「自律走行配送ロボット」の社会実装を意識したデザイン設計と活用場の開発~ラストワンマイルを埋める配送ロボット

INTERVIEW

Rice Robotics
CEO Victor Lee

アスラテック株式会社
ロボットサービス事業推進部
部長 小野 哲晴

物流配送において、配達スタッフの人員不足、地方での過疎化と高齢化、都市部のマンションやオフィスビルのセキュリティ強化などの問題から、荷物を受取人まで届けるラストワンマイル配送にロボットを導入しようとする動きが進みつつあります。今回は、屋内配送に特化した「自律走行配送ロボット」を開発している香港発Rice Robotics社のCEO Victor Lee氏と日本での販売、導入支援を行うアスラテック株式会社に、「自律走行配送ロボット」の活用場の開発や、社会実装に向けたデザイン設計についてお話を伺いました。

▽おすすめ関連記事

ロボットにはヒューマノイドロボットやトイロボット、産業用ロボットなどの種類がありますが、自律走行配送ロボットを日本で見かける機会はまだほとんどありません。それゆえどのように役立つのかなかなかイメージが湧きづらいのではないでしょうか。しかし配送スタッフの人手不足の問題や、新型コロナウイルスなど感染症対策の問題、セキュリティの問題などから、近年、自律走行配送ロボットの社会実装が急ピッチで進行しています。今回、コンビニエンスストア大手のセブン‐イレブン・ジャパンや日本郵便なども実証実験を進めている香港発の自律走行型配送ロボット「RICE(ライス)」を開発する香港のRice Robotics(R)のCEO Victor Lee(ビクター・リー)氏、2020年よりRICEの日本での販売、導入支援を行うアスラテック株式会社のロボットサービス事業推進部 部長 小野 哲晴(おの・てつはる)氏の両者にお話を伺いました。

屋内配送に特化した「自律走行配送ロボット」を開発したきっかけ 

屋内に特化した自律走行型配送ロボットRICEは高さ76cm×幅54cm×奥行50cm、重量55kg、最大積載量は10㎏、時速4kmで走行可能で約2時間の充電で約8時間稼働します。光センサーのLiDAR(Light Detection And Ranging)、超音波センサー、深度カメラなどを搭載。導入の前に、RICEが行動するエリアを動かして、LiDARでスキャンさせ、マップを作成します。マップが完成すると、RICEはマップの範囲を自律走行できるようになります。エリアごとに荷物を受け渡すポイントをあらかじめ設定しておけば、タッチパネル操作で簡単に荷物配送を指示することができます。

RICEは物の配送だけではなく、ゲストの先導・案内といった用途にも活用できます。ホテルやオフィスビル、ショッピングモール、病院、高層住宅、飲食店、量販店など、屋内のさまざまな施設における活用が想定されています。

さて、ここであることが気になった方もいるかもしれません。「このRICEという名前は一体どこから来ているのか」と。RICEとは英語で「米」を意味しますが、このネーミングの由来について2019年にRice Robotics(R)を創業したCEOのLee氏に伺いました。

「約4年前、私は米国シリコンバレーの路上で自律走行配送ロボットを見かけました。このロボットを香港、アジアに広めたいと考えました。なぜならそんなロボットはアジアにはなかったからです。
やるからにはアジアで自律走行配送ロボットの一番手のメーカーになる必要があると考えました。アジアでの展開を考え、アジア圏で共通しているものはなにかと考えた際にRICE(米)が思い浮かんだのです。香港、台湾、韓国、日本どの国でも毎日、米を食べますよね。ロボットがより身近なもの、米のように生活に身近なものになればとの想いもあってRICEと名付けました」

RICEはその名前通り、米をモチーフとしたデザインになっています。

ホテル、オフィスビルなど、ロボットをサービスの一部として取り込んで活用場を開発

RICEの上部の収納庫に商品を収納し、タッチパネルで操作する(撮影:嶺竜一)
RICEの上部の収納庫に商品を収納し、タッチパネルで操作する(撮影:嶺竜一)


