『第6回しんきん合同商談会2021〜中小企業による商売繁盛の祭典〜』現地レポート

2021年11月17日に、マリンメッセ福岡にて「第6回しんきん合同商談会2021」が開催されました。しんきん合同商談会は、九州北部地域3県の信用金庫が異業種の中小企業間のビジネス・マッチングをBtoB方式でコーディネートする商談会で、1日で約2,200件の商談が行われるといいます。今回は、主催する信金の方々に、合同商談会の主催意義や信金が企業の間に立つメリットなどを伺うほか、スポーツソックスや電磁波シールド素材など出展企業4社の製品やサービスをご紹介致します。

九州北部地域3県(福岡県、佐賀県、長崎県)の信用金庫(福岡ひびき信用金庫、遠賀信用金庫、飯塚信用金庫、田川信用金庫、福岡信用金庫、筑後信用金庫、大川信用金庫、大牟田柳川信用金庫、佐賀信用金庫、唐津信用金庫、九州ひぜん信用金庫、伊万里信用金庫、たちばな信用金庫)が、異業種の中小企業間のビジネス・マッチングをBtoB方式でコーディネートするのが「しんきん合同商談会」です。その第6回となる催しが、2021年11月17日(水)に福岡県福岡市のマリンメッセ福岡A館で開催されました。

コロナ禍での商談会開催の意味と、会場の雰囲気

この商談会は、企業や団体がブースへ出展し、自社製品や技術、サービスなどを紹介する展示会の一種ですが、特徴として信金の支店や担当職員らが出展企業の希望や課題などを事前に聴き取り、解決のための商談をマッチングするのだと言います。1日という開催日の中で1社あたり7件ほど、総数2,200件の商談が行われるという同商談会について、主催する信金の一つ、運営委員長の九州ひぜん信用金庫の専務理事、石橋正広(いしばし・まさひろ)氏にまず全体のお話をうかがいました。


──── 今回は新型コロナの感染が危惧される中での開催になりました。

石橋氏(以下同):
新型コロナのせいで合同商談会ができるかどうか不安もある中、開催決定は非常に難しい判断でした。しかし実際にこうして開催でき、出展してくださった企業様から良かったというお声をいただいて本当にやった甲斐があったと思っています。活気と熱意があふれている会場の様子を見ると喜びもひとしおですが、新型コロナで疲弊した経済環境の中、地域の企業様のモチベーションを上げるためにも意義のある商談会だったと考えております。


──── 会場では信金の若い職員さんの姿が多く見受けられました。

各信金や支店は、お取引先企業様の悩みや課題などを共有していますから、各ブースでは若い職員がお手伝いをさせていただき、一緒になって合同商談会を盛り上げていくという独特のイベントになっています。また、そうした職員の実体験は、今後の我々の仕事にも役立っていくでしょう。


分刻みで予定が入っている商談会スケジュール表。事前の入念な準備が効果を発揮しているようです。
分刻みで予定が入っている商談会スケジュール表。事前の入念な準備が効果を発揮しているようです。


合同商談会の主催意義と、異業種間の商談

合同商談会の具体的な内容について、主催者の一つである一般社団法人九州北部信用金庫協会、専務理事、篠原幸治(しのはら・ゆきはる)氏にお話をうかがいました。


──── 定期的に開催されている商談会だそうですね。

篠原氏(以下同):
今回の合同商談会は第6回で、2年に1回やっています。第1回から合同商談会という形式で開催しており、「合同」という言葉は、九州北部の福岡県、佐賀県、長崎県の13信金が合同で行うことに由来しています。この合同商談会は、信金のお取引先の企業様にBtoB事業によってビジネスをよりよくご展開いただくことを目的にして始まりました。合同商談会としては、信金が間を取り持ってマッチングする場になっています。


──── 異業種間の商談が多いのでしょうか。

業種の異なる中小企業様のための商談会という主旨で開催しています。出展企業同士の商談はもちろん、デパートなどのバイヤー様へ売り込むための商談もあります。朝から夕方まで商談をしていますが、1社で同時に4社と商談しているというケースもあります。


信金が企業の間に立つメリット、双方の安心感と商談情報のスクリーニング効果

──── 企業間のマッチングは難しいのではないですか。

確かに当日、手作業でコーディネートするのは大変です。そのため、マッチングリストを作るために前回からソフトウエアを開発しました。それを使い、信金の担当者が各企業様のマッチングのスケジュールを入れていきます。マッチング相手は双方とも信金のお取引先企業様のため、確かな相手ということでこれまでずっと信頼されてきた商談会なんです。


