太陽熱利用システムの6つの種類と特徴、太陽熱利用システムの設置面積の推移~太陽エネルギー利用の基礎知識(6)

再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。第6回目は、太陽光の熱をそのまま使う「太陽熱利用システム」についてです。太陽熱利用は太陽光発電に比べて、電気に変換する際のロスがない分、上手に使えばエネルギー利用効率が高いと言えます。今回は、世界と日本の太陽熱利用システムの設置面積の推移、太陽熱利用システムとソーラークッカーの特徴と種類について解説します。

太陽エネルギー利用として一般的に知られているのは、ソーラーパネルなどを利用した太陽光発電でしょう。ただしそれ以外にも、以前から使われてきた「太陽熱」利用があります。これはより直接的な太陽エネルギーの利用方法と言えます。どのような技術があり、どのように利用されているのか、今後の展開などについて、日本太陽エネルギー学会会員で静岡県浜松市のOMソーラー株式会社の相曽一浩(あいそ・かずひろ)氏に解説いただきます。

世界と日本の太陽熱利用システムの設置面積の推移、世界全体で減少傾向

太陽熱温水器や太陽熱利用給湯システムなどの設置状況は、集熱器の面積ベースで2019年に3,716万㎡であり、2013年の7,861万㎡のピークから半減しています。もともと中国の設置台数が世界の太陽熱利用機器の設置面積を引っ張ってきましたが、中国の設置面積の減少とともに減少しています<図1>。その理由は、太陽電池へのシフト変更や業種の変更によるメーカーの減少などに原因が考えられます。それでも日本や他の国から見れば中国は桁違いに設置面積が多いと言えます。

<図1>世界(中国、日本、トルコ)の太陽熱利用機器の設置面積推移(2005~2019)(出典:ソーラーシステム振興協会)
<図1>世界(中国、日本、トルコ)の太陽熱利用機器の設置面積推移(2005~2019)(出典:ソーラーシステム振興協会)


<図2>中国を除く国々の太陽熱利用機器の設置面積推移(2005~2019) (出典:ソーラーシステム振興協会)
<図2>中国を除く国々の太陽熱利用機器の設置面積推移(2005~2019) (出典:ソーラーシステム振興協会)


<図2>は中国を除く国々の太陽熱利用機器の設置面積です。トルコ、インド、ブラジルなどの設置面積が増えていますが、一番多いトルコでも<図1>では中国に遠く及んでいないことがわかります。一方、ドイツやアメリカ、オーストラリアは2010年ころから減少しています。日本も<図2>の赤線に示すように継続的に減少傾向が続いています。

これは、連載「太陽エネルギー利用の基礎知識(1)」の<図1>で示された世界の太陽光発電の導入量が増えてきた時期と一致しています。


<図3>世界(中国、日本、トルコ)の太陽熱機器のストック量の推移(2005~2019) (出典:ソーラーシステム振興協会)
<図3>世界(中国、日本、トルコ)の太陽熱機器のストック量の推移(2005~2019) (出典:ソーラーシステム振興協会)


ただ、<図3>に示す通り、世界で運用されている太陽熱利用機器のストックは2013年ころから伸びが減ってきたものの6億8,400万㎡あり、世界の省エネルギーに寄与していると言えます。
ここまで主な太陽熱の利用機器として給湯や暖冷房に利用されている機器について利用状況を集熱面積ベースでまとめましたが、太陽熱は太陽エネルギーを熱として直接使うことからさまざまな利用方法があります。次にそれらの利用形態を紹介します。


太陽熱利用システムの6つの種類と特徴

1.太陽熱温水器

太陽熱温水器は、太陽熱を集熱板で熱に変えて貯湯槽の水をサーモサイホンにより循環することで温める機器。古くからあるシステムで、仕組みが簡単なのでコストも安く日本でも普及しています。構造は<図4>に示す形状がほとんどで、集熱板に当たる部分が真空管型の集熱器になっているものもあります。
このような温水器と言われるものは貯湯槽が上部にあって、お湯を使う時は重力落水で使用するため、圧力が必要な給湯システムには向いていません。また、タンク内部で温水が大気に解放されているので、上水としての取扱いができません。
しかし、電力などをいっさい使わないため電力が不足する場所や停電でも使用でき、工事も簡単なので世界でも一番普及している太陽熱利用機器と言えます。


<図4>太陽熱温水器の構造図(出典:ソーラーシステム振興協会)
<図4>太陽熱温水器の構造図(出典:ソーラーシステム振興協会)


2.太陽熱給湯システム

太陽熱給湯システムは、太陽集熱器で集めた熱を密閉型貯湯槽に蓄えて、ガスボイラーやヒートポンプ給湯器などと組み合わせて家庭用や業務用の給湯に使用するシステムです。ガスボイラーや灯油ボイラーと組み合わせる場合は、ボイラー対応のブレンダーユニットを使用するとボイラーを着火しないで使用できるので効率の良い運転が可能になります。貯湯槽が密閉のため、上水として混合して使用できるのも特徴です。

<図5>ガス給湯器一体型太陽熱給湯システムの構成図(左)と外観(右)(出典:新太陽エネルギー利用ハンドブック)

 

3.液式 太陽熱暖房システム

液式の太陽熱利用暖房システムは、太陽集熱器で集めた熱を不凍液などの熱媒を使って主に床の蓄熱コンクリートに循環させて暖房するシステムです。一旦、貯湯槽を介して補助ボイラーなどの熱源をシステムに入れていることが多く、放熱システムとしては床の蓄熱コンクリートなどから放熱するシステムが多くあります。夏場は貯湯槽にお湯として太陽熱を蓄えて給湯に利用します。太陽熱を暖房と給湯の両方に利用するシステムをハイブリッドソーラーシステムと言います。