このRICEは実際どのように機能するロボットなのか。以降で利用例を挙げていきます。

RICEの上部の収納庫を開け、商品をセットして、タッチパネルで目的地を選択して「配送」ボタンをタップすると、自律走行が始まります。人と協働する前提の設計なので人との衝突を回避するために、立ち止まったり、障害物を避けたりしながら、進みます。

エレベーターとシステム連携することで、自らエレベーターを操作して異なるフロア間の移動も可能となっています。
目的地に到着すると、受け取り主にショートメッセージやLINEメッセージなどを送り、待機します。受け取り主が商品を受け取ると、再び自律走行を開始し、充電ステーションに戻ります。

RICEは香港のホテル「Nina Hotel Island South」で、隔離対象の宿泊者にルームサービスを届ける役割としてすでに正式導入されています。

日本においては、セブン‐イレブン・ジャパン、ソフトバンク、アスラテックの3社が共同で、2021年1月からRICEを活用した実証実験を行っています。オフィスビル内にある店舗で、ビル内の各フロアに商品を届ける仕組みです。オフィスに勤務する利用客がスマートフォンでセブン‐イレブンの商品を注文すると、店舗スタッフが配送商品をピックアップしてRICEの収納庫にセット。RICEがオフィスで勤務する顧客に商品を配送する業務を担います。RICEがフロアのセキュリティーゲートの前などに到着すると、購入者に到着を知らせるメッセージを送信。購入者が取りに来ます。
ちなみに、設備と設定次第では、RICE自体に認証を与え、セキュリティーゲートを通過させることも可能です。

また2021年2月に日本郵便はオートロック付きのマンションで5台のRICEを活用した実証実験を行っています。マンション居住者向けの荷物を配達員がマンションの入り口まで配送し、マンションの入り口から受け取り主の居室の玄関までの配送を「RICE」が代行する検証が行われました。

配達員がマンションに着くと、ロックがかかった自動ドアの外から、スマートフォンを使ってRICEを呼び出します。RICEは内側から入り口に近づいて自動ドアを開けてくれます。配達員がRICEに荷物を入れると、RICEが届け先の部屋まで移動を始め、配達員はマンションを後にします。

RICEは運行管理システムと通信してエレベーターを呼び出して目的の階に移動。玄関前で受取人にLINEで荷物の到着とRICEの収納庫の暗証番号を通知し、受取人を玄関の外に呼び出し、荷物を受け取ってもらいます。その後RICEはロビーの充電ステーションに戻ります。受取人が不在の場合は荷物を保持したままロビーの充電ステーションに戻って、受取人から再配達の依頼がくるまで待機します。

RICEの活躍が期待される領域について、2020年よりRICEの日本での販売、導入支援を行うアスラテック株式会社のロボットサービス事業推進部 部長 小野 哲晴(おの・てつはる)氏はこう話します。

「ロボットの社会実装を進めるために、ロボット単体でユースケースを生み出すことを考えるよりも、ロボットをサービスの一部として組み込む形でサービス全体の価値を向上させるのに活用いただければと考えています。そのためサービス提供企業様と連携してやサービスにロボットをどうやって組み込むのか。その視点が非常に重要になってくると考えています」

広範な領域での活用が想定されているRICEですが、その開発は簡単ではなかったようです。

Lee氏に開発で直面した課題について伺いました。
「病院、ホテル、ショッピングモール、ビルなどすべて違う環境にあります。そんなに人が多くなかったりする場所もある一方でたくさん人がいる場所もあります。それぞれの環境下においてロボットが周囲の環境に反応し自律的に動くようにするためにソフトウェアを最適化するのが大変でした。今もRICEからデータを収集しソフトウェアを最適化し続けています」


社会実装を強く意識したフレンドリーなデザイン設計

現在、数多くのロボットが出ている中でなぜアステラテックは日本においてRICEの販売・導入支援を行うことに決めたのか。その経緯を小野氏に伺いました。

「当社は2013年にロボット専業企業として設立し、ロボットを制御するソフトウェア開発をメインに行ってきました。現在までに多くのパートナー企業と手を組み、100以上のロボットプロジェクトに参画しておりますが、自社で特定のロボットは取り扱っていませんでした。しかし、顧客が抱える課題により深く向き合い、その課題を解決していくには、ロボット製品を自社で扱うことも必要だと考えました」

