世界のファウンドリ半導体企業の動向を読み解く。代表的なファウンドリ半導体企業4社に注目~半導体入門講座(29)

ファウンドリ(Foundry)半導体企業は、顧客の設計データに基づいて半導体製造サービスを専門にしている半導体メーカーです。ファウンドリ半導体企業は、半導体企業でありながら自社ブランドの製品は持っていないため、その売り上げは半導体市場と別に算出されているといいます。今回は、市場調査会社TrendForceにおけるファウンドリ企業の2021年第2四半期業績ランキングを参考に、連載第27回で紹介したTOP1のTSMCを除く「Samsung」「UMC」「GlobalFoundries」「SMIC」など4社に注目します。世界の代表的なファウンドリ半導体企業に加え日本企業の状況を把握することで、世界のファウンドリ半導体企業の動向を読み解いていきましょう。

連載第27回から見てきた半導体の上位メーカーは、いずれも独特の製品を持ち、独自の技術と位置づけをしっかりと確立した企業たちだ。半導体製造サービスを専門にしているファウンドリは半導体企業でありながら、市場規模はまったく別に算出されている。市場調査会社には、ファウンドリ企業を半導体企業のランキングに入れないところが多い。半導体企業の売上額を合計すると半導体市場になるはずだが、ここにファウンドリを含めると二重に計算することになるからだ。

例えばファブレス企業にとって、ファウンドリは製造を委託するサービス業者であり、そこへの支払いは「コスト」とみなされ、ファブレス企業の財務にはコストとなる。しかしファウンドリにとっては売り上げだ。しかしながらファウンドリは自社ブランドの製品は持っていないため、その売り上げは半導体市場には出てこない。

唯一、市場調査会社のIC Insightsだけが、ファウンドリの売り上げも半導体企業売り上げのトップランキングに含めている。もちろん同調査会社はそのことを承知の上で、TSMCの企業規模感を示すためとしている。それによると、ファウンドリトップのTSMCは、本連載第27回で示したように、2020年に2位のSamsungと4位のSK Hynixの間に位置し、半導体企業第3位に位置する企業となっている。

別の市場調査会社のTrendForceは、2021年第2四半期におけるファウンドリ企業TOP10ランキングを発表している<図1>。これによるとトップのTSMCの2021年第2四半期における売上額は、133億ドル(約1兆4,630億円)という数字である。第3四半期には163億ドル(約1兆7,900億円)とさらに成長した。

TSMCは、自動車企業からの認定を取得した企業であり、自動車向けの半導体(マイコンなど)も製造している。クルマ向けの半導体製品は自動車メーカーからの認定がなくては製造できない。このため、どのメーカーでも自動車用半導体を製造できるわけではない。TSMCは、最近の半導体不足のやり玉に挙げられているが、決して手を抜かず、クルマ用の半導体売り上げも伸びている(TSMCの詳細は連載第27回で紹介済み)。


<図1>グローバルTOP10ファウンドリ企業の2021年第2四半期業績(単位:十万ドル)(出典:TrendForceの発表より著者制作)
<図1>グローバルTOP10ファウンドリ企業の2021年第2四半期業績(単位:十万ドル)(出典:TrendForceの発表より著者制作)


TSMCの最近の決算報告を見ると、超最先端の5nm/7nmプロセスノードでの売り上げは約半分を占めているが、それらのノードのウェーハ投入枚数は1〜2割しかないと言われている。すなわち、もっと緩いプロセスノードの売上額は残りの半分くらいで、ウェーハ枚数は8〜9割もあるということになる。つまり5/7nmノードは高く売れる、ということだ。

ではその他の企業の実態を見ていくことにしよう。


Samsung Electronics(韓)~ファウンドリ半導体企業①

第2位のSamsungは、メモリ以外にファウンドリビジネスも手掛けており、システムLSI部門と同社が呼ぶディスプレイドライバやCMOSイメージセンサも製造している。

