『第12回 高機能素材Week』現地レポート(エレクトロニクス編)

2021年12月8〜10日の3日間、幕張メッセにて「第12回 高機能素材Week」が開催されました。4万人以上が来場した本展示会では製品の高付加価値化に繋がる素材技術に関する様々な展示が行われており、前編では機械・高機能素材についてレポートしました。後編となる今回は、「エレクトロニクス編」として印象に残った酸素イオン伝導性・遮熱性を持つジルコニア粉体、医療機器に用いられる耐屈曲性に優れた極細銅箔糸、反射防止性や熱吸収性に優れた真っ黒いステンレスやチャック用の摂氏17℃で凍る凝結剤の展示内容をご紹介します。

酸素イオン伝導性・遮熱性を持つジルコニア粉体

酸素イオン伝導性・遮熱性を持つジルコニア粉体を展示していたのは、総合化学メーカーとして、化学品、ウレタン、セメント、オレフィン、ポリマー、有機化成品、バイオサイエンス、高機能材料などの製造・販売をしている東ソー株式会社(東京都港区)です。説明してくださった同社高機能材料事業部セラミックス部、課長の相模三四郎(さがみ・さんしろう)氏によれば、ジルコニアはファインセラミックス(高機能・高精度のセラミックス)の一種で、同社のジルコニア(イットリア安定化ジルコニア)はイットリアを分散固溶させて作られているそうです。

こうして作られたジルコニアは、強靭で柔軟、脆くないという特徴をもち、さらに酸素イオン伝導性や遮熱性といったユニークな特性もあると言います。また、ジルコニアを1,300℃で焼結して作る粉体は、微小結晶粒子で構成され、歯科医療の審美歯科材、電子部品、医薬品、情報通信部品、各種センサーなどに使うことができるそうです。特に微妙な調色が可能なため、歯の自然な色を出せ、審美歯科材に多く使われていると言います。また、焼結温度を低くできるので、省エネ効果もあるそうです。

相模氏によれば、こうしたジルコニア粉体は、ジルコンサンドという原料から作られ、塩化イットリウムなどを加えて加水分解させ、乾燥と仮焼、水中分散、乾燥といった工程を経て製品になると言います。1.5molのイットリアや水中分散時にスラリー(懸濁体)状になったものを均一に分散させる技術が必要だそうです。


同社のジルコニア粉体。審美歯科材や高級腕時計など、高付加価値のある材料や製品に使われていると言う
同社のジルコニア粉体。審美歯科材や高級腕時計など、高付加価値のある材料や製品に使われていると言う


医療機器に用いられる耐屈曲性に優れた極細銅箔糸

医療機器に用いられる耐屈曲性に優れた極細銅箔糸を展示していたのは、通信機器用電線(銅箔糸、圧延銅箔、極細線)、音響機器用電線(スピーカー用リード線)、電子機器用電線(リード線、ウレタン皮膜銅線端末加工品、ビニール被覆銅線端末加工品)、電子機器用部品の製造・販売、通信、音響、電子機器用電線の製造用機械の設計・製造・販売、電子機器用部品の製造用機械の設計・製造・販売などを行っている株式会社明清産業(群馬県前橋市)です。

説明してくださった同社代表取締役、山田徹(やまだ・とおる)氏によれば、一般的な丸銅線に比べ銅箔糸は軽量で強く、柔軟かつ高い屈曲耐性が特徴と言います。例えば、ロボットの可動部に使われる編組シールドでは100万回の耐屈曲性が求められ、丸銅線を編んだ一般的なシールド材と比較すると屈曲試験や引張強度などで優れているそうです。

同社の銅箔糸は、電気用の銅線を0.18mmから0.025mmまで伸線加工し、その後に圧延加工することで長尺の薄状平角線にし、こうしてできた銅箔をポリマーやアラミド、テトロンなどの中心糸にスパイラル状にラッピングして製造すると言います。銅箔の枚数は最大4層まで巻くことができ、複数本の撚り合わせも可能だそうです。

