『第12回 高機能素材Week』現地レポート(機械・高機能素材編)

コロナ禍がいったん落ち着いた2021年12月、幕張メッセにて第12回 高機能素材Weekが開催されました。これは毎年5月に大阪、12月に東京で開催されてきたフィルム・プラスチック・複合材・金属・セラミックスなど、多種多様な製品の高付加価値化に欠かせない素材技術が一堂に出典する展示会です。

高機能素材Weekのほか、併催としてファインテックジャパン、Photonix(光・レーザー技術展)があり、高機能素材Week(総称)は、第12回フィルムテックジャパン、第10回プラスチックジャパン、第8回メタルジャパン、第6回セラミックスジャパン、第5回 接着・接合EXPO、第4回コーティングジャパン、第1回サステナブルマテリアル展で構成されていました。なお今回の出展社数は全体で520社でした。

2020年12月に開催された前回は、コロナの影響もあって来場者数が1万8,048人でしたが、今回は来場者も回帰してきたようで4万629人と倍以上となっていました。コロナ禍の前、2019年の東京展の来場者数は5万4,036人でしたから、かなり戻っていたようです。実際の会場でも、出展社のスタッフや来場者らによって活気と熱気がみえ、久しぶりにリアル展示会の特徴が出ていました。展示会場には実物の素材や機器、デモなどを間近でリアルに見たり触ったりできることを期待した来場者、それを訴求したい出展社が集まっていました。

この総合展示会には、素材・材料メーカーはもとより、加工技術、製造装置、検査関連技術の企業・団体などが出展しています。会場では、自動車、エレクトロニクス、医療機器、航空・宇宙といった産業の技術者や研究開発・製造担当者らが情報を収集したりしていました。

そんな高機能素材Weekですが、出展社も展示分野も多いので、機械・高機能素材を前編、エレクトロニクスを後編とし、数多い出展の中から興味深い技術を紹介していくことにしましょう。


レーザー溶接深度解析用の非破壊モニタ

レーザー溶接深度解析用の非破壊モニタを出典していたのは、レーザー関連周辺機器、電子機器・プログラム関連などの事業を行っている株式会社NISHIHARA(千葉県柏市)です。説明してくださった同社開発部の山内悠(やまうち・ゆう)氏によれば、レーザー加工の光センサと高速度カメラを同軸上に設置することで、光波形検知と高速度カメラによる加工点の撮影を同時に行うことができる製品技術と言います。

従来、溶接などのレーザー加工時に起きる現象は、計測波形の異常ではっきりとわからなかったそうですが、レーザー溶接時の熱放射光測定と高速度カメラの映像と一緒に確認することで、溶接異常の解析が可能になったそうです。レーザーと同じ波長帯の反射光を測定することで、溶接部の深度を非破壊で解析できると言います。また、専用のPCソフトも開発し、カメラ映像と波形を同時に表示でき、高速度カメラ動画の保管などができるそうです。

この測定装置は顧客がもつレーザー加工装置に設置するそうですが、計測波形と実際に起きている溶接現象の不一致などがあり、光学系の測定装置はブラックボックスだったのが、カメラ映像と一緒に確認することで顧客から納得感が得られるようになったそうです。また、用途として多いのが電池、電子部品などのレーザー溶接加工と言います。


同社の高速度カメラ同軸モニタリングシステム。既存のレーザー加工装置に設置でき、調整が容易であり、加工ヘッド同軸測定のため、測定再現性が高いことも特徴
同社の高速度カメラ同軸モニタリングシステム。既存のレーザー加工装置に設置でき、調整が容易であり、加工ヘッド同軸測定のため、測定再現性が高いことも特徴


クリーンエネルギー水力発電による伸銅品や高機能材料製造

クリーンエネルギー水力発電による伸銅品や高機能材料製造の試みを紹介していたのは、情報通信、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、建設・建築、新事業・開発品の6つの事業分野をもち、多種多様な製品の製造・販売をしている古河電気工業株式会社(東京都千代田区)です。説明してくださった同社電装エレクトロニクス材料統括部門銅条・高機能材事業部門、主幹兼技術企画課長、三原邦照(みはら・くにてる)氏によれば、日光に同社の水力発電所が4か所、合計7基の水力発電機があり、常時出力1万9,200kW、合計最大で3万kWの出力が可能と言います。

これらの水力発電は、古河電工グループの古河日光発電株式会社(栃木県日光市)によるもので、中禅寺湖から流れ出る水源と急峻な地形を利用し、貯水池などへ貯めずに水流をそのまま発電に利用する流れ込み式により、貯水式・ダム式に匹敵する高効率の発電システムになっているそうです。こうして発電された電力は、古河機械金属足尾事業所、古河精密金属工業、古河電工日光事業所などへ供給され、一部はFIT(Feed In Tariff、再生可能エネルギーの固定価格買取制度)制度を活用して電力会社へ売電されていると言います。

