5分でわかる樹脂、樹脂の種類や用途について解説

樹脂とはもともと植物などから得られる自然由来の粘着性を持った物質のことを指していました。しかし樹脂と一言でいってもその種類は一つではなく、自然由来の天然樹脂や人工的に作られた合成樹脂(プラスチック)など様々な種類が存在します。使用される分野や環境、目的によって使用する原料やその配合を変えることで様々な特性を持つ樹脂が作られています。今回は、樹脂とはいったいどのようなものなのか、どんな種類があってどのようなものに使用されているのかご紹介いたします。

樹脂とは、天然の脂(やに)や、石油などの原料から作られる合成樹脂の総称

本来、樹脂とは脂(やに)とよばれる天然物を指していました。しかし現在では、天然物の樹脂以外にも化学の発展により、石油などの原料から化学的に作られる合成樹脂が登場し、これらも合わせて樹脂と呼ばれるようになりました。私たちがよく耳にするプラスチックも樹脂の一つです。

樹脂は、天然樹脂と合成樹脂(プラスチック)の2つに分けられる

脂(やに)とよばれる天然物を指していた樹脂も、今ではかなり広範囲の物質を示します。主原料が石油である天然樹脂に似た人工物の合成樹脂(プラスチック)も樹脂よばれ、樹脂は主に天然樹脂と合成樹脂の2種類に分けることができます。この2つの樹脂にはいったいどのような違いがあるのでしょうか。

樹脂の分岐図
樹脂の分岐図


天然樹脂とは、植物・動物・鉱物から得られる天然由来のもの

天然樹脂とは、主にマツやモミなどの樹木の樹液から得られる「樹脂成分」のことを言いますが、植物由来のもの以外にも動物由来の天然樹脂も存在します。植物由来の樹脂で代表的なものは、触るとかぶれや痒みなどの皮膚症状が出る特徴をもち、塗料や接着剤として使用されている「漆」や樹脂が化石化した「琥珀」などがあります。

<表1>天然樹脂の種類

種 類 名 称 特 徴 使用例
植物由来 松脂 ・松の木から分泌される天然樹脂
・主成分はロジンとテレビン油
・弦楽器の弓の塗布剤
・滑り止めなど
・漆の木から分泌される樹液
・酸化鉄や顔料などを混ぜることで
黒や赤色などの色がつけられる
・接着剤
・伝統工芸品の塗料など
琥珀 ・樹木から得られる天然樹脂が化石化したもの
・硬度は鉱石に匹敵する
・宝石
・装飾品など
天然ゴム ・ゴムの木から得られる樹液で作られたゴム
・性能、品質、価格が合成ゴムと比較して不安定
・産業用車両のタイヤ
・ホースなど
動物由来 シェラック ・樹液を吸ったラックカイガラムシが分泌した
樹脂状の物質
・天然樹脂で唯一の熱硬化性樹脂
・塗料、インク
・食品の
コーティング剤など

(ゼラチン)
・動物の皮膚や骨に含まれるコラーゲンから
作られたもの
・純度の高いものはゼラチンとして
食品などに使用され、純度の低いものは
膠として接着剤などに使用される
・製菓材料
・医薬品
・接着剤など
べっ甲 ・タイマイ(ウミガメ)の甲羅から得られる
・加工が容易なことから
工芸品などの材料に用いられる
・工芸品
・装飾品など
カゼイン ・牛乳に含まれるたんぱく質から作られるもの
・象牙に似た外観を持つ
・ボタン
・印鑑など

 

合成樹脂とは、人工的に作られたプラスチックのこと

合成樹脂とは、化学反応により人工的に作られる高分子化合物のことを言います。合成樹脂の原料は一般的に石油などが用いられ、天然樹脂の代替品として金属や木材に変わり私たちの生活に多く取り入れられています。天然樹脂と比較して安価で取り扱いがしやすいため、工業用材料として多く用いられています。よく耳にするプラスチックとはこの合成樹脂のことを言います。


合成樹脂(プラスチック)は様々な特性を持たせることができる

合成樹脂は、使用する原料やその配合を変えることで耐久性や耐熱性などの様々な特性を持たせることができます。そのため、数多くの合成樹脂が存在しますが、大きく「熱可塑性樹脂」、「熱硬化性樹脂」の2種類に分類することができます。

熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化する合成樹脂のこと

熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度もしくは融点に達した際に軟化し、再び冷やすと固くなる合成樹脂のことを言います。一般的に熱可塑性樹脂は機械加工に適さないことが多く、成型方法は金型を用いて冷やし固める射出成形などが用いられます。熱可塑性樹脂は、温度によって液体と固体の状態を行き来することができるため、材料のリサイクルが可能です。熱可塑性樹脂の中でも、日用品や梱包材などに使用される比較的安価な「汎用プラスチック」と強度や耐久性が求められるような部品に使用される「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」に分けることができます。さらにエンジニアリングプラスチックの中でもより性能の優れたプラスチックは「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」と呼ばれます。明確な定義は存在しませんが、一般的にエンプラは耐熱温度が100℃以上、スーパーエンプラは150℃以上と言われています。


<表2>熱可塑性樹脂の種類

種 類 名 称 特 徴 使用例
汎用
プラスチック
ポリエチレン(PE) ・安価で大量生産が可能
・耐寒性が高く(-20℃)、
耐熱性は低い(70~90℃)
・耐水性、絶縁性、耐油性が高い
・食品用
ラップフィルム
・梱包材
・電線の被覆など
ポリプロピレン
(PP)
・安価で大量生産が可能
・熱可塑性樹脂の中では比較的
耐熱性が高い(100~140℃)
・引張強さ、衝撃強度、
圧縮強度などの機械的強度が高い
・耐候性が低い
食品用タッパ―、
使い捨てオムツ
注射器等の
医療器具など
ポリスチレン(PS) ・透明性が高い
・耐候性、耐薬品性が高い
・耐熱性は低い(60~80℃)
・照明器具
・断熱材
・食品容器など
ポリエチレン
テレフタレート
(PET)
・単体では脆いが、ガラス繊維を
含めることで強化できる
・繊維強化をした場合は耐熱性、
耐寒性が高い(200℃、-60℃)
・耐薬品性が低い
・ペットボトル
などの食品容器
・フィルム、
磁気テープなど
ポリ塩化ビニル(PVC) ・耐食性が高い
・耐薬品性が高い
・低温状況下でもろくなる
・水道管(パイプ)
・継手
・人工皮革
AS樹脂(AS) ・透明性が高い
・PS樹脂よりも機械的強度が高い
・アルコールに長時間触れると
不透明になる
・食品保存容器
・文具、玩具など
ABS樹脂
(ABS)
・耐衝撃性、耐薬品性が高い
・加工性が高く、様々な加工を施せる
・耐候性が低い
・家電製品の筐体
・自動車用部品
・文具、楽器など
エンジニアリング
プラスチック
エンジニアリングプラスチック ポリアミド(PA) ・靱性、耐摩耗性、
耐薬品性、耐油性が高い
・ガラス繊維などの素材を加えることで
機械的特性が強化できる
・食品用フィルム
・自動車部品など
ポリカーボネート(PC) ・樹脂の中でも高い耐衝撃性を持つ
・寸法安定性が高い
・耐薬品性が低い
・カメラ、スマート
フォンなどのボディ
・自動車部品など
ポリアセタール
(POM)
・機械的強度、耐摩耗性、
耐薬品性が高い
・耐候性が低い
・ギア、軸受け
・自動車用部品
・楽器など
ポリブチレン
テレフタレート
(PBT)
・電気的特性(絶縁性)が高い
・吸水率が低く、寸法安定性が高い
・熱水に長時間浸けると加水分解を起こす
・自動車部品
・コネクタなど
スーパーエンプラ ポリフェニレンサル
ファイド(PPS)
・耐熱性が高い(220~240℃)
・耐薬品性が高い
・ガラス、炭素繊維などにより
強化されていないものは耐衝撃性が低い
・歯車、
ピストンリング
・自動車用部品など
ポリエーテルエーテル
ケトン(PEEK)
・耐熱性が高い(240~250℃)
・機械的強度、耐薬品性が高い
・難燃性が高く、発煙しにくい
・高価である
・宇宙、航空用部品
・自動車用部品など
ポリアミドイミド(PAI) ・耐熱性が高い(260℃)
・高温下でも耐摩耗性など維持される
・PEEKよりも高価である
・宇宙、航空用部品
・自動車用部品など
ポリエーテルイミド(PEI) ・耐熱性が高い(170℃)
・耐熱水性、電気絶縁性が高い
・耐摩耗性が低い
・自動車用部品
・コネクタ、
プリント基板など
ポリサルホン
(PSU)
・耐熱性が高い(175℃)
・耐加水分解性が高い
・寸法安定性が高い
・自動車用部品
・熱水対応継手など

