半導体業界の変遷や現状をランキングから読みとる。2020年半導体売上高ランキングのトップ5に注目〜半導体入門講座(27)

半導体業界の変遷や現状を理解するために、半導体市場動向調査会社が発表する「半導体売上高ランキング」を参考する方法があります。ランキングには、半導体トップ数十社のその年の売上高、前年度比の成長率、前年比のランキング変動、事業形態(IDM、ファブレス、ファンドリー)、本社所在地などが記載されています。今回は、この「半導体売上高ランキング」を参考に、「Intel」「Samsung」「TSMC」「SK Hynix」「Micron」など代表的な半導体企業に注目し、半導体業界の変遷と現状についてご紹介します。

半導体業界はIT産業と直結しており、ITの動向をしっかり捉えている企業が強い。主な半導体企業はIT応用をしっかり握っている企業たちだ。主な半導体企業を知るには、世界半導体TOP10ランキングを見ることが手っ取り早い。2020年の半導体トップランキングは<図1>のようになっている。ここに示されているTOP10社を紹介すると、半導体業界の全貌がほぼ見えるようになるので、ややスペースを割いて紹介する。


<図1>2020年における世界半導体企業TOP15社(提供:IC Insights)
<図1>2020年における世界半導体企業TOP15社(提供:IC Insights)


これらの半導体企業の上位10社を見ると、IntelはCPUのIDM(Integrated Device Manufacturer、設計と製造を手掛ける統合メーカー)、Samsung、SK Hynix、Micron(Micron Technology)はIDMのメモリメーカー、QualcommとBroadcom、NVIDIAはファブレス半導体の大手、TSMCはファウンドリの代表格、TI(Texas Instruments)はIDMのアナログ専業メーカー、そしてInfineonはIDMのパワー半導体メーカー、である。それぞれがそれぞれの分野の大手企業となっている。

11位から15位の中で急成長を遂げ注目される企業は、11位のMediaTekと15位のAMDであり、それぞれ前年比で35%増、41%増となっている。以上のTop15社が代表的な半導体企業といえる。以下にそれぞれの企業の現状を紹介しよう。


Intel Corporation (米)~2020年半導体売上高ランキング1位

トップのIntelは、2019年と連続のトップであるが、2017年と2018年はメモリバブルによってSamsungに抜かれ、2位に甘んじた。メモリバブルがはじけた19年はトップに返り咲いたとはいえ、成長率は低く、2020年も回復が遅れたせいでかろうじてトップを保った。しかし、直近の2021年第2四半期のランキングでは再び2位に落ちている。これはIntelの経営トップであるCEOだったBob Swan氏が財務出身であり、2018年に任命された後も投資を控えてきたためだ。

代わりにエンジニア出身者で、仮想化ソフトウエアVMware社のCEOを務めていたIntelの初代CTOであるPat Gelsinger氏をIntelに呼びもどし、同氏は2021年2月からIntelのCEOを務めるようになった。しかし、投資計画は発表したものの、実際にはその結果はまだ出ていない。

Intelは、パソコン全盛時代に「Intel Inside(インテル、入ってる)」の広告で一世を風靡したパソコン用CPUの開発企業である。パソコンからもっとハイエンドなサーバー向け、さらにはIoT向け(ゲートウェイよりも上のレイヤー)、さらにはハードウエアをプログラムできるFPGA(Field Programmable Gate Array、プログラム可能なロジックアレイ)事業も手に入れ、製品ポートフォリオを広げてきた。昨今のAIブームに乗って新しいGPU(Graphics Processing Unit)も自社開発している。量子コンピューティング向けのチップも開発しており、コンピューティング能力が極めて高い企業である。

ここ2〜3年の足踏み(前CEOの下での投資控え)によって退社したエンジニアも多く、Gelsinger氏を呼び戻しても、すぐには回復できない。そして直近ではSamsungに売上額で抜かれた<図2>。


