『モノづくりフェア2021』現地レポート

2021年10月13~15日に、マリンメッセ福岡にて「第37回モノづくりフェア2021」が開催されました。モノづくりフェアは、自動車産業をはじめとする九州のモノづくり企業や団体が、それぞれの技術・研究や、また近年進んでいるデジタル化への取り組みなどを業界関係者や学生などに向けて展示している大規模な展示会です。今回は、膨張を極端に抑えたガラスセラミックス、ダイカスト鋳造で金型の入れ子(キャビティー)だけをカセット交換するシステムなどのものづくり技術の動向についてご紹介します。

毎年、福岡市で開催されるモノづくりフェアは、今年もリモートではなく実際に顔合わせし、現物に手を触れる展示会としてマリンメッセ福岡で開催されました。感染対策を施しつつ、自動車や半導体などのサプライチェーンが集積する九州ならではの企業や団体、またこれら九州の産業界へ売り込みを図ろうとする他地域の企業が多く出展していました。会場は、モノづくりコーナー、3次元設計・プリンターコーナー、産学官連携・団体PRコーナー、環境・エネルギーコーナー、IoT・AI・SIコーナー、九州自動車精算推進コーナー、危機管理コーナーに分けられ、業界関係者や出展社のスタッフのほか、熱心にブースを覗き込む地元の学生の姿もありました。そんなモノづくりフェアから目についた興味深い技術や製品をいくつか紹介していきましょう。

光学機器や半導体製造に使われる膨張を極端に抑えた「ガラスセラミックス」

光およびエレクトロニクス事業機器向けのガラス素材の製造販売を行っている株式会社オハラ(神奈川県相模原市)が出展していたのは、i線(波長365nmの水銀スペクトル線)を透過する半導体露光装置用の高均一性ガラス、車載カメラ用レンズ、膨張ゼロに近いという宇宙天文用ガラスセラミックスなどです。説明してくださった同社グローバル市場開拓推進室、東南アジア地域担当主任、高野祥一(たかの・しょういち)氏によれば、ガラスだけでなく多種多様な材料を用いた製品づくりをしていると言います。

半導体のICチップを焼き付ける工程には内部透過率99.7%という高い透過性の集光レンズが必要だそうですが、同社ではソラリゼーション(紫外線による着色)を極力抑え、屈折率の均一性も高めたi線用の光学ガラスを作り、半導体関連だけでなく、撮影、計測、宇宙天文などの分野で使われていると言います。こうした光学ガラスの材料は、不純物を排除した高品質のものを調達することが重要だそうです。

また、膨張を極端に抑えたガラスセラミックスは、室温前後の環境で膨張ゼロ特性を標準にしていると言い、ガラスの中に約70%の結晶を析出させるなど、独自の熔解や結晶制御の技術を駆使して作っているそうです。こうしたガラスセラミックスは、人工衛星の反射望遠鏡の光学系に使われるなど、宇宙天文などの分野での用途が多くなっています。


株式会社オハラの膨張ゼロに近いガラスセラミックス製品。大型望遠鏡のミラー材料などにも使われているという。
株式会社オハラの膨張ゼロに近いガラスセラミックス製品。大型望遠鏡のミラー材料などにも使われているという。


ダイカスト鋳造で金型の入れ子(キャビティー)だけをカセット交換するシステム

ダイカストやアルミ押し出し、ロストワックスや砂型などの鋳物といった加工を行う太陽パーツ株式会社(大阪府堺市)が出展していたのは、ダイカスト鋳造で金型の入れ子(キャビティー)だけをカセット交換式にし、ベース部を共有にしてコストを約半分に軽減できるというシステムです。

説明してくださった同社営業部の久保英里奈(くぼ・えりな)氏によると、自動車などの産業部品から日用品まで使われているダイカスト鋳造は、溶融した金属を圧入して高い精度の3次元形状の部品を作ることができますが、金型交換ロスなどによる生産性の低減で多品種小ロット部品や試作品には不向きと言われてきたそうです。

同社のダイカスト・カセット・システムでは、金型の入れ子部分の交換を素早く行うことができ、アルミ・ダイカストの鋳物や切削に比べ、費用を安くできる利点があると言います。また、入れ子のみのために金型費用を安く抑えられることに加え、多品種小ロット生産や予熱時間の短縮などが可能になるそうです。


