『国際粉体工業展・大阪2021』現地レポート

2021年10月13~15日までインテックス大阪にて「国際粉体工業展・大阪2021」が開催されました。国際粉体工業展は、食料、プラスチック、繊維、医薬をはじめとする有機系、金属やセラミックなどの無機系など、多種多様な粉体素材を扱う展示会です。粉体は、工程の改善や効率化が期待できる電源、センサーなどさまざまな技術の展示や技術動向を情報収集できる場となっています。今回は、粉体や粒子に関しての除去・清掃、ナノ微粒化、輸送、加工などに関連する装置や技術をご紹介致します。

国際粉体工業展は、東京と大阪で交互に隔年で開催されている展示会です。今回14回目となる大阪でのリアル展示会は、2021年10月13日から3日間、インテックス大阪にて開催されました。コロナ禍の中、オンライン展示会とのハイブリッド展示会となり、リアル展示会の前にオンラインで事前調査ができるようにしたそうです。

一言で粉体と言っても、大阪ならではの粉ものである小麦粉といった食料、プラスチック、繊維、医薬、化学製品、鶏糞などの有機系、金属やセラミックなどの無機系と多種多様な素材があります。こうした粉体に関する技術はものづくりにとっても重要で、材料を粉体にすることにより、乾燥、混合、成形、運搬などの工程の改善や効率化が期待できます。

例えば、固体を粉体にして液中や空中に浮遊させれば、液体や気体と同じように固体を運びやすく扱いやすくできます。また、粉体にすれば単位質量あたりの表面積を大きくでき、ガスとの反応や吸着・脱着などの多様な操作ができるようになると言います。

一方、粉体の粒子同士が付着し、凝集して塊り状になり、機器に付着したり目詰まりしやすくなるという問題もあり、粉体同士、あるいは液体と粉体を混合させようとしてもなかなか馴染みにくいという問題もあるそうです。今回の国際粉体工業展での取材はリアル展示会で行いましたが、こうした課題解決も含め、目立った興味深い出展社や展示技術などを紹介していきたいと思います。


電圧印加なしで粉体や粒子を除去・清掃する繊維と微小エッジによる「ブラシ」

まずは、粉体や粒子の除去や清掃の技術です。電子写真装置用ブラシやその関連部品の開発・製造・販売などを行っている東英産業株式会社(京都府相楽郡)が出展していたのは、電圧印加なしで粒子を捕集する繊維と極小凸凹に付着したナノ粒子を清掃する微小エッジによるブラシなどです。説明してくださった同社開発部の來慧(きたの・さとし)氏によれば、電圧印加なしで粒子を捕集する繊維は、摩擦による高い摩擦帯電電位を利用し、電源が必要なくプラスチャージの粒子を捕集することができると言います。

例えば、レーザープリンターのトナーでは印字した後にトナーに電荷をかけて除去するために電源が必要ですが、この繊維を使うことで長期的なプリントコストを下げることができるそうです。また、この繊維とナイロン混繊ブラシを使ったブラシを一緒に使うことでプラスとマイナスの荷電粒子が同時に捕集することが可能になるなど、極性の安定しない対象や用途に応じた捕集ができると言います。


プラス荷電粒子に対する摩擦帯電電位を利用したブラシと通常のナイロン混繊ブラシを帯状に交互に並べ、トラ柄になった東英産業株式会社のブラシ
プラス荷電粒子に対する摩擦帯電電位を利用したブラシと通常のナイロン混繊ブラシを帯状に交互に並べ、トラ柄になった東英産業株式会社のブラシ


一方、先端を微小エッジにしたブラシは、厚み約1.5μmの繊維を角張った扁平形状にし、標準的なブラシの10倍以上の密度で織り込むことで、微小な凹凸上にあるナノ粒子を拭き取ることができるそうです。例えば、電子写真機器などの内部の清掃、化粧パウダーなどの除去、油分の除去などに効果を発揮すると言います。


