『第4回 名古屋オートモーティブワールド』現地レポート

2021年10月27~29日に、ポートメッセなごやで「第4回 名古屋オートモーティブワールド」が開催されました。毎年東京と、自動車産業が盛んな名古屋で年2回開催される自動車関連事業の大規模な展示会です。また会場では併設で「ネプコンジャパン」という展示会なども同時開催しており、エレクトロニクス関連の技術などが多数展示されていました。今回は金属射出成形法(MIM)による中空品制作技術や、ガラスマット強化熱可塑性プラスチック(GMT)加工による自動車部品製造技術などについてご紹介します。

オートモーティブワールドは東京と名古屋で年に2回開催されている展示会で、今回取材したのは4回目の開催となる名古屋オートモーティブワールドです。展示会は、名古屋オートモーティブワールド、第4回 名古屋ネプコンジャパン、第4回 名古屋ROBODEX、第4回 名古屋スマート工場EXPO、第1回 名古屋スマート物流EXPOで構成されていました。

オートモーティブワールドには、自動運転、クルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化、カーエレクトロニクス、EV・HV・FCV、部品加工など、自動車業界における技術に関する企業・団体が出展し、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)、MaaS(Mobility as a Service)に関する技術の展示も増えています。同時開催のネプコンジャパンは、エレクトロニクス、関連技術・素材・検査、エレクトロニクス検査・試験・測定のエレクトロテストジャパン、プリント配線板、電子部品・材料、半導体・センサ、エレクトロニクス業界向けの微細加工といった関連企業や団体が出展していました。そんな名古屋オートモーティブワールドと併設展で特に目についた出展・団体の展示内容をご紹介します。


軸芯出しや平行度出しを「見える化」技術により、ドリルの位置を正確に決定

ホイルシリンダー・ピストン、ABS部品、オイルポンプ・シャフト、オイルポンプ・バルブ、油圧部品などの加工、製造といった事業を行っている株式会社黒田精機製作所(名古屋市瑞穂区)が出展していたのは、自社内での困りごとを解決する技術です。説明してくださった同社生産技術グループ工機チームのチームリーダー、若杉真央(わかすぎ・まさお)氏によれば、ドリルの位置決めが熟練社員と若い社員とでバラバラになっていて、誰でも芯ズレのない正確な位置決めができるように「見える化」したと言います。

最新の設備では芯出しや平行度出しといった位置決めを自動で補正できるようになっているそうですが、マニュアルで調整しなければならない従来の加工機械では、経験やカンによってドリルなどの位置決めをしていることで、できあがる製品にばらつきが出てしまうという声が社内から上がったと言います。出展していたのは試作段階の技術ですが、カメラによってドリルの対称性などを計測し、その結果をPCへ送ってピクテストなしで芯出しや平行度出しなどを行えるといいます。


株式会社黒田精機製作所が開発した芯ズレ確認装置。将来的にドリルのほか、旋盤などの加工機械でも応用していくという。
株式会社黒田精機製作所が開発した芯ズレ確認装置。将来的にドリルのほか、旋盤などの加工機械でも応用していくという。


金属射出成形法(MIM)によって中空品を制作

帽子を作る帝国製帽株式会社として創業し、現在はペン先の製造、多孔質製品、MIM(Metal Injection Molding、金属射出成形法)部品の製造販売などの事業を行っているテイボー株式会社(静岡県浜松市)が出展していたのは、樹脂をインサート後にMIM成形し、その樹脂を抽出して中空品を作る技術です。説明してくださった同社MIM事業部、営業課の柴山享平(しばやま・きょうへい)氏によれば、従来のMIM製法に比べて接合部の段差がなく、接合圧力による中空部の変形も少なくなるなどの特徴があるそうです。

MIMによる製法は、切削や鍛造などによる機械加工が難しい微細部品や精密部品、3D形状などの複雑形状の部品を作ることのできる金型を使った射出成形法と言い、同社の技術では中空形状や外側より内側が広いアンダーカットなども生産できるそうです。また、プラスチックの射出成形と同じような量産化やロボット化が可能で、加工工数を少なくできるなど低コスト化も可能になります。


