サステナブルなモノづくりのあるべき、「自立共生型」のスタイルとは (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

近年のテクノロジーの進化は、モノの過剰供給を生み出すとともに、深刻な環境問題を招き寄せてしまった。われわれが、これまでの高品質だが画一的なモノを大量生産・大量消費するという方向性を改めるべきなのは間違いない。求められるのは、多様な価値観に合わせて必要なモノを必要な分だけ作るという、サステナビリティ重視の発想への転換だろう。人間とテクノロジーはどう「共生」していくか、その共生を前提にいかにサステナブルなモノづくりをめざすのか。2冊の良書から考察してみたい。

テクノロジーが人間を支え、共生する「ちょうどいい」モノづくりとは

『コンヴィヴィアル・テクノロジー』
 ── 人類とテクノロジーが共に生きる社会へ


 緒方 壽人 著
 
 ビー・エヌ・エヌ
 2021/05 300p 2,750円(税込)



コロナ禍で「自転車」が売れはじめたのはなぜか

人と環境に優しい乗り物として「自転車」が世界的に流行しているそうだ。

自転車に乗れば、自分の意思と力次第で行きたいところに移動できる。適度な運動にもなる。しかも温室効果ガスを排出しない。

コロナ禍も流行の追い風になったようだ。一人乗りでオープンなため、感染リスクの低い移動手段として見直されたのだ。日本国内の自転車の売り上げを見ると、2020年度は電動アシスト自転車を中心に2100億円を売り上げ、過去最高を記録している。

自転車は、人々にある程度の自由を感じさせるとともに、グリーンでサステナビリティにもつながる、現代に「ちょうどいい」テクノロジーの一つなのかもしれない。

そんなテクノロジーと人間の共生関係を論じるのが本書『コンヴィヴィアル・テクノロジー』だ。

書名にもなっているコンヴィヴィアル・テクノロジー(自立共生型技術)とは、自転車のように人間の能力(移動能力)を拡張しつつも、人間の自立性を損なわずに共生し続けられるテクノロジーを指す。

著者の緒方壽人氏はデザイン・イノベーション・ファームTakramのデザインエンジニア兼ディレクターだ。


ユーザーの主体性が保てるコンヴィヴィアル・テクノロジー

これまでのテクノロジーは、人間ができなかったことをできるようにしてきた。それにより人間の行動はより自由になった。例えば自動車は、移動の自由度を大幅に拡張した。

しかし、テクノロジーが過剰に発展し、それに社会が依存しすぎると、逆に人間の自由が奪われる。そして、人類のサステナビリティまでも脅かすようになる。

自動車のケースでいえば、事故による死傷者の増加や、排気ガスによる公害が、個人の生活の自由を奪うことになった。さらに今や、ガソリン車は地球温暖化につながるとして、人類の未来へのリスク要因の一つとなっている。

こうした従来のテクノロジーと、緒方氏が提唱するコンヴィヴィアル・テクノロジーは異なる。

コンヴィヴィアル・テクノロジーは、環境に優しく、サステナビリティを脅かさない。その上で、「使う」「つくる」という二つの面で、ユーザーが主体性を保てることがポイントだ。

例えば、本書でも紹介されている次世代パーソナルモビリティ「poimo」は、典型的なコンヴィヴィアル・テクノロジーだ。

poimoは車輪のついた電動の乗り物なのだが、車輪などの硬い部品が風船のような構造でつくられている。そのため、普段は小さく畳み、カバンに入れてどこにでも持ち運べる。

また、poimoの大きな特長に、カスタマイズ可能なことがある。体型や好みの乗車姿勢に合わせ、さまざまな形状を選べる。2輪か4輪かも選択可能で、手動の車椅子型にもできる。

まだ研究・実験段階のpoimoだが、実用化されれば、自転車よりもさらに自由度が高く、人や環境に負荷をかけない乗り物になるのは間違いない。

このような、さまざまなコンヴィヴィアル・テクノロジーが普及することで、サステナブルな社会の実現により近づけるのではないだろうか。


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