超音速で粉体や粒子を衝突させナノ微粒化する「小型超高圧ホモジナイザー」

次は、超微小粒子の材料製造などです。株式会社常光(東京都文京区)は、ナノ粒子の加工や超高圧機器の製造販売などを行っている会社です。同社が出展していたのは、強力なせん断力で材料をナノ粒子化し、均一分散処理を行う研究室用の小型超高圧ホモジナイザーという装置などです。

説明してくださった同社ナノマテリオ・エンジニアリング事業質の宮前倖大(みやまえ・こうた)氏によると、この装置を使うと、カーボンナノチューブ(CNT)の束をほぐす分散、セルロースのセルロースナノファイバー(CNF)化、セラミックスの粉砕、金属酸化物の微粒化、電極材料の微粒化やインク化、導電性ポリマー(PEDOT)の均一分散、酸化亜鉛やシリカなどの凝集体の解砕といったことができるそうです。

この装置では、二股に分かれた流路に同じ硬度の材料同士を最大200MPa(メガパスカル)の高圧で音速を超える速度にして噴射し、二股の流路の合流点で材料同士を衝突させます。衝突した材料がナノ微粒化させ、均一に分散させることができるそうです。最初の流路に入れる材料は最小0.15mmで、二股の流路が合流し、材料同士が超音速で衝突する際に強く急激な加速による強いせん断力、圧力が変化して起きるキャビテーション(空洞現象)、衝突の物理的な衝撃によって材料がナノ微粒化すると言います。


株式会社常光の超高圧ホモジナイザー。縦に並んだ2つのバルブの左側の内部に二股の流路と合流点、ナノ微粒化した材料を均一分散させる部分が入っている。
株式会社常光の超高圧ホモジナイザー。縦に並んだ2つのバルブの左側の内部に二股の流路と合流点、ナノ微粒化した材料を均一分散させる部分が入っている。


粉などを水平・垂直に立体輸送する「チェーンレス樹脂製連結バケットコンベヤ」

流体や粉体をどう移動させるのかは、この分野での技術的な課題の一つです。粉粒体や汚泥(スラッジ)などの搬送機器の製造販売を行っているエステック株式会社(東京都中央区)が出展していたのは、チェーンレス樹脂製連結バケットコンベヤや連続バケット型チェーンコンベヤなどです。説明してくださった同社大阪市店長代理、西村佳記(にしむら・よしのり)氏によると、どちらも同社オリジナルのコンベヤで、主に粉、粒、汚泥(スラッジ)などを水平〜垂直に立体輸送する搬送用チェーンコンベヤだと言います。

チェーンレス樹脂製連結バケットコンベヤは、金属のチェーンがないので金属コンタミを防ぎ、軽量で摩擦抵抗が少ないため、小さな動力でも搬送できるそうです。主に食品や化学薬品など、高付加価値の材料の搬送に適していると言います。連続バケット型チェーンコンベヤは、バケットが金属製のため、逆に樹脂などのコンタミを軽減し、温度の高い材料や摩耗性のある粒状の材料の搬送に適しているそうです。


エステック株式会社のチェーンレス樹脂製連結バケットコンベヤ。金属同士の摺動部分が少ないため、給油の必要がなく、メンテナンスが容易なことも特徴とのこと。
エステック株式会社のチェーンレス樹脂製連結バケットコンベヤ。金属同士の摺動部分が少ないため、給油の必要がなく、メンテナンスが容易なことも特徴とのこと。


粒状や粉状の焼成や灼熱などに使われる窯「ロータリーキルン」

粉体を加工するためには大型の装置もあります。各種金属などでの溶融や工業炉の製造、プラント設備、自動化などの事業を行っている株式会社タナベ(新潟県糸魚川市)が出展していたのは、工業炉の一つであるロータリーキルンです。ロータリーキルンとは円筒状の大型高温焼成装置で、粒状や粉状の材料の焼成や灼熱などに使われる窯です。