<図2>2021年第2四半期における世界半導体企業のTOP10ランキング(提供:IC Insights)
<図2>2021年第2四半期における世界半導体企業のTOP10ランキング(提供:IC Insights)


Samsung Electronics(韓)~2020年半導体売上高ランキング2位

2020年2位だったSamsungは、メモリ一筋の会社であったが、最近はファウンドリと自社向けのICをいくつか手掛けている。自社のスマホ向けのプロセッサやCMOSイメージセンサ、自社のディスプレイ向けドライバICなどである。加えて、ファウンドリサービスも請け負っている。最大の強みは、DRAMとNANDフラッシュというメモリである。大量生産しており、かつての日本が強かった大量生産品でトップに躍り出た。

メモリ製品で大量に生産しているのはDRAMとNANDフラッシュである。いずれも売上額は世界トップで、巨大工場を運営している。巨大な投資を行い、メガファブではなくギガファブと呼ばれるような工場をいくつも設立している。それも韓国内だけではなく、中国にも、そして米国のテキサス州にもファウンドリだが工場がある。

弱点は、メモリに特化してきたために非メモリ製品を強くしようと20年以上に渡って社内で言われてきたが、簡単に設計を強化することができなかったことだ。最近になってようやくファウンドリ事業をメモリから切り離し1本立ちさせるようになってきたが、メモリ以外の製品は全売上額のいまだに21%に留まっている。このところ、TSMCに追いつき追い越せでファウンドリ事業では、UMCやGlobalFoundriesを抜き、世界第2位に位置している。


TSMC(台湾)~2020年半導体売上高ランキング3位

3位のTSMCは、ファウンドリで世界トップの企業である。半導体企業の中でも第3位を維持しており、世界を代表する半導体製造請負企業となった。TSMCの最大の強みは、5nmプロセスという世界最先端の製造技術を持っていること。EUV(極紫外線)と呼ばれる波長13.5nmのリソグラフィ装置を使いこなした最先端技術を持っている。台湾の一流大学を卒業した理系の学生が真っ先に就職する企業でもある。給料が高いことは言うまでもないが、世界最先端の仕事をやっているという自負がエンジニアのモチベーションを上げている。日本人もたくさん働いている。

ファウンドリ事業では、TSMCの決算報告書によると、過半数の売上額となる455億ドル(日本円で約5兆円)を稼いでいる。日本企業では最も大きな売上額を誇るキオクシアが1.1兆円程度であるから、TSMCの企業規模がわかるというもの。TSMCは他の半導体企業と同様、台湾では新竹、台中、台南にそれぞれ巨大なファブを持ち、さらに中国とシンガポールにも工場を持つ。米国にも小さな工場を持つが最近アリゾナ州に新工場を建設することでも知られるようになった。

TSMCがファウンドリ事業を始めたのには、1980年代終わりころ台湾行政府が進めた半導体事業の振興策があった。台湾はバナナ産業を興し、さらにコンピュータのアセンブリ産業に切り替え、さらに半導体それも前工程を含めた産業の振興を進めた。ちょうどその頃1980年代に米国で半導体ベンチャーが生まれ、しかも資金力がないため半導体設計だけ手掛けた。その製造は、製造ラインのある企業に任せるというビジネスが登場し始めていた。TI(Texas Instruments)から台湾に呼び寄せられたTSMCの創業者であるMorris Chang氏は、米国で半導体設計だけのファブレス企業が続出するのを見て、製造だけを請け負うビジネスモデルを思い付いた。これがファウンドリビジネスの始まりである。

最初は資金調達から始め、身の丈に合った投資戦略を進め、少しずつ日米の半導体企業に追いつき、1990年代終わりには追い越し始めた。Chang氏は世界の半導体企業にも投資をお願いしに行ったが、Intelからは、けんもほろろに断られたという逸話があり、Chang氏はようやくオランダのPhillips社からの出資と台湾政府からの資金を元に始めた。TSMCのビジネスモデルに刺激されたのがUMCであるが、投資に対して及び腰だったためにTSMCには大きな差を付けられてしまった。