三原氏によれば、同社の銅条・高機能材事業部門は脱炭素化社会の流れの中、自動車部品調達などで二酸化炭素排出量の総量にアドバンテージをもたせるためにも水力発電による電力供給にこだわっているそうです。水力発電によって二酸化炭素排出量を大きく削減でき、SDGs活動への貢献にもなると考えていると言い、同社では今後も水力発電によるクリーンエネルギーを使う努力を続けていくそうです。


同社の銅条・高機能材事業部門によるブース。中禅寺湖を水源にする水力発電で二酸化炭素排出量の削減を目指すという展示になっていた
同社の銅条・高機能材事業部門によるブース。中禅寺湖を水源にする水力発電で二酸化炭素排出量の削減を目指すという展示になっていた


ACC法により製造された低環境負荷セルロースナノファイバー

ACC法により製造された低環境負荷セルロースナノファイバーを展示していたのは、パルプ類、紙類およびその副産物の製造・加工・売買、林業、製材業、木材の加工・売買、緑化事業の施工、化学薬品の製造・加工・売買などを行っている中越パルプ工業株式会社(富山県高岡市)です。説明してくださった同社開発本部ナノフォレスト事業部、副部長の伊東慶郎(いとう・よしお)氏によれば、同社のセルロースナノファイバーは薬品を使わず、水流を対抗衝突させるACC法(Aqueous Counter Collision)で作っているそうです。

ACC法は、木材チップからパルプを製造し、水と混ぜて懸濁液にし、それを加圧してチャンバー内へ送り、相対するノズルから高速で噴射、マッハ2の速度で衝突させてセルロース繊維の弱い部分の結合を開裂させ、セルロース分子36本集合するサイズまで微細化させるセルロースナノファイバー製造方法です。ACC法における衝突させる角度制御が難しい一方で、ACC法によってナノサイズにされることで植物、微生物、海藻といった素材のそれぞれの特徴が現れるそうです。

伊東氏によれば、同社のセルロースナノファイバーは、疎水性と親水性の両方の部位をもつことで両親媒性というのも特徴で、疎水性の部位を親水性の部位がおおっているため、水への親和性があると言います。そのため、樹脂にも分散しやすく、分散剤を使えば樹脂中に均一に分散しやすいそうです。

これまで同社のセルロースナノファイバーを用い、音響スピーカー、ヘッドフォン、卓球ラケット、箏の爪や箏柱などの楽器、スニーカーのラバーソール、化粧品などが作られており、これらの製品開発では、ゴムなどほかの材料とどう混ぜるかや固め方などが難しかったと言います。


同社のセルロースナノファイバーを使って作られた箏の箏柱
同社のセルロースナノファイバーを使って作られた箏の箏柱


お米を使ったバイオマスプラスチック

お米を主な原料としたバイオマスプラスチックを展示していたのは、株式会社バイオマスレジンマーケティング(新潟県新潟市)です。説明してくださった同社執行役員、企画営業部長の杉原孝行(すぎはら・たかゆき)氏によれば、おせんべいや日本酒などを製造する際に出る破砕米や期限が過ぎた備蓄米などを使い、ポリプロピレンやポリエチレンなどと混ぜ、買い物袋や容器、おもちゃなどの原料として提供していると言います。

減反政策によって全国的に耕作放棄地が増えていますが、農家はやはりお米を作りたいと思っているそうです。杉原氏によれば、たとえそれが食用でなくても農家として田んぼでお米を作ることが大切で、これまでも資源米として接着剤などの原料の多収穫米を作ってきた農家も多いと言います。

お米を使ったバイオマスプラスチックは、ほかの材料との混ぜ方が難しく、温度管理も重要だそうです。現在は新潟県に1か所のプラントを2025年までにエリアごとに全国10か所に広げることを目標にしていると言い、すでに福島県浪江町や熊本県水俣市などで計画が進んでいると言います。また、今後は自動車部品への提供も視野に入れて事業展開していくそうです。


同社のバイオマスプラスチックのペレット。お弁当箱やおもちゃなどに使うと、温かみのある風合いが出てくると言う
同社のバイオマスプラスチックのペレット。お弁当箱やおもちゃなどに使うと、温かみのある風合いが出てくると言う


新型コロナの第5波が収束しつつあるなか開催された今回の高機能素材Weekには、リアル展示会を待ちかねたように多くの来場者が訪れていました。機械加工や高機能素材などが集まり、会場内に技術者や研究者らの熱気があふれ、興味深そうにそれらの説明を聞く来場者の姿が目立った展示会でした。

文・写真/石田雅彦


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