集部制作)


Applied Materials

1位の米国のApplied Materials社は、歴史が古く設立は1967年だが、半導体製造装置に本格的に取り組んだのは1976年にジム・モーガン氏がCEOになってからだ。1984年には日本にもテクノロジーセンターを開設、当時半導体産業が盛んになり始めた日本にいち早く進出した。1台の装置の中に、数室の反応チャンバ室を設けるマルチチャンバ装置を発明、パイプライン式の並列処理ができるようにして装置のスループット(単位時間当たりの処理量)を上げた。

Applied Materialsは、半導体製造装置技術の中で自社に足りない分野を補うために次々と企業買収をして拡大していった。イスラエルには優秀なスタートアップ企業が多く、典型的な例としてOpal社とOrbot社を買収した。Opal社はIC製造中に回路パターンの重要なカギとなる寸法を確認するというメトロロジー技術が強く、Orbot社は、マスクパターンの検査やウェーハの回路パターンを検査する装置に強かった。大きなところでは、銅配線が新しい技術と見るやいなや銅配線技術に強いSemitool社を2009年に買収、多層配線が必要なロジックプロセスを可能にした。2011年にはイオン注入に強いVarian社を買収した。このようにして自社の製造装置そのものを強くしていった。

Appliedは常に新しい時代や技術を先読みするトレンドを読むことに長けており、最近ではムーアの法則の行き詰まりと共に新しい時代の則した装置開発の指標として、PPACt(Performance/Power/Area/Cost/Time-to-market)を打ち出している。これはICチップの性能、消費電力、チップ面積、コスト、開発期間を考慮したモノづくりにあった製造装置を開発していくという指針である。常に未来志向の会社であり、時価総額は13.5兆円に達する。


ASML

オランダの大企業Phillipsから独立したASML社は、リソグラフィ専門の企業である。特にArF/KrFレーザーリソグラフィに強く、しかもツインスキャン技術の開発により、スループットを上げた装置の開発で、急成長を遂げた。リソグラフィの分野ではかつてはニコンとキヤノンがトップ争いを演じてきたが、ASMLが研究開発に対する着実な研究開発投資によって液浸装置を開発、リソグラフィ技術でトップの座に就いた。

さらにその先の技術として、EUVリソグラフィはASML社の独占技術となっている。波長193nmのArFレーザーに対して、EUVは13.5nmと1桁小さく、もはやX線といえるくらい短波長だ。IC回路のパターンが細くなればなるほど、波長の短い光は有利になる。微細になればなるほど、マスクパターンで遮蔽される部分の干渉などできれいな回路パターンを描きにくくなる。ASMLは10年以上に渡り、EUV光源となる技術が未完成でも、装置のあるべき姿を求めて装置開発を行ってきた。その結果、7nmプロセスノードから導入されたEUVリソグラフィではASMLの完全に独壇場となっている。


東京エレクトロン

国内トップの半導体製造装置メーカー。元々は半導体商社として出発し、製造装置の輸入販売を続けていたが、それを自社で生産するようになった。Appliedと同様、常に未来を見るためのトレンド情報に力を入れており、半導体のその先を見て、将来重要になる半導体プロセスを見極め、装置を設計するという会社である。

最も得意な製品は、コータ/デペロッパと呼ばれる、フォトレジスト塗布と現像を行う装置であり、リソグラフィ装置のそばに設置して使われる。さらに、エッチングやデポジション、洗浄などの装置も揃えており、日本企業としては総合的な半導体製造装置メーカーである。実は、コータ/デベロッパはこれからのリソグラフィ技術がEUVに代わっても、対応できる装置であり、東京エレクトロンはベルギーの研究開発企業であるImecと共にASMLと技術開発で提携を結んである。


KLA・アドバンテスト・Teradyne・日立ハイテク

これらの代表的な上位の半導体製造装置メーカーは<表1>で見られるように製造装置を作るメーカーであるが、5位の米国のKLAは厳密には製造装置ではなく、シリコンウェーハ表面の欠陥を検査する装置を作るメーカーであり、6位の日本のアドバンテストは、半導体ICの機能や性能を調べるテスト装置(テスター)を作るメーカーである。

半導体製造では、工程ごとに本当に処理できたかどうかを検査することで良品ではない製品を後の工程に持ち込まないように図っている。このため、KLAや9位の日本の日立ハイテクが持つ測長SEMのようにできたパターン寸法をエッチングやリソグラフィで加工通りの寸法に仕上がってるかどうかをチェックする工程が必ず入っている。

また、メモリやロジックICが設計通りの性能や機能を備えているかどうかを電気的に測定し検査するウェーハ検査で、アドバンテストや8位の米国のTeradyneなどが活躍している。加えて、半導体テスターはウェーハ工程だけではなく、パッケージに封止した後もICの性能機能をチェックする。

さらに、検査に必要なプローバを作る企業も製造装置メーカーの仲間に入れている。プローバメーカーは、<表1>のランキングには入っていないが、テスターメーカーなどと協力しながら、チップに合ったプローバを開発している。




著者:津⽥建二(つだ・けんじ)
技術ジャーナリスト。東京⼯業⼤学理学部応⽤物理学科卒業後、⽇本電気(NEC)⼊社、半導体デバイスの開発等に従事。のち、⽇経マグロウヒル社(現在⽇経BP 社)⼊社、「⽇経エレクトロニクス」、「⽇経マイクロデバイス」、英⽂誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集⻑、シニアエディター、アジア部⻑、国際部⻑など歴任。



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