SK Hynix(韓)~2020年半導体売上高ランキング4位

4位のSK Hynixは、Samsungと並んで韓国を代表するメモリメーカーである。SK Hynixの前身であるHynixは、現代電子産業と金星半導体(元々Lucky-Goldstarと呼ばれる財閥系電器メーカーの半導体部門。現LGグループ)との合弁企業であった。共に1980年代から半導体を手掛けていたが、家電に強い金星は米国追随型の企業であり、元々は三星(Samsung)よりも大きな家電企業であった。しかし1997年のアジアの通貨危機で状況が一変した。現代電子は半導体のみに集約され、1999年にLG Semiconductorと合併しHynixとなった。

以来、DRAMビジネスを中心に生産能力を拡充してきた。しかしDRAMはシリコンサイクルに振り回され、売れる時は大きく上振れし、底になると赤字を出すようになった。そしてリーマンショックによって金融機関の機能が止まり、資金調達に苦労するようになった。そして2011年、SK TelecomがHynixを買い取り、現在のSK Hynixとなった。主力製品はDRAMとNANDフラッシュだが、DRAMが売上額の80%を占めている。ただし、NANDフラッシュに関しては、キオクシアに資本参加し、IntelからNANDフラッシュ部門を買い取ることを2020年10月に決め、じっくりとNANDフラッシュでも力をつけ始めている。


Micron Technology (米)~2020年半導体売上高ランキング5位

5位のMicronは早くからDRAMのパソコン利用を見抜いていた企業である。1983年頃、TIを除くほとんどの米国半導体メーカーがDRAMから撤退を表明していた中で、これからさらに力を入れると宣言した。当時DRAMの応用はメインフレームコンピュータが主要だったが、コンピュータのダウンサイジングの流れから10年後にはパソコンに使われるようになる、とMicronのDRAM責任者は確信をもって筆者に語った。そのために低コストで設計・製造することに集中してきた。1995年にパソコン向けの安いDRAMを発表した時、日本の半導体メーカーは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。黒船到来とも揶揄された。人件費の高い米国メーカーが安いDRAMを発表したからだ。

Micronがメモリメーカーとして大手になったのは、1998年にTIのDRAM事業を買い取ってからである。2000年に入ってからフラッシュメモリも手がけ、2004年に最初の2GビットNANDフラッシュ製品を出荷した。2005年にはIntelと提携、NANDフラッシュの合弁事業IM Flash Technologies社をスタートさせた。2013年には会社更生法を適用していた日本のエルピーダメモリとその台湾の関連会社Rexchip Electronicsを吸収合併した。現在、東広島工場と台湾工場がMicronのDRAM生産拠点となっている。

NANDの生産・開発拠点はシンガポールに置いた。NANDフラッシュの工場拡張を進めており、シンガポールの従業員は8,500名に膨らんでいる。2020年には176層のNANDフラッシュ製品を世界に先駆けて開発しており、NAND事業へも注力している。

6位以下には、Qualcomm、Broadcom、NVIDIAという大手ファブレス企業と、TIとInfineonというアナログおよびパワー半導体の代表的な企業が位置しているため、次回、これらのファブレスとアナログ・パワーについて紹介する。


著者:津⽥建二(つだ・けんじ)
技術ジャーナリスト。東京⼯業⼤学理学部応⽤物理学科卒業後、⽇本電気(NEC)⼊社、半導体デバイスの開発等に従事。のち、⽇経マグロウヒル社(現在⽇経BP 社)⼊社、「⽇経エレクトロニクス」、「⽇経マイクロデバイス」、英⽂誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集⻑、シニアエディター、アジア部⻑、国際部⻑など歴任。

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