──── 信金が間に立つメリットがあるということでしょうか。

事前に企業様のご要望や課題などを聴き取り、そのための商談を信金がコーディネートしています。信金が間に入ることで、安心してスムーズな商談ができますし、商談情報のスクリーニングをしているのでミスマッチを少なくでき、マッチングの精度を高めることができます。

経営者様が気付かないマッチングを信金の担当者がアレンジしたり、まったく接触のない異業種同士をマッチングしていただいたりといった事例も多くあり、岡目八目という言葉がありますが信金の担当者だからこその視点があるんです。すべての商談の内容は担当した信金が把握していますから、商談後のサポートやフォローアップにも利用できます。


──── 2年に1回という開催にはなにか理由があるのでしょうか。

合同商談会の後、報告書や書籍を制作するにあたり、その準備やフォローに約1年必要なため毎年は開催できないんです。こうした催しは全国の信金でやっていますが、展示会形式が多く、我々のところのように展示会と商談会を一緒にやっているところはそうあまり多くないと思います。


──── 信金には地域の経済を支える役割もあるのではないでしょうか。

経営方針や商品構成など、担当の企業の内情を知り、経営にまで参加させていただくという密接なお付き合いが信金の強みですから、この合同商談会でも企業様から信頼を得ている特徴を生かさなければなりません。この合同商談会では信金の担当者がブースの店番をすることもあるように、地域の中小企業のために汗を流す信金職員の特徴の一つだと思います。経営支援を通して地域のお取引先、お客様を大切にするのが信金の役割の一つなんです。


──── お取引先の企業について知識がなければならないのですね。

例えば、東日本大震災の際に城南信用金庫さんが東京で東北の企業様のための展示会を2日間したことがあるんですが、ブースのお手伝いをした支店の担当者がそれまでまったくお取引のなかった東北の企業様について、十年来のお付き合いかのごとく非常に詳しくその企業様について勉強し、知っていたことで大変驚かれたことがありました。それ以来、その東北の企業様からはその担当者宛に今でも御礼状が来るそうです。


合同商談会に対する出展企業の意識変化と、学生によるマッチングのアイディア提案

──── この合同商談会は最初から軌道に乗っていたのでしょうか。

最初は、合同商談会といっても13信用金庫がすべて理解できているわけもなく、企業様もいったいなにをするのかわからないというところから始めました。無料なら出てもいいというような状況で信金側がお願いして出ていただいていましたが、出展すれば名刺がたくさん集まって取引先も広がりますし、異業種交流の中からご商売のアイディアにもつながりますから、2回、3回と続けているうちに次第に理解も深まり、企業様への認知度なども広がっていきました。ここ数回では、逆に企業様から自社のブースが確保できているのか確認されるようになってきています。


──── 出展効果が広く認知されてきたということですね。

ありがたいことに、今回は福岡県、佐賀県、長崎県の13信金の各200店舗がお取引先している335社の企業様に出展していただいていますが、この1店舗あたりの出展社数はごく少ないということが言えると思います。1店舗あたりの出展割当が少ないので、どの企業様に出展していただくのか、なかなか選べない状況になっているのが悩ましいところです。

以前から出展していて毎回積極的に出展を希望されてきた企業様もいれば、この合同商談会についてあまり知識がない企業様もいらっしゃいます。従来からの出展社様を大切にすることはもちろんのこととはいえ、新しい出展社様を増やすことも重要だと考えています。出展ブースの枠が空くのを心待ちにしている企業様もいらっしゃいますが、それぞれの信金や支店によって出展していただく企業様についての考え方はいろいろあるのではないかと思います。


──── 今回の開催はスムーズに進められましたか。

今回は新型コロナの感染状況が収束しつつあるという中、特に企業様の出展意欲が強くなっていると実感しています。そのせいか、募集をかけた途端にブースがすぐに埋まりました。前回の開催は2年前の新型コロナが感染拡大する前でしたから心配なくできたんですが、今回は10月の上旬に開催するかしないかという厳しい判断をくださなければならない状況でした。

幸いにして新型コロナの感染が収束してきましたから、あのときにやるという判断をして本当に良かったと思っています。新型コロナ対策もしっかりやっています。マスク着用や検温などの体調管理、来場者の事前登録などはもちろんですが、ブースも側面の壁をなくし、2面を開けて通気性を確保しています。


