CCUSがカーボンニュートラル達成に向けて注目される理由〜2030年までの商用化に向けて動き出すCCUS(前編)

CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は分離・貯留したCO2を利用する技術の総称であり、CCS(二酸化炭素(CO2)を分離・回収して地中に貯留する)とCCU(分離・回収したCO2を利用する)で構成されます。CCUSは、国際エネルギー機関(IEA)の2020年のレポートによれば、2070年までの累積CO2削減量の15%を担いカーボンニュートラル達成時に約69億トン/年の削減貢献が期待されています。今回は、2030年までの商用化に向けて動き出すCCUS動向に注目し、2回にわたって経済産業省へお話を伺いしました。前編では、CCUSの概要やアジアCCUSネットワークの取り組みについてご紹介します。

CCUSは分離・貯留したCO2を利用する技術の総称であり、CCSとCCUで構成

CO2の排出量を実質ゼロにする、いわゆるカーボンニュートラル。日本は2021年4月にオンライン形式で開催された「気候変動サミット」で、温室効果ガス削減目標を現行の「13年度比26%減」から「同46%減」へと大幅に引き上げる方針を表明。「2050年カーボンニュートラル」への取り組みも進んでいます。

現在、日本は90%以上の一次エネルギーを海外から輸入する化石燃料に頼っています。資源エネルギー庁の電力調査統計(参考文献1)によれば、化石燃料が関わる火力発電の2021年4月分の発電電力量における割合は、昨年度から横ばいで74.1%と依然として、高い数値を維持しています。

昨今、製造から使用までトータルで化石燃料も使わずCO2も排出しない、カーボンフリーエネルギーとして「再生可能エネルギー」が注目されています。年々、全発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は増えていますが、すぐさま火力発電を代替する手段とはなり得ないでしょう。だからこそ、火力発電の際に排出されるCO2をおさえるために、「CCS」と「CCU」という技術が注目を集めているのです。

火力発電などから排出されるCO2を回収して貯留するCCSと、回収したCO2を有効に再利用する技術CCU。この2つの技術をあわせてCCUSとも言われています。国際エネルギー機関(IEA)の2020年のレポートによれば、CCUSは2070年までの累積CO2削減量の15%を担い、カーボンニュートラル達成時に約69億トン/年の削減貢献が期待されています。


CCSは二酸化炭素を回収・貯留する技術

CCSの仕組み(出典:資源エネルギー庁)
CCSの仕組み(出典:資源エネルギー庁)


CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」は、CO2を分離・回収・貯留する技術です。具体的には、火力発電所や製鉄所、セメント工場など、CO2を大量に排出する施設から排出されるガスを大気に放散する前に、CO2だけを分離・回収。その回収したCO2を地中深くの安定した地層に入れることで、長期間にわたって貯留できるというものです。(参考文献2)

排気ガスの中から、CO2だけを分離・回収する技術として、主にCO2をアルカリ性溶液に吸収させ、他の成分と分離して回収する「化学吸収法」が多く使われています。ほかにも、事前に燃料を改質し、燃焼前に炭素を分離する方法や燃焼室に排ガスを循環させ、別に製造した酸素を加えながら燃焼を続け、排ガス中のCO2濃度を高めて回収する方法もあります。

分離・回収したCO2はタンカーやパイプラインで輸送し、地中深くに貯留・圧入します。CCSを実施するにあたって、経済産業省の担当者は「CO2を貯留するすき間のある地層(貯留層)があること、そしてその上がCO2を通さない地層(遮へい層)でおおわれていることが必要です。この遮へい層がCO2が漏れないようフタの役目をします」と語ります。

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が実施した調査では、地層を適切に選定し、適正な管理を行うことで、貯留したCO2を1,000年にわたって貯留層に閉じ込めることが可能である、とも報告されているのです。

「国内には約2,400億トンのCO2貯留ポテンシャルがあると推定されています。ただ、あくまでも基礎データに基づく推定であり、現在は貯留地点において弾性波探査(人工的に強い振動を発生させ、地層境界面で反射して戻ってくる振動を観測することで、地下の構造を把握する作業)等を進めているところです。その結果、2020年3月現在、7地点の調査が完了しており、その地点の合計で約90億トンの貯留ポテンシャルが見込まれています。」と経済産業省の担当者は言います。

また、CCSを行う場合には、事前に地層の調査や評価をおこない、活断層などが近くにない安定した地層を選定するとともに、その地層が破壊されない圧力条件が維持されていることを確認しながら圧入していきます。