最小径で0.07mmまで可能で、銅箔は各種メッキ、合金などを使い、中心糸の材質を変えることで、耐屈曲性、耐熱性などを高めることができると言います。ロボットなどの半導体の製造装置で使われるケーブルや通信機器の配線用シールド材に求められる高い屈曲性や耐電磁波性、銅箔による抗菌作用が求められる医療機器のケーブル・シールド材などに使われているそうです。


同社の銅箔糸とその銅箔糸で作ったシート。銅箔を中心糸へスパイラル状に巻く工程は、同社が自社開発した設備によって行われるそう
同社の銅箔糸とその銅箔糸で作ったシート。銅箔を中心糸へスパイラル状に巻く工程は、同社が自社開発した設備によって行われるそう


反射防止性や熱吸収性に優れた真っ黒いステンレス

反射防止性や熱吸収性に優れた真っ黒いステンレスが展示していたのは、ステンレス表面処理及び材料販売、加工を含めた受託販売などを行っているアベル株式会社(大阪府八尾市)です。説明してくださった同社広報の宮西星弥(みやにし・せいや)氏によれば、ステンレスなどの金属材に塗装やメッキなどの厚い被膜をつけると素地が隠れ、本来の素材感がなくなってしまうと言います。

同社では、電解と化学薬品によって不動態皮膜という黒色酸化皮膜を成長させ、光の干渉を利用して発色させる方法を開発。金属の下地と一体になっているので厚さが1μm以下の薄膜でも、打ち抜きやインサート成形、絞り込み、曲げといった工程でも剥がれにくく、この発色法をほどこすことで逆に耐久性や耐候性、耐薬品性を高めることができるそうです。この発色法をほどこしたステンレス材は、角にも均一に皮膜でき、最大1,219mm×4,000mmまで可能と言います。


同社の黒いステンレス材。反射防止性や熱吸収性に優れ、自動車や建築内装、光学部品などに使われていると言う
同社の黒いステンレス材。反射防止性や熱吸収性に優れ、自動車や建築内装、光学部品などに使われていると言う


ワックス接着の代替を狙うチャック用の摂氏17℃で凍る凝結剤

ワックス接着の代替を狙うチャック用の摂氏17℃で凍る凝結剤を展示していたのは、各種工作機械販売、各種工作機械設計、修理、オーバーホール、改造、レトロフィット、凍結チャッキングシステム(ESチャック)の製造・販売、精密ロータリーテーブル(TNRシリーズ)の製造・販売などを手掛けている株式会社トリオエンジニアリング(愛知県瀬戸市)です。

説明してくださった同社第一営業部エンジニアリンググループ、マネージャーの畠山淳司(はたけやま・じゅんじ)氏によれば、例えば、常温でこの凝結剤をワークと治具に塗って固定させ、チャックプレートに治具を取り付けて冷却した研削液をかけながら凝結を維持しつつ加工し、加工が終わったら温水をかけるなどし、摂氏17℃以上に温度を高くして凝結状態を解放するといったようなことが可能と言います。

このような加工において、ワックス接着では、厚みのあるワックスによってワークに傾きが発生したり、加熱する必要があるためワークが歪んだりしてワックスの洗浄に手間がかかるなどの難点があります。またマグネットチャックやバキュームチャックにも磁性材でなければ使えなかったり、形状が変形したりするなどのデメリットがある一方、同社の凝結剤はさまざまな形状のワークに使え、厚みは1μm以下、温度変化も少ないためワークへストレスを与えず、加工後の洗浄も容易と言います。


同社の凝結剤によるチャックの事例。下の金属装置が摂氏15℃に保たれ、凝結剤を塗ったワークが冷却されて固着するそう
同社の凝結剤によるチャックの事例。下の金属装置が摂氏15℃に保たれ、凝結剤を塗ったワークが冷却されて固着するそう


今回開催された高機能素材Weekには、昨年比の倍以上とリアル展示会を待ちかねたように多くの来場者が訪れていました。来場者を惹きつける多種多様な要素技術が集まり、会場では出展社ともに熱気があふれ、興味深そうに最新技術に目を通し、耳を傾ける人々が散見された展示会でした。


文・写真/石田雅彦


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