<図1>では、2021年第2四半期に43.34億ドルとTSMCの1/3程度にとどまっている。Samsungの第2四半期の決算発表によると、半導体部門の売り上げは22.75兆ウォンで、その内メモリ以外は4.86兆ウォン(約43.35億ドル:1ドル=1,121ウォンで計算)となっている。メモリ以外の製品として、同社はディスプレイドライバとCMOSセンサ、自社のスマホ向けのアプリケーションプロセッサも生産している。純粋にファウンドリだけの事業は、43.35億ドルよりはもっと低い数字となるはずであるが、内訳を公開していないため、ファウンドリ売り上げとしてTrendForceはメモリ以外をファウンドリ売り上げとしている。

Samsungのファウンドリとして2位に浮上しているのは、TSMCと並んで最先端の7nmや5nmのプロセスノードを開発していることが大きい。最先端のプロセスノードのファウンドリビジネスの単価は、もっと緩いプロセスノードの単価よりもずっと高いからだ。このため、5nmや7nmといったプロセスノードの事業は、1台180億円もするようなEUVリソグラフィ装置を導入してもペイできるようだ。

Samsungはファウンドリ部門を事業部門として独立させ、IBMやQualcommなどから顧客として取り込んでおり、Samsungの決算報告からメモリ以外の部門の売り上げは前年同期比34%増となっており、TSMCを追い上げている。


UMC Electronics (台)~ファウンドリ半導体企業②

3位のUMCは18.19億ドルで、最近は伸びている。2020年の同社の売上額は前年比19.3%成長で63.15億ドルとなっており、2021年はさらに2桁成長が見込まれている。2021年の上半期は前年同期比13.1%増の980億台湾元(約35億ドル)であるから、半導体産業の特長から下期は上期以上の業績を残すため、70億ドル以上になるだろうと期待される。

ただし、UMCは1980年設立当初のIDMから、90年代にファウンドリ専業に舵を切り替えてからは、TSMCを追いかけるようにファウンドリビジネスをやってきた。しかし、最先端のプロセスに投資してこなかったために、今はTSMCよりも大きく差を開けられてしまっている。同社のプロセスノードは2021年第3四半期現在、22nm/28nmが19%、40nmは18%、65nmが19%というポートフォリオで、90nm以上のプロセスノードは42%もある。14nm以下のノードは一つもない。

TSMCやSamsungと比べて、先端の14nm以下のプロセスノードでは勝負せず、それ以外のプロセスで事業として成り立たせている。それでも利益率31%はしっかりとつかみ、今年のような半導体不足が顕著になっていなかった1年前でさえ20.3%の利益率を確保している。


GlobalFoundries(米)~ファウンドリ半導体企業③

AMD時代に設立したドイツのドレスデン工場をはじめ、シンガポールのChartered Semiconductorsの買収、さらに米国ニューヨーク州マルタにも工場を持つ。IBMから譲り受けたニューヨーク州イーストフィッシュキルの300mm工場を手に入れたものの、onsemi(オン・セミコンダクター社)に売却したり、中国の成都に立てた工場を量産することなく閉鎖したり、投資会社に経営が揺さぶられていた。

GlobalFoundries(以下GF)は、AMDと分かれて以降、アブダビの投資会社が大株主となり、これまで未上場会社であったため、財務内容が公開されず、経営状態を読むことができなかった。しかし2021年10月にはこれまでのプライベート企業からIPO(株式上場)したことを明らかにした。5,500万株を1株47ドルで売ることを10月27日に発表したが、思うように株価は伸びず、46ドルにとどまったようだ。

GFはこれまで米ニューヨーク州アルバニーの街に300mmの先端研究をニューヨーク州立大学やSEMATECHと共にやってきたが、トランプ前政権で先端半導体開発を無視されたため、SEMATECHが撤退し、自身も7nmノードの開発を止めると宣言した。バイデン新政権になり半導体開発に力を入れるようになってからは、息を吹き返したように、本社をシリコンバレーからアルバニーの近くのマルタという街に持っていた工場に移転し、さらに工場も拡張することを発表している。さらに、シンガポールの旧Charteredから買った工場を数年で売却していたが、そのシンガポールに新たにファウンドリ工場を設立することを発表しており、グローバルに生産拠点を持っていることを米国政府にアピールしている。