インターネット上では、Web合同商談会を365日開催しているそうです(出典:しんきんWeb合同商談会のホームページ)
インターネット上では、Web合同商談会を365日開催しているそうです(出典:しんきんWeb合同商談会のホームページ)


──── 今回の合同商談会でなにか新たな取り組みなどはありますか。

その地域の信金にとって、学生さんのリクルートという観点から地元企業へ学生さんの目が向けられるのはとても重要なことなんです。これは今回のテストケースですが、大学生に企業様のマッチング案を考えてもらいました。大学の先生にお声がけし、その先生のところの学生さんを地元企業のバーチャルな社員になってもらい、他社とどのようなマッチングが可能か提案してもらいました。

机上の勉強ではなく学生さんが実社会のビジネスの現場で経験することで、アイディアを企業様に評価してもらうという試みです。また、アイディアを提案した学生さんとその地元企業が相思相愛で希望が合えば、直接やり取りしてもらい、例えば今回の合同商談会で店番するなどのインターンシップもできるような仕組みになっています。


──── どのようなマッチングのアイディアがあったのでしょうか。

企業様は4段階で評価しますが、例えば最も評価の高かった学生さんのアイディアは、災害用シェルターの製造販売をしている企業様に対し、シェルターとしてだけではなく九州の地元の味を楽しめるグランピングのための宿泊機能をもたせたらどうかというものでした。また、学生向けの寮を建てている不動産会社様に対し、学生さんがゴミの分別や国際交流などのSDGsを体験できる寮にしたらどうかという提案もありました。今回、このような学生さんによるマッチング提案のコンテストがうまくいったので、2年後の合同商談会ではオープンなコンテストにしたいと考えています。


──── 最後に合同商談会の成果はどのようなものがあるのでしょうか。

この合同商談会をきっかけに新商品の開発、新店舗の実現、IT化の導入などの成果が現れています。これまで多くのマッチング事例があり、前回(2019年)は640件ほどの商談が成約し、成約率は約30%となっています。

例えば、ハウスシック症候群などの化学物質過敏症に悩む人が多いことからケミカルフリーの木材を求めていた住宅メーカーが合同商談会で自然乾燥の無垢材を取り扱う製材所と出会った事例もありますし、内装を手掛ける企業様が鉄製の家具を製作する企業様とマッチングしてコラボ企画で新たなソファを開発した事例もあります。マッチングする企業様は、それぞれお取引している信金がサポートしますので企業様も安心してお取引できるからこれほどの成約率が可能なのだと思います。


出展中小企業4社の製品やサービス

通気性のある軽量素材を使った「スポーツソックス」

それでは、しんきん合同商談会から興味深い出展や製品、サービスなどをいくつか紹介していきましょう。1919年に創業した衣料品製造・販売のイイダ靴下株式会社(佐賀県杵島郡)が出展していたのは、靴下やタイツなどで、中でもランナーなどのアスリートやジョギングを楽しむ人、ゴルファーなどに使われているというスポーツソックスが目を引いていました。

説明してくださった同社のグェン・ティ・トゥイ氏によれば、通気性のある軽量素材を使っているため、従来のスポーツソックスの約半分の重さである片足約14gを実現し、シリコン製のソールストッパーとクッションを配置し、力を効果的に地面へ伝えられるようになっていると言います。


イイダ靴下株式会社のスポーツソックスと膝下までのレッグホールドを一体化させた製品。特に疲れないとプロ・アマ問わず、多くのゴルファーに高く評価されているといいます。
イイダ靴下株式会社のスポーツソックスと膝下までのレッグホールドを一体化させた製品。特に疲れないとプロ・アマ問わず、多くのゴルファーに高く評価されているといいます。


廃プラスチックを利用した「電磁波シールド素材」

主に中古パソコンリユース、廃プラスチックリサイクルを手掛ける株式会社サイム(福岡県嘉穂郡)が出展していたのは、廃プラスチックを利用した電磁波シールド素材です。説明してくださった同社代表取締役の土田保雄(つちだ・やすお)氏によれば、家電や自動車から排出される廃プラスチックは燃やすか再利用されていますが、廃プラスチックの中のポリプロピレン(PP)がPETボトル用樹脂に次いで多いそうです。このポリプロピレンで水に浮くものが45%で再利用されているそうですが、残りの水に沈む55%の再利用技術が課題だと言います。