 

『熱可塑性樹脂』について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
『エンジニアリングプラスチック(エンプラ)』について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

 

熱硬化性樹脂は加熱すると硬化する合成樹脂のこと

熱硬化性樹脂は、加熱することで硬化する樹脂のことを言います。熱硬化性樹脂の分子構造は架橋結合という強固な構造をしているため、温度による変化を受けにくいため、機械的強度や耐熱性に優れています。熱可塑性樹脂と違い、一度硬化させてしまうと、再度加熱しても溶けなくなってしまうので材料のリサイクルに難があります。また、硬いという特徴をもつため熱可塑性樹脂と比較して耐衝撃性がありません。熱硬化性樹脂は、工業用部品、電気絶縁材、接着材や塗料など幅広く使用されています。

<表3>熱硬化性樹脂の種類

名 称 特 徴 使用例
フェノール樹脂(PF) ・耐熱性が高く(150~180℃)、
高温下でも強度を保持できる
・電気絶縁性、難燃性が高い
・ノボラック型(熱可塑性)と
レゾール型(熱硬化型)がある
・自動車・鉄道関連部品
・耐熱性が必要となる調理器具など
ユリア樹脂(UF) ・熱硬化性樹脂の中でも、比較的安価
・硬度が高い反面、耐衝撃性は低い
・酸、アルカリ、熱水により浸食される
・電気機器部品
・接着剤、漆製品の素地など
メラミン樹脂(MF) ・表面硬度が高く、傷がつきにくい
・耐薬品性、耐候性が高い
・耐衝撃性が低く、クラックが入りやすい
・食卓用品
・電気部品
・塗料など
ポリウレタン樹脂(PUR) ・機械的強度が高い
・耐薬品性が高い
・水に弱く、加水分解をされやすい
・自動車用部品
・塗料
・繊維製品など
エポキシ樹脂(EP) ・接着性に優れる
・耐薬品性が高い
・硬化剤と組み合わせて使用され、
硬化剤によって様々な特性が得られる
・塗料
・接着剤
・プリント基板など
不飽和
ポリエステル
樹脂(UP)
・寸法安定性に優れる
・酸には強いがアルカリには弱い
・ガラス繊維で補強してFRPとして
よく使用される
・浴槽、浴室ユニット
・塗料
・化粧板など

 

『熱硬化性樹脂』について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

 

 

樹脂(プラスチック)を使う上で知っておきたい環境問題について

加工しやすい、軽くて丈夫などの特性を持つことから様々な分野で使用される樹脂(プラスチック)ですが、海洋プラスチックごみ(海洋に流出したプラスチック類)による海洋環境の悪化は、世界的な問題になっています。その量は毎年約800万トンにも及ぶといった試算もなされています。また、海洋を漂い続けたプラスチックは次第に細かく砕かれ、マイクロプラスチックへと変わり、海洋生態系へ悪影響を及ぼすと言われています。こうした状況から、G7やG20などの様々な場で環境問題について議論されています。日本でも廃棄物処理制度などにより回収や適正な処理を行う、代替素材(海洋生分解性プラスチック)の開発などが行われています。(参考文献1)

海洋プラスチックごみのイメージ
海洋プラスチックごみのイメージ


『生分解性プラスチック』について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

 

まとめ

私たちの生活を様々な場面で支えている樹脂。樹脂と一言でいっても天然由来のものから人工的に作られるものまでその種類は様々で、使用用途によって使い分けられています。それぞれの樹脂にどのような特徴があるのか知ることで、樹脂材料の活用に役立つかもしれません。


▽参考文献
・参考文献1:「環境白書」(環境省) 2019年6月

 

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