『横浜ロボットワールド2021』現地レポート

ロボットワールドは、サービスロボットに特化した展示会として始まり、今では年に2回、大阪と横浜で開催されています。ロボット技術やモビリティなどの専門技術展としてコアな出展社や来場者による展示会となっています。2021年の横浜展は、11月10日から11日にかけてパシフィコ横浜で開催されました。

今回の横浜展の内容は、第2回サービスロボット展、第2回産業用ロボット展、第2回次世代モビリティ展の3展により構成されており、横浜ロボットワールド実行委員会の主催でした。出展技術としては、サービスロボット、協働ロボット、水中ドローンなどがあり、アクチュエータ、ハンド機構といった駆動技術、センサーや画像処理といった認識技術から、エレクトロニクス、自動運転といったものまで幅広い出展内容になっていました。そんなロボットワールド横浜展から気になった出展をいくつか紹介しましょう。

ロボットとAIによる受診支援ロボットで手技が難しいエコー検査を身近なものへ

早稲田大学の創造理工学部総合機械工学科、岩田浩康教授の研究室(東京都新宿区)が出展していたのは、心エコー検査をロボットとAIにより行う受診支援ロボットです。岩田教授の研究室では、リハビリ支援、医療支援、スポーツ習熟支援などのロボット技術を研究し、このロボットは医療支援ロボットに該当するとのことです。

説明してくださった同研究室、大学院修士2年の菅原真実(すがわら・まさみ)氏によれば、この心エコー検査受診支援ロボットは日本精工株式会社(NSK)と公益財団法人心臓血管研究所との共同開発だそうです。心エコー検査は、心不全や心筋梗塞、心房細動といった心疾患に使われていますが、これら心疾患による死亡率は世界で第1位、日本人の死亡率は第2位で、生存率は早期発見されるほど高くなると言います。

しかし、心エコー検査は、適切な位置や角度で超音波プローブを当てなければ正確な診断ができず、超音波プローブを扱う医師や超音波検査技師などの手技の習熟度に依存する部分があるそうです。また、仰向けの姿勢になって受診するため、受診者が圧迫感を感じたりするため、座位のままで心エコー検査を受けられるようになることも求められていたと言います。

同研究室などが開発したこの心エコー検査受診支援ロボットでは、受診者は座位のまま、心臓が見えやすい位置まで自動で姿勢が変わるそうで、その際には身体の各部に圧迫や痛みが生じにくいように上半身と下半身が連動して動くように作っていると言います。超音波プローブは、ロボットハンドになっていて、球面パラレルリンクで3自由度をもたせ、超音波プローブの先端が体表面から離れず、位置や角度もズレないように動くことができます。

痩せ型や肥満体型など、受診者によって異なる多様な体型に応じた心エコー検査は難しいそうです。今後、適切なエコー断面を描出し、蓄積したエコー画像データをAIによって解析し、心血管疾患の予防や治療に役立てる技術を開発していくそうで、将来的にはこのロボットをコンビニエンスストアや駅など、医療機関以外の場所に設置し、専門医などとデータを共有して診断結果をスマートフォンなどで通知して、心血管疾患の早期発見と健康寿命の延伸に役立てていきたいと言います。


岩田教授の研究室のブースで実演していたデモの様子。パラレルリンクで自動的に操作される超音波プローブが胸部に当たっている
岩田教授の研究室のブースで実演していたデモの様子。パラレルリンクで自動的に操作される超音波プローブが胸部に当たっている


突出型リニアアクチュエータで屋内向け搬送ロボットの小型化を

サービスロボットの製造・販売などを行っている株式会社RoboSapiens(東京都新宿区)が出展していたのは、突出型のリニアアクチュエータです。説明してくださった同社代表取締役社長、長尾俊(ながお・しゅん)氏によれば、この技術によって居住マンションなどのラスト・ワンマイル問題を解決できると言います。

長尾氏によると、宅配や食品デリバリーにロボットを利用しようとする場合、集合住宅に入る際のセキュリティやエレベータでの移動に時間がかかり、それがラスト・ワンマイルでの障害になっているそうです。ロビーや階下から上層階へ物品を搬送するロボットは、エレベータの開閉や行き先階へのボタンを押せないことも多く、その理由は従来のアクチュエータが前後のストローク長以上の収納スペースが必要でなかなか小型化できなかったからだと言います。