テイボー株式会社の金属射出成形法(MIM)成形技術による高密度・高強度の製品事例。自動車用の保安システム部品、エアー関連部品、液体流動部品などでの実績があるという。
テイボー株式会社の金属射出成形法(MIM)成形技術による高密度・高強度の製品事例。自動車用の保安システム部品、エアー関連部品、液体流動部品などでの実績があるという。


溶接せずにパイプを加工する技術や、小さいRの極小曲げ加工技術

自動車・産業エンジン用パイプ製品の設計、切断、成形、曲げ、溶接加工などによる製造販売を行っている江崎工業株式会社(東京都大田区)が出展していたのは、内部から油圧成形してヒダ状のベローズをつけた伸縮管、途中から径が変わるパイプ、溶接ではなく90度に曲がったパイプ、複雑な形状の冷却水用管などです。説明してくださった同社営業本部、営業グループ主任、阿部恒(あべ・こう)氏によれば、溶接せずにパイプを加工する方法には、中に棒や砂などを入れて外側から圧をかける方法、そして内部から水圧をかけて金型に押し付けて加工する方法の大きく2つあると言います。

また、小さいRの極小曲げ加工の事例や溶接や接着では固定できないフィルターやバルブなどの機能部品を、塑性加工によって金属パイプ内に固定する技術も展示されていました。阿部氏によると、極小曲げ加工ではパイプ断面の内径が扁平していないことが重要で、同社では扁平率20%以下を実現しているとのことです。


江崎工業株式会社の金属パイプ内に機能部品を固定する技術。パイプの中央部にも固定可能で、機能部材を固定した後に固定した場所の前後を曲げることも可能だという。
江崎工業株式会社の金属パイプ内に機能部品を固定する技術。パイプの中央部にも固定可能で、機能部材を固定した後に固定した場所の前後を曲げることも可能だという。


ガラスマット強化熱可塑性プラスチック(GMT)加工技術、高剛性と軽量性を両立

自動車部品事業、住宅設備事業を中心に樹脂加工製品の設計から製造販売までの事業を行っている児玉化学工業株式会社(神奈川県小田原市)が出展していたのは、プラスチックを含浸させたガラスマット強化熱可塑性プラスチック(Glass-Mat reinforced Thermoplastics、以下GMT)の技術で、複雑な形状でもガラス繊維の均一な分散を実現させたものだそうです。説明してくださった同社事業企画開発部先行開発課、課長の箱崎広和(はこざき・ひろかず)氏によれば、こうしたGMTによる部品は高剛性と軽量性を併せもつことで自動車部品などで使われていると言います。

同社の技術では、材料を金型で加熱する際、温度をゆっくりと上げてガラス繊維が末端まで分散するためのコントロールを行うことで複雑な形状でも均一なGMTを実現できるようになったそうです。特に長繊維ガラスの均一分散によって安定した物性を得ることができ、成形と同時に穴あけや金属部品のインサートなどができるため、後工程を少なくしたり部品のモジュール化が可能になるとのことです。


児玉化学工業株式会社のガラスマット強化熱可塑性プラスチック(GMT)自動車部品。転写性を向上させたことで表面の微細なシボ付け加工もできるという。
児玉化学工業株式会社のガラスマット強化熱可塑性プラスチック(GMT)自動車部品。転写性を向上させたことで表面の微細なシボ付け加工もできるという。


コロナ禍の中、ポートメッセなごやで開催された名古屋オートモーティブワールドでしたが、多種多様な技術が出展され、自動車産業が集積する名古屋での開催ということもあり、場内はかなり活気がありました。来場者数は2万1,076名(3日間)と前回(2020年10月)の1万9,371名(2019年は3万6,874名)より多く、リアル展示会にも少しずつ足を運ぶ人が増えたようでした。


文・写真/石田雅彦


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