サステナブルなモノづくりのあるべき、「自立共生型」のスタイルとは (3/3)

【考察】必要なモノを必要なだけ作って使う、サステナブルな未来に向けて

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

【考察】必要なモノを必要なだけ作って使う、サステナブルな未来に向けて

SNSでの情報発信、メーカーズムーブメント、家庭料理・DIYブームの共通点

『コンヴィヴィアル・テクノロジー』は、オーストリアの思想家イヴァン・イリイチが1973年に著した『コンヴィヴィアリティのための道具』(邦訳、ちくま学芸文庫)にインスパイアされて書かれている。

イリイチは同書で「科学技術が、それを管理する人々にではなくそれを使う個人に力を与える社会、そしてそれによって個人同士が相互に結びつけられるような社会が「自立共生的(コンヴィヴィアル)だ」と述べている。

近年、SNSやブログなどでの個人による自由な情報発信は当たり前のように行われている。また、3Dプリンターを活用した「メーカーズムーブメント」など、自発的でパーソナルなモノづくりのニーズも高まっているようだ。

コロナ禍がこのような流れを加速した面もある。冒頭で触れた自転車のほか、家庭料理やDIYといった、「必要なものを自分で作る」活動が流行した。

誰かが用意し、管理してくれるものを消費するだけでなく、自身の意志と力でモノや情報を必要なだけ作る、あるいは活用する。まさしく時代はコンヴィヴィアルな方向にむかっているのではないか。


部品共通化とモジュール設計の普及がコンヴィヴィアルな流れを加速する

『バッファデザイン』をヒントに、もう少し具体的に考えてみよう。

クルマやパソコンなどのメーカーが、少しずつ仕様の異なる多品種生産を実現できているのは、製造過程で共通部品とモジュールの組み合わせが用いられているからだ。

パソコンの場合は、市井のショップで、いろいろな標準化されたパーツやモジュールが売られている。それらを自分で選んで組み立てれば、オリジナルのPCを自作できる。

クルマも、EVであれば格段に部品点数が減り、モジュール化も進む。そうなればパソコンのように自作が可能になるとも言われている。

今後、その他の業界でも多品種少量生産のための部品共通化やモジュラー設計が進み、さらにさまざまなモノをカスタマイズしたり、個人が自作したりしやすくなる可能性も考えられる。

自作のオリジナルなモノには愛着が湧き、長く使う人が多いだろう。修理が必要になったり、機能アップを図りたい時には、必要なモジュールだけを取り替えればいい。これは廃棄物の削減にもつながり、サステナビリティに貢献する。

新しいモジュールの情報や、自作したオリジナル製品の組み立て方などを共有する自作コミュニティーができていけば、イリイチの言うテクノロジーによって「個人同士が相互に結びつけられる」状況にも近づいていく。

このように考えると、ユーザーの主体性と自由を尊重するコンヴィヴィアルなモノづくりが、サステナブルな社会を実現させる未来が見えてくるのではないだろうか。


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