説明してくださった同社東京本部エネルギー事業推進グループ、課長の中村明人(なかむら・あきひと)氏によると、ロータリーキルンは長い円筒の中にプレートが突き出していて、材料を入れてゆっくり回転させながら外部から間接的に加熱する仕組みになっていると言います。装置全体には1/100度といったゆるやかな傾斜をつけているため、材料は重力によって前方から後方へ移動していきます。

間接加熱式のためにコンタミが出にくく、円筒部分の加熱をゾーン制御できると言います。粉体を扱う化学メーカー、電池の材料メーカーなどの工場に設置することも多く、長時間の焼成のため、停電事故などには特に注意が必要だそうです。


株式会社タナベのロータリーキルンの説明展示。以前に一度、実際のロータリーキルンを展示会場へ入れたそうですが、かなりの手間暇がかかったため、現在は説明展示にしているという。また、ロータリーキルンで粉体のシーリングは耐熱ゴムで行っているという。
株式会社タナベのロータリーキルンの説明展示。以前に一度、実際のロータリーキルンを展示会場へ入れたそうですが、かなりの手間暇がかかったため、現在は説明展示にしているという。また、ロータリーキルンで粉体のシーリングは耐熱ゴムで行っているという。


電磁波によって配管の中などへの液状物質の付着を防止する装置

粉体の凝集による付着は技術的に大きな課題になっているようですが、展示会の出展を見るとすべてが叩いたり振動でふるい落としたりする物理的解決法です。粉体ではありませんが、液状物質が流れる配管の中などへの物質付着を防止する装置を出展していたのは株式会社ニューマチック(東京都文京区)です。

説明してくださった同社取締役統括本部長、柴田昭雅(しばた・あきまさ)氏によると、粉体の付着を防止する技術を開発したら大変な発明と言い、同社の装置は、ちょうどアテローム性動脈硬化のような物質の沈着を防ぎ、液体が流れる配管内をクリーンに保つために開発したそうです。配管に巻きつけたコイルから1秒間に約5,000の種類の異なる電磁波を送ることで磁石より強い電磁界を発生させ、流体の中の物質(スケール)に相互干渉を引き起こさせて付着しにくい状態にすると言います。


コイルが巻かれた株式会社ニューマチックの配管スケール付着防止装置。一か所に設置すると下流側1〜2kmまで効果が及ぶそう。
コイルが巻かれた株式会社ニューマチックの配管スケール付着防止装置。一か所に設置すると下流側1〜2kmまで効果が及ぶそう。


粒体状の材料の計量機能を内蔵した「定量供給機」

粉体ではその定量供給も難しい技術の一つです。グローバルマテリアルズエンジニアリング株式会社(福岡県古賀市)は、粉粒体の定量供給機や計量、排出、空気輸送、貯留などのハンドリング設備の製造販売をする会社です。同社が出展していたのは、計量機能を組み込んだ定量供給機です。

説明してくださった同社営業部の島田勇輝(しまだ・ゆうき)氏によると、従来の同社の粉体装置を発展させて開発した同機は、粉体を含む粒体状の材料の計量と供給を可能にし、供給機を上下に設置したため省スペースになると言います。粉体や粒体の流量を調節する漏斗状の容器(ホッパー)からの計量方法は、主に容器と供給機の合計の計量値から排出した材料の減量を計算する減量法だそうで、この装置は内部の1マスごとに計量すると言います。


グローバルマテリアルズエンジニアリング株式会社の計量機能内蔵型定量供給機。半円形のスリットの空いた円盤が回転し、そのスリットに粒体を落として計量するそうです。
グローバルマテリアルズエンジニアリング株式会社の計量機能内蔵型定量供給機。半円形のスリットの空いた円盤が回転し、そのスリットに粒体を落として計量するそうです。


開催時期の大阪はすでに新型コロナも収束の兆しを見せていましたが、同展示会は感染対策を施して開催されていました。オンライン展示会もリアル展示会の前後に同時開催され、リアルの展示会場にもやや来場者が戻ってきているイメージがありました。次回の国際粉体工業展は、東京で2022年秋に開催される予定です。


文・写真/石田雅彦


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