<図6>液式ハイブリッドソーラーシステムのシステム図(出典:アマテルソーラー協会ホームページ)
<図6>液式ハイブリッドソーラーシステムのシステム図(出典:アマテルソーラー協会ホームページ)


4.空気式 太陽熱暖房システム

空気式の太陽熱暖房システムは空気を熱媒にした暖房給湯システムで、日本国内で最も普及したシステムです。屋根先端から外気を取り込んでガラスなし集熱面→ガラス付き集熱面を通して空気を温めて、ダクトを通して床下に温風を導いてすべての床下を通って建物周辺のガラリから温風を吹出し、最終的に室内を温めたうえで屋外に放出します。このシステムでは換気も同時に行えるので室内環境も改善できる意味で優れたシステムと言えます。

また、夏期・中間期は屋根面で温めた空気で温水を作って給湯に使用する一方、屋根面を加熱から守って建物の熱負荷を軽減できるというメリットもあります。システムのかなめである空気送風ユニットは1枚の太陽電池で自立して運転できるため、災害などの時でも太陽熱暖房と換気ができる点も特長です。また、自立式の貯湯槽を組み合わせれば災害時でもお湯を沸かすことも可能です。

<図7>空気式暖房換気給湯システムの図(出典:新太陽エネルギー利用ハンドブック)
<図7>空気式暖房換気給湯システムの図(出典:新太陽エネルギー利用ハンドブック)


5.太陽熱暖冷房システム

太陽熱暖冷房システムは、主に大型施設に設置されることが多い仕組みです。ビルの屋上に真空管式集熱器を設置して、これを加熱源にして吸収式冷凍機を稼働します。吸収式冷凍機でできた冷水を各部屋に設置されたファンコイルに循環して冷房を行うシステムです。冬季は集熱した温水で暖房を行うことが一般的です。

<図8>吸収式冷凍機を利用した太陽熱冷房システム(出典:新太陽エネルギー利用ハンドブック)
<図8>吸収式冷凍機を利用した太陽熱冷房システム(出典:新太陽エネルギー利用ハンドブック)


6.太陽熱利用全館空調システム(OMX)

太陽熱利用全館空調システム(OMX)は、太陽熱と太陽光を同時に利用し、ヒートポンプを組み合わせた太陽熱利用全館空調給湯システムです。冬はPVT(太陽熱利用と太陽光発電を組み合わせて太陽エネルギー利用ができる太陽光発電パネル)を利用して外気を温風に変えるのと同時に発電もでき、温風を床下や室内に吹き出すことができます。太陽熱が不足であればヒートポンプを利用して暖房補助を行い、日射がなくなれば、以降はヒートポンプによる暖房を実施します。中間期は外気温と室温を観測して、太陽熱や外気を導入して自動で20℃~27℃の室温を維持します。夏はヒートポンプを使って冷房し、その室外機から発生する熱を利用して給湯します。室内の空気はPVTを冷却しながら排気しPVTの効率を向上させます。空調制御、沸き上げ制御、風量制御、換気制御を内蔵のセンサーや制御盤で一括実施することができるシステムです。

<図9>太陽熱利用全館空調システム(OMX)の例(参考情報1)(出典:OMソーラー株式会社)
<図9>太陽熱利用全館空調システム(OMX)の例(参考情報1)(出典:OMソーラー株式会社)


ソーラークッカーの種類と特徴

発展途上国で利用されており、アウトドアでも人気が高まっている太陽熱利用方法にソーラークッカーがあります。ガスも薪も炭も使う必要がなく、煙もCO2も出ないのでエコでクリーンです。集光して鍋などの調理器具を直接加熱するものと、集光した光を熱箱(オーブン)に集中させて加温調理するものとがあります。<図10>の集光型のソーラークッカーは市販されていて、持ち運びにも便利なものです。

<図10>集光型ソーラークッカー(左)(提供:OMソーラー株式会社)と、熱箱型を進化させたテルケス型オーブン(右)(出典:新太陽エネルギー利用ハンドブック)
<図10>集光型ソーラークッカー(左)(提供:OMソーラー株式会社)と、熱箱型を進化させたテルケス型オーブン(右)(出典:新太陽エネルギー利用ハンドブック)


オーブンタイプのソーラークッカーは簡易的なものではダンボール製のキットが市販されています。例えば、株式会社アースダンボールという会社の製品は簡単に組み立てられて、太陽方向に反射板を向けることで調理ができます。

一般社団法人ソーラーシステム振興協会では太陽熱温水器のミニチュアを作成してお湯が温まる仕組みを実験できる太陽熱温水器工作キット(参考情報2)を、学校など教育用途の環境学習、理科学習の教材として販売しています。
<図11>の(左)のような部品がキットに入っており、組み立てると(右)のようなミニチュア太陽熱温水器が完成します。実際に水を入れて太陽熱による温水を作る実験もできます。

<図11>太陽熱温水器工作キットの内容(左)、完成したミニチュア太陽熱温水器(右)(提供:ソーラーシステム振興協会)

 

文/相曽一浩(日本太陽エネルギー学会太陽熱部会、OMソーラー株式会社)

 

監修協力
日本太陽エネルギー学会
太陽エネルギーをはじめとする風力・バイオマス等の再生可能エネルギー利用、並びに、持続可能な社会構築に関する基礎から応用についての科学技術の振興と普及啓蒙を推進。

 

参考情報
・参考情報1:OMソーラーホームページの太陽熱利用全館空調システム(OMX)に関する情報
・参考情報2:一般社団法人ソーラーシステム振興協会の太陽熱温水器工作キットに関する情報

 

 

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