「無人宅配ロボット」に共感してもらえるコミュニケーション機能と、センサーやカメラによる安全性確保~ラストワンマイルを埋める宅配ロボット

INTERVIEW

株式会社ZMP
代表取締役社長
谷口 恒

高齢化、核家族化により、全国的に買い物難民が増えている中、都市部では店も多く買い物は行きやすいと思われますが、車を持たない人など徒歩で買い物に行く高齢者も少なくないです。ネットショップなども利用できるものの、配送ドライバーの人員不足などの問題でまだ解決していません。今回は、自動運転やロボット技術を駆使し様々なロボットを開発している株式会社ZMP 代表取締役社長の谷口恒氏に、同社の「無人宅配ロボット」の機能と今まで行った実証実験の成果についてお話を伺いました。

日本は、高齢化、核家族化が進むとともに、全国的に買い物難民が増えています。過疎化が進む地域や、高齢化が進むベッドタウンなどでは、スーパーマーケットや商店が経営難や後継者不足により閉店し、その数も減少しています。車で買い物に行くにも、高齢になると、そもそも車の運転が難しくなり、また車から家の中まで荷物を運ぶのも大変になります。都市部では店も多く買い物は行きやすいのは確かですが、車を持たない人が多いため、徒歩で買い物に行って荷物を持って帰るのが大変になってきている高齢者も少なからずいます。

こうした問題は、ネットショップや、フードデリバリーサービスがある程度解決してくれますが、今後、配送ドライバーの人員不足の問題も指摘されています。また、新型コロナウイルスの感染拡大で、感染者や自宅待機者の食事等の配送をどうすべきかということも新たな問題として生じています。このようなラストワンマイル問題のソリューションとして、自動配送ロボットの使用が注目されています。無人宅配ロボを開発・販売しているロボットベンチャーの開発進捗と実証実験の成果、社会実装のスケジュール等をレポートします。


自動運転やロボット技術を駆使した様々なロボットを開発

ZMPは、自動運転技術やロボットを開発するベンチャーとして、科学技術振興機構(JST)からの技術移転を受け、2001年に創業。当初は二足歩行ロボットの開発からスタートし、「PINO」や「nuvo(R)」などの二足歩行ロボットを開発しました。その後、部屋をマッピングして自律移動する音楽ロボット「miuro(R)」を開発。2008年には、実車1/10スケールの自動運転/AI技術開発用ロボットカー「RoboCar(R)1/10」を開発します。RoboCarは自動運転の研究開発者用に販売しました。以来、10年以上にわたって「自動運転技術開発プラットフォームRoboCarシリーズ」として、1人乗りEVタイプや、一般車タイプ、自動運転タクシー、EVバスタイプなどの開発を行なっています。

また同時に、自動運転コンピューター「IZAC(R)(アイザック)」も開発しています。IZACを搭載したコンピューターへセンサーを接続し、認識させることで、IZACの制御コンポーネントを通じて判断を行い、制御することであらゆる機械をコントロールすることが可能です。IZACを通じて、機械を動かすために必要な、認知・判断・操作のすべてを行えます。

「自動運転関連業界では珍しく、ハードウェアとソフトウェアの両方を開発しているのがZMPの大きな特徴です」とZMP代表取締役社長の谷口恒(たにぐち・ひさし)氏は言います。

大手自動車メーカー、大手電機メーカー、研究機関や各大学の研究などで、ZMPの自動運転関連の製品が開発用に使われています。IZACは、建設機械や工事用車両でも使われています。これまでにRoboCarシリーズで累計500台以上、多数のIZACの導入実績があります。


「無人宅配ロボ」のセンサーとカメラによる安全性確保とコミュニケーション機能

そんなZMPが、企画、コンセプトからデザイン、設計、システム構築、製造、販売、サービス提供までワンストップで行う自社製品の一つが、自動運転の無人宅配ロボDeliRo(デリロ)(R)です。歩行速ロボ(R)シリーズとして、人を乗せて運ぶロボット一人乗りの歩行速モビリティRakuRo(R)、無人警備・消毒ロボPATORO(R)があり、ZMPの自動運転の歩行速ロボ三兄弟として開発を進めています。これらのロボットにはZMPの自動運転のハードとソフトの技術が投入されています。

デリロの仕組みは、近隣のお店が加盟しているスマートフォンのアプリなどでユーザーが注文をすると、店舗から家まで無人宅配ロボが届けてくれるというものです。

デリロは複数搭載されたカメラやレーザセンサで周囲環境を360度認識しながら、人の速歩きくらいの速度、最高時速6kmで歩道を自動走行する4輪・後輪駆動のロボットです。5cmの段差を越え、8度の勾配の坂まで登ることもできます。約96×66×109cmのボックス型の荷台に、1ボックス、4ボックス、8ボックスの選べるロッカーを積むことができます。走る宅配ボックスというイメージです。また、オープンタイプの「デリロトラック」もリリースしています。合計で100kgまでの荷物を運ぶことができ、1時間の充電で約4時間の走行が可能です。

カメラは障害物の検知など、前方監視のためのフロントカメラが1個とステレオカメラの2個、左右と後方にそれぞれ1個ずつ、合計6個、また周囲100m以上の広範囲をスキャンする3D-LiDARを1機と、ロボット近傍の物体を検出する2D-LiDARを前後2機搭載しています。

DeliRo(デリロ)は多数のセンサーを搭載し、安全を確保しながら目的地に進むことができる
DeliRo(デリロ)は多数のセンサーを搭載し、安全を確保しながら目的地に進むことができる