このアクチュエータは、スチール製の巻き尺を使い、アルミフレームに巻き尺を設置して左右からモーターで繰り出されてきた巻き尺が、中央で重なり合い、直角に突出して繰り出される機構になっているそうです。特許も取得したこの機構は、従来のリニアアクチュエータのように突出方向の逆側に収納スペースを必要としないため、ストローク長にかかわらず省スペースで長いストロークが可能だと言います(参考情報1)。また、軽量なのも特徴で、普通のアルミフレームと組み合わせることも可能だそうで、いろいろな構成パターンに適応できるそうです。

長尾氏によると、すでにこのアクチュエータを備えた搬送ロボットも開発し、カメラで撮影した画像を解析し、エレベータやインターホンなどのスイッチを検出し、完全自律で動作させることができていると言います。また、天井に向けたカメラ画像からマップ上の設備配置と照合し、ロボット自身が位置を求めることもできているそうです。


同社が出展していた巻き尺を使ったアクチュエータ。タケノコのように垂直に伸びていくそう
同社が出展していた巻き尺を使ったアクチュエータ。タケノコのように垂直に伸びていくそう


球駆動式の全方向移動機構で柔らかい素材の上でも全方向移動を実現

ヒトの運動制御機構をロボット使って解明しようという研究テーマをもつ九州工業大学大学院生命体工学研究科人間知能システム工学専攻の宮本弘之(みやもと・ひろゆき)准教授の研究室が産業技術総合研究所と一緒に出展していたのは、球駆動式の全方向移動機構です。説明してくださった宮本氏によると、この技術は卒業研究をしていた車好きの学生の発案によって開発されたと言います。

こうした全方位への移動装置としてはオムニホイールがありますが、宮本氏によるとオムニホイール方式では、各ホイールに取り付けられたフリーローラーは、ホイールの幅方向に2列、交互に取り付けられているため、ホイールの回転位置によってホイールと床面との接触位置が変わるため、曲線軌道での移動や床面の形状などによって挙動が不安定になり、フリーローラーが外周部にあるため、ホイールの車軸方向に滑りが生じ、そのため不安定になることもあるそうです。

一方、宮本氏らが開発した全方向移動機構は、球体によって駆動しているため構造が簡略化され、絨毯のような床面の形状が柔らかい素材の上でもどの方向へも違いなく移動できるという特徴があると言います。

特許も取得している機構は、正三角形の頂点にそれぞれ1つずつ、3つの球体を配し、隣り合う球体を同時に同一方向へ回転駆動させる3つの駆動手段をもっているそうです(参考情報2)。また隣り合う球体にはその周面にそれぞれ接触する2つのローターと、それらローターを回転駆動させるモーターがあり、2つのローターはそれぞれ動力伝達用のベルトでつながれ、3つの球体が連動しつつ全体を構成していると言います。

さらに、前後・左右・斜め・旋回といった移動や運動を瞬時に行うことができ、位置決めも正確にできるそうです。また、球体のサイズによって全高を低くでき、耐荷重性も高くできると言います。実際、幅の狭い溝、柔らかい床面、斜面、数十mm程度の段差などがあっても走行でき、現状で最大速度は毎分60mから80m、最大積載重量は300kgまで対応可能だそうです。

宮本氏によれば、同じような機構の移動体では、これまで四角形の移動体は存在したものの三角形のものはなかったと言います。将来的には、全方向移動の可能な電動車椅子の開発やロボットアームを付けた移動用の協働ロボットなどに使っていきたいと考えているそうです。


同研究室の球駆動式の全方向移動機構。現在、小型と大型の2タイプがあり、小型の速度が毎分80m、大型の速度が毎分60m。3つの球体はそれぞれ2つのローターが接触し、ローターは相互にベルトで連動しているそう
同研究室の球駆動式の全方向移動機構。現在、小型と大型の2タイプがあり、小型の速度が毎分80m、大型の速度が毎分60m。3つの球体はそれぞれ2つのローターが接触し、ローターは相互にベルトで連動しているそう


新型コロナが一時的に収束しつつある中で開催された横浜ロボットワールド2021でしたが、リアルの展示会としてロボット関係者や学生などの姿が多く見受けられました。次回は2022年6月9日、10日に大阪のインテックス大阪にて開催される予定です。


文・写真/石田雅彦


参考情報
・参考情報1:「特許第6944227号」の特許権者は「株式会社RoboSapiens」、発明の名称は「突出型リニアアクチュエータ、ロボットアーム及び輸送ロボット」です。
・参考情報2:「特許第5305285号」の特許権者は「国立大学法人九州工業大学」、発明の名称は「球体駆動式全方向移動装置」です。


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