不確実な時代に日本の製造業が「レジリエンス」を強化するには (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

コロナ禍はグローバルな物流ネットワークを止めた。その結果、国内メーカーでは半導体をはじめとする素材供給が滞り、最終プロダクトが製造停止に陥る事態も発生。現状のサプライチェーンの脆さを印象づけた。こうした状況を受けて、経済産業省の2021年版ものづくり白書は、我が国製造業者が今後力を入れるべき観点の1番目に「レジリエンス」を挙げている。では、レジリエンスを高めるために、製造業は具体的にどのようなアプローチをとればよいのだろうか。2冊の書籍から考察してみよう。

なぜトヨタやマツダは、コロナ禍でもクルマを売り続けられたのか

『戦略的サプライチェーンマネジメント』
   ── 競争優位を生み出す5つの原則



ショシャナ・コーエン/ジョセフ・ルーセル 著
尾崎 正弘/鈴木 慎介 監訳
PwC PRTM マネジメントコンサルタンツジャパン 訳

英治出版
2015/02 320p 3,300円(税込)




トヨタ・マツダが半導体不足の影響を最小限にできた理由

2021年4-6月期の自動車メーカー各社の決算発表によると、コロナ禍による世界的な半導体不足が未だ解消せず、各社の生産台数が伸び悩んでいる。

スズキは、期初の計画から35万台の減産、営業利益12.4%減の下方修正。SUBARUも期初計画から4万台の減産。対策として販管費などのコストを抑えるとした。

一方、トヨタやマツダは、期初計画からの減産を余儀なくされつつも、業績はむしろ好調。業績計画はまだ予断を許さないと据え置いたが、既にコロナ前の水準に戻っているようだ。

こうした違いは、どこから来るのだろう。

実はトヨタやマツダは、半導体不足による減産で減った在庫を、効率的に分配して市場に出している。好調な市場を見きわめ重点的に新車を配送するといった、ダイナミックな「やりくり」をしてクルマを売り続けているのだ。

つまり、トヨタ・マツダとスズキ・SUBARUの明暗を分けたのは、サプライチェーンマネジメント(以下SCM)の巧拙といえる。

本書『戦略的サプライチェーンマネジメント』は、企業におけるビジネスの継続性や優位性を保つためのサプライチェーンの構築・管理について、体系的に解説。

二人の著者のうちショシャナ・コーエン氏は、スタンフォード大学経営大学院グローバル・サプライチェーン・マネジメント・フォーラムのディレクター。ジョセフ・ルーセル氏は、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の戦略およびオペレーション事業のパートナーだ。


業務の「標準化・共通化」と「カスタマイズ」を分けたBASF

著者らは、SCMでもっとも重要な原則に「サプライチェーンとビジネス戦略の連携」を挙げる。

例えば、世界的な化学企業であるドイツのBASFの優位性は、多様な分野で何千種類もの製品を提供できる技術と生産力だ。

ところが、同社がより顧客ニーズを重視する戦略に舵を切ったところ、特殊な製品やソリューションの提供が急増し、SCMが過度に複雑化してしまった。

そこで同社は、受注から納品までのリードタイムや、全社的なコストを抑えられるように、サプライチェーン改革を実行した。

具体的には、部門ごとにバラバラだった「受注」「保管」「物流」業務は標準化・共通化を図った。一方で「需要予測」「生産計画」といった、個々の顧客への対応が差別化につながる業務は、逆にいっそうのカスタマイズを進めた。

このように、サプライチェーンを戦略的に組み替えた結果、同社はさらなる成長を続けられたのである。

現在は、顧客の多様なニーズへの対応が求められるとともに、コロナ禍や頻発する大規模な自然災害にも備えなければならない。これらを両立すべく、自社のSCMを見直してみるべきではないだろうか。


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