断層帯を避け、CO2が浸透しやすい地層に、地層を破壊しない条件を維持してCO2を閉じ込めているので、CCSによって地震が誘発されることはないとのことです。


CCUは分離・回収したCO2を有効に再利用する技術

CO₂を回収・貯留するCCS(左側)と、回収したCO₂からメタノールを合成して原料や燃料に再利用するCCU(右側)の流れ(出典:資源エネルギー庁)
CO₂を回収・貯留するCCS(左側)と、回収したCO₂からメタノールを合成して原料や燃料に再利用するCCU(右側)の流れ(出典:資源エネルギー庁)


CCU(Carbon dioxide Capture, Utilization)は、分離・回収したCO2を再利用する技術です。CO2を再利用する方法として、具体的には鉱物化や人工光合成、メタネーションによる素材や燃料へ再利用する、いわゆる「カーボンリサイクル」と言われる方法と、直接利用する方法があります。直接利用に関しては、CO2を産業ガスとして溶接用シールドガスや炭酸水などの飲料・食品分野、医療分野で利用したり、ドライアイスにして生鮮食品の冷温保管・輸送などで利用したりします。生産効率の下がった油田に圧入して残存原油を回収するEOR(Enhanced Oil Recovery)でも利用されています。(参考文献3)

現在、国内ではCCUSの実用化を目指し、さまざまな研究開発が進められています。2019年1月に当時の首相である安倍晋三氏がダボス会議で「経済成長と環境の好循環」を実現するイノベーションとしてCCUへの意欲を示してから、経済産業省が CO2を炭素資源と捉えて再利用する「カーボンリサイクル」というコンセプトを推進し始めています。

19年2月には資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室が設置され、6月にはCCU技術の各分野で研究開発が必要な技術的な課題を整理した「カーボンリサイクル技術ロードマップ」が公表されました。そこにはポリカーボネートやバイオジェット燃料、道路ブロックなど、基礎技術がすでに確立し水素が不要なものや高付加価値で代替が進みやすいものは2030年頃からの普及を目指す、と書かれています。一方、オレフィンやベンゼン、トルエン、キシレンなどの化学品、燃料、汎用コンクリート製品等、技術は現段階で未確立だが実現した場合CO2利用量が多いものに関しては2050年頃からの普及を目指し技術開発を進めるとあります。

具体的に、日立造船は廃棄物焼却施設の排ガス中のCO2を原料とし、水素と反応させてメタンを製造する取り組みを行っているほか、東芝は排ガス中のCO2を回収し、人工光合成技術を用いて高効率でメタノールを製造する取り組みを行っています。


アジアCCUSネットワークでアジア太平洋地域が連携しCCUSに取り組む

「アジアCCUSネットワーク」は、2021年6月にアジア全域の持続的な経済成長とカーボンニュートラルの同時達成を支援する目的で立ち上げられました。インドネシアにはCO2の排出源が集中するジャワ島付近に古い油田や深い塩水層(貯留に適した地下深部の塩水性帯水層)があるほか、マレーシアにも枯渇油田があるなど、アジア各国には、こうしたCCUS貯留ポテンシャルが100億トン以上ある国が多くあることがわかっています。

そうした背景から、アジア地域におけるCCUSの発展普及を目指し、ASEAN10か国とオーストラリア、アメリカ、日本の計13カ国がメンバーとして参加し、100を超える企業・研究機関・国際機関がサポーティングメンバーに名を連ね、脱炭素化に取り組んでいます。アジアCCUSネットワークは今後、ワークショップや年次フォーラムを通じた知見の共有、地域特性を考慮したCCUSに関する技術、経済および法制度に関する調査などを通じて、2030年ごろの商用化をめざし、CCUSの普及を促進していくそうです。

こうした動きに代表されるように、近年注目を集めているCCUS。脱炭素化に欠かせない技術ですが、実用化にあたって課題と言われているのが「コストの高さ」です。コストも含めた実用的な技術の確立に向けて、いち早く実証実験などの研究開発に取り組んでいるのが、経済産業省です。

経済産業省は、開発を支援した固体吸収材を使って、これまでの技術の半分以下のコストでCO2を分離・回収することを目的に、関西電力の舞鶴発電所で実証試験を実施。また2012年から、北海道・苫小牧でCCSの大規模な実証実験が行われています。

後編では、経済産業省が行っている実証実験の内容、そしてCCUSの今後の可能性について触れていきます。

文/新國翔大

 

 

▽参考文献

参考文献1:「電力調査統計」(経済産業省資源エネルギー庁)2021年8月
参考文献2:「知っておきたいエネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」」(経済産業省資源エネルギー庁)
参考文献3:「CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(後編)」(経済産業省資源エネルギー庁)

 

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