「カメラは形や色を見ることを得意としていますが、逆光や豪雨、霧で見えにくくなることがあります。レーザー光を使ったセンサーの一種であるLiDARは細かい点を照射してその反射で対象物の距離や位置関係を正確に計測することに長けていますが、LiDARは見えているものがなにかを認識することはできません。たとえば、信号は、カメラがないと認識できないのです。2つを組み合わせることで、より正確な認識を行います」(谷口氏)

街中の人が行き交う歩道を走行するデリロは、歩行者や自転車、犬の散歩中の人、車椅子、ベビーカーやシニアカートを押す地域の人々とのコミュニケーションを意識して開発されました。デリロには表情を伝えるような大きなLEDの目と、スピーカー音声によるコミュニケーション機能がついています。「こんにちは」「ロボットが通ります」などと話しかけ、目を合わせたり、曲がる方向を見たり、困った目をしたり、ウインクしたりするのです。

目が動く宅配ロボは商業デザインとしては珍しいものですが、「人間は多少混雑した中を行き交う時、相手の目を見てどちらの方向に行くのか、などの相手の意思を判断しています。デリロは歩行者に混ざって歩道を移動するので、目をつけた理由は、ロボットの意思を表示する意味合いがひとつ。そしてもうひとつの理由として、人間は目を持つものには共感を持ってくれるという意味合いもあります。ロボットが社会に溶け込むためには、共感を持ってもらい愛されることが不可欠なのです」(谷口氏)

谷口氏はもともと自動車制御技術の技術者からロボットベンチャーを興しました。その後、東京藝術大学大学院でロボット・デザインの博士号も取得しており、デリロのデザインも谷口氏が手がけています。

デリロはROBO-HI(R)というロボット管理クラウドシステムで管理されています。デリロに装備されているセンサーの情報とカメラの情報が確認でき、配達中のロボットの場所や周囲の様子を遠隔で見ることも可能です。

ロボットクラウド管理システムRobo-HI(ロボハイ)の監視画面。カメラやセンサーのデータで位置情報などが見える。
ロボットクラウド管理システムRobo-HI(ロボハイ)の監視画面。カメラやセンサーのデータで位置情報などが見える。


大学構内やマンションなどでの実証実験成果と課題

デリロの本体と、宅配サービスを実現するためのユーザー用・店舗用アプリ、ITサービスは、パッケージ化して提供されており、すでにいくつかの実証実験も行われています。

2019年1月の実証実験では、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス内のコンビニエンスストアで注文した商品が、デリロによってキャンパス内の配達先に届けられました。ユーザーはアプリで商品を注文し、指定の時間にキャンパス内の受取場所で、スマートフォンに表示されたQRコードを認識させボックスのロックを解除して商品を受け取り、ロボットは仮設店舗に戻ります。

2020年10月には、東京都千代田区の東京逓信病院から同区の麹町郵便局まで、デリロが約700mの公道を走り、大勢の歩行者を回避しながら配達をした実証実験も行われました。

2021年2月には東京都中央区佃・月島地区で実証実験を行いました。ENEOSホールディングスと一緒に、近隣にある松屋、磯丸水産、ミニストップ、ローソン、焼肉スタミナ苑、台湾タピオカ専門店縁、東京メロンパン、のりまき屋などの10店舗からの商品を、東京都中央区佃のENEOSが運営するサービスステーションから、約900m離れたタワーマンションへのデリロによるデリバリーが行われました。タワーマンションの居住者からアプリで注文を受けると、各店舗側が商品を用意し、ENEOSが運営するサービスステーションまで運びます。そこで待機するデリロに商品を積み、配送を指示。商品を載せたデリロがマンションの前まで運びます。スマートフォンで注文者に到着予告通知が送られ、居住者がマンションの入り口で商品を受け取るというものです。

現在、2021年度内に行う予定の第2弾の実験に向けて準備中ですが、第2弾では、各店舗がENEOSのサービスステーションまで商品を届けるのではなく、デリロが各店舗まで商品を取りに行き、積み込んでもらってから、注文者に届けるフローにするそうです。

いずれの実験も成功し、ユーザーの反応は好評でした。デリロは建物の管理システムと連携し、セキュリティゲートを通ることや、エレベーターの乗降も可能なため、管理組合や住民の許可が得られれば、マンションの中までの配達も技術的には可能です。ZMPでは、マンションデベロッパーと連携し、2021年度中には、各玄関までデリロが商品を届けられるマンションが建設される予定です。新築マンションでは比較的入居者の理解が得やすく、また大規模マンションでは玄関からエントランスまでの距離が遠かったり、多重セキュリティを通過するのが面倒といった理由もあり、玄関の前までロボットが荷物を届けてくれるサービスの需要は、新築大規模マンンションから拡大していくだろうと谷口氏は見ています。

課題なのは料金です。デリロの価格は、走行するためのマップ作成、ルート設定、現地でのチューニング、導入までの実証実験など初期費用がおよそ500万円。それにプラスして、レンタル料金として月額10万円の費用がかかります。ただし、例えばフードデリバリーを行なっている会社が導入する場合、配達員の人件費を考えれば、十分ペイすると谷口氏は言います。

すでに技術はそろい、安全性も確認されています。あとはユーザーの理解が進み、サービスを採り入れたい人や企業が増えれば、無人宅配ロボは日常の風景になっていきそうです。

 
文/奥田由意
写真/嶺竜一



参考情報
・nuvoは、株式会社ZMPの登録商標です。
・miuroは、株式会社ZMPの登録商標です。
・ロボカー\RoboCarは、株式会社ZMPの登録商標です。
・DeliRo\デリロは、株式会社ZMPの登録商標です。
・歩行速ロボは、株式会社ZMPの登録商標です。
・RakuRo\ラクロは、株式会社ZMPの登録商標です。
・PATORO\パトロは、株式会社ZMPの登録商標です。
・ロボハイ\ROBO-HIは、株式会社ZMPの登録商標です。

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