太陽パーツ株式会社のダイカスト・カセット・システムによって作られた部品の例。コスト的に従来できなかったダイカスト化、多品種小ロットのダイカスト化、組み立て・溶接していた部品のダイカスト化が可能になるという。
太陽パーツ株式会社のダイカスト・カセット・システムによって作られた部品の例。コスト的に従来できなかったダイカスト化、多品種小ロットのダイカスト化、組み立て・溶接していた部品のダイカスト化が可能になるという。


柔軟性を保ちつつ管内の乱流を抑える「フレキシブルチューブ」

フレキシブルチューブ、ベローズなどの専門メーカー、大阪ラセン管工業株式会社(大阪市西淀川区)が出展していたのは、内径1.6ミリメートルのフレキシブルチューブ、柔軟性を保ちつつ管内の乱流を抑えるフレキシブルチューブなどです。説明してくださった同社九州営業所所長、黒崎純夫(くろさき・すみお)氏によれば、こうしたフレキシブルチューブの製造法には大きく2つあるそうです。

一つは、外から金型で蛇腹形状をプレスする方法、もう一つは内側から圧をかけて蛇腹形状を作る方法です。展示されていたフレキシブルチューブの断面をみると、確かにチューブが折り重なった蛇腹になっていることがわかりました。また、ステンレス線材をフレキシブルチューブの外周に編み込んだブレードと呼ばれる保護剤があり、加圧によるフレキシブルチューブの伸びを防ぐ役割をしているそうです。

また、内部の乱流を抑えるフレキシブルチューブは、従来とは逆にフレキシブルチューブの内側に特殊なスリーブを通しているそうで、理化学研究所の大型放射光施設Spring-8でも使われていると言います。乱流を抑えることで、粒体がチューブ内を通過する際に発生する振動やノイズなどを軽減することができるそうです。


大阪ラセン管工業株式会社のフレキシブルチューブとその断面。一番下が内部の乱流を抑えるフレキシブルチューブ。内部に特殊なスリーブを通して柔軟性を保ちつつ、乱流を抑えることができるという。
大阪ラセン管工業株式会社のフレキシブルチューブとその断面。一番下が内部の乱流を抑えるフレキシブルチューブ。内部に特殊なスリーブを通して柔軟性を保ちつつ、乱流を抑えることができるという。


関節のジョイント部がメンテナンスフリーな「パラレルリンクロボット」

合理化・省力化の自動機械の設計・製作、加工部品の単品販売などを行っている島根自動機株式会社(島根県松江市)が出展していたのは、自社開発したパラレルリンクロボットなどです。説明してくださった同社大阪技術センター、執行役員の新宮祐二(しんぐう・ゆうじ)氏によれば、電池や電子部品の組立や搬送に使えるロボットで、高精度、小型が特徴と言います。

パラレルリンクロボットは可動範囲が限定的な一方、素早い動作が特徴だそうですが、多関接がシリアル(直列)ではなくパラレル(並列)に配置され、各関節が先端を直接制御することで高速な動きを可能にしていると言います。同社では各関節を結ぶジョイントにロータリー式を採用することでジョイント部のメンテナンスフリーを実現したそうです。

また、本来なら位置情報の保持のためにバッテリーが必要なアブソリュート方式で、バッテリーレスのエンコーダを使用しているためバッテリーの交換が不要であり、画像センサーとの連携や同センサーによるコンベアトラッキングが可能という特徴があると言います。新宮氏によれば、顧客に応じたカスタマイズの実現のためにパラレルリンクロボットを自社開発したそうですが、特にプログラミングでの制御が難しかったと言います。


島根自動機株式会社のパラレルリンクロボット。ある顧客の電気自動車には1台に7,000本の電池が搭載されていると言い、こうした膨大な需要のために同社のパラレルリンクロボットのように高速で組み立てを処理する能力が必要になるという。
島根自動機株式会社のパラレルリンクロボット。ある顧客の電気自動車には1台に7,000本の電池が搭載されていると言い、こうした膨大な需要のために同社のパラレルリンクロボットのように高速で組み立てを処理する能力が必要になるという。


福岡も新型コロナの感染が収束しつつある中で開催されたモノづくりフェアでしたが、地元の九州をはじめ、関東や北陸など遠方からの出展社も多く、出展企業の規模も多種多様で製品や技術も興味深いものがありました。来場者数も3日間で1万3千人以上(リアル展示会)ということで、展示会の状況も少しずつコロナ以前を取り戻しつつあるようです。


文・写真/石田雅彦

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