土田氏は、この沈む廃プラスチックの中のポリプロピレンに廃材としての炭素繊維を混ぜることで電磁波の遮断機能をもたせる素材を開発し、炭素繊維の割合や長さは特許化(参考情報1)しているそうです。ICカード、スマートキー、スマートフォンといった電磁製品の読み取り防止ケースなどをすでに試作し、この合同商談会に出展していると言います。


株式会社サイムが試作した車の盗難防止用スマートキーリレーアタック防止ケース。スマートキーが発する微弱電波をリレーし、車のロックを解除する盗難手口の防止に役立てることができるそう。土田氏は、この合同商談会でいくつかの異業種とマッチングの商談をしているとのこと。また、コーディネート担当の若い信金職員が店番をする、この商談会らしい場面も目に入った。
株式会社サイムが試作した車の盗難防止用スマートキーリレーアタック防止ケース。スマートキーが発する微弱電波をリレーし、車のロックを解除する盗難手口の防止に役立てることができるそう。土田氏は、この合同商談会でいくつかの異業種とマッチングの商談をしているとのこと。また、コーディネート担当の若い信金職員が店番をする、この商談会らしい場面も目に入った。


目視による異物混入の発見に使う「LED物品検査用システム」

食品工場向けのステンレス製コンベアなどの製作を行っているピナーカMJレボリューションズ株式会社(福岡県北九州市)が出展していたのは、目視による異物混入の発見に使うLED物品検査用システムです。説明してくださった同社サービスエンジニア、野見山和貴(のみやま・かずたか)氏によれば、目視による物品検査では検査する人によって見え方は同じではないため、それぞれの人に合わせた照明環境が必要だと言います。

そのため同社では、食材などを載せたコンベアのベルトを下から高照度のLEDで照らし、虫やごみなどの異物混入や内部の様子を目視できるようにし、白+赤・緑・青(RGB)のLED、それぞれの明るさを調整し、目視対象の種類や検査する人が見やすい色に変更できるようにしたそうです。LEDなので蛍光灯に比べ、消費電力を4割ほど削減でき、光のちらつきが少ないため目に優しく、薄型でコンパクトな設計が可能と言います。


ピナーカMJレボリューションズ株式会社のLED物品検査用コンベア。同じ技術を使って手術用の無影灯、顕微鏡用証明なども開発しているという。
ピナーカMJレボリューションズ株式会社のLED物品検査用コンベア。同じ技術を使って手術用の無影灯、顕微鏡用証明なども開発しているという。


卵の殻の再利用し、グランド白線、肥料、白墨などを開発

卵の殻の再利用などを手掛ける株式会社グリーンテクノ21(佐賀県佐賀市)が出展していたのは、卵の殻を使った学校のグランドなどの白線用粉体です。説明してくださった同社営業本部長、白水亮真(しろうず・りょうま)氏によれば、卵の殻の廃棄物は年間約25万tにもなると言います。同社は現在その中の約6,000tを再利用し、グランド白線、肥料、白墨などを開発してきたそうです。

マヨネーズ工場などから出る卵の殻の廃棄物は、膜と殻に分けられ、膜は肥料に、殻は石灰の代わりの白線などに使われると言います。また、殻に充填剤を加えてパルプに混ぜ、紙製品でパルプ使用量を減らす技術も開発したそうです。白水氏によれば、卵の殻は時間が立つとする臭気を発するため、マヨネーズなどの工場内に廃棄された直後の卵の殻を乾燥させる装置を設置し、利用してもらっているとのことです。


株式会社グリーンテクノ21の卵の殻の再利用素材。左が卵の殻すべての粉体、真ん中が膜を除去した殻のみ、右が肥料などに使われる膜のみ。
株式会社グリーンテクノ21の卵の殻の再利用素材。左が卵の殻すべての粉体、真ん中が膜を除去した殻のみ、右が肥料などに使われる膜のみ。


九州北部から多種多様な出展が出ていて興味深かった第6回しんきん合同商談会でしたが、会場内には主催の信金の職員さんたちがそろいの法被を羽織って担当ブースの紹介などをし、その熱気がかなり特徴的なイベントでした。展示会へ出展する企業の目的は、販路拡大や営業などと同時に異業種交流や新たなアイディアを得るといったものがあります。信金が間を取り持ち、マッチングするというこの合同商談会は、ほかの展示会の参考になりそうな方法だと感じました。


文・写真/石田雅彦


参考情報
・参考情報1:「特許第6837590号」の特許権者は「土田 哲大」、発明の名称は「複合プラスチック材料の製造方法及び複合プラスチック材料」です。

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