そこで小野氏は、日本市場での展開が期待できるロボットメーカーと協業したいと考え、1年以上かけて世界中のさまざまなロボットの展示会などを回ったといいます。その中でRice Robotics(R)と出合い協業する運びとなったのです。

「Rice Robotics(R)と協業することになった一番のポイントはRice Robotics(R)のメンバーのロボットに対する考え方に共感したことです。特に社会実装をすごく意識していたところですね。分かりやすく言うとフレンドリーであることに力を入れていることです。最初に試作機を見た時からその点に強いこだわりを感じました。

見た目のフレンドリーさ、人に愛され、受け入れてもらえるデザインがある。角がなく丸みを帯びていたり。外装にしてもただ白いだけでなく触りたくなるような質感が気に入りました。フレンドリーというのは見た目だけでなく使いやすさもそうですね。本体にはタッチパネルがついていて操作しやすくなっていたり、Webの管理ツールにしても使いやすいものが用意されていました。

RICEはエレベーターや他のシステムとの連携もできるようになっています。ロボット単体でなにかを解決するだけでなく、既存のサービスに組み込みやすく社会実装に向いているロボットだと感じて協業を決めました」

小野氏が言及したフレンドリーなデザインについてRICE Robotics(R)は強いこだわりがあったようです。Lee氏はこう語ります。

「RICEのデザインは映画のスターウォーズからヒントを得ました。私はスターウォーズのロボットキャラクターが大好きだったのです。特にR2-D2が好きでした。
現在、ロボットの市場を見るとたくさんロボットはあります。でも多くはまるで冷蔵庫のような無機質なものですよね。これはロボット作りにおいてあまり良くないと思ったのです。私自身はロボットをキャラクターにしたいと考えました。命を持っているかのようにしたかったのです。そのためデザインに強くこだわりました」

なおRICEでは積極的にユーザーのフィードバックを得ながら改良に改良を重ねてきたとのこと。最終的に完成するまで8世代のプロトタイプを作ったそうです。

徹底的なユーザー視点をもとに開発、社会実装の加速化へ

LiDAR、超音波センサー、深度カメラを搭載し、マップの中での自己位置を把握しながら、障害物を検知し、避けたり止まったりしながら目的地へ進む(撮影:嶺竜一)
LiDAR、超音波センサー、深度カメラを搭載し、マップの中での自己位置を把握しながら、障害物を検知し、避けたり止まったりしながら目的地へ進む(撮影:嶺竜一)


前述したようにRICEはセブン‐イレブン・ジャパンや日本郵便などと実証実験が進んでいます。すでに現実に業務をサポートするロボットとして実装が進み始めているわけです。RICEはユーザーからフィードバックを得ながらデザイン、機能を改善してきました。その徹底的なユーザー視点をもとに開発されてきたからこそ受け入れられているのではないでしょうか。そんなRICEの今後の展望についてLee氏に伺いました。

「我々のロボットは香港において100台以上がすでに稼働しています。とりわけ現在は新型コロナウイルスの流行にともない感染予防のためや、ホテルで隔離生活を送っている人にルームサービスを提供するのに利用されています。RICEをベースに除菌機能を持たせたロボット「Jasmine」の展開も行っています。
しかし私たちは現在、新型コロナウイルス収束後を見据えた開発に取り組んでいます。たとえば施設を管理したり、閉店後のショッピングモールを巡回したり、多目的に利用可能なロボットの開発にも取り組んでいます。現在は駅の構内において利用可能なロボットの開発プロジェクトが進行しています」

今後もRICEは、自律走行配送ロボットとして、ますます進化し、私たちの生活に欠かせないものとなるかもしれません。それを期待したいものです。


文/森本信也


参考情報
・Rice Roboticsは、ライス ロボティクス リミテッドの登録商標です。

▽おすすめ関連記事

こちらの記事もおすすめ(PR)