SMIC(中)~ファウンドリ半導体企業④

中国においてファウンドリビジネスを成功させた会社である。SMICは2000年前後に上海に設立したファウンドリで、当時先端の200mmウェーハで世界とほぼ互角のプロセス技術を導入していた。ただし、西側諸国の間で提携していたワッセナー協約によって、最先端より1〜2世代遅れた半導体製造装置でなければ中国等へ輸出できなかったため、最先端ではなかった。当時、SMICに取材した時、どうやって先端のリソグラフィ装置を入手するのかを伺ったところ、欧州経由で手に入れられる、と述べていた。つまりASMLから輸入するということだった。

その後、SMICは一度つまずいた。実は、DRAMが不足した時に、DRAMメーカーから製造を請け負っていた。DRAMは大量生産商品で、需要と供給のバランスが保つのは難しい。DRAM不足が解消されると、大量に作っていたラインは余ってしまい、他の製品を埋められなくなっていた。時はリーマンショックの後だっただけに、回復が遅れた。この苦い経験から、DRAMからは手を引き、ロジックを主体にするという戦略に替えた。現在は14nmの量産ができるようになっている。しかし7nm製品ラインはまだない。


日本におけるファウンドリ半導体企業

<図1>には日本のファウンドリ半導体企業は1社も入っていない。ファウンドリは現在の半導体不足の中で注目されているものの、ファウンドリ専業メーカーは日本にはない。ファウンドリはそもそもブランドを出さない黒子ビジネスである。日本メーカーの多くがブランドを出さないことを嫌った。しかし、ファウンドリの真似事は、国内でもやってきたという「実績」はある。

かつて国内の半導体メーカーが集まって大きなファウンドリを作ろうとしたことがあった。しかし、国内半導体メーカーはファブレスになろうとせず、かつてのコンソーシアムのように自社には製造ラインを残して、人と金だけ少しずつ分け合ってコンソーシアム的な「日本ファウンドリ」を作ろうとした。しかし、設立を前にとん挫した。半導体メーカーが自社の製造ラインを残した限り、顧客を取れない。ビジネスとしては成り立たないのだ。

今でも細々と、ファンドリと称する事業をやっている企業はある。しかし、「ラインが余っていたら使わせてあげる」という態度の殿様商売である。これでは新規顧客は獲得できない。すでに半導体製造ラインを持っているメーカーがユーザーになる程度しかない。というのは、顧客が製造ラインに必要なことは設計を終えたフォトマスクだけだからだ。つまりフォトマスクを製造できなければ、注文を出せない。これでは顧客は他のファウンドリ専門業者に行く。マスク制作に必要な設計会社(デザインハウス)を紹介してくれるからだ。ファウンドリと提携しているデザインハウスであればファウンドリの要求するプロセスを満足する設計をしてもらえる。

フォトマスクを製作できない顧客に対して、論理設計までは可能な顧客までなら受け付けられる、というファウンドリ企業なら日本にもいるが、その場合はRTL出力からマスク出力まで手掛ける作業が必要となる。この工程をファウンドリ自身が行うか、あるいはデザインハウスと提携するか、いずれかの選択となる。要はただ、生産ラインだけを揃えてもファウンドリビジネスはできないことだ。ここを理解することからファウンドリビジネスは始まる。



著者:津⽥建二(つだ・けんじ)
技術ジャーナリスト。東京⼯業⼤学理学部応⽤物理学科卒業後、⽇本電気(NEC)⼊社、半導体デバイスの開発等に従事。のち、⽇経マグロウヒル社(現在⽇経BP 社)⼊社、「⽇経エレクトロニクス」、「⽇経マイクロデバイス」、英⽂誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集⻑、シニアエディター、アジア部⻑、国際部⻑など歴任。


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